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第二章 落ちこぼれの天才魔法使い

18話 求めよさらば与えられん

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 さて、こいつを倒したのはいいが、毒の元凶なのかどうか分からないな。
 とりあえず、比較的状態のいい甲殻や、毒素を失った鋏角、体内の魔石を剥ぎ取って、と。

「アヤトさん、奥にまだ部屋があります」

 リザが、この中部屋の最奥部を指した。

「よし、あそこも調査してみるか」

 アラクネ以外の脅威がいないことをしっかり確認してから、バッカス達を呼んで、一緒に奥の部屋へ向かう。

 奥の部屋は広くなく、祭壇がぽつんと一壇あるだけ。
 何もないのか?

 ――人間よ、私の声が聴こえますか?――

 おや、どこからともなく女性の声が聞こえてきた。
 脳内に直接ってパターンではなさそうだし、エリンやリザ、バッカス達も何事かと辺りを見回しているから、この場の全員に聞こえるようだ。

「声の主よ。俺はアヤト。あなたは何者だ?」

 声を張り上げて、謎の声に応じる。

 ――あなた達が邪悪なる魔物を討滅したおかげで、私を封じ込めていた封印が解かれました。本当にありがとうございます――

「封印、というと。あなたは、この地の守護神だろうか?」

 ――はい。私は【クリエイトコード:P1X15E】。厳密に言えば、この地だけでなく、この世界の"時空守護神"に当たります――

 型式番号とは、面倒くさい呼び方してますな。
 それに……時空守護神とはなんぞや?

「コードP1X15E、質問をよろしいか。時空守護神とは?」

 ――はい。私は原創神『オリジン』より造られし存在であり、P1X15Eのクリエイトコードを与えられています。P1X15Eとは、あなた達が今いる、この時空に割り振られた型式番号になります――

 ふむ……この世界の神様そのものってことで良さそうだな。

「ではもうひとつ質問する。コードP1X15E、あなたは何故ここに封じ込められていたのか、答えることは可能か?」

 ――はい。"悪しき者"がこの地に足を踏み入れ、祭壇に邪悪な封印を施したからです。私の力がこの時空に及ばなくなり、次第にこの地は毒に満ちたものになりました。恐らくは、この毒がやがて世界中に広がり、あらゆる生命を死滅させていたでしょう――

 おいおいマジかよ。

 つまり、その"悪しき者"が守護神を封印して、毒をばら撒いたってことなのか。

 誰の仕業だか知らんが、毒の被害が世界中に広がる前に、このヨルムガンド湿地帯だけで収まっただけマシというべきか。

「コードP1X15E、その"悪しき者"とはどういう存在だった?」

 ――はい。二足歩行の、肥え太った醜い豚のような姿をし、クラウンやクロスを纏い、まるで王のような出で立ちをしていました――

 え……そいつ、まさか?

「ねぇアヤト、それってもしかして……」

 エリンも同じことを感じたらしい。

「マオークのことか?だが、奴は確かにエリンが息の根を止めた。俺達がメガフロートから去った後で、何者かが死者蘇生を行った……?」

 ――その悪しき者は、私を封印した後、何処かへ消えていきました。それ以降のことは、存じません――

 ふむ……時空守護神に封印を施したのは、エリンが討ったはずのマオークだと仮定するなら、あのアラクネは侵入者から封印を守るための番人だったのだろう。
 しかし、マオークは何のために時空守護神を封じ、毒を垂れ流したのか。いいや、そもそも奴が何故この時空にいるのか。
 あの豚さんに、時空を自由に超えるような力は無かったはずだ。それほどの力があるなら、エリンではとても太刀打ち出来なかっただろう。

 分からん。

「俺達は元々、このヨルムガンド湿地帯の異変について調査していて、その結果あなたの封印を解いた。コードP1X15E、あなたの封印が解かれたなら、この地の毒を浄化することは可能か?」

