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第二十八節「疑念の都 真実を求め空へ 崩日凋落」
~SIDE勇-03 遥かなる海の先へ~
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現在時刻 日本時間14:51......
イルリスエーヴェから伸びる足場に足を掛け、勇と茶奈が高速で東京の空を直線的に突き抜けていく。
しかし……その速度は勇が跳ねて飛ぶよりも速いが、30分でアメリカに到達出来る様なスピードでは無い。
それと言うのも―――
「このまま東京湾方面から南下して海上に出ます!! そこから低空飛行でレーダーを回避してから迂回してアメリカまで一気に行きますからしっかり掴まっててください!!」
茶奈には思惑があった。
日本でも領海領空を監視するレーダー網が存在する。
入国・出国を行う旅客機や船舶の管制を行うだけではない。
海外から領空侵犯する物体の察知や、不審船の確認など、その役目は多様だ。
そんなレーダー網が覆う日本から出るとすれば……幾ら速く移動出来るとしても、直線的に向かえば行き先がバレかねない。
だからこそ、遠回りではあるが一旦監視の範囲から外れる事を選んだのである。
例え地球の構造上最長ルートを辿るとしても……彼女にはそれでも30分で辿り着ける自信があったからこその選択であった。
もちろんそれは、同伴者が勇であったからこそというのも一つの理由だ。
直線距離で言えば、日本に最も近い北米大陸サンフランシスコ沿岸までは大まかに言って5000kmある。
つまり、単純計算で言えば航行速度は約10000km/hを超える。(参考として、音速1225 km/h、マッハ8相当)
彼女の全速力は音速を遥かに超え、並みの人間ならば即座に気絶、致死してもおかしくないレベルである。
例え彼女の気圧制御、加速度軽減フィールドによって彼等に掛かる重圧を軽減する事が出来るとしても、ただの人間では物理学的に不可侵の領域と言える。
それに耐えうるのは、彼女以上の存在のみ。
勇がそれに耐えうる事が出来ると信じていたからこそ、茶奈は本気を出すつもりだったのだ。
気付けば東京の空を抜け、正面に紺色の海が広がり始めていた。
人目に憚れる事無く高度を下げ、航行する船の合間を一気に突き抜けていく。
水しぶきを高く舞い上がらせながら海面スレスレを飛ぶ二人の姿を、船の上から見掛けた人々が指を差して追う。
写真になど納まる訳がない。
二人はもはや人が捉えられる速度を超えて航行しているのだから。
見掛けたとしても、気付けば一瞬にして……彼等の視界から消えていた。
しかし二人の顔は依然余裕を感じさせる真顔。
強張りすら見られない。
なお速度を落とす事無く、二人が海上を突き抜ける。
そろそろ日本のレーダー圏外に出る頃になると……旋回し、方角をアメリカの方へと向けていく。
それに伴い、航行速度もまた見る見るうちに上昇を始めていた。
「ここから一気に行きます!! 振り落とされないで下さいね!!」
「わかった!! 思いっきり頼む!!」
ドォォォーーーーーーンッ!!
その声が掛かったと同時に、突如魔剣の後方から激しい爆発が巻き起こる。
それが起爆剤となって、二人の航行速度は先程とは比べ物にならない程の速度へと到達していた。
キュオオオオオオオオンッ!!!
