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第三十一節「幾空を抜けて 渇き地の悪意 青の星の先へ」
~人生越曲〝福留〟~
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近東にイラクという国があります。
未だ宗教戦争の真っただ中にある、欧米諸国とも関連の強い因縁の多き国です。
私はそこで、戦争の真っただ中に生まれました。
場所まではわかりません、町にすら成っていないスラムでした。
母の記憶は無く、殆ど捨て子の様なものだったと聞いています。
物心付いた時、既に銃を手に取っておりましてね。
銃を遊び道具に育ち、使う事に抵抗もありませんでした。
気付けば戦争の場に赴いて、大人達と共に人殺しの手伝いをしていたものです。
おおよそ十歳頃でしょうか。
私は同年代の仲間達と共に戦場に駆り出されていました。
その頃にはもう既に人の生き死にには馴れたものでして、人を殺す事などに感情が揺れ動く事も無く……ただ淡々と戦いをこなすだけの兵士となっていたのです。
仲間達も私と同様に、身寄りの無い子供達ばかりです。
中には隣国から連れてこられた子供もおりました。
親に棄てられた者、逃げた者、売られた者……理由は様々でしたが、誰しもが望んでその場に居た訳ではない事は共通しています。
とはいえ、食べる事にも困窮していたので……誰しも自ら糧を棄てる様な事はしませんでしたがね。
誰しもが神に祈りを捧げ、聖戦へと赴こうと銃を手に取ったものです。
しかしその中で一人、私だけはその行為がどういう事なのか理解出来ませんでした。
神という者が存在するのであれば……何故人に全てを委ねるのか、何故人がする事に何も示さないのか、それが不思議でならなかったからです。
人が死ぬ為に見守る……それが神の所業であっていいのか、そうすら思っていましたよ。
その頃からでしょうか、戦いそのものに疑問を持ち始めたのは。
仲間達が次々と死んでいき、生き残るのは大抵私を含んだ数名ばかり。
中には会話を交わした者もいましたが……そのほとんどはもう既にこの世には居ません。
毎日が戦い、硝煙の臭いが漂う中での生活でしたよ。
私の傍に居た者は毎度生き残る事から、いつの日からか『幸運の留まる場所』などと呼ばれる様になっていました。
名前など無かったものですからね、気付けばその二つ名で定着していたのですよ。
その頃には生き残る為にどうやって動けばいいか……自分なりに賢く動いていたから生き残れたのだと思っています。
共に生きて来た仲間達もそれを理解したのか、私の周りには理解者が集まっていました。
そんなある日、私の下に転機が訪れました。
私の父親を名乗る人物の使いが私の前に現れたのです。
その時おおよそ十四歳……多感の時期ですが、もはやそんな時すら既に乗り越えた頃です。
使いの者に連れられ、私は父親と対面する事が出来ました。
私の父親は日本のとある大富豪でしてね……どうやら色々な事があって私の事を知った様なのです。
なんでも、戦争から逃れる為に一時的にイラク近隣国へとやって来た時に私の母親と知り合い、そして愛し合ったそうです。
その後、子供が出来た事も知らぬまま帰国。
私の母親を日本に迎えるつもりだったそうですが、その頃には既に他界しておりまして。
しかし最近、私の二つ名が裏の世界に広まり始めた時……父親が私の存在に気付いたそうなのです。
『ラッキーステイツ』を名乗る日系人が近東で戦っている……とね。
そこで初めて私が自分の息子であるという確証を持ったらしく、接触を図ったという訳です。
予想通り、私は彼の息子でした。
なんでも、母親の面影とどこか似ているのだとか。
写真もありませんでしたが……その言葉はどこか嬉しかったのが記憶に残っています。
父親は敬虔な人でして、母親以外に肉体関係を持った女性は居なかったそうです。
それ程彼女を愛していたのだと……連れてこられなかったのが残念でならなかったと。
日本もまだ世襲制が強い時代でしたので、後継ぎも居ない状態だったのですが……私という存在が彼にとっての希望となった様でしてねぇ。
