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ハタセ

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彼の事情 No.3〔八野 深弦の場合〕

彼の事情 No.3〔八野 深弦の場合〕7

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今思えば会いに行ったところで「君、誰?」と言われるのが恐かったのかもしれない。
三春はそれくらい他人に対して関心がなく淡泊だ。
一度でも離れてしまったら
三春の中からその人間は抹消されてしまうのだろう。
それは、俺の存在を大きく揺るがすことになる。
三春から忘れられているのなら、俺の生きてる意味はなくなる。
俺には三春だけなのに。
その三春が俺の事を忘れるなんて、到底受け入れられる事態ではなかった。

「でさ!今度俺その黒の頭に会えることになったんだよ!凄くね!?」

「…え?なに?ごめん聞いてなかった」

「八野はいつも俺の話聞いてくんないな!」

「だからごめんって」

気付けばその頃につるんでいた仲間の一人が自慢そうに俺に話しかけてきていた。
三春の事を考えていたから、曖昧に頷いて受け流していたのが気にくわなかったようで
彼は怒りながらもまた再度説明をしてくれた。

「だから!俺黒の頭に会えるんだって!!」

「黒って…あー、あのここら辺を占めてる族だっけ?」

「そう!!でさっ俺の知り合いの先輩が黒に入っててさ!今度集会があるからってそこに呼んでくれるって!」

興奮気味に彼はそう話し、最高に嬉しそうな顔を俺に向ける。

「ふーん。良かったね」

会いたい人に会えるなんて、羨ましいな
こっちは会いたくても恐くて会えないのに。

そう考えると胸が苦しくなってそれを吐き出すように小さくため息をついた。

「でもやっぱ族の集会だろ?俺一人でそこに向かうのも恐いからさぁ…お願い八野!一緒に付いてきてくれない!?」

「えっ…」

「一生のお願い!付いてくるだけでいいから!すぐに帰ってもいいから!」

「なんで俺なの…嫌だよ」

両手を合わせて顔の前に持っていき拝むみたいに俺に頭を下げてくる彼に心底呆れる。

「頼むよ八野~」

「仮にも不良の端くれなら一人で行けるようになりなよ」

「不良でも族と関わるのこえーの!」

「なら行かなきゃいいだろ…」

「それもやだ~!俺本当に黒の頭尊敬してて!あ!柏木さんって言うんだけどな!」

「いいよそんな情報、いらないから」

「八野~!もうお前しか頼れる奴いないんだって!他の奴らは黒ってだけではしゃいで怒られそうだし。もし柏木さんに失礼でもあったら俺ぶっ殺される!」

「大げさ…」

もう半ば半泣きで俺に縋りついてくる彼を手で追い払おうとしたら逆にその手を握り込まれてしまった。
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