【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

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最終章 真の異世界無双

70話 復興支援と里帰り

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 エレオノーラを抱えて長距離ジャンプを繰り返し、マイセン王国にいるみんなの元に帰還してきた頃には、もう早朝だ。

「あ、おかえりアヤト、エレオノーラさん」

 エリンが最初に出迎えてくれた。

「あの子……アリスちゃんは、どうなったの?」

 続けてナナミが、アリスをどう処理したのかを訊いてきた。

「前に俺がこの世界の、船の墓場って場所に行ったことがあってな。そこの最奥部に寝かせてきた。……バカがバカをやらかさない限り、アリスは二度と目覚めることはないよ」

 そうなんだ、と頷くナナミ。

「なら、これで今度こそ終わりってことね」

 良かった、と安堵するのはピオン。まぁ誰かがアリスを叩き起こしたら彼女の怨嗟の向けられる先がその叩き起こした奴に向けられるだけなんだが。

「ですけどアヤトさん、まだひとつ問題があるんです」

 するとリザが小さく挙手した。

「問題?」

「王宮や城下町がめちゃくちゃになってしまいましたから……これをこのまま放ってはおけないです」

「ふむ」

 城下町を見やれば、焼き払われた瓦礫と灰ぐらいしか残っていない。
 つまりリザは、復興を手伝わなければならないと言いたいのだ。

「あのアリスを止められなかった、私達にも非はある。市民達が自力で復興出来るようになるまでは、しばらくここを手伝ってやるべきだと、私は思う」

 マイセン王国の復興を手伝うべきだと言うクインズに反対する者はいないし、むしろみんな乗り気だ。

「そうだな……そうすべきだな」

 俺がそう頷くことで、意見は満場一致。

「そうなるとまずは、小さな子どもや高齢者、怪我人を近隣の町に受け入れてもらうことが先決でしょうか」

 クロナが最初に意見を挙げてくれる。
 社会的弱者の保護が最優先だな。

「ここから一番近い町なら、エコールの町に掛け合ってもらおうか」

 となると……

「エコールの町への受け入れ承認、及び支援物資の提供依頼は、俺とエレオノーラが向かおう。クインズ、ピオン、ナナミは生存者の捜索と救出、リザ、クロナ、レジーナは怪我人の手当てやメンタルケアをそれぞれ頼む。エリンは……多分、民衆から勇者だなんだと持て囃されるから、適当にやり過ごしてくれ」

 二手に分かれた枠割分担を指示してから、エレオノーラを連れてエコールの町へ急ぐ。





 アヤトとエレオノーラがエコールの町へ復興支援の依頼に向かっている間。

「勇者様……勇者様だ!」

「真の勇者様だ!」

「勇者様!」「勇者様!」「勇者様!」「勇者様!」「勇者様!」

 アヤトの予想していた通り、エリンは邪悪なる龍を滅ぼした真の勇者として、避難民達から英雄視されていた。実際に"邪悪なる龍"を滅ぼしたのはアヤトなのだが、避難民達はエリンが真の勇者だと信じて疑わない。

「えっ、えぇ、と……」

 大勢の人間から英雄視されることに慣れていないエリンは、避難民達になんと声をかければいいか分からなかったが、クインズがそっと彼女に耳打ちする。

「何も言わなくていい。剣を抜いて、高く掲げて見せるんだ」

「え?あ、はい」

 クインズの言う通りに、エリンは一歩前に歩み出て、エクスカリバーを抜き、切っ先を頭上に向けて掲げた。

 すると、避難民達は一斉に沸き立ち、歓声と拍手が響き渡る。
 
 避難民達の歓声と拍手が収まった頃を見計らって、クインズとピオン、ナナミが助け舟を出し、「動ける方は生存者の捜索、救出を手伝ってほしい」と声を張って、比較的怪我の少ない者を率いて、生存者の捜索救出に向かう。
 十全に動けないほどの怪我を負っている者はクロナとエリンが手分けして回復し、リザとレジーナが列の整理を行う。

