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第一節「全て始まり 地に還れ 命を手に」
第一節 後日談 ~彼女の香りはボディソープ~
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※このお話は後日談につき、物語となんら関係はありませんので読み飛ばしても支障ありません。
///第一節 後日談 ~彼女の香りはボディソープ~///
魔者達の襲撃から勇の家に帰ってきて間も無く、ちゃなは勇の母親に汚れた体を洗う事を勧められた。
彼女の進言に甘え、ちゃなは勇の母親用として用意されているボディソープとシャンプーとコンディショナーを使ってもいいと説明を受けてお風呂へと入っていった。
しばらく後……ちゃなが風呂から上がってくると、母親が使っていたボディソープの甘い香りが洗面所から漂ってくる。
下着等は替えが無かった様で、そのまま着回し……上着は勇の母親が用意した物を着こむ。
洗面所から姿を現した彼女は清潔感溢れる姿へと変貌していた。
「あれ、オカンの石鹸使ったんだ?」
「……はい……使ってもいいって……」
匂いを嗅ぎ慣れていた勇はすぐ気付き、彼女にそう声を掛ける。
柑橘系の香料を使っているらしく、勇自身も結構お気に入りなのだが……少し高いのか、男衆は使う事を禁じられていた代物だ。
「いいな……俺もそのボディソープ使いたいんだけどさ」
少し恥ずかしいのか、ちゃなはもじもじしながらリビングのダイニングチェアに座る。
さすがに匂いを嗅いでばかりではまるで変態だ。
勇はそう思ったのか、彼女に向けた視線を再びテレビに戻す。
だがそんな彼女の香りが少し不自然な気がした。
―――あれ……おかしいな、ボディソープの匂いしかしない……?―――
いつも母親が風呂から上がると、ボディソープ以外にもシャンプーの香りが強く漂う。
柑橘系の香りのボディソープとクリーミー系のシャンプーの匂いが合わさりまろやかな香りになるのだが……彼女からは柑橘系の香りしかしないのだ。
「……シャンプーって使った?」
ふと気付いた事に対して質問を飛ばす。
その言葉に俯いているのかそれともこっちを見ているのか……彼女の仕草は小さくてよくわからない。
だが次の一言で疑念は確信へと変わった。
「シャンプーって……なんですか?」
さすがの勇もまさかそんな言葉が出てくるとは思わず。
「えっと……頭洗う石鹸?」
「……そんなのあったんですね……」
彼女は母親に説明は受けたけどよく判っていなかったのだろう……髪もボディソープで洗った様だ。
しかし何故彼女はシャンプー如きの言葉を知らないのだろうか……疑問が重なり思わず勇が頭を傾げる。
「……もう一回、入ってきた方がいいですか……?」
「え? あ、いやいや……」
まるで「香りが違うから入り直せ」と催促した様で申し訳ない気持ちになった勇であった。
///第一節 後日談 ~彼女の香りはボディソープ~///
魔者達の襲撃から勇の家に帰ってきて間も無く、ちゃなは勇の母親に汚れた体を洗う事を勧められた。
彼女の進言に甘え、ちゃなは勇の母親用として用意されているボディソープとシャンプーとコンディショナーを使ってもいいと説明を受けてお風呂へと入っていった。
しばらく後……ちゃなが風呂から上がってくると、母親が使っていたボディソープの甘い香りが洗面所から漂ってくる。
下着等は替えが無かった様で、そのまま着回し……上着は勇の母親が用意した物を着こむ。
洗面所から姿を現した彼女は清潔感溢れる姿へと変貌していた。
「あれ、オカンの石鹸使ったんだ?」
「……はい……使ってもいいって……」
匂いを嗅ぎ慣れていた勇はすぐ気付き、彼女にそう声を掛ける。
柑橘系の香料を使っているらしく、勇自身も結構お気に入りなのだが……少し高いのか、男衆は使う事を禁じられていた代物だ。
「いいな……俺もそのボディソープ使いたいんだけどさ」
少し恥ずかしいのか、ちゃなはもじもじしながらリビングのダイニングチェアに座る。
さすがに匂いを嗅いでばかりではまるで変態だ。
勇はそう思ったのか、彼女に向けた視線を再びテレビに戻す。
だがそんな彼女の香りが少し不自然な気がした。
―――あれ……おかしいな、ボディソープの匂いしかしない……?―――
いつも母親が風呂から上がると、ボディソープ以外にもシャンプーの香りが強く漂う。
柑橘系の香りのボディソープとクリーミー系のシャンプーの匂いが合わさりまろやかな香りになるのだが……彼女からは柑橘系の香りしかしないのだ。
「……シャンプーって使った?」
ふと気付いた事に対して質問を飛ばす。
その言葉に俯いているのかそれともこっちを見ているのか……彼女の仕草は小さくてよくわからない。
だが次の一言で疑念は確信へと変わった。
「シャンプーって……なんですか?」
さすがの勇もまさかそんな言葉が出てくるとは思わず。
「えっと……頭洗う石鹸?」
「……そんなのあったんですね……」
彼女は母親に説明は受けたけどよく判っていなかったのだろう……髪もボディソープで洗った様だ。
しかし何故彼女はシャンプー如きの言葉を知らないのだろうか……疑問が重なり思わず勇が頭を傾げる。
「……もう一回、入ってきた方がいいですか……?」
「え? あ、いやいや……」
まるで「香りが違うから入り直せ」と催促した様で申し訳ない気持ちになった勇であった。
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