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第十七節「厳しき現実 触れ合える心 本心大爆発」
~ネッキョウ ソシテ ニキビ~
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一方、瀬玲とナターシャはと言えば―――
「アヒャヒャヒャ!!」
瀬玲は勇以上にブレイクしていた。
勇同様、逆ハーレムと化したその場。
イケメン達に囲まれた瀬玲は、上半身裸となり引き締まったボディを晒した彼等のキレッキレの踊りに酔いしれていた。
その隣には鼻血を垂らしながら硬直するナターシャの姿も。
彼等の生演奏の中で行われるイケメンアイドル顔負けのダンス、そして絶妙なアングルからの視線のアプローチに瀬玲はもはや夢中となっていた。
そしてその左右にも男達が寄り添い彼女達を囲む。
時折彼等に視線をやるとすかさず見つめ返され、彼女の独占欲を満たしていく。
先程勇を冷たい視線で釘付けにした彼女とは思えない壊れっぷり。
面食いであり、アイドルオタクでもある彼女がそんな状況に抗えるはずも無い。
どこからか取り出したサイリウムを両手に握り締め、彼等の踊りに合わせてその光が筋を作り左右上下へと舞う。
その様子はもはや彼女の信奉するアイドルグループ「嵐丸」ライブでの動きに匹敵……いや最早凌駕する程。
そして部屋を包む独特の甘い香りが彼女を性的にも興奮させその動きを更に加速させていた。
命力を迸らせながら体全体で振り回す彼女の姿はもはや全身サイリウム。
大興奮の演技が遂にフィナーレを飾る。
彼女の興奮は最高潮……もはやどっちがダンスを踊っていたのかわからない程。
限界にまで動ききった彼女の息遣いは荒々しく、息切れから漏れる呼吸が「ヒャーッ、ヒャーッ」と擦れ音を立てていた。
「サ、サイコォー……魔剣使いやってて……良かった……マジで良かった……!!」
魔剣使いの本懐とは全く異なる歓びに打ち震える瀬玲。
疲れた体を「ポスン」と音を立ててクッションへと預けると……口を上に上げてしきりに酸素を取り込む。
こんな状況がずっと続いてくれたらどれだけ幸せか……そう思いながら彼女は天井を見上げ、火照った体を休める様にクッションに身をうずめていった。
そんな彼女に添い寝する様にイケメン達が囲む。
天国……形容するならば、彼女にとってはまさにそれだった。
―――もうずっとここに住もうかな……―――
そんな想いが巡る。
……そう想った矢先―――
彼女の目に一つの違和感が映った。
瀬玲が自分の横に寝そべるイケメンの顔を注視する。
その顔をよく見ると―――
―――こ、これは……―――
イケメンの顔に……小さな一粒の……跡。
「ニキビやんけぇーーーーーーーー!!!!」
瀬玲が突如怒り狂い、跳び起きた。
彼女、相沢瀬玲はクール&ビューティをモットーとする女子である。
そしてそれは自分だけでなく異性に対しても同様に求めるのが彼女の心情。
故に、彼女が求めるのは格好よく美しい者―――
だからこそ彼女は「ニキビ」がとてつもなく許せなかったのだ。
嫌悪する程に。
それがもし、友人や仲間であれば笑って許せただろう。
だが愛するべき対象としては論外なのだ。
愛する者は完璧なまでに格好よく美しくなければならない……それが彼女の求める愛。
そう叫び散らした時、瀬玲は我を取り戻した。
―――おかしい、この状況まるで私達を懐柔するかのように……!!―――
冷静な判断が、その状況を客観的に分析し……彼女は突如ナターシャの頬を叩いた。
バシィ!!
「いたっ!! な、何するのセリ姉ちゃん!?」
そう言い放つと同時に飛び散る鼻血。
ナターシャもどうやら拭くのを忘れる程に魅入っていた様だ。
だが……そんな状況において冷静な面持ちの瀬玲からの行動を前にナターシャもまた状況がおかしい事にゆっくりと気が付き始めていた。
それを感じとったのだろう、そっと瀬玲が頷く。
「ナターシャ、行くわよ」
「あ、うん!!」
お互いが相槌を打つと、戸惑うイケメン達を他所に二人が部屋の出口へと身を乗り出した。
「すまないが、ここから出す訳にはいかない」
そんな彼女達を阻む様に……先程までとは全く表情の異なるイケメン達が立ち塞がる。
だがその瞬間、男の一人の顔が醜く歪んだ。
メリメリィ!!
