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第十四節「新たな道 時を越え 心を越えて」

~卒業~

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 時は巡り巡る。
 その止まる事の無い流れはあらゆる事象を迎え、多くの人の想いを彼方へ消し去っていく。

 少年達の想いもまた、今は遠く遥か彼方へ……。



 南半球、オーストラリア南西部……そこに勇達と魔者の戦う姿が在った。
 王と思われる素早く駆け巡る一人の魔者を相手に、彼等が立ち回り戦う。

「勇ッ!! そっち行ったぞぉ!!」
「ダメッ、私には対処できない!! 勇!!」
「ごめーん、勇君!!」
「勇さん、今です!!」

 仲間達の協力の下、遂に王は追い詰められ……勇の持つ翠星剣が激しい光を纏って一閃した。

「うおおーーーーーー!!」

 光が弾け、周囲を包む。
 魔者が光を受けて体を真っ二つに切り裂かれていく。
 そして彼等の周囲を無数の光が包み、多くの魔者を空へと還していった。



 勇達が魔剣を手にしてから1年と9ヶ月……月は既に3月、少年達の面持ちは既に大人とも足る様相を浮かべていた。

 幾多の激戦を超え、彼等は人としても、戦士としても大きな成長を果たしていたのだ。

 黄昏れを見つめ、肌を撫でる空気を一身に受け……彼等は行く。
 帰るべき場所へ帰る為に。





 所変わり日本……戦いを終え、彼等は帰国した。

 そして来たるべき数日後。
 白代高校校門……そこには第39期卒業式と書かれた看板が立てかけられていた。

 体育館に集まる全校生徒。
 静かな雰囲気の中、並べられた椅子に全員が敷き詰める様に座る。

 壇上前に区分けられて並び座るのは、制服の胸に造花のリボンを備えた3年生達。
 勇と心輝と瀬玲……彼等3年生組もまたその中に含まれ、静かに時を待ちながら座っていた。

 3年生を見守る様に背後に並び座る後輩達の中には茶奈やあずーや愛希達が……更にその後ろに聳える中2階には卒業生達を見守る両親達や福留の姿もあった。

 各々が呼ばれ、卒業証書を受け取る為に壇上に上がっていく。
 勇達もまた順に名前を呼ばれると一人一人がその壇上へ歩き、校長直々に手渡される証書を受け取り一礼し……そして去っていった。



 こうして勇達3年組は無事、高校卒業を果たした。



 その一年はあっという間であった。

 獅堂との戦いを経て、勇達は強固な信念と目的を持って戦いに挑んだ。
 その数こそ以前よりも多くは無かったが……当初の様に確固たる意志を持たずして戦っていた頃よりはずっと気が楽だったのかもしれない。

 この一年は平たく言えばその信念が功を奏し、大きな犠牲を出す事無く平和的・・・に事は済んでいた。

 もう二度と、あんな思いはしたくない……そんな信念が、彼等の迷いを払ったのだろう。
 
 だが、彼等の戦いは終わらない。
 学校を卒業し、戦う事が主目的となった時……戦いは更に激しさを増すだろう。

 だから止まらない。
 止まれない。
 止まる訳にはいかない。

 彼等が目的を持ち続ける限り……彼等は止まる気など微塵も無いのだから。



 卒業式後、勇達が彼の家の前に集まり集合写真を撮る姿があった。
 福留の用意した高性能のカメラに映るのは勇達5人とその両親、そして福留や莉那の姿も。

 アットホームな雰囲気を醸し出すその写真は、彼等にとっての一つの節目ともなる記念の一枚としていつまでも残る事になるだろう。



 戦いの中で意義を見失わない為に……。

 戦士達の心の拠り所は……こうした平穏にこそ介在するのだから。


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