残夏

ハシバ柾

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残夏

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 陽も天高い昼過ぎ。澄んだ夏空の下、後藤青年の自転車は軽快に坂道を下っていく。
 午後が全て空きコマである金曜は気楽なものだ。普段なら授業を午後に詰め、朝は二度寝を楽しむものなのだが、この日、金曜だけは例外だった。毎週のこの日には、外せない用事が入っているのだ。
 大通りから外れ、坂を下った先で後藤を待っていたのは、まだ真新しい墓地だった。
 事務所の周囲や休憩所、ベンチの付近ばかりに植えられた木々は、墓を訪れる生者らのためだけのものに見える。後藤は、日差しに焼かれる墓を哀れには思ったけれども、その潔さには、むしろ好感を持っていた。実際は、墓の周囲に木を植えるのは良くないとも言われるから、墓石に心を移すのは生者のエゴなのかもしれないが。
 いつものように亡き級友の墓に花を供え、手を合わせる。黙祷の間、今はこの世にいない彼が、何を思って生きていたのかと考える――後藤にとって、この一連の行為は、波立った心を落ち着かせるための儀式のようなものだった。
 この墓に眠っている少年が亡くなった当時、中学生だった後藤は、彼のことをあまりよく知らなかった。何せ相手は、たいてい教室の端で自分の世界にこもっているような子供であったし、そのために体の大きい子供たちにいじめられてばかりでもあったから、後藤を含む周りのクラスメートたちは、彼に近づこうともしなかったのだ。
 そんな彼は、ある時、唐突に教室からいなくなった。ショッキングな出来事に怯えた同級生たちも、本当は、彼の死を悲しんではいなかったのだと後藤には思えた。葬式に参列した後藤は、そこではじめて彼の名前を知った。
 彼が死んでしまった直後はあれこれと噂が立ったけれども、それも、波紋を広げた水面がいつかは凪ぐように、やがてはきかれなくなった。そうして彼は、本当の意味で、あの教室からいなくなってしまったのだった。
 後藤は額の汗を拭い、陽炎の中に佇む墓を見つめる。少年の墓は、教室にいた頃の亡き彼と同じように、ただ静かに、自分の空間を守っていた。
 後藤がペットボトルの水をかけてやると、物憂げに影を落としていた佐伯家の字が雫に輝く。喜んでいるのか照れているのか。後藤はふと、生前の彼もこんな表情をすることがあったのだろうかと考えた。だがそれも、今になっては知りようがないことだ。
 空になったペットボトルをしまった後藤は、毎度のように、事務所近くの自動販売機へと向かった。使い尽くしてしまったペットボトルの水の代わりに、コーヒーでも買うつもりだったのだが、妙なことに、緑茶のボタンを押してしまっていた。よく冷えた缶をあの少年の墓に持って行ってやらなくてはと、無意識のうちに思ったためかもしれない。そうであれば、彼の好きな飲み物が分かれば、もっと良かったのだろうが……
 墓の群れの中に、目指す墓碑を探していた後藤の視線が、そこから少し離れた、ベンチの方に留まった。
 そよぐプラタナスの葉の下、ベンチにかけた中年の男が、誰を思ってか、ぼんやりと墓の方を見つめている。その男もまた、後藤のように足しげくここに通う者の一人だったが、彼が誰かの墓前に参っている姿を、後藤は一度も見たことがなかった。ここにやってきては、あのベンチで長らく墓を見つめ、それでいて誰の墓にも参らず去っていく――それが、彼の常だった。
 あまりによく見かけるものだから、後藤も、自然と男の存在を認知するようになっていた。同時に、男の奇妙な行動から、“もしかすると彼も、自分と同じように、死者に妙な思い入れを持つ人物なのではないか”という期待を抱くようになってもいた。それでも後藤が彼に声をかけようとしなかったのは、そのきっかけを持たなかったからであった。
 そしてこのとき、偶然にも、後藤は冷えた缶を手にしていた。

「暑いですね。ここ、よろしいですか」

 後藤が声をかけると、男は驚いたふうに後藤の方を見た。彼も彼で、後藤の存在に気が付いていながら、言葉を交わすこともないだろうと思っていたのだろうか。

「どうぞ、私には構わずお座んなさい」

 男の言葉には、どこのとも知れない独特な訛りがあった。たった一言ではあったが、その柔らかな言葉尻は、後藤の心の底にすとんと落ち着いた。
 後藤は男の隣に腰かけると、手にしていた緑茶を彼に差し出した。

