におこにこ

彩城あやと

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 朝。目が覚めて、洗面台。水をポタポタ滴らせながら、鏡を見て思う。
 ……今から俺はどんな顔をして翔平に会えばいいんだろう……。
 俺は翔平と距離を置くようにしてた。でも翔平を避けてた訳じゃない。高校は同じ。通学路も同じ。だから毎朝、俺は翔平と一緒に登校してた。
 だから今からも、今までと同じように翔平と登校しなきゃいけないんだろう。
 でも、それはキツイ。いくらなんでも気まずすぎる。
 翔平の残り香がどこかに漂ってる。アネモネの香りは完全に消えてるのに、翔平の洗練されたシャープな香りだけが記憶に残ってる。
「ふぅ…………」
 ダメだ。翔平の前で平静さを装おう自信なんて俺にはない。
 ……そうだ!
 寝坊したことにしよう。
 いつも通学する電車はラッシュを避ける為に、早目の電車に乗ってる。
 俺が寝坊したことにして、時間をずらして登校すれば、翔平と顔を突き合わせることがなくなる。下校は友達と連れ立って帰るから、翔平とはいつも一緒に帰ってないわけだし。
 俺は思い立ったが吉日。いや、日は関係ないのか。時間的なものだから。ともかく俺は頃合を見計らって「寝坊した! 先に学校、行って」と翔平にメール送信した。
 これで、今日は翔平と顔を合わさずに済む。明日の事は……明日考えればいい。ひとまず今日は逃げてしまおう。
 そして俺はダラダラと時間を潰し、いつもより遅い時間、家の玄関の扉を開けた。
 ところが。
「遅い」
 通路にはデカイ図体した翔平が立ってた。
「え……? 翔平?」
 驚きを隠せない俺を見た翔平は軽くため息を付いた。
「早く行きましょう。遅刻したいんですか?」
「えっと……なんで先に行かなかったんだ?」
「俺も寝坊したんです」
 そう言った翔平の目の下にはうっすら隈が浮かんでる。寝坊したというよりは、寝られなかった。という方が正しいんじゃないんだろうか。
 対して俺と風貌と言えば、昨日の一連の事件に関して俺の許容範囲を越え、逆に眠りの中に逃げ込んでいたので、肌色はいつもとそう変わっていないように思う。
 性格の差だな。翔平にはホント悪いことした……。
 翔平は、神保先輩の家に行ってケンタさんからもらったチョコレートさえ食わなければ、俺を押し倒そうと思わなかっただろうに。
「ごめん。昨日は悪かった」
「……謝らないで下さい。あんたが謝るようなことじゃないでしょう」
「…………」
 うまく言葉が見つからずに、翔平の隣に並んで歩くと、ふと、洗練されたシャープな香りが鼻腔を微かにくすぐった。
「あ………?」
「どうしました?」
「いや、残り香かな。翔平から少し昨日喰ったチョコと同じ匂いがした」
「おかしいですね。朝シャワーを浴びてきたんですが……」
 首を傾げる翔平を見て俺が思うこと。
 ……寝坊したという割には、朝から優雅。
 翔平は小首を傾げたまま、俺の前に立ちはだかり、かがみ込んで俺の肩ごしに、顔を差し出し俺を覗き込んだ。
「匂います?」
 翔平の長いまつ毛が揺れて、意思を持ったような眼光が俺を射すくめる。
 近い。
 でも俺がここで後ずさりすると、翔平を意識してるように見られてしまうかもしれない。
 翔平にはまだ俺の恋心を知られた訳じゃない。まだだ。まだ、幼馴染の関係が壊れてしまった訳じゃないんだ。
