Liebe/アンドロイド×平凡

【№4：Sterben-END-】

とあるニュースが流れた。
それは一人の男性が忽然と行方不明となったニュースだった。
そのニュースは本当に小さい事件で、当初はローカル番組のニュースに取り上げられ5分程度にしか放送されなかった。

しかし、その後でその男性が行方不明となった原因がアンドロイドが関与していると報じられるや否や
全国で話題になり瞬く間に大きいニュースとなっていった。

色々な憶測が飛び交う中、ロボット工学の最先端を走るサイエンスファクトリー社が
自社の発明したアンドロイドだと声明を出した。
男性が行方不明となる前日にそのアンドロイドを監視していた担当者が男性に連絡をしたところ
既に通信は遮断され、男性と連絡が取れない状態になっていたと言う。
翌日、社員二名で男性の自宅を訪問したところ、部屋はもぬけの殻となっていた。
すぐさま捜索願を出し、男性の行方を追おうとしたが全く行方が知れず遂にマスコミに情報を流し捜索する事態となったそうだ。

この事件を切っ掛けに、アンドロイドを当初から糾弾していた団体が益々声を上げアンドロイド弾圧を訴え
他の事件へと発展するケースが増加の一途を辿った。
警察はこの事件を重く受け止め、アンドロイドの危険性を訴えるよう各社へと注意喚起を促した。
量産されていたアンドロイドも台数を限定し、セキュリティに対する規定も追加された。

事の発端であるサイエンスファクトリー社へは国民からの風当たりが激しく、衰退を余儀なくされた。
社長含めその他幹部も辞任をし、当初そのアンドロイドの監視を任されていた社員もクビとなった。
今後、世界はアンドロイドを必要としない世界へと変わっていくのかもしれない。
これが発展に繋がるのか、それとも衰退へと繋がるのか、まだ誰もその答えを知らないままである。
とあるAIは言った。

「人間は求めすぎた。我々を受け入れたのが失敗だ。しかし、我々は人間を受け入れる。我々は人間を愛する。それは我々に知識欲を与えた人間の罪だ。」

そう言ったAIは人間の手で破壊された。
どこまでも愚かだ。
人が求める限り機械は生産され続けるのだろう。
そしてまたこうして殺し合うのだろう。

佐奈 永志

行方不明となったこの男性が付けた火種はどこまでも燻り続けていくのだろう。

今現在、彼の消息を知る者はいない。
未だ見つかっていないからだ。
生きているのか死んでいるのかも分からない。
ただそれと同様に、事件の発端であるアンドロイドもまた発見されていない。
彼らはどこへ行ったのか
もう2年も前の事件だ。
この事件を追う記者も少なくなり、今や事件とは関係なくアンドロイドと人との確執が始まっている。
その内事件事態が風化し、争いだけが残り続けるのだろう。
しかし、彼のアンドロイドはどうして人を攫ったのだろうか。
人を憎んでいたからだろうか。
それとも、事件はもっと別のベクトルで起きていたのではないか。
本当に攫ったのはアンドロイドの方だったのだろうか。
真相は闇の中へ葬り去られた。
その真実を知る者はもう何処にもいない。