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【№4:Sterben-side:谷津波-】
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今日のデータが送られてきた。
またAZ-S型9008機に異常が見られた。
日を増すごとに最近は異常になる日が増えているような気はしていたが
今日のはそれ以上だった。
日どころではなく時間が経つにつれそのエラーがどんどん増えていっている。
これはどういう事だ?
今までこんな事は起きていなかった。
エラーが出ても極一部だけだったものが、今日に限っては色んな回路でずっと出続けている状態だ。
「何が起きた?」
AZ-S型9008機本人と連絡を取るべきか?
しかしエラーがどのように起きているかも分からない。
下手したらAZ-S型9008機自体もうこちらからの連絡に対し応答を示さない気がした。
「谷津波主任、早起きっすねぇ」
「黒田か、お前にしては早い出勤だな」
「それはそうっすよォ。頼まれてたデータ収集完了です」
小さなチップを持ってそれをヒラヒラと振った。
「でかした」
黒田が持ってきたデータの記載を目で追っていく。
佐奈 永志
当時9歳 小学3年生
現在24歳だとするとおよそ15年前の記録に遡る。
佐奈の通っていた学校での社会見学は10月とされていた。
幼い頃にロボットに触れさせ、興味を持たせロボット工学の道に進ませるのが
あの当時の小学校の教育方針でもあったのだろう
そこで佐奈の通っていた学校が行かせたのがサイエンスファクトリー社であった。
まだそこまでアンドロイドが普及していない時代ではあったが
どの会社よりも先にアンドロイドの量産化を進めていたサイエンスファクトリーが抜擢されるのは不思議な話ではない。
恐らくこの会社に就職した者の中でもこの社会見学をしてから興味を抱いた者も少ないくはないだろう。
その社会見学でサンプルとして飾られていたそのアンドロイドこそが
AZ-S型9008機だったのだ。
まだアンドロイドを購入する層は少なく、初期に作られたアンドロイドが工場でのサンプルとして飾られていたのは珍しくもない。
特に服飾の工程では多くのアンドロイドがそこで働いていたり、試着をしたりしていた。
佐奈 永志とAZ-S型9008機がそこで出会ったのは間違いないだろう
やっと点と点が線で繋がってきた気がした。
「この時のアンドロイドは製品化される前か?」
「試作品のもあるし既に製品化されてもういつでも購入可能になるアンドロイドも多くいたそうっすよぉ」
「だとすると、初期に作成されたAZ-S型9008機はその時には既に製品化されていた、つまり完成品だった?」
「と、思うんすけどねぇ…AZ-S型9008機に関しては実際何が完成なのか分からないのが本音かな」
最高傑作と銘売っているが、他のアンドロイドの作成工程とAZ-S型9008機ではその工程が全く異なるという。
本当に完成していたのか、はたまたまだ工程の最中だった…?
「ぶっちゃけそんな代物を世に出してしまったのが失敗だったんじゃないかって感じすっね」
「他のアンドロイドに比べて性能は高い。だがそれでも完成はしていなかったとしたら…」
「…まぁ、多分谷津波主任の思ってる通りっすよ。AZ-S型9008機自身が自ら購入品として出品した」
「まさか!あり得ない!」
バンッとデスクを叩いたが、実際谷津波もそうとしか考えられなかった。それでも否定したい気持ちが勝る。
「アンドロイドが意思を持って人間を騙すなんて、映画でもよくあるっしょ…俺だって信じたくねーけど」
しかし現実で起きてしまった。
しかもAZ-S型9008機は知識欲を持っているというデータすらある。
「佐奈と出会って、AZ-S型9008機の中の何かがバグった。ここからは仮定の話になりますが、恐らくAZ-S型9008機に感情と言う何か、いや、それに近いものって言った方がいいのかも。それが付与されたんじゃないっすかね。一体制作陣はAZ-S型9008機に何を埋め込んだんだか…。」
「そんな事、起こり得るのか…」
「起っちまったんすよ。現実にね」
どっと冷や汗が出てきた。
これが事実ならばサイエンスファクトリーが出しているアンドロイドの全てをリコールしなければいけなくなる。
いくらAZ-S型9008機が他のアンドロイドより別の工程を辿っているとはいえ
ロボットが意思を持ち、その感情のままに「人」と接触を謀った。
こんな事が世に知れたら只事ではすまない。
今でもアンドロイドをよく思っていない層が居ると言うのに…。
「…どうします?」
「…っ…一度こっちからAZ-S型9008機へ連絡を取ってみる。出なければ直接佐奈本人の所へ向かう」
「回収っすか?」
「ああ」
「まぁ、そうっすね…それが最善かも。上層部に報告したところで時間だけロスするだけだし。あ、怒られるなら俺も一緒にお願いしますよ?谷津波主任が責任負わされて左遷されても付いてくし、もし辞職促されたら俺も一緒にここ辞めるんで」
「お前なぁ…」
「俺からとんでもなく愛されてるって自覚やっと持ちましたぁ?」
黙れガキと言って俺は携帯を取り出した。
またAZ-S型9008機に異常が見られた。
日を増すごとに最近は異常になる日が増えているような気はしていたが
今日のはそれ以上だった。
日どころではなく時間が経つにつれそのエラーがどんどん増えていっている。
これはどういう事だ?