 俺はぐっと後ずさりするのを堪え、踏みとどまった。でも咄嗟に顔を逸らさないで置くことにまで気が回らなかった。顔が赤くなっていくけど、そこはポーカーフェイスでカバーするしかない。
 翔平の奴、俺がゲイだってカミングアウトしたのに、まったく俺を意識してない。それは良かったと言うべきなのか、悪かったと言うべきなのか、複雑な気持ちになって、俺は軽くため息を付いた。
「おや?」
 翔平が綺麗に整った眉を片方上げて、すん、と鼻を鳴らした。
「あんたもアネモネの香りが残ってます」
 その時、俺も確かにアネモネの香りを嗅いだ。
「さっきまで全くアネモネの香りなんてしてなかったのに、なんでだろ?」
 俺は自分の腕をとって、すん、と鼻を鳴らして嗅いでみた。
 そこには確かにアネモネの香りが漂ってる。
「おかしいですね。確かケンタさんは香りの効果は7~8時間くらいと言ってたはずですが」
「うん……まぁ、親にバレなきゃ、俺はそれでいいんだけど……」
「少し香りの効果に誤差が生じてしまってるのかもしれませんね」
「そうだな。学校に行くまでに香りが消えてるといんだけど……」
「学校……! 急ぎましょう。電車に乗り遅れる」
「ヤバ!」
 翔平と早足で駅へと向かう。
 でも翔平が動くたび、風が吹くたび、微かだけど洗練されたシャープな香りが鼻腔をくすぐってくる。
 昨日の濃い香りは欲情を抱いてしまったけど、ほのかに香る香りは妙な安堵感を覚えて、平気だった。
 でも嫌だな。ゲイだってカミングアウトしてしまったのに、変に翔平に意識してると思われたら。
 俺は無意識の家に歩幅を狭め、翔平と距離を取るように、翔平の後ろを歩いた。
 すると、翔平がくるりと振り返る。
「あんた、何考えてるんですか? そんなにトロトロ歩いてたんじゃ、電車に間に合わない」
 驚く俺の手首を翔平はガシっと掴んで、ぐいと勢いよく引っ張ると、俺の体はその勢いそのまま、翔平の体に引き寄せられるようによろめいた。
「あぶな……!」
 何とか踏みとどまると、目の前には翔平の広い胸が広がってた。背が低いとどうしたって骨格も小さくて、体重も軽い。そんなこと翔平も重々承知のはずだ。
 なのに、引っ張るか?
 ギロリと翔平を睨み上げると、翔平はふてぶてしい笑みを零して俺を見下ろした。
「なんです?」
 ダメだ。俺の恋心なんて理解してない翔平は、俺との接触をまったく意識してない。
 でも……まぁ、俺は幼馴染のままがいいから、意識しないでいてくれた方がいんだけど。
 俺はため息を付きながら、翔平の腕を思いっきり振り払った。
「アホか、こんな人目のある通り道でコケたらどうするんだ? ハズイだろ」
「コケたら、その見事なコケっぷり。俺も見て、笑ってあげます」
「見るな。笑うな。おまえがすべて原因だろ」
「そうです。すべて、俺が……悪いんです」
「え……?」
 翔平は何かに耐えるように眉根を寄せて視線をふいっと逸らした。
「翔平?」
「だから見事にコケてみて下さい」
「あのな、なんで朝からそんな笑いをおまえに提供しなきゃなんないんだ……?」
 俺が呆れ顔で翔平を見上げると、翔平は肩を揺らして笑った。
 昨日、チョコレートの媚薬効果のせいで翔平とキスして、どんな顔で会えばいいのか、どう接すればいいのか、悩んではみたものの。別に普段と何も変わっていない。