「ずっとそうしていたら、喉も渇くでしょう。よかったら」

「私で構わんのやろか」

 男には、後藤がそれを別の誰かに手向けようとしていたことが分かっていたらしい。後藤がそれでもとうなずくと、男は案外遠慮もせずに缶を受けとった。男が缶を傾けている傍ら、後藤は男の姿を改めて観察する。
 痩せた猫背を和服で包み、足元を駒下駄で固めた彼の出で立ちは時代錯誤ではあったけれども、不思議と、そのために悪目立ちするということはないように思われた。髪に白いものがまじり、くたびれた風であるから、遠目に見て想像していたよりも歳は行っているのかもしれない。
 男の膝には、白い長封筒が横たわっている。思えばそれも、男が常に大事そうに持っていた物だった。封筒の中身が何であるのか訊ねようとしたちょうどその時、男が口を開く。

「よほど大切な相手なのやな。週に一度は必ず来よるからには」

「……どうなんでしょうね」

 後藤がそうつぶやくのにも、男の顔色は変わらなかった。まるで、後藤がそう言い出すのを最初から知っていたように。後藤自身も、この男にならば本音を咎められないと確信していた。男が人の主張を弾く姿が想像できないためでもあったが、何より、男に自身と同じ匂いを感じていたことが大きかった。

「あまり大切ではないと思います。どんな奴だったかもあまり良くは知りません。名前だって、相手が死んではじめて知ったくらいですし」

「それじゃ、なぜ」

「自分でも分からないんです。それが知りたくて、通っているんだと思うんですけど」

 後藤の言葉に嘘はなかった。
 本当ならば、生涯、かの少年の名前を覚えることもなかったはずなのだ。後藤の世界の中で、あくまで彼は透明だった。そう、彼が死んだと伝えきくまでは――彼が自殺したと囁く噂に、疑問を持ってしまうまでは。

「縁かね」

 男はそう言うと、おもむろに立ち上がった。座っているときの猫背に対して、立ち姿はしゃんとして凛々しく見える。彼は空になった缶を片手に、いつもの封筒をもう片手に携え、木陰から一歩、日の下に踏み出した。敷石を打った下駄の歯が、ころりと鳴く。

「ありがとうな」

 気付かぬうちに彼の後ろ姿に見惚れていた後藤は、その礼が茶に対してのものだと理解するのに、ずいぶん時間を要した。おかげで、後藤がそれらしい言葉を返すより先に、男はさっさと歩き去ってしまっていた。 

……

 翌週末、あの男はやはり、いつものベンチで墓を見つめていた。後藤がやってくるのに気が付いた彼は、先日と同じく、さりげなくベンチの端に寄って後藤を出迎えた。

「この暑いのに、ご苦労さん」

「それを言うなら、あなたもじゃないですか」

 いくら木陰とはいえ、渇いた熱気には視界も眩む。ここに何時間も座っているなんて、ひどく疲れるに違いない。墓を見つめるばかりでじりじりしているよりも、いっそ、太陽の下墓前に参ってから、クーラーのかかった休憩所に飛び込んでしまった方がいい――後藤がそう提案するのにも、男はかぶりを振った。

「何を考えて墓前に出向かんのでなく、行かれないのや」

 彼のこの言いようが、後藤には理解できなかった。どんな理由でもって、墓前で死者を悼んではいけないということがあるものだろうか。

「こんなこと言っていいのかどうか分かりませんが、俺なんて、相手のことを全く知らなかったっていうのに、自分で言うのもアレですけど……白々しく毎週来てるんですよ。生前の相手との折り合いとか、気にするもんでしょうか」

 男は寂しげに微笑んだ。後藤の言葉を否定せず、かといって肯定もしない、曖昧な態度だった。彼は、相手を気遣いつつも、自らの心に踏み込まれることを静かに拒んでいた。

「合わせる顔がない。もう五年になるけれども……。彼の周りの生者が私を忌むのもそうであるし、いちばんは私のために」

 男の言葉は後藤の問いに応じてのものだったが、その口調は、まるで自身に語りかけているようなそれだった。
 遠慮がちな風が、男を慰めるように吹き抜ける。前触れなく訪れた穏やかな沈黙に、後藤は、男がそう言った意味を問うタイミングを見失ってしまった。
 しばらく、二人は口をきかなかった。静けさが妙に心地好いのは、和らいだ日差しのためかもしれなければ、男が持つ独特な空気のためかもしれない。
 そうしているうち、事務所の方から、子供の声と、軽やかな足音が聞こえてきた。家族連れで墓参りだろうか。

「――五年前ってったら、俺のクラスメートが死んだのも、同じ頃なんです。あ、いつも墓参りしてるの、クラスメートなんですよ。ほら、あの墓。生きてる間はよく知りもしなかったのに、本人が死んでからは遺影の表情が忘れられないなんて、ひどい話ですよね」

