436 / 1,197
第十四節「新たな道 時を越え 心を越えて」
~カプロ君は欲望に勝てない~
しおりを挟む
無事(?)茶奈とあずーがアルライの里へと辿り着き、目的地であるカプロの工房へと足を運ぶ。
二人が工房へと辿り着くと……扉の無い入口からひょっこりと顔を覗かせた。
そこで二人の視界に映ったのは、工房内の椅子に座って本を読むカプロの姿であった。
「カプロさん、こんにちわ~」
「うぴっ!? ちゃ、茶奈さん!?」
突然の茶奈達の来訪に驚き、カプロが咄嗟に本を背中へ隠す。
「ちょっとお願いがあって……今大丈夫ですか?」
「い、今ッスか……ちょ、ちょっと待ってほしいッス……ちょっとだけッスから!!」
カプロは背を向けない様に横ずさりで彼女達の佇む入口から出ようとしていた。
彼の顔に浮かぶのは、わざとらしい程に口角の釣り上がった笑顔。
そんな怪しさ大爆発の行動に……茶奈が思わず首を傾げる。
疑う事を知らない彼女はキョトンとしながらも静かに彼の動きを追う様に視線を動かしていた。
だがその隣に居るあずーはと言えば……ジト目でカプロの動きをじっくりと観察していた。
彼女は気付いてしまったのだ……その行動はまさに……
「もしかして……エロ本かぁ!?」
「んなっ!? ちちちがうッスよ!!」
更に怪しい挙動と反応を見せるカプロ……あずーのセンサーがビンビンだ。
「うっひっひ……見せろぉい!!」
「ちょ、や、止めるッスよぉおおおお!?」
突然あずーがカプロに抱き着く様に飛び掛かると、カプロが必死に片手で彼女の顔を押して抵抗する。
しかしその抵抗も空しく……彼の手から無情にも本が取り上げられ、彼女の頭上高くにその本が掲げられた。
「ひゃあああああああ!! やめてぇーーー!! そんな事されたらボクもう生きていけないッスよおぉ!!」
あずーの掲げた本が天井のシアリングライトの光を受けて怪しく光る。
そこには『世界哺乳類動物傑作選』と書かれたタイトルがでかでかと書かれていた。
「あー……うん」
「あ、私も見たい……」
茶奈達の微笑ましい反応を他所に……カプロはその両手を地に突き、項垂れる様に頭を垂れていた。
彼等アルライ族にとっては人間のグラビア写真集なんかよりも動物の写真の方がそそるらしく。
まぁそれも当然であろう……彼等にとって衣服を着ない動物の写真は裸体写真となんら変わらないのだから。
「オオオオオォォ……オオッ……オオゥウウ……!!」
絶望の余り、カプロが涙と鼻水とよだれを垂らしながら泣き叫ぶ。
異性に痴情を見られたらそれはもう当然人生の終わりに相当すると思っても過言ではないだろう……そこは人間と何ら変わらない訳で。
「あ、カプロ君、泣いてるところ悪いんだけどさ、魔剣作ってよ」
無情にもそんなカプロに対してあずーの暴挙が炸裂する。
その瞬間、カプロの脳裏が稲妻に撃たれた様に激しく暴れ出した。
「ぜ、絶対に作らねッス……グスッ……あずさんにだけには作る魔剣は……ウゥ……絶ぇ対ッに無えッス……ッ!!」
カプロが感情を剥き出しにしてあずーに抵抗する。
頭は項垂れたままだが……「ガチガチ」と歯を小刻みに鳴らし、目から怪しい光が漏れ出す。
「シュゴオオオ……」という効果音が付くに相応しい様相……そう、これは怨念の光。
あずーに対してのみ働く……怨みと憎しみの心がカプロの心を真っ黒に塗り潰したのだ。
「あ、そーなんだ……仕方ないなぁ……この本より凄いの持ってるんだけど……あー残念だなぁ……」
その瞬間、カプロの尻尾が「ピンポーン」という音と共に上に持ち上がる。
「あ、あずさん……その本より凄いって……マジッスか……?」
ドロドロになった顔を持ち上げ、本を高々と持ち上げたあずーの顔を見上げる。
今の彼の視界に映るのは、まるで自由の女神の様な雄々しいあずーの姿。
天井に輝くシアリングライトが後光の様に感じさせ、彼の耳にはオルガンによる重低音の演奏の幻聴が聞こえ始めていた。
ちなみにそれは幻聴ではなく茶奈が横でスマートフォンを弄っていた際に鳴った音楽である。
「んん~……どうするカップロく~ん?」
「是非やらせて欲しいッス」
即答であった。
一瞬で彼の顔はキリっと整い、その聡明となった顔があずーの顔と合わせ……二人の無言の会話が成り立っている様にすら見えた。
彼のドス黒く染まった心が桃色によって塗り潰された瞬間であった。
「……ぶしっ!……ここ埃っぽいなぁ……」
その二人の妙な雰囲気を他所に、茶奈が彼等の後ろでくしゃみを立てる。
そっと足元をごしごしと足裏で擦ると……途端土煙が舞い、掃除が行き届いてない事を物語らせていた。
「……魔剣が出来るまで掃除してあげようっと」
その後、一日掛けてあずーのもう一本の魔剣が完成した。
コピー品であるとはいえ、その出来栄えはカプロが今まで作った物の中で何よりも完成度の高い魔剣であった事は言うまでもないだろう。
二人が工房へと辿り着くと……扉の無い入口からひょっこりと顔を覗かせた。
そこで二人の視界に映ったのは、工房内の椅子に座って本を読むカプロの姿であった。
「カプロさん、こんにちわ~」
「うぴっ!? ちゃ、茶奈さん!?」
突然の茶奈達の来訪に驚き、カプロが咄嗟に本を背中へ隠す。
「ちょっとお願いがあって……今大丈夫ですか?」
「い、今ッスか……ちょ、ちょっと待ってほしいッス……ちょっとだけッスから!!」