私は彼に引き取られ……日本へと渡ったのです。
それからの人生が一変したのは言うに及ばないでしょう。
常に死と隣り合わせの生活から、途端に安全な社会への転換。
それが普通なのだと認識するのに時間が掛かったものですよ。
戦後十数年と経った後なので東京の街並みこそ発展していましたが、人々は未だハングリーさを持ち合わせていたものです。
しかし私にとっては……それすらも生ぬるいとさえ思っていました。
なにせ死の恐怖が無いのですから、皆どこか緩さを持ち合わせたママゴトの様にも感じられたからです。
これはきっと、フララジカによってこの世界に来た魔者も同じ気持ちだったのかもしれませんね。
父親は自身の息子らしく私に様々な事を学ばせようとしました。
私ももはや誰が父親で、どんな生活であろうと抵抗は無かったので……潔く従いました。
しかし、そこで私は一つ父親に交換条件を出したのです。
「貴方の息子に相応しい成果を上げたのならば、私の十四年間を取り戻させる様な望みを叶えて欲しい」とね。
彼もまた潔くその条件を受け入れてくれました……そこはまさに私の父親だと言わんばかりに。
そこから私は必死に学習に打ち込みました。
まずは日本語学からものの考え方、仕草や文化など、生活に必要な事を一通り。
その後普通の学生達と混じって経営、政治、帝王学……父親に言われていない事もこなしたものです。
私としては周囲の状況を鑑みればこれほど楽な事は無いと思ったものですがね。
何せ、周囲の人間は皆、死を恐れない籠の鳥……私とは一つ別の場所に居る者達でしたから……追い越すなど簡単な事でしたよ。
気付けばおおよそ二年で私はそれらを習得し、父親を納得させる事が出来ました。
たった二年で成さねばならなかったのには理由があります。
約束を果たした私が父親に望んだのは、かつて近東で共に戦った友人達を私の様に救ってほしいというもの。
常に死と隣り合わせの世界で生き残っているかどうかは定かではありませんでしたが、出来るだけ短く事を済ませて生きているかもしれない仲間達を救いたかった。
ただそれだけの為に……私は自分の命を削って打ち込んで来たのです。
父親は私の願いを叶えてくれました。
幸運な事に……当時の仲間達の半数が死ぬ事無く、私の前に現れたのです。
皆、私の生き残りの哲学を守り、生き残ってくれていたのです。
生きている事が素晴らしいってこれほど嬉しかった事はありませんでしたよ。
彼等は父親の保護の下で私同様に座学を受け、先進文明に生きる術を学びました。
中には戦いの後遺症で生活に支障をきたす者も居ましたが……それでも負けず、仲間達と共に歩み続けたものです。
その甲斐あって……私達は揃って胸を張って世界政財界で生きる事が出来る様になりました。
その時は既に二十歳も軽く越え、互いの人生を構築するのに差し支えの無い立場になっていましたよ。
私達はその後、父親のサポートの下で各国へと散り、自分達の世界を構築しました。
ある者は事業を立ち上げ、ある者は先進技術開発に従事し、ある者はボランティア活動に身を置き。
様々な業種、様々な国に散り、そこでも多くの輪を広げ、大きな情報網を造り上げていったのです。
それが今ある情報網の原型ですね。
しかし不幸にも、それが父親の持つ財閥を大きく苦しめる結果となりました。
私達の構築する網の規模が大きくなり過ぎたのと、経年による財閥の弱体化が原因でした。
私達としては当然それを望んでいた訳では無く、なんとか折り合いを見つけて解決しようと交渉を続けたのですが……そこで更なる不幸が舞い降りたのです。
私達の父親が、病に伏せました。
不幸が身に祟り、不治の病を患ってしまったのです。
もちろん父親の下へと全員が馳せ参じました。
結果的に敵にはなったけれど、誰しもが彼のしてくれた事に感謝していたから。
そして父親は……全員が看取る中、息を引き取ったのです。
彼が幸せだったかどうかは私達にはわかりません。
なにせ、彼の最後の言葉を聴く事が出来なかったから。
私達が駆け付けた時には既にもう、口を利く事すら出来なかったからです。
私達はこれ以上争う事にもはや嫌気すら差していました。