 後藤のつぶやきは、半ばひとりごとのようだった。彼自身、聞いてもらおうとも思っていなかったらしく、男の反応を確かめることもなく、言葉を続ける。

「透明人間みたいな奴でした。声も小さいし、存在感も薄いし。いると分かるのも、いじめられてるときくらいのもので。他のクラスには仲のいい人がいたみたいでしたけど、教室ではずっと一人でした……いや、どうだったかな。覚えている限りでは、確かそうだった気がします」

 亡き級友に関して、後藤が知っていることはあまりにも少ない。とは言っても、彼以外のクラスメートたちに聞いたところで、答えは似たり寄ったりだろう。物静かで、おとなしくて、いるかいないかもわからないような子。死んだことで、ようやく周囲に認知されたかわいそうな子。かく言う後藤も、彼をそう認識していた者の一人だった。

「何をされても文句も言わないような静かな奴だったんですけど、たった一度、大声を張り上げてるところを見たことがあるんです。あの時は本当にびっくりしました。それまでは、まともに声も聞いたことなかったくらいだったから。でも、それも一度だけです」

「一度というのは?」

「クラスのうるさい奴らにノートを取り上げられた時だったはずです。あんなにおとなしい奴が、なんでノートくらいで大騒ぎするのかとも思いましたけどね」

 後藤は笑ったが、これを聞いた男は神妙な面持ちで、何やら考え込むようにしてうつむいた。

「その子にとっては、たいそう大事なもんやったのやろなあ」

「でも、ノート一冊ですよ」

 茶化すような調子でそう口にした後藤は、男の膝の上の封筒を見て、はっとした。例えばあのノートが、大切な人からの手紙だったなら、何年も絶やさず書きつづけてきた日記だったなら……それを知らない第三者が、からかえたものだろうか? 笑っていいものなのだろうか?
 ふいに、男が激しく咳きこむ。ひどく痰の絡んだ、心臓でも吐き出すのではないかと思わせるような咳だった。

「大丈夫ですか? 人呼びましょうか?」

 男は身体を折り、苦しげに喘ぎながらも、いつものことだからと後藤の申し出を拒んだ。聞けば、肺を悪くしているとのことだった。後藤は彼を気遣ったが、当人は若いころの喫煙が祟ったのだと笑うばかりで、あまり深刻には考えていないらしかった。

「いつだめになる、いつだめになると考えていると、体よりも心の方が先に参ってしまうものや。せっかく与えられた時間なら、ちゃあんと大事にせんといかん」

 男はそう言うと、またひとつ咳をした。

……

 大学生の夏休みは遅い。高校生だった頃の感覚を拭いきれていない後藤は、七月の半ばからそわそわとして、それから実際に夏休みが始まるまでの一か月間は目も当てられないような状態だった。講義に出席していながらも心ここにあらずで、友人たちにも『ゾンビ学生』とからかわれたほどだが、それも今日で終わりだ。
 今期最後の講義を終え、弁当を手に、早めに墓地を訪れた後藤は、亡き級友の墓に手を合わせてから、見慣れた和服姿を探した。
 いつものベンチに男の姿はなかった。後藤はがっかりしたが、しばらく待っていれば来るかもしれないと、ベンチに座って待っていることにした。
 男がようやくそこに現れたのは、後藤が昼食にと持ってきた弁当を食べ終えてから、三十分ほど待ったころだった。後藤がベンチの端に寄ってやると、男は軽く目礼をしてからベンチに腰かけた。立っているときにはぴんと伸びていた彼の背中が、座ったとたんに丸くなる。

「普段は早くからいらっしゃいますけど、今日はゆっくりなんですね。ちょっと意外です」

「途中で息を切らしてしまって。そちらさんこそ、えらい早いこと」

「明日から夏休みなので、普通は二コマあるところが午前の一コマだけだったんです。そういえば、俺が大学生だって話しましたっけ。まあいいか。大学生なんです。最近ペンキ塗りかえてた、入り口がかまぼこみたいな病院の近くの大学分かりますか、あそこに通ってるんです。で、学校終わってどうせ暇だし、表の入り口に入るとこの道から大通りに出て十分くらいの所に弁当屋があるじゃないですか、あそこで弁当買って、ここで昼飯にしてたんです」

 後藤は弁当の空箱を振ってみせた。本当は、もっと早く男に会えることを期待していたのだが――彼の本音は、あえて口に出さずとも、男には伝わっていたようだった。

「待たせてしまってすまんなあ。私に聞かせたいことが、たくさんあったのやろ」

 男の言葉で自身を省みた後藤は、恥ずかしさに顔を赤くした。男を待っている間あれこれ話そうと思いを巡らせていたために、彼を前にしてやたらと饒舌になってしまっていた自身に気付かされたのだ。

