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第十三節「想い遠く 心の信 彼方へ放て」
~自分がしてやれた事~
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フェノーダラが消えた日の夜7時頃……。
勇達を乗せた福留の車は東京方面の高速道へと乗って南下していた。
週末の高速道の上りは車の流れはまちまち……それに対し下りの車線は勇達が原因であろう渋滞が続いていた。
静かな車内は会話も無く、声の一つも上がらない。
そんな中、静寂を解すかの様にそっと福留が声を上げる。
「勇君……落ち着いた様ですね……」
「……はい……」
勇の目には包帯が巻かれ、応急処置が施されていた。
しかしその声は掠れ……必死の叫びによって喉が潰れてしまったのだろう。
「フェノーダラの皆さんの事は非常に残念です……これは国家的な損失と言っても過言では無いでしょう……」
「……はい……」
「……不幸中の幸いか……剣聖さんとレンネィさんは今、本部に来ていまして……」
「……そうですか……」
目の前でエウリィの死を目の当たりにしたという事実。
そんな勇の気持ちを汲んだ福留は自分から話を続ける事は出来なかった。
だがその間を縫う様に勇の父親が口を挟む。
「……勇、お前はこれからどうしたい……?」
勇は父親の問いに対し、すぐに答える事が出来なかった。
彼の心にはずっと……彼女の最後の姿が何度も何度もフラッシュバックしていたから。
目が見えず視界が真っ黒に塗り潰される。
その真っ黒すら塗り潰すかの様に、脳裏に焼き付いた意識が彼の意思に関わらずその残酷な映像を彼に見せ続けていた。
何度も、何度も……それを止める事すら叶わず。
「……たい……」
「勇……」
「復讐……したい……エウリィの……仇をっ……!!」
感情が籠り悲しみが声に霞む。
鼻をすする音と、昂る感情から荒くなる呼吸が、勇の感情を露わにする。
「……でもっ……でもっ……ダメなんだ……そんな事で戦ったら……エウリィは笑わない……」
「……」
「エウリィはッ……優しくて……復讐なんてしてくれなんて絶対に言わないッ……!!」
悲しみの感情が勇の心を次第に支配し、声が彼の感情を表し始めていく。
「俺はッ!! 彼女が本当に望む事をしてやれなかったッ……!! あんなに……あんなに彼女は……自分の想いを口にしていたのにッ!!」
その声が高まり、叫びにも近い声が車内に響く。
彼女の思い出が詰まったスマートフォンを握り締め……無念を叫びに換えて。
「勇君ッ!!」
すると突然、福留が大きな声を上げた。
その声が上がった途端、勇の小刻みに震える口が止まる。
それは勇が今までに聞いた事の無い福留の怒号。
そして再び穏やかな声が車内に聞こえてきた。
「……勇君、それは違います。 エウリィさんはね……君と話す度に、我々との話の後にその事をとても嬉しそうに話していたんですよ」
「え……?」
「『勇様と共に遊びに行く事が出来てとても幸せです』、『勇様へ付いていけた事が私の誇りです』などとね……」
いずれもが、その話を聞くだけで脳裏に思い出を浮かばせられる……そんな言葉だらけだった。
「君はいずれも大した思い出では無かったのかもしれません……ですが彼女にとってはそれが全てなんです……全てが勇君との思い出です」
「福留さん……そんな事は無い……俺にとってもそれが全ての彼女との……思い出なんです……」
「……そうですか……なら、復讐なんて辞めておきましょう……」
「……」
「愚行を許さない正しき力を振るう者としての行いをしましょう……それが……きっと彼女が望む心の在り方です……例えそれが同じ行為であっても」
「人の心の色を変えない為に……」
再び静寂が包む車内。
勇と彼の父親を乗せた車は静かに高速道を走り去っていった……。
その間にもずっと……彼の心には悲しく苦しい光景が幾度と無く流れ続け、その心を押し潰していく。
だが、その心を彼女の残した想いと願いが支えとなって押し上げた。
もう遅いかもしれない
けれど彼女の想いに応えたいから。
勇は望む……彼女が望むであろう心の在り方を。