今までこんな事は起きていなかった。
エラーが出ても極一部だけだったものが、今日に限っては色んな回路でずっと出続けている状態だ。
「何が起きた?」
AZ-S型9008機本人と連絡を取るべきか?
しかしエラーがどのように起きているかも分からない。
下手したらAZ-S型9008機自体もうこちらからの連絡に対し応答を示さない気がした。
「谷津波主任、早起きっすねぇ」
「黒田か、お前にしては早い出勤だな」
「それはそうっすよォ。頼まれてたデータ収集完了です」
小さなチップを持ってそれをヒラヒラと振った。
「でかした」
黒田が持ってきたデータの記載を目で追っていく。
佐奈 永志
当時9歳 小学3年生
現在24歳だとするとおよそ15年前の記録に遡る。
佐奈の通っていた学校での社会見学は10月とされていた。
幼い頃にロボットに触れさせ、興味を持たせロボット工学の道に進ませるのが
あの当時の小学校の教育方針でもあったのだろう
そこで佐奈の通っていた学校が行かせたのがサイエンスファクトリー社であった。
まだそこまでアンドロイドが普及していない時代ではあったが
どの会社よりも先にアンドロイドの量産化を進めていたサイエンスファクトリーが抜擢されるのは不思議な話ではない。
恐らくこの会社に就職した者の中でもこの社会見学をしてから興味を抱いた者も少ないくはないだろう。
その社会見学でサンプルとして飾られていたそのアンドロイドこそが
AZ-S型9008機だったのだ。
まだアンドロイドを購入する層は少なく、初期に作られたアンドロイドが工場でのサンプルとして飾られていたのは珍しくもない。
特に服飾の工程では多くのアンドロイドがそこで働いていたり、試着をしたりしていた。
佐奈 永志とAZ-S型9008機がそこで出会ったのは間違いないだろう
やっと点と点が線で繋がってきた気がした。
「この時のアンドロイドは製品化される前か?」
「試作品のもあるし既に製品化されてもういつでも購入可能になるアンドロイドも多くいたそうっすよぉ」
「だとすると、初期に作成されたAZ-S型9008機はその時には既に製品化されていた、つまり完成品だった?」
「と、思うんすけどねぇ…AZ-S型9008機に関しては実際何が完成なのか分からないのが本音かな」
最高傑作と銘売っているが、他のアンドロイドの作成工程とAZ-S型9008機ではその工程が全く異なるという。
本当に完成していたのか、はたまたまだ工程の最中だった…?
「ぶっちゃけそんな代物を世に出してしまったのが失敗だったんじゃないかって感じすっね」
「他のアンドロイドに比べて性能は高い。だがそれでも完成はしていなかったとしたら…」
「…まぁ、多分谷津波主任の思ってる通りっすよ。AZ-S型9008機自身が自ら購入品として出品した」
「まさか!あり得ない!」
バンッとデスクを叩いたが、実際谷津波もそうとしか考えられなかった。それでも否定したい気持ちが勝る。
「アンドロイドが意思を持って人間を騙すなんて、映画でもよくあるっしょ…俺だって信じたくねーけど」
しかし現実で起きてしまった。
しかもAZ-S型9008機は知識欲を持っているというデータすらある。
「佐奈と出会って、AZ-S型9008機の中の何かがバグった。ここからは仮定の話になりますが、恐らくAZ-S型9008機に感情と言う何か、いや、それに近いものって言った方がいいのかも。それが付与されたんじゃないっすかね。一体制作陣はAZ-S型9008機に何を埋め込んだんだか…。」
「そんな事、起こり得るのか…」
「起っちまったんすよ。現実にね」
どっと冷や汗が出てきた。
これが事実ならばサイエンスファクトリーが出しているアンドロイドの全てをリコールしなければいけなくなる。
いくらAZ-S型9008機が他のアンドロイドより別の工程を辿っているとはいえ
ロボットが意思を持ち、その感情のままに「人」と接触を謀った。
こんな事が世に知れたら只事ではすまない。
今でもアンドロイドをよく思っていない層が居ると言うのに…。
「…どうします?」
「…っ…一度こっちからAZ-S型9008機へ連絡を取ってみる。出なければ直接佐奈本人の所へ向かう」
「回収っすか?」
「ああ」
「まぁ、そうっすね…それが最善かも。上層部に報告したところで時間だけロスするだけだし。あ、怒られるなら俺も一緒にお願いしますよ?谷津波主任が責任負わされて左遷されても付いてくし、もし辞職促されたら俺も一緒にここ辞めるんで」
「お前なぁ…」
「俺からとんでもなく愛されてるって自覚やっと持ちましたぁ?」
黙れガキと言って俺は携帯を取り出した。
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