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第二章
第16話 力作の芸術品には愛情が籠るものです
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チッパーさんの作ったビッグプリンさんは造形もが素晴らしかった。
本当に布と草木だけで作ったのかと思えるくらいによく出来ています。
チッパーさんの器用さって限界突破してません?
ま、まぁそんなことよりも!
「見てくださいほら! 芽が出ていますっ!」
やはり予想通りでした!
元気な二枚葉が土からピョコンと飛び出しております!
雑草も生えてきてはいますが、それにも負けないくらいの主張を感じますね!
「おおっ!? じゃあこれ食ってもいいのか!?」
「いえいえまだです、まだまだですよお! ここからさらに育って大きくなったら食べ頃なのです! この調子ならきっと一週間、いや五日もあれば食べられるようになるかも!」
「楽しみなんだなー!」
やはり待ち遠しかったのか、チッパーさんが大興奮で畑をグルグル。
既に香りも感じるのでしょうか、キャベツの芽の匂いを嗅いでウットリしています。
しかしこのままでは芽たちの生育にも影響が出てしまうので雑草の除去を開始。
するとそんな中、チッパーさんがわたくしたちの方へと向いて首を傾げてきました。
「でもよ、肉食のお前らがこんな草食えるのかよ?」
「普通は食べませんが好奇心があれば食べられるはずです。たとえ不味く感じても、食べ慣れてしまえば美味しく感じたりもするものですよ。セルフ食育ですっ!」
チッパーさんは心配してくれているようですが不安はありません。
ワーキャットもブルーイッシュウルフも起源は現世の野生動物ですし、理屈で言えば飼い猫飼い犬と同じように味覚開発も可能なはずですから。
これぞまさしく食育というもの。
特にわたくしはまだ子どもですからね、開発の余地に自信はあります。
「チッパーさんが作ってくれたビッグプリンさんのおかげで野菜の育成にも心配はいりませんし、きっとこれから食が捗りそうですね。とっても楽しみですっ!」
「「おおー!」」
「ぐもーん!」
ミネッタさんから頂いた道具の中には調理器具もありました。
食材が増えれば料理も出来ますし、これはもうグルメ化待ったなしでしょうね。
いつか魔物専門のお食事処を開くことも夢ではないかもしれません。
まぁわたくし、お料理経験は言うほど無いんですけども。
「さてと、畑の問題も解決しましたし、そろそろスローライフの更なる発展に従事しましょうかねぇ」
しかし頂いた道具は使い古しで、しかもだいぶ寝かしていた物だと聞きました。
手入れをしなければ使い物にはならないでしょう。
ですからまずは皆さんと協力して道具メンテの開始です。
洗ったり、使えるかどうかを試したり。
中には磨く必要もありそうな物もあったので、程よい石で研磨してみたり。
そうして気付けば夜が訪れていて。
明日の野菜たちの更なる成長に期待しながら床へと就きました。
そんな訳でスッキリしたまま翌日。
今日は皆一緒に起床出来ました!
ようやく生活が進んだからか、妙な一体感を感じますね!
さぁ、今日も元気に――
――と表に出た途端、ビッグプリンさんを襲う大きな黒鳥と遭遇です。
ビッグプリンさんはもはや跡形もありませんでした。
毟られ、千切られ、あの美しかった姿はもう。
「俺のビッグプリィィィーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!!!!!」
すかさずチッパーさんの悲鳴が木霊します。
ですがもうそれどころではありません!
黒鳥がこちらに気付き、鋭い目を向けてきました。
更にはビッグプリンだった残骸を押し倒し、大きな翼を広げて威嚇してきます。
そんな黒鳥の脚はなんと三本。
嘴も黒くうねって長く、かつ鋭い。
その容姿から思わず名前を連想してしまいました。
「まさかあれは、霊鳥ヤタガラス……!?」
確かヤタガラスは魔物ではなく野生動物の上位、霊獣の一派だったはず。
どちらかと言えば人寄りの存在で、かつての大戦の時では魔族とも戦ったと聞きます。
でもそんな霊獣がどうして人を――もといビッグプリンさんを!?
