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第二十一節「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」
~強者魅せて、緋色の女帝~
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乗員乗客達を引き連れ、勇達が来た道を戻っていく。
そんな中、インカムに飛び交う声……。
「そういえば、賢人ってどんな人達なんだ?」
「賢人とは、王を支える六人の将であり、カラクラ族にて古くから続く特殊な血族の末裔よ」
途中、かち合った魔者を張り倒し、二人が会話を交わしながら駆けていく。
「民を統べる王とは異なり、別の視点から里を支える賢人達……その力の方向性こそまちまちではあるが一部の者は武に長け、その実力は王すら凌駕する。 特に魁将メズリは武闘派……実力はカラクラ随一を争うと呼ばれる程の腕前よ」
「ロゴウより強いのか……」
「左様……賢人達は王に成る事を拒み、己の地位に拘らぬ。 それ故に好きに出来るという訳よ」
ジョゾウがそれを口に出した途端、ぶるりと体を震わす……それ程までに賢人とは実力を誇る者達なのだろう。
―――
僅かに時を遡り……勇達が主管制室で空島の事実を見ていた頃……。
茶奈達は研究員達と共に、辿り着いた部屋で調査を行っていた。
恐らく元々居住空間であったのだろう、その場所は様々な家財道具らしき物が乱雑に散らばっていた。
どうやらこの場所は使われておらず、埃が溜まっており……彼女達が歩く度に埃が舞い上がる。
広々とした空間ではあったが、かつてこの地に住んでいたであろう者達の痕跡を見つけると、研究員達が歓びの声を上げていた。
そんな中、茶奈と心輝は敵の居ないその空間で……敵がやってこないかを見張りつつ、彼等の行動を見守る。
「楽しそうですね」
「そりゃもうあれよ、未知の技術が目の前にあんだ……興奮するのも無理ないんだろうなぁ」
かくいう心輝も目の前に広がる『あちら側』の道具に興味持ち、しきりに周囲を眺めている。
そこにあるのは生活道具ばかりではあるが、珍妙な形を持った物も多く……それが彼の厨二病に鋭く突き刺さるのだ。
「なぁなぁ、1個くらい何か記念に持ち帰ったらダメか?」
「ダメですよ、何があるかわかりませんから」
がっくりと肩を落とし項垂れる心輝。
そんな彼の様子を「フフフ」と笑い声を上げて笑顔を向ける茶奈……彼女達はここに至るまでに戦闘は行っていなかった。
どうやら魔者達が居るスペースとは遠く離れていたのか、人が歩いた形跡すら見かけなかったのだ。
研究員達が同伴している為、それも幸運であろうが。
すると突然、何かを叩く様な音が聞こえ始め、二人が警戒する。
途端、茶奈達が入って来た道から二人の魔者が姿を現した。
「来やがった!!」
だが、ふとその手に持った物に気付いた茶奈が咄嗟に心輝の前に立ち塞がった。
ダダダダダッ!!
チュインチュインッ!!
それは銃器の発射音。
茶奈はそれが何であるかを一瞬で判断し、命力の盾を展開していた。
突然の出来事に研究員達が腰を落とし脅える姿を見せる中……空かさず心輝が飛び上がり、二人の魔者へ上空から襲い掛かった。
「うおらぁッ!!」
ドッゴォーーーン!!