小さい頃から争いに明け暮れ、形を変えてこうして戦ってしまっていた。
そして血は繋がらなくとも、父親と呼べる存在を……父を死に追いやってしまった。
その事実が私達を大きく変えたのです。
ならば私達の構築した網を、こういった不幸を無くす為に使おうと。
こうして私達は、世界政財界と融和する形で自分達のコネクションを裏の世界に置いたのです。
彼等の多くは今となってはもうほとんどが他界しましたが、その繋がりは未だ途切れていません。
時には親の様に、時には友人の様に……互いに支え合い、有事の際には全力で立ち向かい、困難を乗り越える。
その為に財源を確保し、ありとあらゆる事に備える……それが仲間達と共に決めた約束。
それが今の私が持つ福留コネクションという訳です。
ちなみに私の戸籍上の本名は『神之坂 晴樹』と言います。
しかし、父が死去した後……最後に恩に報いる事が出来なかった事を悔いて、私は戸籍を捨てました。
父がどう思っていたかどうかはわかりませんが……私は彼と最後まで和解する事が出来なかったと、そう思っているからです。
私も父に感謝をしていたからこそ、この氏を名乗るに相応しくないと感じたからですね。
元々私はイラク生まれで、父が用意した偽の戸籍しかありませんでしたし……その時から私は名無しの権兵衛さんになっちゃいました。
ですが名前も無いのも困るという事で……昔の二つ名から獲って、『福留 晴樹』と名乗る様になったのです。
それからというものの、私は本来国外で暗躍するつもりだったのですが……そこで日本政府からの白羽の矢が立ちましてね。
日本としても福留コネクションを無下にする事は出来ないと。
私もその進言に甘え、日本の政財界に身を置く事になったのです。
こうして私は今、ここに居ます。
これは決して勇君達と共に戦いたいから居合わせている訳ではありません。
かつての仲間達と共に誓った約束を果たし、父に報い続ける為。
そして戦いの恐ろしさを知る者として……戦う事の無意味さを世界に伝える為。
私達は今こそ立ち上がるべき……その志を以ってここに居るのです。
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近東にイラクという国があります。
未だ宗教戦争の真っただ中にある、欧米諸国とも関連の強い因縁の多き国です。
私はそこで、戦争の真っただ中に生まれました。
場所まではわかりません、町にすら成っていないスラムでした。
母の記憶は無く、殆ど捨て子の様なものだったと聞いています。
物心付いた時、既に銃を手に取っておりましてね。
銃を遊び道具に育ち、使う事に抵抗もありませんでした。
気付けば戦争の場に赴いて、大人達と共に人殺しの手伝いをしていたものです。
おおよそ十歳頃でしょうか。
私は同年代の仲間達と共に戦場に駆り出されていました。
その頃にはもう既に人の生き死にには馴れたものでして、人を殺す事などに感情が揺れ動く事も無く……ただ淡々と戦いをこなすだけの兵士となっていたのです。
仲間達も私と同様に、身寄りの無い子供達ばかりです。
中には隣国から連れてこられた子供もおりました。
親に棄てられた者、逃げた者、売られた者……理由は様々でしたが、誰しもが望んでその場に居た訳ではない事は共通しています。
とはいえ、食べる事にも困窮していたので……誰しも自ら糧を棄てる様な事はしませんでしたがね。
誰しもが神に祈りを捧げ、聖戦へと赴こうと銃を手に取ったものです。
しかしその中で一人、私だけはその行為がどういう事なのか理解出来ませんでした。
神という者が存在するのであれば……何故人に全てを委ねるのか、何故人がする事に何も示さないのか、それが不思議でならなかったからです。
人が死ぬ為に見守る……それが神の所業であっていいのか、そうすら思っていましたよ。
その頃からでしょうか、戦いそのものに疑問を持ち始めたのは。
仲間達が次々と死んでいき、生き残るのは大抵私を含んだ数名ばかり。
中には会話を交わした者もいましたが……そのほとんどはもう既にこの世には居ません。
毎日が戦い、硝煙の臭いが漂う中での生活でしたよ。
