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暗雲
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エニケイ村。
祭壇に巣食っていた魔物が討伐されたことで、もう若い娘を生贄に差し出す必要が無くなり、村は本来の活気を取り戻しつつあった。
農作物は伸びやかに育てられ、家畜達も村人達の活気につられるように上機嫌。
天候の良い日も続き、もう恐れることは何も無い。
そんな暖かで穏やかな日々が続いていた時、ある旅団が村に訪れた。
全員が全員、黒衣を纏い武装をした、やけに物々しい集団だった。
家畜の世話にしていた村人の一人が彼らを見つけて、訝しげに声を掛ける。
「なんだあんたら。そんな怪しい格好して、ウチに何の用だ」
すると、リーダーらしき男は黒衣のフードをずらして顔を見せた。
人相が悪く、不健康そうな顔をした男だった。
「これは失礼しました。我々は冒険者パーティ『シュヴァルツドラッヘ』。依頼を受けて、サダルスウドと言う村を目指しているのですが、今日のところはここで一夜を明かそうと」
「冒険者か?少し待ってくれ、村長を呼んでくる」
村人は踵を返して、村長の自宅へ駆けていった。
その後ろ姿を見送りながら、後ろに控えていた一人が、リーダーに声を掛けた。
「しかし、なんでまたサダルスウドなんて辺境の田舎なんだ?確保対象がそこにいるらしいってのは分かるが……」
その声に対して、リーダーは「くくっ」と低く喉を鳴らした。
「今回は、有力貴族のギャレット家からの直々の依頼だ。首尾よく事が運べば、多額の報酬に加えて、貴族連中とのコネが出来る。俺達のような後ろ盾の無い者にとって、スポンサー様の存在は、喉から手が出るほど欲しい物だからな」
おまけに、と付け足すリーダー。
「確保対象のアルフレッド・ギャレットは戦闘の素人、義妹のシャルロット・ヘプバーンは臆病で気弱と来ている。そう労することも無いな」
彼らは、自分達を冒険者だと名乗ったものの、その実体はギルドから正式に認められていない非合法な組織――『闇ギルド』の冒険者達だった。
非合法と言うこともあり、彼らは正式な依頼を受けることが出来ず、ギルドを通さない不正な依頼を請け負うことで報酬を得ている。
そんな彼らが承った依頼とは、『アルフレッド・ギャレット』なる人物の確保、連行。
ギャレット家の関係者から、多額の報酬金と、非公式ながらも後援を行うと言う魅力的な条件を引き換えにこの依頼を受けた彼らは、ベルク村か、あるいはサダルスウドにいるらしいその人物を血眼になって探しているのだった。
そうこうしている内に、先程の村人が、エニケイ村の村長と屈強そうな男数人を連れてやって来た。
「お待たせしました、ようこそエニケイ村へ。お越しいただいて申し訳ないのですが、この村には宿や空き家が無いものでして」
「では、村の近くで野営を行わせていただきたい。それならよろしいか?」
「えぇ、それくらいなら」
「ありがとうございます……」
丁寧なお辞儀をしてから、リーダーは背後の面々に「野営の準備をしろ」と指示を下して、村から出ていく。
――爽やかに晴渡っていた空は、いつの間にか鈍色の雲が覆い隠していた。
祭壇に巣食っていた魔物が討伐されたことで、もう若い娘を生贄に差し出す必要が無くなり、村は本来の活気を取り戻しつつあった。
農作物は伸びやかに育てられ、家畜達も村人達の活気につられるように上機嫌。
天候の良い日も続き、もう恐れることは何も無い。
そんな暖かで穏やかな日々が続いていた時、ある旅団が村に訪れた。
全員が全員、黒衣を纏い武装をした、やけに物々しい集団だった。
家畜の世話にしていた村人の一人が彼らを見つけて、訝しげに声を掛ける。
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すると、リーダーらしき男は黒衣のフードをずらして顔を見せた。
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「冒険者か?少し待ってくれ、村長を呼んでくる」
村人は踵を返して、村長の自宅へ駆けていった。
その後ろ姿を見送りながら、後ろに控えていた一人が、リーダーに声を掛けた。
「しかし、なんでまたサダルスウドなんて辺境の田舎なんだ?確保対象がそこにいるらしいってのは分かるが……」
その声に対して、リーダーは「くくっ」と低く喉を鳴らした。
「今回は、有力貴族のギャレット家からの直々の依頼だ。首尾よく事が運べば、多額の報酬に加えて、貴族連中とのコネが出来る。俺達のような後ろ盾の無い者にとって、スポンサー様の存在は、喉から手が出るほど欲しい物だからな」
おまけに、と付け足すリーダー。
「確保対象のアルフレッド・ギャレットは戦闘の素人、義妹のシャルロット・ヘプバーンは臆病で気弱と来ている。そう労することも無いな」
彼らは、自分達を冒険者だと名乗ったものの、その実体はギルドから正式に認められていない非合法な組織――『闇ギルド』の冒険者達だった。
非合法と言うこともあり、彼らは正式な依頼を受けることが出来ず、ギルドを通さない不正な依頼を請け負うことで報酬を得ている。
そんな彼らが承った依頼とは、『アルフレッド・ギャレット』なる人物の確保、連行。
ギャレット家の関係者から、多額の報酬金と、非公式ながらも後援を行うと言う魅力的な条件を引き換えにこの依頼を受けた彼らは、ベルク村か、あるいはサダルスウドにいるらしいその人物を血眼になって探しているのだった。
そうこうしている内に、先程の村人が、エニケイ村の村長と屈強そうな男数人を連れてやって来た。
「お待たせしました、ようこそエニケイ村へ。お越しいただいて申し訳ないのですが、この村には宿や空き家が無いものでして」
「では、村の近くで野営を行わせていただきたい。それならよろしいか?」
「えぇ、それくらいなら」
「ありがとうございます……」
丁寧なお辞儀をしてから、リーダーは背後の面々に「野営の準備をしろ」と指示を下して、村から出ていく。
――爽やかに晴渡っていた空は、いつの間にか鈍色の雲が覆い隠していた。
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