短な恐怖

望月おと

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【短な恐怖③】

覗く男

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 高校時代、ぞっとした出来事に遭遇した。高校は隣の市にあり、地元の駅から高校がある駅まで二十分ほど電車に乗って通学していた。

 この日もいつも通り、帰りの電車が来るのを友人たちと駅で待っていた。しかし、普段と少し状況が違っていた。文化祭が近く、遅くまで学校に残って作業をしていたため、いつも乗っている夕方の電車に乗車できなかったのだ。そのため、普段見かける他校生たちの姿も今はない。

 ひっそりと夜の闇に包まれたホーム。田舎の駅ということもあり、外の街灯は乏しく、駅のホーム内も薄暗い。だが、幸いなことに私たちのグループ以外にも、先輩・後輩のグループがいくつかあり、明るい笑い声がホームに響き、何か出そうな雰囲気を打破してくれていた。

──まもなく、列車が参ります。黄色の線の内側に……

 電車のヘッドライトが近づいてくる。これに乗れば、家がある町に帰れる。そんな思いで待っていると、突然悲鳴が上がった。

「なに、あの人! ヤバイ、ヤバイ!!」

 見れば、ホームに怪しい男がいた。無表情のまま、女子生徒のスカートの中を覗こうと体を傾けている。それもコソコソとではなく、あからさまに「覗いています」と自己申告しているような覗き方。それを移動しながら、各グループ毎に繰り返している。

 どんどん悲鳴は近づいてきて、ついに私たちのグループに男はたどり着いた。男と目が合う。しかし、彼の目に私は写っていない。彼にとって興味があるのは、スカートの中だけ。瞬きの少ない人形に近い目がだんだんと私の前から消えていく。そして──スカートの丈よりも視線は下へ。

 これで満足して男は去る。そう思っていたのだが、男はなぜか留まった。電車はホームに着き、私たちは逃げるように電車に乗り込むと、一番前の車両へ向かった。これで男とも──

「えっ!? 嘘でしょ……」

 友人の一人が悲鳴を上げた。彼女の視線の先を皆で追う。男から逃げるため、一番前の車両に移動したはずなのに……。車窓から見えたのは無表情のまま、こちらを見つめ、体を傾ける男の姿だった。

 
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