私の傍に居た者は毎度生き残る事から、いつの日からか『幸運の留まる場所』などと呼ばれる様になっていました。
名前など無かったものですからね、気付けばその二つ名で定着していたのですよ。
その頃には生き残る為にどうやって動けばいいか……自分なりに賢く動いていたから生き残れたのだと思っています。
共に生きて来た仲間達もそれを理解したのか、私の周りには理解者が集まっていました。
そんなある日、私の下に転機が訪れました。
私の父親を名乗る人物の使いが私の前に現れたのです。
その時おおよそ十四歳……多感の時期ですが、もはやそんな時すら既に乗り越えた頃です。
使いの者に連れられ、私は父親と対面する事が出来ました。
私の父親は日本のとある大富豪でしてね……どうやら色々な事があって私の事を知った様なのです。
なんでも、戦争から逃れる為に一時的にイラク近隣国へとやって来た時に私の母親と知り合い、そして愛し合ったそうです。
その後、子供が出来た事も知らぬまま帰国。
私の母親を日本に迎えるつもりだったそうですが、その頃には既に他界しておりまして。
しかし最近、私の二つ名が裏の世界に広まり始めた時……父親が私の存在に気付いたそうなのです。
『ラッキーステイツ』を名乗る日系人が近東で戦っている……とね。
そこで初めて私が自分の息子であるという確証を持ったらしく、接触を図ったという訳です。
予想通り、私は彼の息子でした。
なんでも、母親の面影とどこか似ているのだとか。
写真もありませんでしたが……その言葉はどこか嬉しかったのが記憶に残っています。
父親は敬虔な人でして、母親以外に肉体関係を持った女性は居なかったそうです。
それ程彼女を愛していたのだと……連れてこられなかったのが残念でならなかったと。
日本もまだ世襲制が強い時代でしたので、後継ぎも居ない状態だったのですが……私という存在が彼にとっての希望となった様でしてねぇ。
私は彼に引き取られ……日本へと渡ったのです。
それからの人生が一変したのは言うに及ばないでしょう。
常に死と隣り合わせの生活から、途端に安全な社会への転換。
それが普通なのだと認識するのに時間が掛かったものですよ。
戦後十数年と経った後なので東京の街並みこそ発展していましたが、人々は未だハングリーさを持ち合わせていたものです。
しかし私にとっては……それすらも生ぬるいとさえ思っていました。
なにせ死の恐怖が無いのですから、皆どこか緩さを持ち合わせたママゴトの様にも感じられたからです。
これはきっと、フララジカによってこの世界に来た魔者も同じ気持ちだったのかもしれませんね。
父親は自身の息子らしく私に様々な事を学ばせようとしました。
私ももはや誰が父親で、どんな生活であろうと抵抗は無かったので……潔く従いました。
しかし、そこで私は一つ父親に交換条件を出したのです。
「貴方の息子に相応しい成果を上げたのならば、私の十四年間を取り戻させる様な望みを叶えて欲しい」とね。
彼もまた潔くその条件を受け入れてくれました……そこはまさに私の父親だと言わんばかりに。
そこから私は必死に学習に打ち込みました。
まずは日本語学からものの考え方、仕草や文化など、生活に必要な事を一通り。
その後普通の学生達と混じって経営、政治、帝王学……父親に言われていない事もこなしたものです。
私としては周囲の状況を鑑みればこれほど楽な事は無いと思ったものですがね。
何せ、周囲の人間は皆、死を恐れない籠の鳥……私とは一つ別の場所に居る者達でしたから……追い越すなど簡単な事でしたよ。
気付けばおおよそ二年で私はそれらを習得し、父親を納得させる事が出来ました。
たった二年で成さねばならなかったのには理由があります。
約束を果たした私が父親に望んだのは、かつて近東で共に戦った友人達を私の様に救ってほしいというもの。
常に死と隣り合わせの世界で生き残っているかどうかは定かではありませんでしたが、出来るだけ短く事を済ませて生きているかもしれない仲間達を救いたかった。
ただそれだけの為に……私は自分の命を削って打ち込んで来たのです。
父親は私の願いを叶えてくれました。