 取り分け、この場で大いに活躍したのはナナミだった。

「ブルドーザー召喚!それーっ!」



 ゴゥンゴゥンゴガガガガガ、と駆動音の唸り声と、金属と瓦礫がぶつかり合う轟音が響く。

 ピオンの魔力を受けつつ、作業重機を実体化しているのだ。
 魔物のようなそれらは避難民を驚かせたが、人力では撤去困難な瓦礫を軽々と片付けていく様を見て感嘆する。

 ブルドーザーで瓦礫に埋もれた通り道を啓開し、ブルドーザーでは押し出せないものはショベルカーで破砕しながら排除し、生存者がいると思われる場所はクレーン車で慎重に瓦礫を撤去していく。
 しかし機械だけで全ては解決出来ないので、人力も必要になる。
 作業重機で大体を片付け、より細かい部分は人の手が引き継ぐ。
 ナナミの実体化させる作業重機のおかげで、生存者の救出、遺体の発見は迅速かつ的確に行われ、いずれエコールの町から届けられる支援物資などを積み込んだ馬車の通行路も確保する。

 すると、

「む……?」

 ふとクインズは、中途半端に崩れかけたそこに、人の姿を見つけた。

「そこの君!大丈夫か!?」

 瓦礫の隙間を顔を突っ込み、大声で呼びかける。
 短く揃えられた金髪と、高い位に就いているだろう正装は薄汚れているが、そこにまだ少年が一人、蹲っていたのだ。

 呼び掛けに反応し、顔を上げる少年。

「今助ける!もう少しだけ耐えてくれ!」

 この程度の瓦礫なら自力でどかせられる、とクインズは瓦礫を掴んでは一つずつ取り除いていく。
 やがて。

「怪我は無いか!」

「…………」

 少年の顔に生気は無く、目は死んでいた。

「返事が出来るならしてくれないか?」

「…………ぜ……」

 ようやく開いた口から何かを発したようだが、その音はあまりにも小さ過ぎてクインズには聞き取れなかった。
 埒が明かない、とクインズは少年に近寄ると、手を掴んだ。

「私の声は聞こえるか?聞こえるなら手を握ってくれ」

「何故……僕を、助けるんだ……?」

 近寄ることで、ようやく少年が何を言っているのかが聞き取れた。

「人の命を救うことに、理由が必要か?」

 その問いに対し、クインズは至極当然のごとく返した。
 それに対する少年の反応は、自虐じみたものだった。

「…………僕は、天罰を与えられるべきなんだ」

「……どういうことだ?」

 天罰を与えられるべきなんだと言う少年の自白に、クインズは目を細める。

「クインズさん、大丈夫ですか?」

 そこへ、クインズの様子が不自然だと見て、エリンが駆け寄って来た。
 すると、

「あ、王子様?」

 エリンはその顔に"嫌な意味で"見覚えがあった。
 マオーク討伐を成し遂げて王宮に帰還したその時、この王子に無理矢理手籠めにされそうになったことを。
 アヤトの、素手で城壁をぶち抜くと言う非常識極まりない力業中の力業によって難を逃れたが、もしアヤトがその場にいなければ……

「君は……勇者エリン……」

「どうしたの?今度はクインズさんに無理矢理キスでもするの?」

「はぁ?」

 何故そうなるのだ、とクインズは不快げに眉間に皺を寄せた。
 すると王子は、

「……ちょうどいい、僕をここで斬ってくれ」

 介錯を頼んできた。

「……ねぇ、何言ってるの?大丈夫?」

 エリンは耳を疑った。

「僕は……君を無理矢理后にしようとした挙げ句、魔王討伐の功績を横から奪った。それならそれでいいかと思っていたら、あの邪龍がこの国に現れ、父も母も殺されてしまった……どうして、僕だけのうのうと生きているんだろうな……」

