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第十九節「Uの世界 師と死重ね 裏返る力」

~u n se a i~

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 すると突然……その声に反応したかの様にどこからともなく声が響き渡った。



<これは、真の現実だ>



「何ッ!?」

 周囲を見渡すが、どこにも光が無ければ人影すら見つけられようも無い。



<何を脅える? 何を苦しむ? お前はもう居ないのに?>



「何だと……!? 俺は居る……俺はここに居るぞッ!!」

 憤りを見せ声を張り上げるが、周囲全体から響き渡る声に焦りを隠せない。



<それは本当にお前か? お前は自分が誰だかわかるのか?>



「当たり前だ!! 俺は……俺は……!!」

 そう言い掛けた時、不意に声が止まる。
 喉まで出てきた声が出てこない感覚……脳裏によぎるはずの自分の名前。



 よぎるはずの名前が……出てこない。



「俺は……誰だ……思い出せない……俺は……」



 地面とは思えない床にへたり込み、頭が付く程に低く落ち込ませる。
 肩が、体が震え、自身が何者であるか、それすらもわからない今の状態に恐怖すら感じていた。



<わからぬか、わからぬであろう? 何故ならお前は存在しない存在だからだ>



「存在しない……存在……!?」



<そうだ……お前が見てきたモノこそが真実……>



「あれが……真実だって……!?」



<そうだ……そしてお前の歩んできた道こそは虚構……>



 その声が耳に入った途端、その頭が持ち上がり……冷や汗を流すも震えた唇を抑え、その目を鋭く正面に向ける。

「今までが虚構だと……!? 今までのが……今までの出来事が……!? なら、何なんだ、この胸にある悲しみは!? 苦しみはッ!? それが嘘なんて言わせない!! 俺は俺が何であろうと、それは嘘じゃないッ!!」



<ならば再び問おう……その悲しみを生んだ者は誰ぞ?>



「それはッ……それは……ウゥ……!?」



<思い出せまい? それがお前の真実、そして虚構の証明>



「違う、これは貴様がッ……!!」



<……だが、思い出せない事を悔いる必要は無いぞ>



「何……!?」



<お前は元の場へ還る……それだけなのだから……>



「何を言っている……!! お前に何が出来るっていうんだ!!」



<我は全知全能、ゆえに神なり……>



「神……だと!?」



<左様……我は報われぬ魂に虚構を与え報いを施したに過ぎぬ>



「……俺は……俺は、死んだのか……?」



<……そうだ……>



「何故……どこで死んだ……どうやって!?」



<知る必要は無い>



「いつだ、いつ死んだ!? 皆は!?」





<全て虚構なり>





「嘘だ……そんなの嘘だァーーーーーー!!!」





 声が何重にも響き渡り、無音に声が消えていく。
 だが返る事も無く、無音が続き……それが彼の心を黒く潰していく。

「アァ……ウゥ……ッ……嘘だ、そんなの……皆は……嘘なのか……誰も……」



<全て虚構なり>



 真っ黒に塗り潰されていく心から光が失い掛けた時……その頭は再び地に落ち、肩はがくりと垂れ下がる。
 その体から力が徐々に抜けていくのがわかる程に。

「ア……アァ……俺は……俺はァ……」



<さぁ還れ、そして全て一つに成るのだ>



「俺……は……」



 瞳から光が失われていく感覚……視界だけでなく意識すらも黒くなっていく……。





 全てが失われ、無が訪れた。


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