爆炎が撒き上がり、部屋の上部を煤で僅かに黒く染める。
その一撃により、魔者二人は焼かれ吹き飛んでいた。
「あっぶねぇあっぶねぇ……茶奈ちゃん助かったぜ……」
「魔者が銃器を使う事も有り得ますからね」
以前茶奈が中国で戦った時も、銃撃による攻撃が驚異となった経緯がある。
それを見据えていたのだろう……茶奈はその対処方法を既に頭に叩き込んでいた為、咄嗟ではあったがすんなり体が動いてくれた様だ。
命力の力が自分の身体の動かし方もより正確にしてくれる事を証明した一瞬でもあった。
「でもよ、銃を持ってるっつう事はあれか? また中国の時みたいに誰かが横流しでもしたってのかよ?」
「いえ、それは違うと思われます……」
そう言ってやってきたのは研究員の一人……彼は魔者達が持っている銃を見るや首を横に振った。
「二人共持っている銃の規格が異なるメーカー製の銃を使用しています。 共に軍事用ですが……共通点が無い国同士の武器なので、おそらく使用していた武器を奪った物かと思われます。 その証拠にほら、手入れが行き届いてない様です」
魔者の傍に歩み寄ると、そっと屈み……魔者が手に持っていた銃を掴み取り、その様子を二人に見せつける。
当然、それが何であるか心輝すらも理解出来ず……ただ「ハハハ……」と笑う事しか出来なかった。
「随分詳しいんすね」
「えぇ、ミリオタなので……フフ」
誰も聞いていない情報ではあったが……少なくとも中国での様な事には成らないだろうと、茶奈がほっと胸をなでおろす。
「余興は終わったかぇ?」
途端、甲高い声が部屋に響き渡った。
「なんだっ!?」
突然の声に茶奈と心輝が警戒し魔剣を構える。
そんな彼等の前に……その声の主であろう人影が部屋のずっと先、茶奈達の対面側とも言える方にあった入口から姿を現した。
広場の光に当てられ、姿を現したのは緋色の翼を持ちしカラクラ族の者の姿。
その背後には先程の魔者同様、銃を携えた雑兵が二人付き添っていた。
「皆さん、私の後ろに隠れてください!!」
突然の敵の襲来に脅えていた研究員達も、その声を聞くと素早く彼女の背後へと回り込んだ。
「わらわの名は……魁将メズリ、元カラクラが賢人の一人……これ以上の紹介は要るまい?」
不敵な笑みを浮かべ、見下す様にその嘴を高々と上げる。
その姿たるや、王者が如し風貌。
「やべぇの来たぜコイツぁ……!!」
その者、命力の波動を高め二人を威圧しながら佇む。
耳から勇の声が聞こえて来るが……見せつけるかの様な力を前に、インカムに手を当てる事すら出来ない程に茶奈も心輝も警戒し、構えを解く事が出来ないでいた。
「ハハハ……貴公らの噂は常々聞いておるぞ。 わらわの暇潰しには持って来いの相手よ」
緋色の羽根に長身の身なり、ジョゾウと同じ様な姿を有し、あからさまな敵意を向けて来る。
その力は未知数であるが、当人の自信の表れから……二人が確信を以って彼女を見つめる。
『コイツは王並みの強さを誇っている』と。
そんな中、インカムに飛び交う声……。
「そういえば、賢人ってどんな人達なんだ?」
「賢人とは、王を支える六人の将であり、カラクラ族にて古くから続く特殊な血族の末裔よ」
途中、かち合った魔者を張り倒し、二人が会話を交わしながら駆けていく。
「民を統べる王とは異なり、別の視点から里を支える賢人達……その力の方向性こそまちまちではあるが一部の者は武に長け、その実力は王すら凌駕する。 特に魁将メズリは武闘派……実力はカラクラ随一を争うと呼ばれる程の腕前よ」
「ロゴウより強いのか……」
「左様……賢人達は王に成る事を拒み、己の地位に拘らぬ。 それ故に好きに出来るという訳よ」
ジョゾウがそれを口に出した途端、ぶるりと体を震わす……それ程までに賢人とは実力を誇る者達なのだろう。
―――
僅かに時を遡り……勇達が主管制室で空島の事実を見ていた頃……。
茶奈達は研究員達と共に、辿り着いた部屋で調査を行っていた。
恐らく元々居住空間であったのだろう、その場所は様々な家財道具らしき物が乱雑に散らばっていた。
どうやらこの場所は使われておらず、埃が溜まっており……彼女達が歩く度に埃が舞い上がる。
広々とした空間ではあったが、かつてこの地に住んでいたであろう者達の痕跡を見つけると、研究員達が歓びの声を上げていた。
そんな中、茶奈と心輝は敵の居ないその空間で……敵がやってこないかを見張りつつ、彼等の行動を見守る。
「楽しそうですね」
「そりゃもうあれよ、未知の技術が目の前にあんだ……興奮するのも無理ないんだろうなぁ」
かくいう心輝も目の前に広がる『あちら側』の道具に興味持ち、しきりに周囲を眺めている。
そこにあるのは生活道具ばかりではあるが、珍妙な形を持った物も多く……それが彼の厨二病に鋭く突き刺さるのだ。
「なぁなぁ、1個くらい何か記念に持ち帰ったらダメか?」
「ダメですよ、何があるかわかりませんから」
がっくりと肩を落とし項垂れる心輝。
そんな彼の様子を「フフフ」と笑い声を上げて笑顔を向ける茶奈……彼女達はここに至るまでに戦闘は行っていなかった。
どうやら魔者達が居るスペースとは遠く離れていたのか、人が歩いた形跡すら見かけなかったのだ。
研究員達が同伴している為、それも幸運であろうが。
すると突然、何かを叩く様な音が聞こえ始め、二人が警戒する。
途端、茶奈達が入って来た道から二人の魔者が姿を現した。
「来やがった!!」
だが、ふとその手に持った物に気付いた茶奈が咄嗟に心輝の前に立ち塞がった。
ダダダダダッ!!