 翔平とはこれからずっと今までと同じ幼馴染の関係でいられるのかもしれない。そう思うと俺の顔にも自然と笑みが溢れた。
 そして俺は翔平とたわいのない話、いつもと同じ空気を感じながらいつもと同じ通学路を歩いて、いつもより遅い時間の電車に乗り込んだ。
 だが。
 通勤通学ラッシュというのはハンパないということをすっかり忘れていた。
 乗り込んだ電車の車内はぎゅうぎゅう、すし詰め状態。しかも俺の周りには不幸にも翔平も含めて大男に囲まれてた。
 そしてこんな時、背が小さいと言うのは大変不幸な事に見舞われる。大男達に取り囲まれると、周囲の人達から俺の存在がまったく見えなくなってしまうのだ。
 周囲から見れば俺の立ってる場所は、まるで空いた空間。
 ちょっと、そこスペース空いてんなら、詰めなさいよ。
 とばかりに、俺が見えない人たちは、大男たちを押してくる。それは四方八方からの攻撃だ。
 潰される。潰されてしまう。
 小柄な俺がいくら押し返しても、ピクリとも動かない大男達に辟易してると、電車はホームにたどり着き、俺は人並みに押され、扉へとだくだくと流されていく。
「うう……」
 どんな理由があっても、やっぱり通勤通学ラッシュ時間は避けるべきだった。目が回ってもどうすることも出来ないでいる。
 流されていく俺を見て翔平は軽く舌打ちし、俺の肩を掴んだ。そして「失礼」とは一応口にしながらも慇懃無礼な態度で周りを威圧し、俺を扉側まで引き寄せ、俺の前に立ちはだかった。
 そして扉は締まり、ガタンと電車は走り出す。
 車内は相変わらず、ぎゅうぎゅうすし詰め状態。でも背中を扉にした俺はもう電車が揺れても四方八方から押されたり、潰されたりすることはなくなっていた。
 ホッと息を付くと、肩口に伸ばされた翔平の腕が目に付いた。
 その腕は扉まで伸びて、翔平は電車の揺れを防いでるように見える。でも扉に置かれた手は電車が揺れるたびに、細やかな筋肉が流動していた。手に、腕に、翔平の体全体に力が込められてるのが見て取れる。
 もしかして翔平は俺が押しつぶされないように踏ん張っている……?
 翔平を見上げると、当の本人はそんな素振りを微塵も見せずに、精悍に整った顔を涼しそうに見せ、流れる窓の景色を眺めてる。でも手や腕を見ると、力が込められ、背中で人並みを押し返してた。
「翔平、それ、しんどくないか?」
「何が、ですか?」
 翔平はふてぶてしい表情を浮かべて俺を見下ろした。
 俺は翔平にそう言われるともう、何も言えない。俺が潰れないようにしてくれてるのか? と聞いても「あんた虫ですか?」とはぐらかされるに、決まってる。
 翔平は俺に優しさを見せる時、どうも素直じゃない。昔みたいに可愛くて素直でもいいと俺は思うのに。それならちゃんとお礼だって言えるのに。
「……何でもない」
 俺はふいっと顔を逸らして、車窓に目を向けた。
 見返りを必要としない翔平の優しさに、鼓動が高鳴り、流れゆく外の景色の上に乗せていく。
 その時。
 清楚で、はかないアネモネの香りがふわりと立ち昇る。
 それはさっきまで、微塵も香らなかった香り。
 匂ったり、匂わなかったりしてる不思議な香りにふと疑問が沸き起こり、その不思議さを共有したくて、翔平を見上げると、翔平は電車の吊り広告に目を通してた。その様子は俺から放たれるアネモネの香りに気が付いていないように見える。
 車内を見回せば、不思議そうに鼻を鳴らしている人もいるのに、翔平は気付いてないんだろうか?