「すいません、しゃべりすぎました」

「かまわんかまわん。人の話というのは、それだけで面白いもんなのや」

「さっきみたいな、どうでもいい話でもですか?」

「どうでもいい話なんてものはないのやで。誰かがひとことひとこと、時間を惜しまず口にしているというだけで」

 そうは言っても、他人の無駄なおしゃべりまで全て拾っていたら、疲れ切ってしまう――後藤はそう思ったが、口には出さなかった。
 自身の周囲にあるものをありのままに受け入れ、尊んでいるからこそ、この男はこんなにも静かでいられるのだろう。街の喧騒も、解(ほぐ)してみればあらゆる音であり、誰かにとって大切な言葉であったはずなのだが、今の後藤には、その事実を素直に受け止めることができないのだった。

「なに、心配するようなことじゃあない。それが若さというものや。――ところで、向こうの弁当屋ということは、日替わり弁当を?」

「えっ、ああ、はい。中華スープがついてて鯖が入ってる、金曜のやつです。結構量があって美味いのに安いんで、よく通ってるんですよ。水曜のから揚げ弁がおすすめです。野菜炒めも、実は曜日によって味付けがちょっとずつ違うんですって。俺には全然分からないけど。食べたことあります?」

 思わぬ切り口に、後藤は一瞬戸惑った。この辺りではいっとう知られた弁当屋だから、この男も、あそこに通っていた身なのかもしれない。訊ねてみれば、やはりそうであるらしかった。

「少し前の話だけれども、木曜の鮭弁ばっかり食べとったなあ」

「木曜って、鮭だったんですか。今の木曜はカツ弁なんですよ。平日もあと一日、頑張れ! っていう意図らしいです。知ってる限りではずっと鮭は月曜だったんで、変わったのは俺がまだ中学生の頃かな。味は変わってないと思いますけど」

 これを聞いた男が、懐かしむように目を細める。ちょうど夏休みという機会を与えられていた後藤は、来週の墓参りを月曜にしようと決めた。
 ふつりと会話が途切れたが、それもごく自然な流れだった。後藤も、男との間の沈黙が心地好いものだと気が付いてからは、無理に言葉を続けようとはしなくなっていた。
 彼は日の光をこぼす枝葉を仰ぎ、再び、男の方に目をくれる。男は、ぼうっと墓の方を見つめていた。後藤と言葉を交わす間にも、彼の心は、変わらず死者の方に向けられていたのだろう。後藤は、男の視線の先を見定めようとしつつ、彼に問いかけた。

「ご家族ですか?」

「いや、歳の離れた友人や」

 男は一言そう答えたが、それ以上あれこれと話すつもりはなさそうだった。
 この前もそうだったのだが、この男は、自ら多くを語ろうとはしない。かといって、真っ向から人を拒絶することもない。彼自身が望まない問いでない限りは、投げかければ答えてくれる。
 後藤は、彼が口をつぐんでしまうボーダーラインを探るように、続けてこう訊ねた。

「どんな方だったんですか。もちろん、無理にとは言いませんけど……」

 男の方は、しばらく黙り込んでいた。だがそれは、答えたくない問いだったというわけではなく、どう話してやるべきかと考えていたためだったらしい。過ぎし日に思いを馳せるように宙を見つめた彼は、つぶやくような調子で語りはじめた。

「――他(ひと)とはちょっと違うもんが見えとる少年やった。気は強くなかったけれども、恐ろしいくらい芯の通った子でなあ。ただ、それを周りに強いようとはせんかった。他には、何を考えているか分からないと思われていたかもしらん」

 男の言葉に、後藤が眉をひそめる。

「“少年”? その方、若くして亡くなったんですか?」

「残念ながら。当時、彼は十五……いや、早生まれであるから、十四やな。まだ十四やった」

 五年前に早生まれで十四といえば、ちょうど、後藤と同期に当たる。墓の方を向いていた男は、後藤の顔色が変わったことに気づかぬまま、言葉を継いだ。

「物静かに見えて、身の内に激しいものを秘めていてな。自分の中でこうと決めたら、それをやり通すだけの強さを持っとった。かといって、頑固というわけではないのやで。自分の意思で周りを傷つけるのでなく、周りを尊重しすぎるあまりに自分を裏切ってしまうような子やった」

