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第三十一節「幾空を抜けて 渇き地の悪意 青の星の先へ」
~絶望佳曲〝発射〟~
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勇達とアルディ達が戦う地点から西に向けておおよそ四百キロメートルほど離れた地点。
そこにある一つの大きな街。
大きく発展し栄えるその街には多くの人々が暮らし、発展途上ながら豊かな生活の営みを送っている。
そんな中……突如、街の中心地で地震が巻き起こった。
途端、周辺の脆い壁を持つ住宅や建築物が崩れ、耐震技術の施されていない一帯が一瞬にして倒壊していった。
誰しもがパニックに陥り逃げ惑う。
大人も、子供も、女も老人も……関係無く。
未曽有の事態に誰もが慌てふためく……そんな時。
彼等は見てしまった。
地震の元凶を。
街中央の建物だった瓦礫を押し退け、一つの大きな筒の様な何かが……突出し始めていたのだ。
まるで金属の角棒を幾つも縦に並べて円形に仕立てた様な……巨大な柱だった。
それが突然、動きを見せる。
柱外壁の隙間に小さい炸裂を催し、崩れ、外へ向けて倒れ込んできたのだ。
巻き込まれる事を恐れ、人々が逃げ惑う。
そんな彼が見たのは……恐るべき物。
魔剣ミサイル……天を突く程に巨大な、その姿であった。
間も無く、ミサイルの底部が火を放つ。
取り巻く冷却ガスを凄まじい勢いで吹き飛ばしながら。
炎を受けるのは、大地そのもの。
人々の住む……街そのものが、ミサイル推進力の受け皿。
これを建造した者は、最初からそれを目的としてこの場所を選んだのだろう。
この場所に生きる者達すらも犠牲にし、己の価値をより高める為に。
中には彼を信奉した者も多いだろう。
それすらも、彼にとっては生贄に過ぎなかった。
吹き付ける紅蓮の炎で地表を焼き尽くし、遂に魔剣ミサイルが空へと打ち上がる。
歪んだ殺意を乗せたミサイルは……真っ直ぐに空の彼方へと向けて舞い上がるのであった。
◇◇◇
『誰でもいい、近くにいる人を送って何とかしてくれえッ!! もう時間が無いんだッ!!!』
勇の悲痛なる叫びがアルクトゥーン管制室に響き渡る。
その通信はアルクトゥーン内だけには留まらない。
勇の声が全域に散る仲間達にも伝わり、彼等の焦りを掻き立てていた。
魔剣ミサイルが打ち上げられようとしている今、もはや彼等に残された時間はもう……無い。
だが既に、莉那達は行動を始めていた。
ディックの情報があったからこそ……彼女達は本当に魔剣ミサイルがこの地にあるのかを疑い、周辺の再調査を行っていたのである。
それは勇が叫ぶのとほぼ同時刻。
彼等の中の一人が管制室で声を張り上げた。
「ここより西、三百九十二キロメートル先、街中央部に異常な熱源反応を確認!!」
途端、管制室上部モニターに地図が表示される。
それは温度を示すサーモグラフィを表示したリビア周辺地図。
示された場所にあるのは規模の大きな一つの街。
その中心部分の色が、突如として平均気温である橙色から超高温を示す白へと変化して広がっていく様子がありありと映し出されていた。
「街中にミサイル基地が……!?」
「これでは街の住人達が……なんというむごい事を……!!」
驚愕の事実を前に誰しもが目を疑い、騒然とする。
人の死すらをも利用し、全てを巻き込んで事を成す。
それがまるで、死を撒き散らす死神の所業にすらに見えて。
『茶奈のビームで止められないのかよッ!?』
通信を聴いていた仲間達から多種多様な声が上がる中、心輝の声が目立って響く。
茶奈は現在アルクトゥーンの直下。
莉那達の指示があれば、指示方向へ照準を合わせる事も容易だろう。
だが―――
『ダメです……余りにも遠すぎて先が見えないんです!! 今ここから撃っても当てるのは不可能です!!』
彼女を取り巻く状況は最悪だ。
距離も当然の事、地表を照り付ける日光によって生まれた陽炎が先の視界を歪ませている。
それに加え、砂塵が舞って周囲を覆い隠し、方角すら定まらない。
そして茶奈の遠距離砲撃【光の柱】は文字通り光線攻撃。
大気圏内での使用は大気による屈折により……威力や規模が距離によって減衰してしまう。
例え威力が保ったとしても、不安定とも言える照射を当てるのは不可能に近い。
しかもそれだけの攻撃を撃てるのはたった一発……二発目を撃つ頃にはミサイルは空の彼方。
つまり今の状況を例えるならこうである。
目隠しをした状態で精度の低い銃を使い、弾が届くかもどうかも知れぬ百メートル先の針を一発で撃ち落とそうとしている。
その結果がどうなるかなど、言わずとも知れた事だ。
誰しもが焦燥感に包まれる。
もはや成す術は無いのか。
止める方法は無いのか。
そんな想いが走馬灯の如く一瞬にして彼等の脳裏に過る。
こうしている間にもミサイルは打ち上がり、空へと消えてしまうだろう。
見失えばもう、全てが終わる。
状況を覆す手段も見当たらず、諦めが場を覆い包んだ。