 自虐とも言える懺悔に、エリンとクインズは何も言わなかった。そんな懺悔に相槌を打つことに何の意味も無いからだ。

「僕一人だけが生きていてどうするんだよ!罰を受けるなら僕も受けるさ!なのにっ、僕だけがこんな……」



「甘 っ た れ る な ッ !!」



 クインズは声を荒げ、掌でぶん殴るように王子の頬をバヂィンッと打った。

「ぶっ!?」

 剣で斬られるのではなく、平手で頬を打たれたことに驚きながら倒れ込んだが、クインズはずかずかと歩み寄ると、王子の胸倉を掴んで無理矢理立ち上がらせる。

「自分一人だけが生きていてどうする、だと?貴様が死ねば誰がこの国の民を守るのだ!?」

 君、ではなく、「貴様」と言う呼び方をするクインズに、エリンは意外そうに目を見開く。

 そんな視線など気にすることなく、クインズは毅然として王子に厳しい言葉を叩き込む。

「貴様は王子だと言ったな?ならば教えてやる!王の血を受け継ぐ者は、民を守り、救い、そして明日へ導かねばならんのだ!」

「あ、あ、あなたに何が分」

「私はかつて王国に仕える騎士だった。だから王の重責の全てが分かるわけではない。だが!『人々が求める王の姿』とはどう言うものかは知っているつもりだ!」

 さらに胸倉を掴み寄せ、額をぶつけ、唾を飛ばすように迫る。

「貴様は王族であり、王そのものだ!国が災禍に襲われたなら、一人でも多くの民の命を守り、その上で死ね!そうすれば貴様の名前は歴史書に刻まれるだろう、誇りに思え!」

「ぁ、う、ぅ……っ」

 完全に怖気ついた王子の怯えた顔を見て、クインズは興味を失ったように地面に放った。

「それが出来ないのなら、貴様は虫けら以下だ。死ぬまでそこで這い蹲っていろ」

 冷たくそう吐き捨ててクインズは踵を返すと、生存者・遺体の捜索を続行し、エリンも何も言わずに会釈だけしてその場を去る。

「ぼ、くは……」

 尻餅をついたまま、王子はクインズの後ろ姿を見つめていた。





「――であるからして、マイセン王国は現状壊滅状態。私の連れの者や、勇者様が懸命に救助活動や避難民の誘導を行っています。民の命を一人でも多く救うため、町長様には是が非でも避難民の受け入れと、物資の支援を行っていただきたいのです」

 エレオノーラと共に、エコールの町の町長との会談を取り付け、マイセン王国で起きた事とその結末、現状を懇切丁寧に町長に話す。まぁ実際に話しているのは、これまた聖女オーラを醸し出すエレオノーラだけで、俺は横から少しだけ口を挟むアドバイザーに徹しているだけだが。
 加えて、この町長さんも穏やかで親切な人柄なのも助かった。
 エレオノーラの見た目で物事を決め込まず、まずはきちんと話を最後まで聞く姿勢を取ってくれる。

「ふむ、承知しました。幸いにもこの町に被害らしい被害は出ていません、すぐにとは行きませんが、可及的速やかに支援物資を用意し、避難民の受け入れ態勢も整えておきましょう」

「ありがとうございます」

 ぺこりとお辞儀するエレオノーラに合わせて俺も一礼。表向きはエレオノーラの護衛の剣士だが、一応同席させていただいている身なのでね。

「ですが、この町から提供出来る物資も限られます。なにぶん小さな町なもので……代わりと言ってはなんですが、港町のルナックスにも呼び掛けてみましょう」

 おぉ、町長さんナイス代案。
 ルナックスなら大きな港町だし、船なら多くの物資を運ぶことが出来る。

「それはありがたいご提案です。私からも、ぜひともよろしくお願いいたします」

「いえいえ、さして役にも立てずに」

「何を仰います、町長様のお人柄と伝手が無ければ、こう上手く事は運んでおりません。本当にありがとうございます」

 ……なんというか、さすがエレオノーラ。

 オルコットマスターの時といい、ロスタルギアのカークス里長の時といい、こう言う対談がすげぇ上手い。
 いや、多少は見た目で押し通しているところもあるんだろうが、それでも"お願いする立場"として下手したてに出つつも、最終的にこちらの都合を飲ませ、面倒事はさり気なく相手に押し付ける。