 ――はい。現在、浄化中です。一晩あれば毒は消失し、この地は少しずつ元の姿を取り戻すでしょう――

 さすがに自然環境の回復は時間に任せるしかないか。

「では、俺達はそろそろお暇させてもらおう。ギルドの方にもこの事を説明しなければならないからな。さらばだ、コードP1X15E」

 ――お待ち下さい。こちらをお受け取りください。

 すると、祭壇の台座から優しい新緑色の光が溢れ出し――光の中から、翡翠のように輝くオーブが現れた。

「これは?」

 ――これは、『勇気の翠玉』。私の持つ権限『万物創造』、その一部を、このオーブに封じ込めました。いずれどこかで、あなたの役に立つでしょう――

「万物創造とはまた大層なものだな。では、ありがたく貰っていこう」

 ――はい。最後にもう一度、本当にありがとうございました――

 そして、時空守護神の声が聞こえなくなり、祭壇の間は静寂に包まれる。

 勇気の翠玉 を手に入れた!

 救助対象のバッカス達三人は救出したし、ヨルムガンド湿地帯の異変はこれで解決したと言ってもいい、戦果としては上々だろう。

 だが、この世界の時空守護神を封印したマオークらしきブタさんの正体、及びその目的については、不明瞭のままだ。

 分からんものは分からん、俺達はただ依頼を遂行しただけだ。
 小難しいことはギルドの上層部にでも丸投げしておけばえぇやろ。

「さて、帰るとしようか」

 早く帰って、家具屋さんにベッドのオーダーをしに行かないとな。





 アヤト達が、ヨルムガンド湿地帯の遺跡を後にしてから。

 湿地帯の毒流が突如として止まり、毒素が分解されて溶け消えてゆく光景を見ていた者がいた。

「……アリスはアリスをたすけ、アリスはアリスにふういんをとかれた」

 黒髪に黒いウサ耳カチューシャを身に着けた、少女。

 そしてその傍らにいるのは、

「えぇぃ勇者どもめ忌々しい!あやつらさえいなければ、ワシは世界の覇者になれたものを!」

 肥満体をブヨブヨと揺さぶりながら憤るのは、醜い豚のような王――マオーク。

「だいじょうぶ。アリスならきっと、アリスになれる」

「ふん!貴様の言うことは未だに理解出来んが、この命を救われた恩くらいは返してやらねばな」

 ブフン、と鼻息を荒くするマオーク。

「まぁよい、次だ。貴様が言う「アリスの復活」とやらには、次に何をせねばならんのだ」

「みずのみやこのアリス」

「は?」

「あのこは、アリス。あのこも、アリス」

 それだけ言い残して、少女は消える。

「ま、待て!待たんか!全く、わけのわからぬことをペラペラ喋るばかりで……!」

 次いで、マオークも姿を消した。





 バッカス達を無事にフローリアンの町まで送り届けたので、彼らをそのまま集会所まで同行させる。報酬の話とかもあるからね。

 オルコットマスターを呼び付け、事の顛末を話した。

「ほほ……なるほど、不可解な話じゃ。だが、ヨルムガンド湿地帯の毒が弱まりつつあるという事実は変わらぬ。アヤトよ、ようやってくれたの」

「恐縮です。そこでなのですが、今回の報酬を、バッカス達にも支払っていただきたいのです」

「ほほ……というと?」

 ギルドからすれば、勢い勇んで調査に赴いたのに手間をかけさせ、さらに救助のための人員を送って助けてやったのに、それで報酬を払うなんておかしい、と思われても仕方あるまい。

「彼らが最初に毒の根源が遺跡にあるだろう当たりを付け、後から来た者が追跡出来るように、落とし物を残していました。そのおかげで、俺達は早期に彼らを発見・救助することが出来ました」

 バッカスが何か言いたげな視線を向けているけど、向こうは俺達に"助けられた"側の人間だ。態度はともかく、下手なことを言って俺の不況を買い、報酬を総取りされたくないだろうさ。

