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35話 喫茶ペチカの新メンバー

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「皆様、今回は助けて頂きありがとうございましたですの!」


 第7エリアの大教会に囚われていたシスター・ハイドロを助け出し、ひとまず喫茶ペチカに戻ってきた俺たち。
今ごろ向こうではハイドロが逃げ出したことがバレて大慌てになっているかもしれないな。


「第8エリアまでは追ってこないんだよな?」


「クラウトさんが言うには、エリアごとに管理者が分かれていてお互い干渉しないようになってるらしいルナ」


「なるほどじゃの」


「ほな安心かあ」


 8か所ある庶民エリアごとにいる管理者は、それぞれが個別に活動していて他のエリアとはあまり連携などはしていないようだ。
今いる第8エリアは俺たちがピックルスとビネーガ達から解放して、管理が実質的に解除されたからここにいる分にはハイドロも安心というわけだ。


「あの~それで、わたくしは今どこに連れて来られているんですの?」


 ハイドロは店の中をきょろきょろと見渡す。今は営業時間外なので、店にいるのは俺とサタンとルナ、それに……


「こんにちわ!」


「はい、こんにちはですの」


「フレイムの名前はフレイムです!」


「あら~可愛らしいお嬢さんですの。わたくしはハイドロですの」


「ここは第8エリアのカフェ&バー、喫茶ペチカよ。私はここの店主のウェスタ。フレイムは妹なの」


「第8エリアの喫茶ペチカ……クラウト様から聞いたことがありますの。なんでも店に出現した露出魔の変態を成敗したとか」


「そういえばそんなこともあったのう」


「あの露出狂が被ってた壺がけっこう高値で売れて良かったよな」


 変態と悪には屈しない場末のカフェ、喫茶ペチカをよろしく。


「それで、クラウト様の協力者であるお二人はどうしてこの喫茶店に?」


「ああ、俺たちはここの2階に住んでるからな」


「お世話になってるのじゃ。実質拙者たちのアジトなのじゃ」


「アジトって言われるとなんだか悪の組織みたいねえ」


 まあ基本的にプリデビパワーですべてを解決してきたからな。力こそパワー、ノーデストロイ・ノーライフ。


「こほん、改めまして、わたくしはシスター・ハイドロと申しますの。第7エリアの大教会でハーピィエルフ様を信仰していたところ、いつの間にやら信仰を禁止され、教会を追い出されましたの」


 その後、ハーピィエルフ信仰の禁止を解除させるためにクラウトに協力していたところ、管理局に見つかって留置所と化した大教会の地下に幽閉されたという。


「助けていただいたご恩はハーピィエルフ様に誓って忘れませんの。なにかわたくしに出来ることがありましたら何なりとおっしゃってくださいの」


「あら、それなら喫茶店に懺悔室でも作ろうかしら?」


「お悩み相談じゃの」


「隠れハーピィエルフ信徒さんのお話でしたらいつでもお待ちしておりますの」


 ラジオのお便り募集コーナーかよ。


「じゃあとりあえず、ハイドロちゃんにも喫茶店で働いてもらおうかしら」


「まあ最近忙しかったしな、これでシフトに休みができる……」


「ホワイトさんはその分バータイムのほうに出てもらうわ」


 なんでや。休ませてえな。


 __ __


 カランコロン。


「いらっしゃいませですの~おひとり様ですの?」


「あ、はい……えっなにシスター? 新キャラ?」


「新キャラ言うな」


「あ、ホワイトさんお疲れ様です!」


「おうお疲れ。……ダフマってそんなキャラだったっけ?」


 ハイドロが新人バイトとして働き始める1日目。喫茶ペチカの常連である湯浴み屋『ヘル&レイブン』の厨二病店員ダフマがお客さん第1号だ。


「今日から働き始めた新人シスターのハイドロだ」


「あなたはハーピィエルフを信じますか?」


「えっここ喫茶店ですよね? あと我は魔王サタン様を信仰している邪の者なのでそういうのは受け入れられぬ」


 無駄に付けている眼帯を包帯まみれの左腕で抑えるダフマ。うん、いつも通りである。


「今日から提供してるハイドロスペシャルメニューを頼んだら、彼女に悩みや懺悔を聞いてもらえるサービスがセットで付いてくるぜ」


「懺悔サービスがある喫茶店なんて聞いたことないのだが」


 まあそれは俺もそう思うわ。


「でもなんか面白そうなので頼んでみます」


「頼むんかい」


「ご注文承りましたの。ウェスタさ~ん、ハイドロスペシャルの懺悔フライドチキン入りましたの!」


「は~い!」


「……ハイドロさんのスペシャルメニュー、フライドチキンなんですか? シスターなのに?」


「ハーピィエルフ様の教えは“悩んだときは肉を食え”ですの」


 だいぶ肉食系な宗教だなおい。


「それで、懺悔サービスのほうはどうすんだ?」


「あ、是非、その……」


「ん、どうした?」


「ホワイトさんは聞いてはいけませんの」


「あ、すいません」


 そうだよな、懺悔だもんな。俺はそそくさとハイドロとダフマのいる席から離れる。


「そういうとこじゃぞおぬし」


「マシュマロ林、そういうとこルナ」


「そういうとこるな~」


「はいはい、すんませんね。女心と秋の空ってね」


「今は春じゃぞ」


 知ってるよ。


 …………。


「それでは、ダフマさんの懺悔を聞かせていただいてもよろしいですの?」


「あ、はい。我はこの店の近くで湯浴み屋をやっているのですが……」


「はいはい。なるほど湯浴み屋を」


「喫茶ペチカのみなさんも良く利用してくれるんです」


「なるほどなるほど」


「それで、敬愛するホワイトさんもよく来てくれるんですけど」


「はあ、敬愛する……ですの?」


「ホワイトさんが入浴している間に、脱衣所にあるホワイトさんの服というか下着をですね……ごにょごにょ」


「ほうほう、なるほどなるほど……はい、わかりました。あなたの罪は今ここで許されました」


「ありがとうございます……ハーピィエルフ様に感謝……」


 …………。


「お待たせしましたの」


 ダフマとなにかひそひそと話してから戻ってきたハイドロが、なぜかこちらをチラチラと見上げてくる。


「ん、どうしたハイドロ? 俺の顔になにか付いてるか?」


「いえ、その……ホワイトさんはダフマさんの事をどう思っておりますの?」


「どうって、まあ仲の良い友人って感じか?」


「そうですの」


 そしてまた何故かチラ見しだすハイドロ。なんやねん。


「……ホワイトさんにハーピィエルフ様のご加護を」


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