幸運な事に……当時の仲間達の半数が死ぬ事無く、私の前に現れたのです。
皆、私の生き残りの哲学を守り、生き残ってくれていたのです。
生きている事が素晴らしいってこれほど嬉しかった事はありませんでしたよ。
彼等は父親の保護の下で私同様に座学を受け、先進文明に生きる術を学びました。
中には戦いの後遺症で生活に支障をきたす者も居ましたが……それでも負けず、仲間達と共に歩み続けたものです。
その甲斐あって……私達は揃って胸を張って世界政財界で生きる事が出来る様になりました。
その時は既に二十歳も軽く越え、互いの人生を構築するのに差し支えの無い立場になっていましたよ。
私達はその後、父親のサポートの下で各国へと散り、自分達の世界を構築しました。
ある者は事業を立ち上げ、ある者は先進技術開発に従事し、ある者はボランティア活動に身を置き。
様々な業種、様々な国に散り、そこでも多くの輪を広げ、大きな情報網を造り上げていったのです。
それが今ある情報網の原型ですね。
しかし不幸にも、それが父親の持つ財閥を大きく苦しめる結果となりました。
私達の構築する網の規模が大きくなり過ぎたのと、経年による財閥の弱体化が原因でした。
私達としては当然それを望んでいた訳では無く、なんとか折り合いを見つけて解決しようと交渉を続けたのですが……そこで更なる不幸が舞い降りたのです。
私達の父親が、病に伏せました。
不幸が身に祟り、不治の病を患ってしまったのです。
もちろん父親の下へと全員が馳せ参じました。
結果的に敵にはなったけれど、誰しもが彼のしてくれた事に感謝していたから。
そして父親は……全員が看取る中、息を引き取ったのです。
彼が幸せだったかどうかは私達にはわかりません。
なにせ、彼の最後の言葉を聴く事が出来なかったから。
私達が駆け付けた時には既にもう、口を利く事すら出来なかったからです。
私達はこれ以上争う事にもはや嫌気すら差していました。
小さい頃から争いに明け暮れ、形を変えてこうして戦ってしまっていた。
そして血は繋がらなくとも、父親と呼べる存在を……父を死に追いやってしまった。
その事実が私達を大きく変えたのです。
ならば私達の構築した網を、こういった不幸を無くす為に使おうと。
こうして私達は、世界政財界と融和する形で自分達のコネクションを裏の世界に置いたのです。
彼等の多くは今となってはもうほとんどが他界しましたが、その繋がりは未だ途切れていません。
時には親の様に、時には友人の様に……互いに支え合い、有事の際には全力で立ち向かい、困難を乗り越える。
その為に財源を確保し、ありとあらゆる事に備える……それが仲間達と共に決めた約束。
それが今の私が持つ福留コネクションという訳です。
ちなみに私の戸籍上の本名は『神之坂 晴樹』と言います。
しかし、父が死去した後……最後に恩に報いる事が出来なかった事を悔いて、私は戸籍を捨てました。
父がどう思っていたかどうかはわかりませんが……私は彼と最後まで和解する事が出来なかったと、そう思っているからです。
私も父に感謝をしていたからこそ、この氏を名乗るに相応しくないと感じたからですね。
元々私はイラク生まれで、父が用意した偽の戸籍しかありませんでしたし……その時から私は名無しの権兵衛さんになっちゃいました。
ですが名前も無いのも困るという事で……昔の二つ名から獲って、『福留 晴樹』と名乗る様になったのです。
それからというものの、私は本来国外で暗躍するつもりだったのですが……そこで日本政府からの白羽の矢が立ちましてね。
日本としても福留コネクションを無下にする事は出来ないと。
私もその進言に甘え、日本の政財界に身を置く事になったのです。
こうして私は今、ここに居ます。
これは決して勇君達と共に戦いたいから居合わせている訳ではありません。
かつての仲間達と共に誓った約束を果たし、父に報い続ける為。
そして戦いの恐ろしさを知る者として……戦う事の無意味さを世界に伝える為。
私達は今こそ立ち上がるべき……その志を以ってここに居るのです。
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