25 / 60
25話 妖精魔法
しおりを挟む「ころころ~」
「ほっほっほ。たしかにこりゃあ結構楽しいかもしれんのう」
宿屋『金の糸車』に棲みついた妖精の座敷わらしちゃんから、遊んでくれたお礼にと教えてもらった魔法『ぴかぴかすとりんぐ』。
アサツキさんの話によると、どうやらこれは『妖精魔法』というものらしい。
「アサツキさん、妖精魔法って、普通の魔法とは違うんですか?」
「ベルベルちゃんは、魔法についてどれくらい詳しいんだい?」
「全然です。この世界に来て、すぐに勇者候補を外されて城から追い出されちゃいましたので……」
本来なら今ごろ勇者育成学校とやらに入って、基礎の基礎から魔法の勉強をしている頃だろう。
「よし、それじゃあ魔女のお姉さんがこの世界の魔法の仕組みについて教えてあげよう。と、その前に……」
「その前に?」
「朝ごはん、食べに行かない?」
__ __
「いただきま~す……う~ん! やっぱりコロポックルのオムライスは最高ね!」
というわけで、アサツキさんと朝食を食べるためにビストロ・コロポックルにやってきました。
「なるほど、これがベルベルちゃんおすすめのオムライス……たしかにとても美味しい。それに……」
「ウマイウマイ?」
「こんなに可愛い妖精さんもいるなんてね」
「ウチのマスコット店員のオムオムちゃんだよ!」
ウェイトレスのホップちゃんが飲み物のおかわりを入れてくれる。オムライスの妖精ちゃん、名前を付けてもらったのね。
「ふふ、なんだかベルベルちゃんみたいな名前だね」
「オムオムちゃんの生みの親だからね!」
「ちょっと違うけど……」
オムオムちゃんはコロポックルのオムライスが大好きな食器の妖精で、もっとお客さんに食べてもらいたいという気持ちが行き過ぎて無意識にイタズラをしていたところを、オムライスのサンプル品と合体させることで、お店のマスコットとして今では大人気になっている。
「オムオムちゃんも可愛いけど、そっちの看板娘ちゃんも可愛いね」
「えっ? そ、そんな、ウチなんて別にぃ……えっへへ」
「アサツキさん、誰かれ構わずそういうことするのやめたほうがいいですよ」
「な、なんでさ。ただ褒めただけだろう?」
自覚無いのが1番よくないわ。いえ別に、やきもちとかじゃないんだけど……
「コホン。と、とにかく、宿で言っていた魔法の話の続きをしようか」
「あ、はい。お願いします」
「まず、ボクたちが使う魔法というのは主に2種類に分けられる。“精霊魔法”と“魔石魔法”だ」
「精霊魔法と、魔石魔法……」
アサツキさんの説明によると、精霊魔法というのは、この世界にいる“精霊”と呼ばれる生命体の力を借りて行使する魔法のことで、これは精霊使いの才能がある者や、精霊に好かれやすい者など、一部の人にしか使えないらしい。
そして、魔石魔法というのは使い方を学べば基本的には誰にでも使える魔法で、魔道具の材料などにもなる“魔石”の魔力を使って発動する魔法のことらしい。
「魔法を使うまでの工程は違えど、この二つはどちらも根幹は一緒でね。魔法を発動するのに必要なのは“魔力”だ」
「魔石魔法は分かりますけど、精霊魔法も魔力なんですか?」
「精霊自体が魔力の塊というか、高濃度の魔力が集まって生まれた生命体だからね。その精霊にお願いして力の一部を借りる、というわけさ」
「なるほど……」
「そして例外として存在するのがベルベルちゃん、君の“妖精魔法”だ。これは本来、妖精だけが使える魔法でね。これにはなんと、魔力を必要としないと考えられている」
「妖精魔法は魔力が要らないんですか? それじゃあ一体なにをエネルギーにして……」
「ボクたちは“妖力”と呼んでいるよ」
妖力……なんというか、妖怪同士が戦う少年漫画とかで出てきそうな力ね。
「妖精魔法はあまり研究が進んでいなくてね。まず今までに妖精魔法を使えるという人間がいなかったのと、妖精魔法自体あまり強いものでもないから、調べている人も少ないんだ。調べようにも話が通じないしね」
「そうなんですね」
あれ? でも座敷わらしちゃんに教えてもらった魔法の効果は、魔物を拘束するとかだったから、結構役立ちそうな気もするんだけど……
「そんなわけでベルベルちゃん、妖精魔法の取り扱いには十分注意を払うように」
「え、どうしてですか?」
「いくら今まで注目されていなかった魔法といえど、ベルベルちゃんは人類で初めて妖精魔法を使える人になるかもしれないからね。悪~い人たちに捕まって、人体実験に使われちゃうかもしれないよ?」
「…………」
「使う時は普通の魔法って言っといた方がいいかもね」
「そ、そうします……」
44
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
クズな恩恵を賜った少年は男爵家を追放されました、 恩恵の名は【廃品回収】ごみ集めか?呪いだろうこれ、そう思った時期がありました、
shimashima
ファンタジー
成人に達した少年とその家族、許嫁のジルとその両親とともに参加した恩恵授与式、そこで教会からたまわった恩恵は前代未聞の恩恵、誰が見たって屑 文字通りの屑な恩恵 その恩恵は【廃品回収】 ごみ集めですよね これ・・ それを知った両親は少年を教会に置いてけぼりする、やむを得ず半日以上かけて徒歩で男爵家にたどり着くが、門は固く閉ざされたまま、途方に暮れる少年だったがやがて父が現れ
「勘当だ!出て失せろ」と言われ、わずかな手荷物と粗末な衣装を渡され監視付きで国を追放される、
やがて隣国へと流れついた少年を待ち受けるのは苦難の道とおもいますよね、だがしかし
神様恨んでごめんなさいでした、
※内容は随時修正、加筆、添削しています、誤字、脱字、日本語おかしい等、ご教示いただけると嬉しいです、
健康を害して二年ほど中断していましたが再開しました、少しずつ書き足して行きます。
眠り姫な私は王女の地位を剥奪されました。実は眠りながらこの国を護っていたのですけれどね
たつき
ファンタジー
「おまえは王族に相応しくない!今日限りで追放する!」
「お父様!何故ですの!」
「分かり切ってるだろ!おまえがいつも寝ているからだ!」
「お兄様!それは!」
「もういい!今すぐ出て行け!王族の権威を傷つけるな!」
こうして私は王女の身分を剥奪されました。
眠りの世界でこの国を魔物とかから護っていただけですのに。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる