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アルフとクリスティーナ
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クリスさんは日当たりの良い空き地を俯瞰して、大体のアタリを付ける。
「この辺りに小さな畑を作りましょうか。それじゃぁ、まずは草刈りから」
まずは鎌を使っての草刈りだ。
クリスさんが手本を見せ、シュッと草を刈ってみせる。
ふむ、草を掴んで真っ直ぐ伸ばし、滑らせるように鎌の刃を当てると。
俺は早速、クリスさんの手本通りにやってみると、するりと草が刈られた。
一方のシャルも、クリスさんの手本を真似して草を刈ろうとするのだが、俺のように上手く刈れないでいる。
「む、むむ……んん?」
もしや鎌の刃が悪いのではとシャルは自分の持つ鎌を睨むが、もう一度クリスさんの草を刈る様を見て、再挑戦。
今度はすんなりと刈ることが出来た。
コツが要るな、これは。
一区切りが付いたので、一旦休憩。
刈り終えた草は籠に一纏めにして、天日干しした後は、家畜の餌として厩舎に送るのだそうだ。
「お疲れ様、アルフ先生」
クリスさんは、水筒からお茶をコップに注いで、差し出してくれた。
「お疲れ様です。草刈りだけでも時間がかかるものですね」
ありがたくお茶を受け取った俺は、ちまちまと飲む。
「草刈りで終わりではないわ。これから鍬を使って土壌を整えるから、大変なのはむしろこれからよ?」
「あぁ、腰とか疲れそうですね。シャルは何度か先行体験してるそうですが」
ちなみにそのシャルは"お花を摘み"に自宅に戻っているので、今は俺とクリスさんだけだ。
するとクリスさんは俺に近付いて小声で話してきた。
シャルとはまた違う良い匂いがするし、しかも素晴らしい美人だし、俺ちょっと困ってます。
「ここだけの話にしてほしいのだけど……シャルさんってば、畑から出てきたミミズに驚いて、驚いた拍子に足を取られて背中から思い切り倒れちゃったのよ」
「ありゃまぁ」
くすくす笑うように教えてくれるクリスさん。
そりゃそうか、作物が育つ土壌なんだ、地中にミミズくらい普通にいるよな。
「とっても可愛らしい声で驚いてたわ、「ふぁにゃぁっ」って」
「俺も聞きたかったです、それ」
「ふふっ……」
お花摘みから戻ってきたシャルは、アルフとクリスティーナの二人が、距離を縮めて仲睦まじそうに話している姿を、後ろから眺めていた。
「お兄様……」
その光景を見て、シャルは「お似合いだ」と素直に思った。
アルフは、身を粉にして自分のことを守り育ててくれている。
義妹が幸せになってほしいからと、ギャレット家から連れ出して、サダルスウドまで連れて行ってくれた。
けれど、それだけでいいはずがない。
無力で何も出来なかった自分に、やり甲斐のある仕事を与えてくれて、村人達も余所者である自分達を暖かく迎えてくれて。
だからこそ、アルフにも幸せになってほしい。
その時、アルフの隣にいるのがクリスティーナであれば……
「(いいえ、それは今じゃなくてもいいはず……)」
今は、クリスティーナから畑の作り方を教わるべきだ。
少しだけ心に蟠りが残るのを自覚しつつ、シャルは二人に声をかけた。
「お待たせしました。お二人で何を話していたのですか?」
「ん?頼れるお義兄さんがいてくれる、シャルさんが羨ましいって話してたのよ。ねぇ、アルフ先生」
「そのクリスさんから羨ましがられて、俺はちょっと反応に困ってたところだ」
クリスティーナの農作レクチャーは昼までだ。
限られた時間で出来るだけ教わらなくては。
「この辺りに小さな畑を作りましょうか。それじゃぁ、まずは草刈りから」
まずは鎌を使っての草刈りだ。
クリスさんが手本を見せ、シュッと草を刈ってみせる。
ふむ、草を掴んで真っ直ぐ伸ばし、滑らせるように鎌の刃を当てると。
俺は早速、クリスさんの手本通りにやってみると、するりと草が刈られた。
一方のシャルも、クリスさんの手本を真似して草を刈ろうとするのだが、俺のように上手く刈れないでいる。
「む、むむ……んん?」
もしや鎌の刃が悪いのではとシャルは自分の持つ鎌を睨むが、もう一度クリスさんの草を刈る様を見て、再挑戦。
今度はすんなりと刈ることが出来た。
コツが要るな、これは。
一区切りが付いたので、一旦休憩。
刈り終えた草は籠に一纏めにして、天日干しした後は、家畜の餌として厩舎に送るのだそうだ。
「お疲れ様、アルフ先生」
クリスさんは、水筒からお茶をコップに注いで、差し出してくれた。
「お疲れ様です。草刈りだけでも時間がかかるものですね」
ありがたくお茶を受け取った俺は、ちまちまと飲む。
「草刈りで終わりではないわ。これから鍬を使って土壌を整えるから、大変なのはむしろこれからよ?」
「あぁ、腰とか疲れそうですね。シャルは何度か先行体験してるそうですが」
ちなみにそのシャルは"お花を摘み"に自宅に戻っているので、今は俺とクリスさんだけだ。
するとクリスさんは俺に近付いて小声で話してきた。
シャルとはまた違う良い匂いがするし、しかも素晴らしい美人だし、俺ちょっと困ってます。
「ここだけの話にしてほしいのだけど……シャルさんってば、畑から出てきたミミズに驚いて、驚いた拍子に足を取られて背中から思い切り倒れちゃったのよ」
「ありゃまぁ」
くすくす笑うように教えてくれるクリスさん。
そりゃそうか、作物が育つ土壌なんだ、地中にミミズくらい普通にいるよな。
「とっても可愛らしい声で驚いてたわ、「ふぁにゃぁっ」って」
「俺も聞きたかったです、それ」
「ふふっ……」
お花摘みから戻ってきたシャルは、アルフとクリスティーナの二人が、距離を縮めて仲睦まじそうに話している姿を、後ろから眺めていた。
「お兄様……」
その光景を見て、シャルは「お似合いだ」と素直に思った。
アルフは、身を粉にして自分のことを守り育ててくれている。
義妹が幸せになってほしいからと、ギャレット家から連れ出して、サダルスウドまで連れて行ってくれた。
けれど、それだけでいいはずがない。
無力で何も出来なかった自分に、やり甲斐のある仕事を与えてくれて、村人達も余所者である自分達を暖かく迎えてくれて。
だからこそ、アルフにも幸せになってほしい。
その時、アルフの隣にいるのがクリスティーナであれば……
「(いいえ、それは今じゃなくてもいいはず……)」
今は、クリスティーナから畑の作り方を教わるべきだ。
少しだけ心に蟠りが残るのを自覚しつつ、シャルは二人に声をかけた。
「お待たせしました。お二人で何を話していたのですか?」
「ん?頼れるお義兄さんがいてくれる、シャルさんが羨ましいって話してたのよ。ねぇ、アルフ先生」
「そのクリスさんから羨ましがられて、俺はちょっと反応に困ってたところだ」
クリスティーナの農作レクチャーは昼までだ。
限られた時間で出来るだけ教わらなくては。
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