「どうして死んでしまったんですか。病気か何かで? それとも――」

 ――自殺? 後藤は、口にしかけた言葉をあわてて飲みこんだ。しかし、後藤の喉に引っかかった憶測が、男には見えていた。男は、そうだとかそうでないとか答えるかわりにこう言った。

「彼の気持ちは、彼にしか分からん。だから私は、今もこうして、彼の心を問いにくるのや」

……

 夏休みはじめの月曜日。早々に級友の墓に参った後藤は、例の弁当屋で買ってきた二人分の弁当をぶら下げて男を待った。
 待ち人は、正午を少し過ぎた頃、杖を突きつつ現れた。男はようやくベンチに辿りつくと、疲れ切った様子で身を預ける。これまでは杖に頼らずとも歩くことができていたというのに、どうしてしまったのだろうか。

「具合、良くないんですか」

「大丈夫、いつものことや。近頃は、薬のおかげで力が抜けてしまって」

後藤が気遣うのにも、男は笑ってみせるだけだ。後藤はいっそう不安になったが、男自身の口から病状が芳しくないと告げられることもまた恐ろしく思える。何とも言いかねた彼は、あれこれと訊ねる代わりに、男の分にと買っておいた弁当を差し出す。先週話題に上がった、“月曜の”日替わり鮭弁当だ。

「これは?」

「“木曜の”鮭弁です。よろしければどうぞ」

 この一言で、男は後藤の意図を察したらしい。彼は弁当を受け取ると、嬉々としてふたを取った。やはり力は入らないのか、その手は震えている。後藤が気を利かせて割ってやった割り箸も、脱力した彼の手からはあっさりと滑り落ちてしまった。男が大丈夫と繰り返して微笑むさまを見た後藤は、いたたまれなくなった。

「つらいですよね。不便でしょうし……俺にできることがあれば、なんでも手伝わせてください」

「そうやなあ。じゃ、それを貰ってもかまわんかいな?」

 男が指したのは、中華スープ用にとそえられたプラスチックフォークだった。男は後藤からそれを受け取ると、不器用ながらも片手で握りしめる。

「これなら握れる」

 男のその言葉を聞いた後藤は、自分の言動があまりに失礼だったことに気づき、情けなくなった。
 身体が不自由になってしまった彼の姿は、後藤の目に、“哀れ”に映っていた。これまで当たり前にできていたことができなくなる――若く健やかな後藤には、想像もつかない感覚。だからこそ後藤は、男自身が、うまく動かない自分の身体を忌み、嘆いているものだと思っていた。けれども彼は、そんな後藤に対し、まだ自分の力で立つことができると示してみせたのだ。
 不思議と、後藤の無意識に謝罪の言葉は浮かばなかった。謝られるべきであるはずの当人が、そんなものを求めていないように思えたためかもしれない。

「変わっとらんなあ」

 男は不器用に解した鮭を口に含むと、懐かしむように目を細める。その横顔は嬉しそうでありながらどこか物悲しくもあり、隣で見ている後藤をおかしな心地にさせた。

「学生の頃を思い出しますか」

 後藤がそう問いかけると、男が不思議そうな顔をした。何かおかしなことでも言っただろうかと慌てる後藤の姿に、男はからからと笑った。
 彼は、視線だけで亡き友人の墓を示すと、こう言った。

「ああ、なるほど、なるほど。少し前の話と言ったのは、本当に少し前の話だからでな。今でこそこの辺りに暮らす身ではあるけれども、私がここにやってきたのは、ほんの数年前なのやで。ただ、思い出の味と言われればそうかもしれん。一人ではすぐに食事を忘れてしまう私のために、何度か、彼が買ってきてくれてなあ。それも、決まって“木曜の”鮭弁当を。彼は、夕飯が食べられなくなるからと、並でなく小弁当ばかり……もともとあまり買い食いもせん子や、宅(うち)で夕飯を作って待っている母親を不安にさせたくなかったんやろな」

「優しかったんですね、その方」

「優しかった。優しすぎたくらいや。――自分自身以外には、とても」

 その一言は、平生穏やかな男の口から出たと思えないほどに、冷たい音をもって響いた。その言葉に隠された真意を知らない後藤の肌がも、ぞわりと粟立つ。何がこの男にこれほどの怨みを抱かせているのか――訊ねてしまえば、自身も同じ淵を覗くことになるように感ぜられ、後藤は唾を飲んだ。
 頭上を覆う木の葉のざわつきが、尻尾に静けさを引き連れて、風とともに抜けていく。残された静謐は、これまで男との間に感じてきた静けさよりも、いくぶん気詰まりなものだった。出るはずだった軽口が、喉の奥で解け消える。代わりにこぼれたのは、これまで胸に秘め続けてきた、亡き級友に対しての思いだった。

