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第三 マシュマロ大食いバトル

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見知らぬ部屋へと案内された。

マンションの一室らしい雰囲気だ。

ただ、室内には大量の段ボールが置かれている。

ダンボール、ダンボーラー、ダンボーレストだな。

少なく見積もっても三百箱以上はあるだろう。

水の二リットル入りペットボトルが十本置かれている。

全部で二十リットルの水か。

家具はちゃぶ台と壁際に大きなモニターがあるのみ。

モニターは四分割されて、四台のちゃぶ台が映っている。

生中継なのかな?

左上が一、右上が二、左下が三、右下が四と表示されている。

ちゃぶ台の上に手を出すと、モニターの左下に手が映った。

今回の俺は三番か。

ちゃぶ台の上には開封された段ボールが置かれている。

段ボールの中身は百グラム入りのマシュマロの袋だった。

ちゃぶ台の前に座った。

スピーカーから声がした。

アナウンス「ルールを説明する。
      制限時間内にマシュマロを尤も多く食べた一名が勝ち抜けとなる。
      一袋を完食したらカウントされ、それ以外は切り捨てとする。
      水は幾ら飲んでも構わないがカウントされない。
      部屋から出る事は出来ない。
      制限時間は二百時間、では始め」

モニターには四人の手と後頭部が映っている。

映像のみで音声は聞こえてこない。

他の三人は袋を破り食べ始めた。

ちょっと待て、制限時間二百時間って、聞き間違いじゃないよな。

モニターでは時間経過が表示されている。

既に十秒が経過している。

二百時間て、八日と四時間だろ。

どんだけ長丁場で大食いをさせる気だよ。

水、いや水分って一日に三リットル位必要な筈だったと思う。

三×八で二十四リットル必要だけど、見える範囲の水は20リットルだけだ。

後は水道水を飲めって事か。

一応確認しよう。

台所へ行き、蛇口を捻ったが水は出ない。

可笑しいな、故障か。

風呂へ移動、シャワーも水をもたらしてはくれない。

トイレはどうなってるんだ?

トイレへと赴く。

説明書きがあった。

『肛門付近の糞便は電波により完全に分解されます』

『使用後に蓋を閉めてボタンを押すと
 真空方式で流れます』

つまり、トイレットペーパーはなく、水も流れないのだ。

トイレのそばには大量の使い捨ておしぼりが置かれていた。

ひょっとして、水はあの二十リットルしか存在しないっぽいぞ。

嫌な予感がし、段ボールを調べた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二時間を掛けて、全段ボールを開封し終えた。

段ボールはボールにはならんな。

出て来たのは、マシュマロが四十九袋だけで、他は空っぽだった。

なんだよこれ、どうして?

マシュマロ五キロと水二十リットルで八日を過ごせって事か。

これ大食いバトルじゃない、耐久レースだ。

モニターを見た。

経過時間、二時間三十五分四十四秒。
一番、三十袋。
二番、二十五袋。
三番、零袋。
四番、三十三袋。

死んだな、あの三人は。

食料が他にないんだから。

そうか、トイレットペーパーが無いのもその為か。

無理すれば食え無い事もないから。

体力の消耗を抑える為に、寝よう。

ベッドで休む事にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

モニターを確認する。

経過時間、三十時間四十五分四十七秒。
一番、五十袋。
二番、五十袋。
三番、四袋。
四番、五十袋。

三人共食料が尽きのは確実だな。

俺が残りの時間で合計五十袋を食べ終えても、全員同点だよな。

勝ち抜けるのは一人なんだから、どうするんだ?

じゃないか、三人は競技終了時まで生きてらんないんだ。

画面上には飲み干されたペットボトルがちゃぶ台の上に整列している。

三人が死んだ時点で俺の勝ちか。

俺が早く楽になるには、三人の早い死亡を願わなきゃならないのか。

相当に酷い奴だよ、俺は。

なんだよそれは、なんでこんな事になってんだよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

百二十時間経過時点で、他の三者は餓死し、俺の勝ち抜けとなった。
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