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14話 働きたくないでござる

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 エール王国、貴族エリア。第8エリア管理局。


「ビネーガよ、前回に引き続き、またしくじったようだな……」


「申し訳ございませんピックルス様……!」


「しかも庶民からの投書で“女風呂を覗いていた”という情報が入ってきているぞ。これはどういうことだ?」


「そ、それは……くそっプリティ☆デビルめ、余計なことを」


「なんだって?」


「いえなんでも」


「ふむ……ところでビネーガ、貴様が覗き見していた女……相当な巨乳だったらしいな?」


「なっ!? そんな情報まで!?」


「全く貴様は! あれほど貧乳の素晴らしさを語ってやったというのに何故未だに巨乳などというおぞましいモノに執着しているのだ!」


「(貧乳に執着しているヤツに言われたくはないんだが)」


「まあよい……しかしビネーガよ、“アバレールZ”は貴重なのだ。王の許しも三度まで……このままでは後が無いぞ」


「じゅ、重々承知しております……次こそは、必ず奴らを倒して王妃候補の娘を捕らえてみせますので」


「まったく……今回のように、想定外の所でアバレールZを使ってはならぬからな」


「……はっ!!」


「説教は仕舞いだ。それじゃあここからは……貴様がもう巨乳に惑わされないよう、絶壁の魅力について存分に語ってやる。覚悟するのだな」


「…………」


 __ __


「なるほど、それではスパイ……もとい女子風呂覗き魔事件は無事解決したルナね」


「ああ、なんとかな」


「ビネーガには逃げられてしまったがの」


 ダフマの父、ミソクから貰った灼熱の魔石がなかったら、かなり厳しい戦いを強いられていたと思う。相変わらず普通の打撃技しか使えないからな……


「なあ、プリティ☆デビルって魔法とか必殺技とか、そういうのは使えるようにならないのか? このままじゃ相手によっては勝てないことも出てくるぞ」


「それもそうじゃのう。 拙者が元の魔王の身体なら色々と使えたんじゃが」


 魔王、プリティ☆デビルになって逆に弱くなってんじゃねえか。


「プリデビ☆チョーカーのアップデートでそのうち使えるようになると思うルナ。でもその為にはもっとはぴねすエナジーを溜める必要があるルナ」


「まあ、結局のところそこに行きつくよな」


 この前の覗き魔事件も、ダフマと一部の女性客くらいしかはぴねすエナジー増加の対象になっていないわけで。


「もっと大勢の人を幸せにしないと強化は難しい、か」


「とはいえ、いっぺんに民を救うのは容易なことではないのじゃ。チリも積もればスカベンジャードラゴンとなる。小さいことからコツコツと。なのじゃ」


「いや山じゃねえのかよ。スカベンジャードラゴンってなんだよ」


「ゴミや廃棄物を食べるドラゴンルナ。魔王城の地下に生息してるルナ」


 それって、昔のぼっとん便所の下でブタを飼ってたってヤツと同じ……いや、この話はもうやめよう。


「小さいことからコツコツとって言ってもなあ。俺、そういうの苦手なんだよなあ」


「まあそれが出来てたらニートなんぞになっておらんからの」


「うっせ」


 就職活動とかいうクソゲー、どうやってみんなクリアしてんだ? 俺には無理だった。


「仕事でも始めてみるかの。どっちにしろこの国で暮らしていくなら金は必要じゃろ」


「は、働きたくないでござる……俺は毎日が日曜日、デビル☆サンデー……」


「ボーッと生きてんじゃねーよ! ルナ!」


「厳しいなおい」

 
 カチャッ


「サタンちゃん、あーそーぼ……」


「とにかく! またいつボウギャークが出現するか分からないルナ! その為には今のうちにはぴねすエナジーを溜める……ルナ」


「ルナちゃん?」


「…………」


「ルナちゃん、今しゃべってた」


「そ、そんなまさかあ」


「そ、空耳じゃ空耳」


「んー?」


 むぎゅ。


「ぐえっ! 苦しいルナ!」


「あっ」


「ルナちゃんしゃべった! ほら!」


「あーあ……」


「これはもうごまかせんの」


「観念ルナ……だからフレイム、むぎゅってするのはやめてルナ……」


「ルナちゃん! すごーい!!」


 ……。


 …………。


「というわけで、ルナはぬいぐるみじゃなくて魔族なんだルナ。今まで隠しててごめんなさいルナ」


「薄々そんな気はしてたんだけど……随分とかわいらしい魔族さんがいるのね。ルナちゃん、改めてよろしくね」


「ルナちゃん! フレイムはとてもうれしいです!」


「受け入れてもらえてよかったルナ……!」


 ルナの存在がフレイムにバレてしまったので、ウェスタさんにも正体を明かして説明する。
まあ、元々俺たちがプリティ☆デビルだということは知ってたわけだし、最初から別に隠す必要もなかったんだよな。


「まあ、ルナのことはこれで良いとして。ウェスタ、この辺りで拙者たちのようなおなごが日銭を稼げる仕事がないじゃろうか?」


「いや、俺はちょっとまだ仕事は……」


「そうねえ、二人みたいな若い子が働くのは、それこそダフマちゃんみたいな実家のお店の手伝いとかじゃないと難しいんじゃないかしら」


「ですよねやっぱ! いやー俺も働きたかったんだけどなー需要がなー」


「あ、そうだ! それならウチで働くっていうのはどうかしら?」


「えっ」


「お店の接客を手伝って貰えれば、私は料理に集中できるし、店内のお客さんを増やしても手が回るようになるわ」


「ほう、それは良い提案じゃの」


「いや、ちょっと待っ」


「それに、二人とも可愛いからきっと人気の看板娘になれちゃうわ♪」


「サタンちゃん、いっしょにおみせやろー!」


「うむ、それでは拙者たちもここで給仕をやらせてもらおうかの!」


「あのっ俺は」


「いっしょにお店を繁盛させていきましょうね、ホワイトさん」


「あ……はい……よろしくお願いします……」


 元子供部屋ヒキニートワイ、喫茶店で働くことになってしまう。次回、マシュマロ林死す! デュエルスタンバイ!


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