「……俺がいつも墓参りに来てる相手のクラスメート、自殺だったんじゃないかって言われてたんです。それが本当なのかただの噂なのかは、多分だれも知らないと思うんですけど。かわいそうですよね、まだ若いのに。あいつが何で死んだのか、ずっと気になってるんです。本当に自殺なのだとしたら、何を思ってそんなことをしたのか、とか……何がしてやれたかとは考えたことないんですが」

 後藤はそこまで言い、乾いた唇を舐める。男がどんな顔をしているか見る余裕など、今の彼にはなかった。まるで、見逃された罪でも告白しているような心地だ。

「なんていうか、ずっともやもやしてるんですよ。生きてる時と、死んだ後の相手の扱いが自分の中で全然違ってて、なのにその理由も分かんなくて。どうしようもないからこんな風に墓参りしてるんですけど、それでもまだ……」

 後藤の言葉は、ときおりふつりと途切れた。普段の饒舌さを捨て、ひとことひとことを吟味し、慎重に紡いでいるのだ。傍らの男はそれを分かってくれているらしく、急かすことなく後藤の話に耳を傾けている。

「申し訳ないと思ったわけじゃないです。いじめられてるのを見てるだけだったことなんかは、ちょっと申し訳ないと思いましたけど、それくらいです。直接俺が何かしたわけじゃないし。……でも、そうだなあ……生きてる間に、名前くらい覚えておきたかった」

 うつむき、目を閉じた後藤の眼裏には、うっすらと、かの級友の姿が浮かんでいた。生きていた時の顔はうまく思い出せないが、遺影の笑顔がこわばっていたことは覚えている。もしかすると、教室でもあんな顔をしていたのかもしれない。
 透明人間のようなあの少年は、笑顔の写真さえ遺さずにいなくなってしまった。誰に理由を告げることもなく、あまりにも突然に。

「もしかすると、俺、あいつのことが知りたいのかもしれません。それも、今のじゃなくて、生きているときのことを。本人が生きてる時はどうでもいいと思ってましたし、今さら知ってどうするんだって話ですけど。……これってやっぱり、あいつが死んだから気になってるだけなんでしょうか」

 後藤にはまだ、自分がどうして亡き彼を気にかけるのか分からずにいた。それが分かれば、この墓参りもいつかは終わるのかもしれないが。その答えが“人一人いなくなった衝撃にうろたえているだけだった”という情けないものであっても、目の前の男の口から告げられるならば、素直に受け入れられる気がした。むしろ、そう言ってほしかったのかもしれない。
 けれども男は、やんわりと問い返すだけだった。

「そう思うかいな」

「分かりません。けど、俺があいつの墓参りをしてる理由がただの好奇心だっていうなら、苦しいです」

「どうして」

 後藤は言葉に悩んだが、緊張でからからになった喉に冷めた中華スープを流し込むと、ため息とともにこう答えた。

「それが一番悪いことであるような気がするんです」

……

 温い雫がアスファルトを叩き、煩わしく自転車の車輪に絡みつく。
 久方ぶりの雨雲が町にやってきたのは、後藤が忘れ物を取りにと大学を訪れた帰り道のことだった。彼はあわてて紙類をビニールで包み、ペダルをこぐ足を早める。
 夏休み前はならいつも往復していた大学から家までの道のり。なんなら、目をつぶっていたって家に辿りつける――そう思っていた後藤は、いつもの墓地の表に立ってはじめて、自身が家路から外れていたことに気が付いた。大粒の雨に、靴の中までびしょ濡れにされてしまったあげく、道まで間違えてしまうなんて、ひどい日だ。
 途方に暮れた後藤は、仕方なく駐輪場に自転車を止める。
 駐輪場から短い階段を上った先の事務所は、カーテンが閉められているらしく薄暗かった。手前にある自販機だけが、駐車場の濡れたアスファルトをぼんやりと照らし出している。こんな日に墓参りに来る客もいないだろうに、けなげなものだ。
 事務所ででも雨宿りさせてもらおうと、階段から駐車場へと上がった後藤は、まさかとは思いつつ、男と並んで話したベンチの方を見やった。青々とした葉の天井に覆われた、濡れたベンチ。見慣れた猫背をそこに見出した後藤は、願望から現れた幻覚かと戸惑い、何度も目をこすった。けれども、彼の姿は変わらずそこにある。傘も差さずに、木の葉からこぼれる雨粒を受けながらも、まっすぐに墓の方を見つめるまなざし。
 ――彼だ。
 考えるより先に、後藤は駆け出していた。傘がないのは、彼も同じだった。