チュインチュインッ!!
それは銃器の発射音。
茶奈はそれが何であるかを一瞬で判断し、命力の盾を展開していた。
突然の出来事に研究員達が腰を落とし脅える姿を見せる中……空かさず心輝が飛び上がり、二人の魔者へ上空から襲い掛かった。
「うおらぁッ!!」
ドッゴォーーーン!!
爆炎が撒き上がり、部屋の上部を煤で僅かに黒く染める。
その一撃により、魔者二人は焼かれ吹き飛んでいた。
「あっぶねぇあっぶねぇ……茶奈ちゃん助かったぜ……」
「魔者が銃器を使う事も有り得ますからね」
以前茶奈が中国で戦った時も、銃撃による攻撃が驚異となった経緯がある。
それを見据えていたのだろう……茶奈はその対処方法を既に頭に叩き込んでいた為、咄嗟ではあったがすんなり体が動いてくれた様だ。
命力の力が自分の身体の動かし方もより正確にしてくれる事を証明した一瞬でもあった。
「でもよ、銃を持ってるっつう事はあれか? また中国の時みたいに誰かが横流しでもしたってのかよ?」
「いえ、それは違うと思われます……」
そう言ってやってきたのは研究員の一人……彼は魔者達が持っている銃を見るや首を横に振った。
「二人共持っている銃の規格が異なるメーカー製の銃を使用しています。 共に軍事用ですが……共通点が無い国同士の武器なので、おそらく使用していた武器を奪った物かと思われます。 その証拠にほら、手入れが行き届いてない様です」
魔者の傍に歩み寄ると、そっと屈み……魔者が手に持っていた銃を掴み取り、その様子を二人に見せつける。
当然、それが何であるか心輝すらも理解出来ず……ただ「ハハハ……」と笑う事しか出来なかった。
「随分詳しいんすね」
「えぇ、ミリオタなので……フフ」
誰も聞いていない情報ではあったが……少なくとも中国での様な事には成らないだろうと、茶奈がほっと胸をなでおろす。
「余興は終わったかぇ?」
途端、甲高い声が部屋に響き渡った。
「なんだっ!?」
突然の声に茶奈と心輝が警戒し魔剣を構える。
そんな彼等の前に……その声の主であろう人影が部屋のずっと先、茶奈達の対面側とも言える方にあった入口から姿を現した。
広場の光に当てられ、姿を現したのは緋色の翼を持ちしカラクラ族の者の姿。
その背後には先程の魔者同様、銃を携えた雑兵が二人付き添っていた。
「皆さん、私の後ろに隠れてください!!」
突然の敵の襲来に脅えていた研究員達も、その声を聞くと素早く彼女の背後へと回り込んだ。
「わらわの名は……魁将メズリ、元カラクラが賢人の一人……これ以上の紹介は要るまい?」
不敵な笑みを浮かべ、見下す様にその嘴を高々と上げる。
その姿たるや、王者が如し風貌。
「やべぇの来たぜコイツぁ……!!」
その者、命力の波動を高め二人を威圧しながら佇む。
耳から勇の声が聞こえて来るが……見せつけるかの様な力を前に、インカムに手を当てる事すら出来ない程に茶奈も心輝も警戒し、構えを解く事が出来ないでいた。
「ハハハ……貴公らの噂は常々聞いておるぞ。 わらわの暇潰しには持って来いの相手よ」
緋色の羽根に長身の身なり、ジョゾウと同じ様な姿を有し、あからさまな敵意を向けて来る。
その力は未知数であるが、当人の自信の表れから……二人が確信を以って彼女を見つめる。
『コイツは王並みの強さを誇っている』と。
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