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第十三話

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 夜の街は静かで、女の子を担いだ男が歩いていても気にするものが居ない。

 門兵には事情を説明したし、ギルドの方も緊急時になら夜も開けてもらえる。
 いや、盗賊は皆殺しにしたし、女の子は保護してあるから、緊急性は無いのか?

「年頃の男の家に年頃の女の子を一晩寝かせるのはマズいから。」

 適当な理由を見つけて、セナはギルドへと入る。

「はーい、ギルド夜の部(意味深)です!」
「昼の……大丈夫なんですか?」
「セナさんの帰りが遅いからですよ!心配したんですからね!」

 盗賊の討伐を受けた時の人だった。

「普通数日かかるのでは?」
「まぁ、それはそうなんですけどね。この案件は場所の特定も出来てたんですけど、構成人数が不明でしたから。」
「盗賊は全員倒しました。この子は誘拐されていた子らしいです。恐怖で眠っているのかと。」

 適当な嘘をついて少女を預ける。

「死体はまだ森の方にあるので、明日にでも回収します。」
「でしたら、ギルド職員を数名同行させて、荷車にて回収しましょう。盗賊の持ち物等は」
「武器や装備品、宝などは回収しました。」
「必要物以外はこちらで買い取りますよ。」

 木箱に詰めている宝をドンッと机に置いて、中から一つ一つ取り出す。
 金、銀、硬貨、鉱石、宝石、魔石、エンブレム……

「なんだこれ。」
「これはかなり強力な『紋』の魔法を使った物ですね。かなり珍しいタイプです。刻印されてるのは……『鑑定』レベル5ぉ!?」

 今見ているエンブレムについて。
魔法には、【属性】の前段階で【術】【砲】【紋】【陣】の四種類に分かれる。
それぞれが魔法の形式なのだが、【火魔法】レベル1でも4種使うことはできる。理論上は。
難易度で言えば【砲】→【術】→【陣】→【紋】くらい。

【砲】は射出する魔法全てに当てはまり、【火球】などが当てはまる。
【術】は不定形であり自由な魔法、【雷獣牙】など。
【陣】は属性を介さない特殊枠で、魔力を注げばある程度の魔法の発動を簡略化できる上に、【陣】がそこにあれば【属性】持ちでなくても属性魔法が使える。
【紋】は物体に魔法を閉じ込める魔法で、使用者の魔力を必要とせず使用できる。『付与:炎』などが一般的だが、たまにスキルを封じ込める場合もある。

 そして、今話題のエンブレムには、【紋】で『鑑定レベル5(一般人の努力の終着点)』が刻まれている。

『レベル5の鑑定』とは、相手のステータスの詳細から、スキルの内容、固有スキルの有無、持ち属性の種類。だけでなく、身長体重、スリーサイズ、血液型、持病の有無、足のサイズ、肩幅。

そして、『スキルツリー』が見られる。

「こんなのを十数人程度の盗賊が持ってるなんておかしいですよ。セナさん、これ預かっていいですか?」
「構いませんよ。不安要素は無い方がいいですから、ギルドの方で調査してください。」
「ありがとうございます。」
「俺は……この指輪とネックレスと、使えそうな硬貨だけを貰っていきます。では、また明日。」

 同じデザインの指輪が二つ。
サイズはやや違うが、シンプルな銀の円が美しい。
 ネックレスの方は、小さな飾りのついたもの。

◇◆◇

「ユゥリ、ベルモット、ただいま。」
「ぉぁぇぃ」
「おかえりなさいませ。」

 宿へ戻ると、夜も遅いのに2人とも起きて待っていてくれた。
 
「ユゥリ様は現状、食事排泄の際以外は眠っておいでです。セナ様と過ごす時間は限られているから、できるだけ長くいたいと。」
「ふふ、うれしいね。」
「……今朝から、少し変わりましたか?」
「ん?まぁ、心境の変化かな。ベルモット、ユゥリ、お土産。」

 セナはベルモットに指輪を、ユゥリにネックレスを渡す。

「ほら、お揃い。」

 自分の指に嵌めた指輪を見せて、そう言う。

仲間の証であると、そう言う。

 ひとしきり嬉しがったセナは、ユゥリを抱きしめてベッドに入る。
 涙はもう出なかった。
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