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負け犬に「負け犬」って言われたかねぇわ

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 ギャレット家内に連行された俺は、地下牢に放り込まれた。
 うーん、連行されてくるところからしてマジで犯罪者みたいな扱いだな。
 強ち間違ってないどころか、まさしくその通りだけどさ。

 時間帯はまだ昼間。
 とりあえず夜を待とう。
 こんな白昼堂々と脱走するわけにはいかんからね。
 その上で、今回はただ脱走するだけではない。



 



 それが、俺がここまで大人しく連行されてきた目的だ。
 例えシュヴァルツなんたらとかを全滅させたとしても、ガルシアがいる限り何度でもサダルスウドに追手を送り込んでくるに違いない。
『元を絶つ』必要があるわけだ。

 その"元"は、ガルシア。

 そう、こうやって牢屋に押し込められているのも、実は計算済みだ。
 背中に両手の小指を結ばれた状態で拘束されたらどうしようとか思ったりもしたが、ただ手錠かけられているだけなら、ぶっちゃけどうにでもなっちゃうんだよな。

 ただ、今はまだ状況が良くない。
 慌てずに時を待つだけだ。
 よし、昼寝しよーっと。おやすみー。



 ………………

 …………

 ……



「おいアルフレッド、起きろ」

「……んぉ?」

 聞きたくない声が聞こえたけど、反応しないわけにはいかないよな。

「ぁー、よく寝た……」

 牢屋の中での昼寝も悪くないな、なかなか出来ない経験だぞ。
 背伸びしたいけど手錠付けられてるしなぁ。
 で、鉄格子越しにいるのは衛兵を両脇に備えたガルシアだ。

「随分とのんきなものだな、アルフレッド」

 そりゃ牢屋の中で堂々とぐーすかぴーと昼寝する奴も、そうそういるもんじゃないだろうさ。

「慌てても仕方ないんでね。で、人違いだって分かりましたか?」

「ふん、白を切れるのも今の内だ。その内嫌でも自分が何者かを理解するだろう」

「あーそうですか。ところで、早く出してくれませんか?村の皆さん心配してるんで、帰りたいんですよね」

「お前は何もしなくていい。私が決めた相手と婚約を結び、跡継ぎさえ作れば、もうお前に価値は無いのだからな」

「えぇ……(困惑)」

 うわ、マジかー。
 種馬になって、勘違いブスを孕ませたらお役目御免で殺処分ってか?
 ひっでぇ話だ。

「価値がないってんなら、早いところ解放してくれません?こんなところで耄碌爺さんの世間話に付き合ってられるほど、俺も暇じゃないんですよ」

「貴様!仮にも親に向かってその態度は何なのだッ!」

「んなこと言い出したら、仮にも息子に対してこの仕打ちは何なんです?娘に至っては知らぬ存ぜぬと。……あんた、それでも父親をやってるつもりか?」

「チッ……もういい!お前はそこで一生、負け犬の遠吠えでもしていろ!」

 踵を返して俺の前から去るガルシア。どっちが負け犬だよ。

 窓……というか外に繋がる通気口を見て、空模様を確かめると、もう外は暗い。夕食が終わった辺りかな?

 じゃ、もう少し待つとしますか。
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