「美味しそうな人間がいるかと思って襲ってみれば、まさか人形だったとはな」
「「「!!?」」」
「だが他にも美味しそうな奴らがいるではないか! ならば貴様らを喰ろうてやろうかぁ!!!??」
なんという迫力でしょうか。
チッパーさんもツブレさんも怯えて縮こまってしまっています。
やはり黒い全身に虹色の羽根先という神々しい姿に圧倒されてしまったのでしょう。
「ただし大人しくしておけば逃がしてやらんでもないぞぉ?」
……うーん。
でもなんていうか、わたくしの知るヤタガラスとはちょっと違うんですよねぇ。
ヤタガラスとは別名、黒点鴉とも言われています。
その巨大さ故に、遥か大空を舞っていようとも太陽に陰りをもたらすほどだと。
聞いた話ではその両翼で木を一本丸ごと覆えるくらいなのだとか。
ですが今目の前にいるヤタガラスはというと、人と同じくらいです。
だからといって子どもっていう風にも見えませんし。
迫力も作られている感じでなんだか拍子抜けですね。はぁ。
「わかりました」
「ほう、殊勝な心掛けではないか――」
「ではちょっと鳥には恨みがあるので焼き鳥にさせて頂きますね」
「――へっ?」
まぁ抜けた声を漏らそうが関係ありません。
ビッグプリンさんは農作に必要不可欠な方でした。
あの脅威とも言える鳥たちの対策として必須でした。
それにもかかわらず破壊されてしまった!!!!!
いくら温厚なわたくしでもこればかりはキレ散らかしそうです!
ですから右手に聖力を集め、バチバチと雷光をほとばしらせました。
陽の光があろうと周囲に陰りをもたらすくらいに強い輝きです。
その光が強くなるにつれてヤタガラスさん、嘴をガチガチ鳴らすほど震え始めたご様子。
「ピ、ピィィィイイイッ!?」
そして遂には逃走、空高く飛び上がってしまいました。
でもいくら飛ぼうがわたくしの霊槍は射程無限でして。
「責任をぉ、取りなさぁーーーーーーいっっっ!!!!!」
そんな訳で空へと向けて怒りの霊槍を発射、途端に大空でチュドーンと大爆発。
「ギャピィーーーーーー!?!?!?」
するとまもなく何者かの影が落ちてきます。
それでもって近くの川にドボーンと墜落し、ドンブラと流されることに。
しかしそれをすかさず追い駆け、陸へと引き上げて差し上げました。
それも先ほどとは姿形が全く異なる、緑と紫の鮮やかな翼を持つ御方を。
それはハーピーでした。
頭胴は人間で手足が鳥の、山岳部で人を騙して襲うという魔物の一種です。
「なんかさっきと容姿が全然違うんだなー」
「それはおそらく変化術を使っていたのでしょう。ハーピーの十八番の一つですね」
しかしわたくしたちも危うく騙される所でしたね。
まさかハーピーがこんな所にまで来られるとは思いもしませんでした。
いつもは集団で待ち構えて襲い掛かるような者たちですのに。
……はて?
ではなぜ一人でここに?
そんな疑問がふと脳裏を過り、ついつい頭を抱えて考え込んでしまうのでした。
本当に布と草木だけで作ったのかと思えるくらいによく出来ています。
チッパーさんの器用さって限界突破してません?
ま、まぁそんなことよりも!
「見てくださいほら! 芽が出ていますっ!」
やはり予想通りでした!
元気な二枚葉が土からピョコンと飛び出しております!
雑草も生えてきてはいますが、それにも負けないくらいの主張を感じますね!
「おおっ!? じゃあこれ食ってもいいのか!?」
「いえいえまだです、まだまだですよお! ここからさらに育って大きくなったら食べ頃なのです! この調子ならきっと一週間、いや五日もあれば食べられるようになるかも!」
「楽しみなんだなー!」
やはり待ち遠しかったのか、チッパーさんが大興奮で畑をグルグル。
既に香りも感じるのでしょうか、キャベツの芽の匂いを嗅いでウットリしています。
しかしこのままでは芽たちの生育にも影響が出てしまうので雑草の除去を開始。
するとそんな中、チッパーさんがわたくしたちの方へと向いて首を傾げてきました。
「でもよ、肉食のお前らがこんな草食えるのかよ?」
「普通は食べませんが好奇心があれば食べられるはずです。たとえ不味く感じても、食べ慣れてしまえば美味しく感じたりもするものですよ。セルフ食育ですっ!」
チッパーさんは心配してくれているようですが不安はありません。
ワーキャットもブルーイッシュウルフも起源は現世の野生動物ですし、理屈で言えば飼い猫飼い犬と同じように味覚開発も可能なはずですから。
これぞまさしく食育というもの。
特にわたくしはまだ子どもですからね、開発の余地に自信はあります。
「チッパーさんが作ってくれたビッグプリンさんのおかげで野菜の育成にも心配はいりませんし、きっとこれから食が捗りそうですね。とっても楽しみですっ!」
「「おおー!」」
「ぐもーん!」
ミネッタさんから頂いた道具の中には調理器具もありました。
食材が増えれば料理も出来ますし、これはもうグルメ化待ったなしでしょうね。
いつか魔物専門のお食事処を開くことも夢ではないかもしれません。
まぁわたくし、お料理経験は言うほど無いんですけども。
「さてと、畑の問題も解決しましたし、そろそろスローライフの更なる発展に従事しましょうかねぇ」
しかし頂いた道具は使い古しで、しかもだいぶ寝かしていた物だと聞きました。
手入れをしなければ使い物にはならないでしょう。
ですからまずは皆さんと協力して道具メンテの開始です。
洗ったり、使えるかどうかを試したり。
中には磨く必要もありそうな物もあったので、程よい石で研磨してみたり。
そうして気付けば夜が訪れていて。
明日の野菜たちの更なる成長に期待しながら床へと就きました。
そんな訳でスッキリしたまま翌日。
今日は皆一緒に起床出来ました!