「何やってるんです、びしょ濡れじゃないですか!」

 駆け寄ってきた後藤に、男は小さな咳で答えた。二人の頭上で、雫を受け止めた大きな葉がぱたぱたとはしゃぐ。

「なにって、墓参りや」

 男は平然とそう言うと、後藤に向けて微笑んだ。その短いまつ毛から雨粒がこぼれる。後藤は、途中のコンビニで傘を買ってこなかったことを悔やんだ。

「そうじゃなくって……ああもう、事務所でタオル借りてきます。待っててください」

 ビニールで包んだ荷物をベンチに放り、身を翻そうとした後藤を、男の手が引き止める。脱力した細い指先は、それでも後藤の手首をしっかりとつかまえていた。 

「拭いてもすぐまた濡れてしまうやろ」

「それもそうですけど……いやいや、ここにいちゃダメですって。身体に響きますよ」

 後藤がそう諭すのにも、男は首を横に振るばかりだった。
 男一人残して自分だけ雨宿りするのを心苦しく思った後藤は、ズボンに水の滲みる不快感に眉をしかめつつも、おとなしく彼の隣に腰を下ろした。身体が冷えていく分、自身の吐息がやけに熱く感じられる。
 思えば、後藤の手首を掴んだ男の手もひどく冷えていた。雨の冷たさが、夏はもう終わりつつあるのだと囁いているようだ。
 ちょうど、男の方も後藤と同じことを考えていたらしかった。

「ひとの心をかき乱しては、嵐のように去っていく。なんとも不思議な季節やなあ」

「夏の話ですか」

「そう。去る時は後も残さん。あの少年と同じように」

 その言葉の冷ややかさは、この前会った時に感じたそれによく似たものだった。けれどもこのとき、天から注(そそ)がれる雨のしずくが、まるでガラスの輪郭を伝っていくように男の言葉をなぞり、彼の心の深くにあったものを後藤に垣間見せた。男の呪い――他でもない彼自身に向けられた自責の念と、深い後悔を。
 男と、彼が失った友人との間に何があったのか。後藤にはそれを知るすべもなければ、知る必要もない。後藤の目に映るのは、自分で自分に釘を打ち、動けなくなってしまった哀れな男の姿だけだった。
 かつて、亡き友人に“合わせる顔がない”と言った彼は、今も墓前に赴けず、このベンチに囚われたままでいる。もしかすると、これからもずっとそうしているつもりだったのかもしれない。まだ互いに言葉を交わす前の、一人、このベンチから墓を見つめていた男の姿を思い返した後藤は、物悲しさに襲われた。
 夏は過ぎ、人は去ぬ。それらが在った痕跡さえ、やがては木枯らしに吹き流されてしまう。茶色くしなびた葉に、誰が夏の面影を見出すというのか。

「……本当に、そうなんでしょうか。俺にはそうは思えませんけど」

 後藤のつぶやきは、無情に流れていく時間への、ささやかな抵抗のようにも思われた。
 たとえ秋が訪れて木の葉を落とし、冬が訪れて辺り一面が銀色に染め上げたとしても、そこに佇む人々は、夏が過ぎたことを知っている。かの季節がそこに在ったことを覚えている。 

「確かにあいつは、笑顔の写真さえ遺さずにいなくなってしまいました。でも、何にも残らなかったわけじゃないでしょう? だって、俺やあなたが、ここにいるじゃないですか。あいつのことを……五年前の夏の終わりを、“あいつ”がいなくなった事実を、ちゃんと覚えているじゃないですか」

 男は答えなかった。青々とした葉の輪郭を滑り滴った雫が、彼のこめかみから伝い落ちていく。うつむいたままの彼の表情は判然としなかったが、その頬を流れる雨の雫は、涙のようにも見えた。

「ずっと一人でここにいたから、あいつのことを覚えているのが自分だけみたいな気がしてたんでしょう。俺もそうなんです。通ってるうちに、あんなやつ存在してたのかなって思えてきて……。ごちゃごちゃ考えて、余計にわけ分かんなくなってました。でも、“縁”って言葉を思い出して、はっとしたんです。ほら、はじめて話した時にそうおっしゃってたじゃないですか。あれですよ。あれで、何もかも腑に落ちたというか」

 今は亡き級友に引き付けられるのが“縁”のためなのだとしたら、後藤が男を目に留めたのも、彼に声をかけたのも、何かの“縁”によるものに違いない。
 そもそも、後藤が誰の墓を目当てにここにやってきているのか、ずっとここから墓を見つめていた男ならば、知っていたはずなのだ。同じ相手を悼み、心を悩ませる者であると、気が付いていたはずなのだ。