「ほほ……なるほど。彼らもまた調査に貢献した、と言いたいのだな。良かろう、本来の報酬額をそのまま、とはいかぬが、その半分の額を出そう」

 うんうん、それでいい。
 ついでにアラクネの素材も、ギルドに高く引き取ってもらったので、懐がウハウハである。
 今日の夕食は贅沢するとしよう。



 神殿の守護神を封印した魔物 (多分マオークだろう)は明確化出来なかったが、それらについても今後とも目を厳しくして調査を行うというオルコットマスターの言葉を括りにして、一度集会所を出た。

「どういうつもりだ?」

 集会所を出て開口一番、バッカスが俺に疑念の目と声を向けた。

「なんでオレらにも報酬を払うように言ったんだ?お前ら三人で独占出来たはずだろ、それなのに……」

 ふむ、俺がただのお情けでお前達に報酬をくれてやるわけない……そう思うのもやむ無しか。
 ならば、ここは素直にこちらの思惑を明かすとしよう。

「決まっているだろう、これは"貸し"だ」

「……貸し?」

「バッカス。あんたは一度、リザの存在を惜しんで、自分達のパーティに引き戻そうとしたな?彼女自身はそれを拒否したが、だろう?」

「やむを得ない事情?」

「そう、例えば俺達の弱みを握り、それをダシにしてリザを自分達のパーティに引き渡すように強いる、とかな」

 瞬間、エリンとリザの鋭い視線がバッカスに向けられる。
 まぁまぁ、落ち着きなさいよ。

「そんなバカなことをさせないための、"貸し"だ。あんた達は俺達にひとつ"貸し"を作った。別に"貸し"を返す必要は無いし、リザに詫びる必要も無い」

 ただし、とワンクッション置いてから。

「その"貸し"を仇で返すようなことはするな。もしも、万が一、そんなことをやろうものなら……」

 その辺の石ころを拾い上げると、

だ」

 ぐしゃ、と握り潰した。

 ひっ、とその場にいた全員が慄いた。

「どこをこうしてやってもいいんだぞ?手でも足でも、股間でも……あぁ、胸をぶち抜いて心臓をこうしてやっても面白いかもなぁ」

 はっはっはっ、と愉快そうに笑ってみせれば。

「わ……分かった!オレらはもうお前らには関わらないし、近付かない!約束する!」

「何もそこまでしろとは言ってないんだが。まぁ、なんでもいいか」

 問題収束。



 緊急クエストも完遂し、バッカス達に釘をめり込ませ、家具屋さんにベッドのオーダーも発注した。

 さぁ、これで憂いは無くなったところで、残された問題はひとつ。

「リザの実家にご挨拶だな」

 今日の夕食は集会所の酒場でいただくことにして、料理の注文を終えてから、そう切り出した。

「えぇと……実家の方には、これからお手紙を送ろうと思っています。その返信次第になりますが……」

 おぉ、ちゃんとご家族と連絡は取っているんだな、良いことだ。

「リザちゃんの実家は、貴族様なんだよね。もし面談を断られたら、どうするの?」

 エリンが懸念を挙げる。
 今時聞かない台詞だが、「貴様のような若造に娘はやらん!」って感じの、出来の悪いホームドラマみたいな展開も有り得なくもない。

「その時は、として、自由にさせてもらうだけだな」

「な、なんて都合のいい解釈!?」

 リザが啞然としてらっしゃる。

「実際そうだろう?ご両親がリザのことを心から幸せになってほしいのなら、娘が選んだ男を見極めたいと思うはずだ」