ようやく生活が進んだからか、妙な一体感を感じますね!
さぁ、今日も元気に――
――と表に出た途端、ビッグプリンさんを襲う大きな黒鳥と遭遇です。
ビッグプリンさんはもはや跡形もありませんでした。
毟られ、千切られ、あの美しかった姿はもう。
「俺のビッグプリィィィーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!!!!!」
すかさずチッパーさんの悲鳴が木霊します。
ですがもうそれどころではありません!
黒鳥がこちらに気付き、鋭い目を向けてきました。
更にはビッグプリンだった残骸を押し倒し、大きな翼を広げて威嚇してきます。
そんな黒鳥の脚はなんと三本。
嘴も黒くうねって長く、かつ鋭い。
その容姿から思わず名前を連想してしまいました。
「まさかあれは、霊鳥ヤタガラス……!?」
確かヤタガラスは魔物ではなく野生動物の上位、霊獣の一派だったはず。
どちらかと言えば人寄りの存在で、かつての大戦の時では魔族とも戦ったと聞きます。
でもそんな霊獣がどうして人を――もといビッグプリンさんを!?
「美味しそうな人間がいるかと思って襲ってみれば、まさか人形だったとはな」
「「「!!?」」」
「だが他にも美味しそうな奴らがいるではないか! ならば貴様らを喰ろうてやろうかぁ!!!??」
なんという迫力でしょうか。
チッパーさんもツブレさんも怯えて縮こまってしまっています。
やはり黒い全身に虹色の羽根先という神々しい姿に圧倒されてしまったのでしょう。
「ただし大人しくしておけば逃がしてやらんでもないぞぉ?」
……うーん。
でもなんていうか、わたくしの知るヤタガラスとはちょっと違うんですよねぇ。
ヤタガラスとは別名、黒点鴉とも言われています。
その巨大さ故に、遥か大空を舞っていようとも太陽に陰りをもたらすほどだと。
聞いた話ではその両翼で木を一本丸ごと覆えるくらいなのだとか。
ですが今目の前にいるヤタガラスはというと、人と同じくらいです。
だからといって子どもっていう風にも見えませんし。
迫力も作られている感じでなんだか拍子抜けですね。はぁ。
「わかりました」
「ほう、殊勝な心掛けではないか――」
「ではちょっと鳥には恨みがあるので焼き鳥にさせて頂きますね」
「――へっ?」
まぁ抜けた声を漏らそうが関係ありません。
ビッグプリンさんは農作に必要不可欠な方でした。
あの脅威とも言える鳥たちの対策として必須でした。
それにもかかわらず破壊されてしまった!!!!!
いくら温厚なわたくしでもこればかりはキレ散らかしそうです!
ですから右手に聖力を集め、バチバチと雷光をほとばしらせました。
陽の光があろうと周囲に陰りをもたらすくらいに強い輝きです。
その光が強くなるにつれてヤタガラスさん、嘴をガチガチ鳴らすほど震え始めたご様子。
「ピ、ピィィィイイイッ!?」
そして遂には逃走、空高く飛び上がってしまいました。
でもいくら飛ぼうがわたくしの霊槍は射程無限でして。
「責任をぉ、取りなさぁーーーーーーいっっっ!!!!!」
そんな訳で空へと向けて怒りの霊槍を発射、途端に大空でチュドーンと大爆発。
「ギャピィーーーーーー!?!?!?」
するとまもなく何者かの影が落ちてきます。
それでもって近くの川にドボーンと墜落し、ドンブラと流されることに。
しかしそれをすかさず追い駆け、陸へと引き上げて差し上げました。
それも先ほどとは姿形が全く異なる、緑と紫の鮮やかな翼を持つ御方を。
それはハーピーでした。
頭胴は人間で手足が鳥の、山岳部で人を騙して襲うという魔物の一種です。
「なんかさっきと容姿が全然違うんだなー」
「それはおそらく変化術を使っていたのでしょう。ハーピーの十八番の一つですね」
しかしわたくしたちも危うく騙される所でしたね。
まさかハーピーがこんな所にまで来られるとは思いもしませんでした。
いつもは集団で待ち構えて襲い掛かるような者たちですのに。
……はて?
ではなぜ一人でここに?
そんな疑問がふと脳裏を過り、ついつい頭を抱えて考え込んでしまうのでした。
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