まさに最悪のシナリオ。
絶望の始まりとも言える現状。
しかし……その中で空を見上げる戦士が一人居た。
なお諦める事無く、青の空を写す瞳に決意を秘めて。
そこにある一つの大きな街。
大きく発展し栄えるその街には多くの人々が暮らし、発展途上ながら豊かな生活の営みを送っている。
そんな中……突如、街の中心地で地震が巻き起こった。
途端、周辺の脆い壁を持つ住宅や建築物が崩れ、耐震技術の施されていない一帯が一瞬にして倒壊していった。
誰しもがパニックに陥り逃げ惑う。
大人も、子供も、女も老人も……関係無く。
未曽有の事態に誰もが慌てふためく……そんな時。
彼等は見てしまった。
地震の元凶を。
街中央の建物だった瓦礫を押し退け、一つの大きな筒の様な何かが……突出し始めていたのだ。
まるで金属の角棒を幾つも縦に並べて円形に仕立てた様な……巨大な柱だった。
それが突然、動きを見せる。
柱外壁の隙間に小さい炸裂を催し、崩れ、外へ向けて倒れ込んできたのだ。
巻き込まれる事を恐れ、人々が逃げ惑う。
そんな彼が見たのは……恐るべき物。
魔剣ミサイル……天を突く程に巨大な、その姿であった。
間も無く、ミサイルの底部が火を放つ。
取り巻く冷却ガスを凄まじい勢いで吹き飛ばしながら。
炎を受けるのは、大地そのもの。
人々の住む……街そのものが、ミサイル推進力の受け皿。
これを建造した者は、最初からそれを目的としてこの場所を選んだのだろう。
この場所に生きる者達すらも犠牲にし、己の価値をより高める為に。
中には彼を信奉した者も多いだろう。
それすらも、彼にとっては生贄に過ぎなかった。
吹き付ける紅蓮の炎で地表を焼き尽くし、遂に魔剣ミサイルが空へと打ち上がる。
歪んだ殺意を乗せたミサイルは……真っ直ぐに空の彼方へと向けて舞い上がるのであった。
◇◇◇
『誰でもいい、近くにいる人を送って何とかしてくれえッ!! もう時間が無いんだッ!!!』
勇の悲痛なる叫びがアルクトゥーン管制室に響き渡る。
その通信はアルクトゥーン内だけには留まらない。
勇の声が全域に散る仲間達にも伝わり、彼等の焦りを掻き立てていた。
魔剣ミサイルが打ち上げられようとしている今、もはや彼等に残された時間はもう……無い。
だが既に、莉那達は行動を始めていた。
ディックの情報があったからこそ……彼女達は本当に魔剣ミサイルがこの地にあるのかを疑い、周辺の再調査を行っていたのである。
それは勇が叫ぶのとほぼ同時刻。
彼等の中の一人が管制室で声を張り上げた。
「ここより西、三百九十二キロメートル先、街中央部に異常な熱源反応を確認!!」
途端、管制室上部モニターに地図が表示される。
それは温度を示すサーモグラフィを表示したリビア周辺地図。
示された場所にあるのは規模の大きな一つの街。
その中心部分の色が、突如として平均気温である橙色から超高温を示す白へと変化して広がっていく様子がありありと映し出されていた。
「街中にミサイル基地が……!?」
「これでは街の住人達が……なんというむごい事を……!!」
驚愕の事実を前に誰しもが目を疑い、騒然とする。
人の死すらをも利用し、全てを巻き込んで事を成す。
それがまるで、死を撒き散らす死神の所業にすらに見えて。
『茶奈のビームで止められないのかよッ!?』
通信を聴いていた仲間達から多種多様な声が上がる中、心輝の声が目立って響く。
茶奈は現在アルクトゥーンの直下。
莉那達の指示があれば、指示方向へ照準を合わせる事も容易だろう。
だが―――
『ダメです……余りにも遠すぎて先が見えないんです!! 今ここから撃っても当てるのは不可能です!!』
彼女を取り巻く状況は最悪だ。
距離も当然の事、地表を照り付ける日光によって生まれた陽炎が先の視界を歪ませている。
それに加え、砂塵が舞って周囲を覆い隠し、方角すら定まらない。
そして茶奈の遠距離砲撃【光の柱】は文字通り光線攻撃。
大気圏内での使用は大気による屈折により……威力や規模が距離によって減衰してしまう。
例え威力が保ったとしても、不安定とも言える照射を当てるのは不可能に近い。
しかもそれだけの攻撃を撃てるのはたった一発……二発目を撃つ頃にはミサイルは空の彼方。
つまり今の状況を例えるならこうである。
目隠しをした状態で精度の低い銃を使い、弾が届くかもどうかも知れぬ百メートル先の針を一発で撃ち落とそうとしている。
その結果がどうなるかなど、言わずとも知れた事だ。
誰しもが焦燥感に包まれる。
もはや成す術は無いのか。
止める方法は無いのか。
そんな想いが走馬灯の如く一瞬にして彼等の脳裏に過る。
こうしている間にもミサイルは打ち上がり、空へと消えてしまうだろう。
見失えばもう、全てが終わる。
状況を覆す手段も見当たらず、諦めが場を覆い包んだ。
まさに最悪のシナリオ。
絶望の始まりとも言える現状。
しかし……その中で空を見上げる戦士が一人居た。
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