 欲深くて警戒心の強い相手の場合はこうも上手くはいかないが、それならそれで別方面から圧力を掛けさせればいいだけのことだ。暴力的な解決を迫られたら、俺という最強の暴力装置が正当防衛でぶん殴り飛ばせばいいし。

 もう二言三言と言葉を交わして、対談は無事に終了。こちらが不利益を被るようなこともなく、エレオノーラにとって理想的な形で落ち着いた。



「何とかなりましたね」

 町長宅の外でふぅ、と一息つくエレオノーラ。

「お疲れ様です、エレオノーラ」

「町長様が穏やかな方で良かったです。もし極悪人のクソ転売ヤーで、しかもロリコンだったら、アヤトくんに滅殺していただくところでしたね」

「はっはっはっ、ご冗談を」

 つまり、エレオノーラがその気になれば俺は躊躇なくそれを実行するつもりだったと言うわけだ。

「さて、王国の方へ戻りましょうか」

「はいはい、仰せのままに」

 行きと同じく、エレオノーラをお姫様抱っこして、長距離ジャンプを繰り返して、マイセン王国へ飛んで戻る。



 そうして俺とエレオノーラが崩壊した城下町に戻ってくると。

「お?」

 薄汚れた正装を纏った金髪の少年――確かあれは、エリンに無理矢理キスしようとしてた王子じゃないか。
 何をしているのかと思えば。

「すぐに治療が必要な者は申し出るように。動ける者は彼女らと共に救助活動に回ってくれ。慌てずに慎重にな」

 幸いにもと言うべきか、孤児院は巻き込まれなかったおかげで、臨時の避難所として利用されており、そこで列を作る避難民達に呼び掛け、列を整理させている。

「アヤト様、エレオノーラ様、おかえりなさいませ」

 そこに、俺とエレオノーラの帰還に気付いて、レジーナが駆け寄って来た。

「支援や避難民の受け入れに関しては、いかがでしたか?」

「あぁ、エレオノーラが上手く纏めてくれたよ。支援物資の方は、とりあえずの間に合わせはすぐに届くが、足りない分はここから比較的近い港町の方から送られることになる。避難民の受け入れは快諾してくれた」

 俺の説明により、むふーんと偉そうなドヤ顔でつるっぺたのお胸様を張るエレオノーラ。

「アヤトくん?今何か余計なことを考えませんでしたか?」

「考え過ぎですよ」

 エレオノーラのジト目をやり過ごして。

「そこの彼は?」

 視線で王子を指しながら、レジーナに訊ねてみる。

「この国の第一王子だそうです。先ほど、クインズさんからの叱咤を受け、こちらを手伝ってくださるとのこと」

「クインズの叱咤?」

「私からは何とも」

 レジーナもその場にいたわけではないらしい。
 なんだ、エリンじゃダメだったから今度はクインズに無理矢理迫ろうとして、ぶん殴られて正気にでも戻ったか。
 まぁいい、こっちの活動に協力的なのはありがたい。見返りにクインズを后に貰うとか寝言抜かしたら顔面ドロップキックの刑だが。



 夜明けから始まった生存者の救出や遺体の捜索、瓦礫の撤去、まだ使える物の再利用や、まだ食べられる食料の回収などをしている内に、もう日没だ。

 孤児院の食料と、瓦礫の中から見つかった食べられる食料をかき集めても、保って一日と半日分ぐらいしか無いが、全く食べられないよりは遥かにマシだろう。明日にはエコールの町から間に合わせの支援物資も届く。