風を引き裂く音が轟音となって鳴り響き、一筋の激しい光が青空に向けて斜めに立ち上っていく。
そして後からやってくる反動の衝撃波が海上を激しく叩き、水しぶきを数百メートルにも渡って凄まじく立ち上らせていた。
途端、二人の体を振動させるほどの凄まじい重圧が掛かる。
茶奈が想定してた超重圧……それが今、二人の体にとめどなく圧し掛かっているのだ。
だがそれでも二人の表情は変わらぬまま、空を見上げる。
障害を乗り越え、その先に進む事を求めているから。
彼等はたかがそんな事で止まりはしない。
二人の姿はもう見えはしない。
目的地へ向けて……ただ力を振り絞る。
胸に希望を秘め、彼等は蒼の空を斬り裂くかの如く突き抜けていくのだった。
イルリスエーヴェから伸びる足場に足を掛け、勇と茶奈が高速で東京の空を直線的に突き抜けていく。
しかし……その速度は勇が跳ねて飛ぶよりも速いが、30分でアメリカに到達出来る様なスピードでは無い。
それと言うのも―――
「このまま東京湾方面から南下して海上に出ます!! そこから低空飛行でレーダーを回避してから迂回してアメリカまで一気に行きますからしっかり掴まっててください!!」
茶奈には思惑があった。
日本でも領海領空を監視するレーダー網が存在する。
入国・出国を行う旅客機や船舶の管制を行うだけではない。
海外から領空侵犯する物体の察知や、不審船の確認など、その役目は多様だ。
そんなレーダー網が覆う日本から出るとすれば……幾ら速く移動出来るとしても、直線的に向かえば行き先がバレかねない。
だからこそ、遠回りではあるが一旦監視の範囲から外れる事を選んだのである。
例え地球の構造上最長ルートを辿るとしても……彼女にはそれでも30分で辿り着ける自信があったからこその選択であった。
もちろんそれは、同伴者が勇であったからこそというのも一つの理由だ。
直線距離で言えば、日本に最も近い北米大陸サンフランシスコ沿岸までは大まかに言って5000kmある。
つまり、単純計算で言えば航行速度は約10000km/hを超える。(参考として、音速1225 km/h、マッハ8相当)
彼女の全速力は音速を遥かに超え、並みの人間ならば即座に気絶、致死してもおかしくないレベルである。
例え彼女の気圧制御、加速度軽減フィールドによって彼等に掛かる重圧を軽減する事が出来るとしても、ただの人間では物理学的に不可侵の領域と言える。
それに耐えうるのは、彼女以上の存在のみ。
勇がそれに耐えうる事が出来ると信じていたからこそ、茶奈は本気を出すつもりだったのだ。
気付けば東京の空を抜け、正面に紺色の海が広がり始めていた。
人目に憚れる事無く高度を下げ、航行する船の合間を一気に突き抜けていく。
水しぶきを高く舞い上がらせながら海面スレスレを飛ぶ二人の姿を、船の上から見掛けた人々が指を差して追う。
写真になど納まる訳がない。
二人はもはや人が捉えられる速度を超えて航行しているのだから。
見掛けたとしても、気付けば一瞬にして……彼等の視界から消えていた。
しかし二人の顔は依然余裕を感じさせる真顔。
強張りすら見られない。
なお速度を落とす事無く、二人が海上を突き抜ける。
そろそろ日本のレーダー圏外に出る頃になると……旋回し、方角をアメリカの方へと向けていく。
それに伴い、航行速度もまた見る見るうちに上昇を始めていた。
「ここから一気に行きます!! 振り落とされないで下さいね!!」
「わかった!! 思いっきり頼む!!」
ドォォォーーーーーーンッ!!
その声が掛かったと同時に、突如魔剣の後方から激しい爆発が巻き起こる。
それが起爆剤となって、二人の航行速度は先程とは比べ物にならない程の速度へと到達していた。
キュオオオオオオオオンッ!!!
風を引き裂く音が轟音となって鳴り響き、一筋の激しい光が青空に向けて斜めに立ち上っていく。
そして後からやってくる反動の衝撃波が海上を激しく叩き、水しぶきを数百メートルにも渡って凄まじく立ち上らせていた。
途端、二人の体を振動させるほどの凄まじい重圧が掛かる。
茶奈が想定してた超重圧……それが今、二人の体にとめどなく圧し掛かっているのだ。
だがそれでも二人の表情は変わらぬまま、空を見上げる。
障害を乗り越え、その先に進む事を求めているから。
彼等はたかがそんな事で止まりはしない。
二人の姿はもう見えはしない。
目的地へ向けて……ただ力を振り絞る。
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