 婚約者がどのような人物かを見極める必要が無いということは、『娘の将来などどうでもいい』と言っているようなものだからな。

「そういうものなの?アヤトのことだから、てっきりリザちゃんの実家の壁を壊して、強引にリザちゃんを攫うのかもって思ってたよ」

「か、壁を壊し……!?」

 おいこらちょっと待ちなさいエリン。
 リザの俺を見る目がひどいことになってるぞ。

「俺が誰彼構わずそんな強硬策に出ると思ってるのか」

「違うの?」

 真顔でキョトンと訊き返すなよ、否定しにくいじゃないか。

「というかアヤトさん、家の壁を壊してエリンさんを強引に攫ったことがあるんですか……?」

「そうだよリザちゃん。アヤトはね、お城の分厚い壁を素手でどかーんって殴り壊して、私のことを攫ってくれたんだよ」

 おいこらちょっと待ちなさいエリン (二回目)。

「や、やっぱりアヤトさんって人間じゃ無いんじゃ……っ?」

 ほら見なさい、リザが目を点にしてドン引きしてるじゃないか。

「エリン。その相手は無理矢理君を手込めにしようとしたから俺も無理矢理な手段で訴えたに過ぎません。対話で解決するならそれに越したことはありません。あとリザ、俺は間違っても人間です」

「お城の壁を素手で壊したことは否定しないんですね……?」

「うん、まぁな」

 俺は嘘をつかなくていい相手には嘘をつかない主義だよ。必要を迫られれば真顔で噓をつくけど。



 夕食を食べ終えたら、自宅に戻ってお風呂だ。
 エリンとリザが上がってから交代で俺も入り、上がったら眠くなるまで三人でリザの部屋で夜会をするつもりだ。

「あ、アヤトおかえりー」

「お疲れさまです、アヤトさん」



 俺が風呂から上がって来たら、既に二人が紅茶を広げてスタンバっている。

「お待たせっと。リザ、紅茶淹れてくれるか?」

「はい」

 俺もリザに紅茶を淹れてもらう。茶葉の良い香りがじんわりと染み渡ります。

 しばし紅茶を楽しんだところで、意を決したようにリザが話題を切り出してきた。

「率直にお訊きします。アヤトさんとエリンさん、お二人は何者なんですか?」

 本当に率直だな。

 恐らくリザも薄々と気付いているのだろう、『俺とエリンはこの世界の人間ではないこと』に。

 エリンと顔を見合わせてアイコンタクト。
 アヤトに任せるよ、と信じている顔をするエリンの表情を見て、俺はこれまでのことを順を追って話し、その都度にリザの質問に答えていく。

 そうして話し始めてから30分くらいは経過して、ようやくリザと出会ったところまで辿り着く。

「……エリンさんがその世界では勇者として魔王と戦っていた、というところまでは理解に及びます。けど、アヤトさんに関しては全く分かりません」

「だよねぇ。私も最初にアヤトのことを聞かされた時、「何の話をしてるんだろう?」って思ったから大丈夫、リザちゃんの気持ちは分かるよ」

 だろうなぁ、何せ話している俺本人でさえ、荒唐無稽なこと話してるよなーって自覚があるんだから。

「四億年も生きてるってどういうことですか、異世界転生の女神様ってなんですか、もう何が何だか……?」



『それは私が説明しましょう』



 ふとまた聞こえた、聞き覚えのあり過ぎる声。

「……おい、またですか女神様。またいきなり問答無用で吸い込んで、今度はどこの世界に放り込むつもりですか?別にそれならそれで構わないんですが、せめて準備くらいはさせてくださいよ?」