「お願いします、教えてください。あいつは――佐伯は、どうして死んだんですか」

 男はしばらく黙り込んでいたが、ふいに傍らの杖をとり、立ち上がった。その背中は、これ以上踏み込まれることを拒むようなそれだった。
 男のことがようやく分かりかけてきたというのに、こんな形で別れるのはあまりにも寂しい。後藤はあわてて男に頭を下げる。

「待ってください! ……すいません、気を悪くしたなら謝ります。さすがに今のはなかったですよね。申し訳ありません」

 後藤がそう言うのにも、男は振り返ろうとしなかった。木陰から一歩踏み出した彼の肩に、雨粒が容赦なく突き刺さる。

「いかんなあ。そちらさん、話せば話すほどに私の若いころに似て見える」

 そう言った男の声は震えていた。彼はやはり後藤に背を向けたままだったが、それは、後藤に対して憤っているからではないらしかった。
 男の立ち姿も、もう、いつものようにしゃんとしてはいない。後藤にはなぜだか、弱々しく頼りないその後ろ姿こそが、男の本当の姿であるように思われた。 

「前にも言ったように、彼の気持ちは、彼にしか分からんのや。そうであるからこそ、そちらさんもここに通っているのやろ。私と同じに」

 それが、後藤が彼から聞いた、最後の言葉になった。

……

 あの日以来、男が墓地に現れることは、後藤が知る限り二度となかった。空になったベンチを覆う豊かな葉の天井が、長らくともに過ごした客人を失い、寂しげに揺れる。亡き級友が前触れもなくいなくなってしまったように、男もまた、忽然と姿を消してしまった。
 とはいえ、男が全くなにも残さなかったかと言うと、そうではない。彼がいつも大事そうに抱えていた白い長封筒が、少年の墓碑の前に横たえられていたのだ。それが男自身が置いたものなのか、はたまた男を知る他の誰かが置いたものかは分からない。けれども後藤には、この手紙は男自身が自らの手で少年に捧げたものに違いないと思えた。そうであってほしかった。
 男がいなくなったことを知ったその日、丁寧に糊付けされた封筒の表に、これまでなかったはずの“佐伯”の字を見出した後藤は、思わず笑みをこぼした。彼は封を切ることなく、線香を上げようと持ってきていたライターで火をつけ、手紙を燃やした。封筒の切れ端に記された達筆の文字列が、ほんの一瞬後藤の目前をひらりと舞って、炎に溶けていった。
 男がいなくなってようやく、後藤は彼の名前を知ったのだ。
 男が姿を消した後も、後藤は墓地に通い、亡き級友の墓に線香を上げることをやめなかった。少年を悼んでのことか、あるいはあの男を待っているのか――今になっては後藤自身にも分からない。ただ、導かれるようにしてここに足を運び続けている。
 季節は廻り、今年もまた、墓地に夏が訪れる。ベンチの背を守るようにして立つプラタナスの葉が青々と輝き出すのを見ると、あの男のことが思い出された。彼は今どこで何をしているのだろうか。それとも、病に負けて、とっくにこの世からはいなくなってしまったのだろうか。後藤は、一度も当人に呼びかけることのなかった二人の名前を口の中で転がしつつ、鮮やかな夏色へと変わりゆく空を仰いだ。
 ふと――背後から肩を叩かれた後藤は、不思議に思って振り返る。そこには誰の影もなかった。ただ、プラタナスがしゃんと立っているだけだ。彼は妙な心地になった。確かに、肩を叩かれたようだったのだが……

「嵯峨さん」

 口をついて出たのは、言葉を交わしていた頃には知ることもなかった、あの男の名だった。背筋のまっすぐな木が、肯くように葉を揺らす。そのひょうきんな様子に、後藤は声を上げて笑った。木の葉の音も、笑っているようだった。
 その日から後藤は、自販機で買ってきた緑茶をベンチの端に置き、その隣に座って墓を見つめるようになった。彼の姿は、傍から見れば奇妙なものだったかもしれない。けれどもそれは、彼が――いや、“彼ら”が亡き少年にしてやれる、最高の弔いだった。
 夏は過ぎ、人は去ぬ。たとえそれらが形を失っても、遺された者たちは、去った季節を決して忘れない。苦悩であったり、懐かしみであったり……失われたあの夏の欠片は、彼らの胸のなかでくすぶり続ける。
 後藤は、心を焼くじりじりとした痛みの正体を探ることをやめた。それは今や、彼と少年、そしてあの男を結びつける、たった一つのよすがなのだから。
 空になったベンチに微笑みかけた後藤の内には、今も、儚い夏の残滓が煌々と輝いていた。
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