復讐では無く、秩序を守る為に……。
最後に見た、澄みきった青空の様な瞳に誓い……その力を奮う事を決意したのだった。
勇達を乗せた福留の車は東京方面の高速道へと乗って南下していた。
週末の高速道の上りは車の流れはまちまち……それに対し下りの車線は勇達が原因であろう渋滞が続いていた。
静かな車内は会話も無く、声の一つも上がらない。
そんな中、静寂を解すかの様にそっと福留が声を上げる。
「勇君……落ち着いた様ですね……」
「……はい……」
勇の目には包帯が巻かれ、応急処置が施されていた。
しかしその声は掠れ……必死の叫びによって喉が潰れてしまったのだろう。
「フェノーダラの皆さんの事は非常に残念です……これは国家的な損失と言っても過言では無いでしょう……」
「……はい……」
「……不幸中の幸いか……剣聖さんとレンネィさんは今、本部に来ていまして……」
「……そうですか……」
目の前でエウリィの死を目の当たりにしたという事実。
そんな勇の気持ちを汲んだ福留は自分から話を続ける事は出来なかった。
だがその間を縫う様に勇の父親が口を挟む。
「……勇、お前はこれからどうしたい……?」
勇は父親の問いに対し、すぐに答える事が出来なかった。
彼の心にはずっと……彼女の最後の姿が何度も何度もフラッシュバックしていたから。
目が見えず視界が真っ黒に塗り潰される。
その真っ黒すら塗り潰すかの様に、脳裏に焼き付いた意識が彼の意思に関わらずその残酷な映像を彼に見せ続けていた。
何度も、何度も……それを止める事すら叶わず。
「……たい……」
「勇……」
「復讐……したい……エウリィの……仇をっ……!!」
感情が籠り悲しみが声に霞む。
鼻をすする音と、昂る感情から荒くなる呼吸が、勇の感情を露わにする。
「……でもっ……でもっ……ダメなんだ……そんな事で戦ったら……エウリィは笑わない……」
「……」
「エウリィはッ……優しくて……復讐なんてしてくれなんて絶対に言わないッ……!!」
悲しみの感情が勇の心を次第に支配し、声が彼の感情を表し始めていく。
「俺はッ!! 彼女が本当に望む事をしてやれなかったッ……!! あんなに……あんなに彼女は……自分の想いを口にしていたのにッ!!」
その声が高まり、叫びにも近い声が車内に響く。
彼女の思い出が詰まったスマートフォンを握り締め……無念を叫びに換えて。
「勇君ッ!!」
すると突然、福留が大きな声を上げた。
その声が上がった途端、勇の小刻みに震える口が止まる。
それは勇が今までに聞いた事の無い福留の怒号。
そして再び穏やかな声が車内に聞こえてきた。
「……勇君、それは違います。 エウリィさんはね……君と話す度に、我々との話の後にその事をとても嬉しそうに話していたんですよ」
「え……?」
「『勇様と共に遊びに行く事が出来てとても幸せです』、『勇様へ付いていけた事が私の誇りです』などとね……」
いずれもが、その話を聞くだけで脳裏に思い出を浮かばせられる……そんな言葉だらけだった。
「君はいずれも大した思い出では無かったのかもしれません……ですが彼女にとってはそれが全てなんです……全てが勇君との思い出です」
「福留さん……そんな事は無い……俺にとってもそれが全ての彼女との……思い出なんです……」
「……そうですか……なら、復讐なんて辞めておきましょう……」
「……」
「愚行を許さない正しき力を振るう者としての行いをしましょう……それが……きっと彼女が望む心の在り方です……例えそれが同じ行為であっても」
「人の心の色を変えない為に……」
再び静寂が包む車内。
勇と彼の父親を乗せた車は静かに高速道を走り去っていった……。
その間にもずっと……彼の心には悲しく苦しい光景が幾度と無く流れ続け、その心を押し潰していく。
だが、その心を彼女の残した想いと願いが支えとなって押し上げた。
もう遅いかもしれない
けれど彼女の想いに応えたいから。
勇は望む……彼女が望むであろう心の在り方を。
復讐では無く、秩序を守る為に……。
最後に見た、澄みきった青空の様な瞳に誓い……その力を奮う事を決意したのだった。
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