顔の筋肉の切れる音と骨が歪む音が混ざって鳴り響く。
瀬玲がその男へと心輝仕込みの鉄拳を食らわしていたのだ。
「ごぱァーーーーー!!」
命力の籠った一撃は男を部屋の隅へと弾き飛ばし、その体を壁へと激突させた。
「ニキビ共……私の行く道を塞ぐつもりかしら……?」
彼等全員にニキビがある訳ではないが、そんな不条理な言い方をする瀬玲の顔がこの世の者とは思えない程の闇を含んだ表情を作り……それを前に誰一人として彼女の質問を肯定する者など居はしなかった。
イケメン達は黙って首を横に振るとその体を除け……彼女達の行く道を作る。
「いッてらっしゃいませェ!!」
―――勇……貴方は平気なんでしょうね……!?―――
もてなし部屋を飛び出した二人が屋内を駆け巡る。
だが、拭う事の出来ない一抹の不安が瀬玲の脳裏に過っていた。
「アヒャヒャヒャ!!」
瀬玲は勇以上にブレイクしていた。
勇同様、逆ハーレムと化したその場。
イケメン達に囲まれた瀬玲は、上半身裸となり引き締まったボディを晒した彼等のキレッキレの踊りに酔いしれていた。
その隣には鼻血を垂らしながら硬直するナターシャの姿も。
彼等の生演奏の中で行われるイケメンアイドル顔負けのダンス、そして絶妙なアングルからの視線のアプローチに瀬玲はもはや夢中となっていた。
そしてその左右にも男達が寄り添い彼女達を囲む。
時折彼等に視線をやるとすかさず見つめ返され、彼女の独占欲を満たしていく。
先程勇を冷たい視線で釘付けにした彼女とは思えない壊れっぷり。
面食いであり、アイドルオタクでもある彼女がそんな状況に抗えるはずも無い。
どこからか取り出したサイリウムを両手に握り締め、彼等の踊りに合わせてその光が筋を作り左右上下へと舞う。
その様子はもはや彼女の信奉するアイドルグループ「嵐丸」ライブでの動きに匹敵……いや最早凌駕する程。
そして部屋を包む独特の甘い香りが彼女を性的にも興奮させその動きを更に加速させていた。
命力を迸らせながら体全体で振り回す彼女の姿はもはや全身サイリウム。
大興奮の演技が遂にフィナーレを飾る。
彼女の興奮は最高潮……もはやどっちがダンスを踊っていたのかわからない程。
限界にまで動ききった彼女の息遣いは荒々しく、息切れから漏れる呼吸が「ヒャーッ、ヒャーッ」と擦れ音を立てていた。
「サ、サイコォー……魔剣使いやってて……良かった……マジで良かった……!!」
魔剣使いの本懐とは全く異なる歓びに打ち震える瀬玲。
疲れた体を「ポスン」と音を立ててクッションへと預けると……口を上に上げてしきりに酸素を取り込む。
こんな状況がずっと続いてくれたらどれだけ幸せか……そう思いながら彼女は天井を見上げ、火照った体を休める様にクッションに身をうずめていった。
そんな彼女に添い寝する様にイケメン達が囲む。
天国……形容するならば、彼女にとってはまさにそれだった。
―――もうずっとここに住もうかな……―――
そんな想いが巡る。
……そう想った矢先―――
彼女の目に一つの違和感が映った。
瀬玲が自分の横に寝そべるイケメンの顔を注視する。
その顔をよく見ると―――
―――こ、これは……―――
イケメンの顔に……小さな一粒の……跡。
「ニキビやんけぇーーーーーーーー!!!!」
瀬玲が突如怒り狂い、跳び起きた。
彼女、相沢瀬玲はクール&ビューティをモットーとする女子である。
そしてそれは自分だけでなく異性に対しても同様に求めるのが彼女の心情。
故に、彼女が求めるのは格好よく美しい者―――
だからこそ彼女は「ニキビ」がとてつもなく許せなかったのだ。
嫌悪する程に。
それがもし、友人や仲間であれば笑って許せただろう。
だが愛するべき対象としては論外なのだ。
愛する者は完璧なまでに格好よく美しくなければならない……それが彼女の求める愛。
そう叫び散らした時、瀬玲は我を取り戻した。
―――おかしい、この状況まるで私達を懐柔するかのように……!!―――
冷静な判断が、その状況を客観的に分析し……彼女は突如ナターシャの頬を叩いた。
バシィ!!
「いたっ!! な、何するのセリ姉ちゃん!?」
そう言い放つと同時に飛び散る鼻血。
ナターシャもどうやら拭くのを忘れる程に魅入っていた様だ。
だが……そんな状況において冷静な面持ちの瀬玲からの行動を前にナターシャもまた状況がおかしい事にゆっくりと気が付き始めていた。
それを感じとったのだろう、そっと瀬玲が頷く。
「ナターシャ、行くわよ」
「あ、うん!!」
お互いが相槌を打つと、戸惑うイケメン達を他所に二人が部屋の出口へと身を乗り出した。
「すまないが、ここから出す訳にはいかない」
そんな彼女達を阻む様に……先程までとは全く表情の異なるイケメン達が立ち塞がる。
だがその瞬間、男の一人の顔が醜く歪んだ。
メリメリィ!!
顔の筋肉の切れる音と骨が歪む音が混ざって鳴り響く。
瀬玲がその男へと心輝仕込みの鉄拳を食らわしていたのだ。
「ごぱァーーーーー!!」
命力の籠った一撃は男を部屋の隅へと弾き飛ばし、その体を壁へと激突させた。
「ニキビ共……私の行く道を塞ぐつもりかしら……?」
彼等全員にニキビがある訳ではないが、そんな不条理な言い方をする瀬玲の顔がこの世の者とは思えない程の闇を含んだ表情を作り……それを前に誰一人として彼女の質問を肯定する者など居はしなかった。
イケメン達は黙って首を横に振るとその体を除け……彼女達の行く道を作る。
「いッてらっしゃいませェ!!」
―――勇……貴方は平気なんでしょうね……!?―――
もてなし部屋を飛び出した二人が屋内を駆け巡る。
だが、拭う事の出来ない一抹の不安が瀬玲の脳裏に過っていた。
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