 カタン。電車が揺れると、洗練されたシャープでスパイシーな香りがアネモネの香りと競うように香り出してきた。
 ……翔平も香ってる。
 ゾクリ。震えた。
 それは甘く官能を誘う濃い香り。
 満員電車に押されて、揺れるたびに、翔平と触れ合って、二人の香りが混じり合っていく。
 混じり合う官能的な香りは、昨日の夜の記憶まで呼び起こし、翔平の体温、鼓動、眼差し。すべてをフラッシュバックさせる。
 アネモネの香りが、華やかに濃く香りだす。
「…………っ!」
 ぞわり、とした感覚に息が止まった。
 誰かが……俺の太ももを撫でている。
 痴漢だ。
 もちろんその手は翔平の手じゃない。翔平は右手を扉に、左手にはカバンを持ってる。
 やられた。俺はまた女と間違えられてる。
 俺の太ももを触る手は大きく、立派な腕時計にシワひとつない真っ白なシャツに伸びていた。その手の主を目で追ってみると、それは俺の隣にいる眼鏡をかけた若い清廉としたサラリーマンらしき男の手だった。
 俺は男だ、勘違いするな。とばかりに俺はサラリーマンを睨み付けてやる。
 サラリーマンは俺の目線に気が付いた。これで恥じ入って俺の太ももを触ってる手を離すんだろうと思ったのに、サラリーマンは俺から視線を逸らして、口角を上げた。サラリーマンはザワザワと太ももを撫でる手の動きを、止めようとはしない。
 ……気持ちが悪い。
 吐き気をもよおして、つま先に視線を落として唇を噛み締める。
 俺の体は女の子のように柔らかく出来ていない。だからこの男もそのうち俺が男だとそのうち気付いて、驚き痴漢行為をやめるだろう。それは経験上分かってた。
 でも。気持ちが悪い。
 男の手は止まらない。手は太ももから、尻へ。
 そして。
「…………っ!!」
 下肢にまで手が伸びる。
 そこには決して、女の子には付いていないモノが付いている。手はピクリと驚いたように動きを止め。
 性器をやんわりと掴んだ。
 俺は俯いたまま、目を剥き驚いた。
 このサラリーマンは俺が男だと気が付いてる!
 男の手は形を確かめるように、俺の性器をゆるりゆるりと撫ぜ出した。
 耳元で「たまならい」と言ったサラリーマンのつぶやきが聞こえ、カッとなった俺はサラリーマンの手を振り払った。ところがサラリーマンは振り払った俺の手を掴み取り、よりにもよって俺の指に自分の指を絡め取るように、手を握ってくる。
 汗ばんでるのに、かさついた手。
 気持ち悪い。
 振り払おうとしたその時、静かに揺れる車内で、翔平の凛とした声が低く響いた。
「何してんです? コイツ男ですよ。あんた変態なんですか?」
 電車の吊り広告を見てたはずの翔平がサラリーマンを見下ろして低く響くような声を出した。……いや、眼光鋭く雄々しい翔平はサラリーマンを見下し脅してるようにしか見えない。
 翔平の手によって、ギリギリと手を締め上げられたサラリーマンは苦痛で眉根を寄せている。
「違う……そいつが俺を誘った……」
「ほう?」
「違う! 俺は何もしてない……!」
 周囲はチラチラと俺たちを眺め、俺は居所なく真っ赤になって反論しようとした。
 さわり、俺の尻をまた誰かが撫ぜた。驚きで背中が思わず仰け反る。
「ひ…………っ!」
「なんです?」
「あ、何でも、な…い」
 こんな状況でまた痴漢に遭ったなんて口に出して言えるはずがない。
 しかも俺が男だって確実に分かってる状態なのに。
 電車は大きく揺れて最寄りの駅に到着し、扉近くに居た俺たちは流されるようにホームへと降り立った。
 そしてまた電車は人々を積み込もうと扉を開けて待っている。
「う…………」
 もうこの電車には乗りたくない。でも乗らなければ、学校遅刻してしまう。
 二の足を踏む俺の肩を翔平は大きな手で掴んだ。
「こっちへ」
「いや、電車……遅刻する」
「かまわない」
 翔平は慌てた素振りもなく、ため息を付いてホームの真ん中にあるイスへと俺を導いて、座らせた。
「痴漢に逢いましたね。しかも二度も」
「……ああ」
 指先まで震えてた。
 怖い。
 俺を女の子だと間違えずに、むき出しにする性欲。それが妙に怖かった。
「あんたの香りが……消えてる」
「え?」
 何を言い出すのかと思って翔平を見上げると、翔平はこめかみを抑えて低い声で唸っていた。
「あんた……いいですか? ハッキリ言います。そのアネモネの香りはどうやら、人の情欲を誘ってる」
「あ………ケンタさんのあのチョコレート……媚薬みたいなものだなと俺も思ってたけど……」
 翔平も俺に情欲を抱いた?