『失礼な!?私が出て来る度に変なことをすると思わないでください!』

 そしたら案の定女神様だった。
 ほんとに何しに来やがったんだこのダ女神様は、暇か?暇人なのか?少しは働くフリでもしたらどうなんだか。

「あ、女神様。こんばんはー」

 エリンは普通に対応している。

『はい、エリンさんこんばんは』

「えっえっ、なに、何の声?女神様?え、えぇ……!?」

 むしろリザの方が正しい反応だよなぁ。エリンは慣れ過ぎだ。

『あなたは初めましてですね、リザさん。先程にアヤトくんが話していた"女神様"とは、私のことですよ』

 ただでさえ目を回していたリザの目がさらに回って渦巻いてらっしゃる。

「で?今日はどうしたんですか?」

 埒が明かないので、俺の方から話しかける。

『いえ、今日は少しお話をしに来ただけですよ。ハーレムライフは、順風満帆のようですね』

「えぇ、まぁ、はい、そうですね」

 お話をしに来ただけと言うが、このダ女神様のことだ、きっとまた余計な世話をするに違いない。賭けてもいい。



『ところでアヤトくん。お二人とは、もうヤりましたか?』

「お い こ ら !!」



 バギンッ、と思わずカップを握り割ってしまった。

「バカか!?バカなのかあんたは!?俺がそこまでサルだと思ったら大間違いだぞ!?アーイアイアーイアイアーイアイアーイアイおさーるさーんだよーじゃねぇぞ!?」

 ついでにお目々は丸いけど尻尾は生えてないぞ。

『なん、だと……!?美少女二人と同棲しておいて手を出さないなど、正気の沙汰ですか!?あなた今世ではまだピッチピチの十七歳でしょう!もっとその場のノリに流されてもいいんですよ!?』

「なんてこった!まさか異世界転生の女神様じゃなくて、工口同人の女神様とは思わなんだ!」

 ちなみに、『エロ』ではなく、『工口(こうくち)』だ。

 俺の両隣から、「なんかアヤトさん、女神様と仲良いですね?」「前の時もこんな感じのやり取りだったよ」とかなんとか聞こえる。

 あーもーあーもーあーもー!!

「いいかこのムダ女神様!俺の休暇は俺のもんだ!何をどう過ごそうと俺の勝手だ!次余計なことしやがったら全身全霊全力全開全知全能であんたに反旗翻して天界ぶっ潰してやるから、そう思えッ!!」

『まっ、待ってください!?あなたがガチ中のガチで本気出したら、全時空の3%が消えてしまいます!そんなことしたら私クビになっちゃう!』

「うるせー!バーカバーカアホマヌケ!ポンポコリンのピーヒャララッ!!」

 強引に女神様とのリンクをブチ切る。

 ったく、ったくもうっ、IQが下がるような会話させやがってからにぁんのダ女神様は……ッ!

 ぜーはーと呼吸を荒くしていると、エリンとリザがポカーン顔をしてらっしゃる。

「…………あー、その、なんだ、気にすんな?」

 気にすんなと言われても気にするだろうけど。
 すると、エリンとリザは互いに顔を突き合わせて、俺に聞こえないように小声で話し合っている。
 聴力強化で盗聴可能だが、それをするのは無粋というものだ。
 エリンが照れたり、リザが慌てたり、二人して百面相を繰り返して、ややあって。

「あの……ね、アヤト。こんなこと急に言われたら、アヤトも困るとは思うの。でもね、私もリザちゃんも、本当にアヤトのことが好きだから」

「お、おぉ?もちろん、俺も二人のことは大好きだぞ」

 なんだなんだ、積極的だなエリン。お互いに好き合っているなら、好きと言われたら俺も好きだぞと応えるのが恋人のマナーだ。
 するとリザからも。

「で、ですから、そのっ……アヤトさんも男の人ですから、え、えっ、えっちなことにも、興味があると思いまして……っ」

 二人とも分かってるのかなぁ……一つ屋根の下、年頃の男女がこんな時間にこんな会話してたら、やることはひとつだぞ?
 ポン、とエリンとリザの頭に手を置く。

「いいか二人とも。俺もな、二人とこれから長い付き合いになるなら、"そういう日"は遅かれ早かれ来るとは思っていた」

 声のトーンを1オクターヴ落として、イケボ口調に。

「二人にその気があって、俺を受け入れると言うのなら、俺は男としてその想いにきちんと応える。……どうする、今ならまだ引き返せるぞ?」

 こういうものは、中途半端なのが一番良くないんだ。
 好きなら好きと、シたいならシたいと、ハッキリさせたい。

 二人の返答は――是。

 いいだろう。

 さて……
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