 魔法の扱いに長けるリザとクロナがいることは、それだけで水不足は解消され、火を起こすのも手間にならないと言う安心感は、市民達に生存の不安を緩和させるには十分。
 特に水が確保出来るのはありがたい話だ。

 エリン達もアリスとの戦いでボロボロになっているのに、夜明けから休まず救助活動をぶっ通しており、みんなクタクタだ。



 そんな中で。
 ようやく、ようやく本当に、エリンは"里帰り"を成した。

「さっきは言いそびれちゃったけど……ただいま、院長先生」

 里帰りと言うにはあまりにもボロボロのクタクタのエリンだが、院長先生はそれに何を言うでもなく。

「おかえり……本当に、おかえりなさい、エリンちゃん」

 エリンに歩み寄ると、そっと彼女を抱きしめた。
 この場にいるのは、俺とエリンと院長先生の三人だけだ。

「あぁ、良かったわ。エリンちゃんが元気でいてくれて、本当に良かった……」

「院長先生……あっ!」

 するとエリンは何か思い出したように声を上げ、院長先生の抱擁を強引に離すと、

「院長先生ごめんなさいっ、せっかく仕立ててもらったマント、破けちゃったの!」

 そうしてエリンが差し出したのは、二箇所ほど大きく裂けてしまった――ここまでよく破れたりしなかった、彼女のトレードマークとも言える桃色のマント。

「あら、そうなの?それじゃぁ、直してあげないとねぇ」

 院長先生はニコニコとエリンのマントを受け取ると。

「その、本当にごめんなさい……こんなにめちゃくちゃにしちゃって……」

 しゅん、と落ち込むように俯くエリン。

「いいのよ。本当に大事に使ってくれたのね……」

 感慨深げにマントを見つめる院長先生。
 そこでようやく、院長先生が俺の方を向いてくれた。

「あなたは……」

「初めまして、院長先生。エリンの婚約者の、アヤトと申します」

「まぁっ、婚約者!こんなにカッコよくて素敵な人を見つけるなんて、エリンちゃんも隅に置けないのねぇ」

 よしてくださいよ、照れちゃいますってー。

「え、えへへ……」

 エリンはエリンで嬉しそうだ。かわいい。
 すると、

「いんちょーせんせー、ごはんはー?」

 ひょこっと小さな子どもが院長先生の後ろから顔を出した。

 それを皮切りに、

「あっ、エリンおねーちゃんおかえりなさい!」

「しらないひとがいるよ?」

「エリンおねーちゃんがおとこつれてきた!」

「しかもいけめんだ!」

「エリンおねーちゃん、かれしさんなの!?」

「かれしさん!ねつあいはっかくー!」

 わらわらと小さい子どもたちが取り囲んできた。
 こんな状況なのにみんな元気だなぁ。

「あ……えーっと……」

 エリンがどう答えるべきか困っているので、ここは俺が率先してみせてしんぜよう。

「グッドイブニングこんばんは。そして初めまして。俺はアヤト。エリンお姉ちゃんの婚約者だよ、みんなよろしくね」

 視線の位置を合わせて、ニッコリ子ども向けスマイルでご挨拶。

「こんやくしゃ!?けっこんしきだー!」

「こんやくはき!?エリンおねーちゃんこんやくはきされちゃうの!?」

「エリンおねーちゃんはあくやくれーじょーじゃないよー!」

「そうだそうだー!」

 オロ?なんかみんな婚約破棄とか悪役令嬢って言葉を知ってるだと?
 何人か誤解してる子もいるし……よし。

「違う違う、エリンお姉ちゃんは悪役令嬢じゃないし、俺も婚約破棄なんてしないよ。その証拠が、これだ」

 そっとエリンの右頬を手を添えて、左頬にチュッと。

「ふわぁっ」

「「「「「ふわぁっ!」」」」」

 最初がエリン、後が子どもたちだ。

「すごーい!らぶらぶだー!」

「すえながく、おしあわせにー!」

 ふぅ、誤解が解けたようで何よりだ。
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