 とは聞けない。逆に俺も翔平に聞き返されたら、困ってしまう。
「やはりそうですか。匂いの効果が切れるのを待つしかないんでしょうが……今日はもう学校にも行かない方がいいかもしれませんね」
「え? なんで?」
「あんた女子からもモテてるんですよ。ガタイマックスの女子に押し倒されて、犯されたいんですか?」
「げ……!? いや、無理」
 翔平の言うことは大げさかもしれなかった。けど俺を男だとしってもなお、痴漢行為を続けた男からの恐怖や嫌悪感は拭えないでいた。俺はただでさえ普通の男子生徒にさえ体格差で負けてる。ガタイマックスの女子も怖ければ、いくらゲイの俺でも、男友達とかに押し倒されたら……間違いなく、泣く。
「俺……今日は学校に行かない。帰る」
「その方が無難でしょう……そんな情けない顔をしないで。香りさえ消えれば問題ないんですから」
「……うん」
「帰宅するにしても、ひとまず満員電車は避けましょう」
 俺は通勤通学ラッシュを避けるために、しばらく駅のホームで時間を潰すことにした。
 隣には何故か翔平も一緒に座ってる。
「翔平、学校に行かなくていいのか?」
「乗りかかった船から、ダイブしたって、溺れるだけですから」
「翔平って、カナヅチ?」
「ものの例えを、そのまま受け取ってどうすんですか」
 もう俺からはアネモネの香りは感じなかった。
 でも風が吹く度に、翔平が纏う洗練されたスパイシーな香りは微かに漂い、俺の鼻腔をくすぐってる。
 翔平の香りは、濃く香ればどうしようもなく発情してしまうけど、これくらいの優しい香りなら、逆に落ち着き、リラックス出来た。
「あ! 翔平が痴漢に遭わなかったのはなんでなんだろ? ケンタさんからもらったチョコの香りが、人の性欲を煽ってるのは身を持って理解出来た。でも翔平は痴漢に遭ってないじゃないか」
 翔平は綺麗に整った眉を片方上げて少し考え込み、口を開いた。
「あんた何言ってんですか? 俺はもう匂ってないでしょう?」
「いやいや、匂ってるよ」
「……今も?」
「うん」
 翔平は制服を摘んで、首を下げ、自分の匂いを嗅いだ。
「匂ってませんが……?」
「嘘、匂ってるよ」
 翔平の胸元に顔を寄せると、ぶわり。洗練されたスパイシーな香りが立ち昇った。
「……うっ!」
 濃く香る翔平の香りは危険だ。慌てて体を離すと、翔平が軽くため息を付いた。
「……あんた……また匂い出しましたよ。匂ったり、匂わなかったり、厄介な」
「俺に言われても」
「その匂い、何とかしないと……。汗をかいて、チョコレートに含まれる成分を、体の外に出してみますか?」
「汗をかくってどうやって?」
「スポーツして汗を流すか、風呂に入るか、でしょうね」
「学校サボって、公共施設でスポーツしてたらマズイだろ? それに具合が悪いって理由で家に帰ろうとしてんのに、家で長風呂するのも不自然だ。母さんが変に思う。だからこの香り。自然に消えるのを、待つしかないんじゃないか?」
「風呂くらい貸します。その香りは早く消した方がいい」
 ガタタンと電車が通り過ぎて、風が舞い上がり、翔平からほのかに洗練されたスパイシーな香りが漂った。
「翔平も汗、流せよ」
「俺もまだ、匂ってるんですか?」
「ああ」
 やみつきになるような香りが立ち昇ってる。







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