カプロは背を向けない様に横ずさりで彼女達の佇む入口から出ようとしていた。
彼の顔に浮かぶのは、わざとらしい程に口角の釣り上がった笑顔。
そんな怪しさ大爆発の行動に……茶奈が思わず首を傾げる。
疑う事を知らない彼女はキョトンとしながらも静かに彼の動きを追う様に視線を動かしていた。
だがその隣に居るあずーはと言えば……ジト目でカプロの動きをじっくりと観察していた。
彼女は気付いてしまったのだ……その行動はまさに……
「もしかして……エロ本かぁ!?」
「んなっ!? ちちちがうッスよ!!」
更に怪しい挙動と反応を見せるカプロ……あずーのセンサーがビンビンだ。
「うっひっひ……見せろぉい!!」
「ちょ、や、止めるッスよぉおおおお!?」
突然あずーがカプロに抱き着く様に飛び掛かると、カプロが必死に片手で彼女の顔を押して抵抗する。
しかしその抵抗も空しく……彼の手から無情にも本が取り上げられ、彼女の頭上高くにその本が掲げられた。
「ひゃあああああああ!! やめてぇーーー!! そんな事されたらボクもう生きていけないッスよおぉ!!」
あずーの掲げた本が天井のシアリングライトの光を受けて怪しく光る。
そこには『世界哺乳類動物傑作選』と書かれたタイトルがでかでかと書かれていた。
「あー……うん」
「あ、私も見たい……」
茶奈達の微笑ましい反応を他所に……カプロはその両手を地に突き、項垂れる様に頭を垂れていた。
彼等アルライ族にとっては人間のグラビア写真集なんかよりも動物の写真の方がそそるらしく。
まぁそれも当然であろう……彼等にとって衣服を着ない動物の写真は裸体写真となんら変わらないのだから。
「オオオオオォォ……オオッ……オオゥウウ……!!」
絶望の余り、カプロが涙と鼻水とよだれを垂らしながら泣き叫ぶ。
異性に痴情を見られたらそれはもう当然人生の終わりに相当すると思っても過言ではないだろう……そこは人間と何ら変わらない訳で。
「あ、カプロ君、泣いてるところ悪いんだけどさ、魔剣作ってよ」
無情にもそんなカプロに対してあずーの暴挙が炸裂する。
その瞬間、カプロの脳裏が稲妻に撃たれた様に激しく暴れ出した。
「ぜ、絶対に作らねッス……グスッ……あずさんにだけには作る魔剣は……ウゥ……絶ぇ対ッに無えッス……ッ!!」
カプロが感情を剥き出しにしてあずーに抵抗する。
頭は項垂れたままだが……「ガチガチ」と歯を小刻みに鳴らし、目から怪しい光が漏れ出す。
「シュゴオオオ……」という効果音が付くに相応しい様相……そう、これは怨念の光。
あずーに対してのみ働く……怨みと憎しみの心がカプロの心を真っ黒に塗り潰したのだ。
「あ、そーなんだ……仕方ないなぁ……この本より凄いの持ってるんだけど……あー残念だなぁ……」
その瞬間、カプロの尻尾が「ピンポーン」という音と共に上に持ち上がる。
「あ、あずさん……その本より凄いって……マジッスか……?」
ドロドロになった顔を持ち上げ、本を高々と持ち上げたあずーの顔を見上げる。
今の彼の視界に映るのは、まるで自由の女神の様な雄々しいあずーの姿。
天井に輝くシアリングライトが後光の様に感じさせ、彼の耳にはオルガンによる重低音の演奏の幻聴が聞こえ始めていた。
ちなみにそれは幻聴ではなく茶奈が横でスマートフォンを弄っていた際に鳴った音楽である。
「んん~……どうするカップロく~ん?」
「是非やらせて欲しいッス」
即答であった。
一瞬で彼の顔はキリっと整い、その聡明となった顔があずーの顔と合わせ……二人の無言の会話が成り立っている様にすら見えた。
彼のドス黒く染まった心が桃色によって塗り潰された瞬間であった。
「……ぶしっ!……ここ埃っぽいなぁ……」
その二人の妙な雰囲気を他所に、茶奈が彼等の後ろでくしゃみを立てる。
そっと足元をごしごしと足裏で擦ると……途端土煙が舞い、掃除が行き届いてない事を物語らせていた。
「……魔剣が出来るまで掃除してあげようっと」
その後、一日掛けてあずーのもう一本の魔剣が完成した。
コピー品であるとはいえ、その出来栄えはカプロが今まで作った物の中で何よりも完成度の高い魔剣であった事は言うまでもないだろう。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。
【完結】婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
Mimi
ファンタジー
私エヴァンジェリンには、幼い頃に決められた婚約者がいる。
男女間の愛はなかったけれど、幼馴染みとしての情はあったのに。
卒業パーティーの2日前。
私を呼び出した婚約者の隣には
彼の『真実の愛のお相手』がいて、
私は彼からパートナーにはならない、と宣言された。
彼は私にサプライズをあげる、なんて言うけれど、それはきっと私を悪役令嬢にした婚約破棄ね。
わかりました!
いつまでも夢を見たい貴方に、昨今流行りのざまぁを
かまして見せましょう!
そして……その結果。
何故、私が事故物件に認定されてしまうの!
※本人の恋愛的心情があまり無いので、恋愛ではなくファンタジーカテにしております。
チートな能力などは出現しません。
他サイトにて公開中
どうぞよろしくお願い致します!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる