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6.眩い舞踏会の夜に
めくるめく円舞曲の中で
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「気づかないか? クリスティーナ。この大広間にいる男達は皆、君を夢中で見つめている」
「!」
はっとしてクリスティーナも周囲を見まわそうとすると、それをさり気なくレスターが阻む。
「見なくていい。偶然に目でも合ってしまえば、どんな無駄な誤解を招くか知れない」
「でも……。わたしがどこか変だから、皆さん見ていらっしゃるのではないのですか?」
レスターは苦笑し、首を振った。
「いいや。……だが、理由は知らないままでいい。君の美しさを称える男は、俺一人で充分事足りているから」
その言葉に、クリスティーナはぽっと頬を赤くした。
恥ずかしさに俯きながらも、レスターに言う。
「わたしが美しいだなんて……。あなたの方が、ずっとずっと素敵です」
「そうか? 光栄だ。だが、本当に君がそう思ってくれているのなら、そんな小さな声ではなく、この大広間全体に響くくらいに声高に叫んでほしいものだな。君に無粋な視線を注ぐ男達すべてに聞こえるように」
「え、ええっ……?」
レスターの要求に、クリスティーナは思わず顔を上げていた。
彼は大真面目な顔をして、クリスティーナを見返している。
(う、嘘。もしかして、本気でおっしゃっているの……?)
そう訝って彼の瞳をまじまじと覗き込むと、そこに微笑が含まれていることに気づく。
クリスティーナがそれと気づいたのを知ったのか、レスターは仰々しい大真面目な顔をやめ、代わりに優しく笑った。
彼の漏らした笑い声にほっとして、クリスティーナは両手で胸を押さえた。
「び、びっくりしました……! 冗談だったんですね。わたし、まだ胸がどきどきしています」
「本気に取ってくれても構わなかったが? 君の出す大きな声は寝室で抱きしめ合っている最中にしか聞いたことがないから、そうでない時はどんな声で叫ぶのか聞いてみたい」
「……!」
レスターの言葉に、クリスティーナは耳まで真っ赤になった。
すぐ側にたくさんの人がいるのに、何てことを言うのか。
誰かに聞かれてしまったのではないかと思うと、恥ずかしさのあまりクリスティーナは目を上げてはいられなくなった。
そんなクリスティーナの細い身体を、レスターがすっと抱き寄せる。
「あ……」
「さあ、まずは一曲踊ろう、クリスティーナ。綺麗な音楽が流れているよ」
「えっ……? ……わ、わたし、踊ったことなんて、ありません……」
思わず首を振り、固辞しようとクリスティーナは腰を引いた。
しかし、クリスティーナの腰にまわされたレスターの腕が離れることを阻み、さらに間近へと引き寄せる。
「大丈夫だ。君は、俺に合わせていればいい」
「で、でも……! か、踵の高い靴も初めてですし、きっと転んでしまいます。そうでなくても、あなたの足を踏んでしまうかも……」
そうなったら、レスターに大変な恥をかかせることになる。
しかし、レスターはクリスティーナの体を離そうとはしなかった。
「構わないさ。転びそうになったり、俺の足を踏んでバランスを崩したら、迷わず俺の胸に飛び込んでくればいい」
そう言うと、レスターはますます近くまでクリスティーナを引き寄せられた。
コルセットに持ち上げられたクリスティーナの豊かな胸が、レスターの厚い胸板に押しつぶされる。
「ぁんっ……」
思わず小さく声を漏らしてしまい、クリスティーナはさらに赤面した。
レスターは笑って、クリスティーナの耳元に唇を寄せた。
「クリスティーナ。その声だけは駄目だ。俺以外の男には、絶対に聞かせるな……」
「……っ」
真っ赤になって、クリスティーナは彼の胸に顔を埋めた。
何とか周囲から、この赤い顔を隠してしまいたい。
けれどもすぐ、これでは本当に寝室で抱き合っている時のようだと気がつき、クリスティーナは顔を上げた。
周囲を見まわすと、ステップを踏んでいる他の男女がここまで親密に抱き合ってはいないことを知る。
「レ、レスター様……!」
慌ててクリスティーナは首を振ったのだが、聞いてくれるレスターではなかった。
そのまま周囲に見せつけるようにしては強引にクリスティーナの腰と手を引き、円舞曲に合わせ、レスターはステップを踏み始めた。
クリスティーナも、手を引かれるままに彼に従う。
最初は戸惑ったが――。
腰を強く引き寄せられるまま、彼に従っているうちに、クリスティーナは自然と、踊ったこともないのに円舞曲に合わせて綺麗にステップを踏んでいた。
光り輝く世界が美しい音楽に乗って、くるくると目まぐるしくまわっていく。
気がつけば、周囲に注意を払う余裕など微塵もなくなっていた。
クリスティーナはただ一心に、目の前のレスターを見つめていた。
……まるで、世界に二人だけになったような時間だった。
――やがて、名残惜しく円舞曲の演奏が終わると、ようやくレスターはクリスティーナの身体を解放した。
ほっと安堵したクリスティーナを、レスターは大広間の中央から連れ出した。
♢ 〇 ♢
ダンスが終わるのを見計らったように、こちらへ次々と招待客たちが歩み寄ってきた。
「殿下! 今宵は素晴らしい夜となりましたな」
最初にそう声をかけてきたのは、上品に着飾った白髪の老貴族だった。
どことなく、塔の最上階でクリスティーナに親切にしてくれたあの老番兵に雰囲気が似たところがある。
その優しい面差しを、クリスティーナは目を丸くして見つめた。
どう動くべきかと迷っていると、彼はレスターに言った。
「お美しいクリスティーナ様に最初にご紹介いただく栄光を、わたくしに賜ってはいただけませんかな? 殿下」
すると、側でこちらを伺っていた別の若い青年貴族が割り込んできた。
「いや、レダークス公爵、その幸運はぜひ、このわたしにお譲りください」
「おやおや、ウィレス侯爵。貴殿がもういらしておいでとは、お珍しいですな。こういった夜会には、遅れてくるのが常でしょう。これは、明日は季節外れの雪でも降るのではないかな」
苦笑した老公爵が言うと、どこか神経質そうだが整った顔立ちをした若い貴族は、肩をすくめて答えた。
「普段ならば、こういった夜会には興味などないのですがね。領内の混乱を必死に収め、クリスティーナ様にご挨拶をするため、急ぎ参上したのです。彼女が無事解放されたあの謁見の日には、残念ながらほとんど微かにしかそのお声を聞くことはできませんでしたから」
クリスティーナは目を瞬いて、雲の上の地位を持つ二人の貴族の会話を聞いていた。
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ここまでお読みくださって、本当にありがとうございます!
♥やお気に入り登録などなどいただけたら本当に嬉しいです。
また、エールにて応援してくださった方、本当にありがとうございました……!
自分は同人活動として動いておりますので、作品ごとにイラストの発注などもしておりまして、とても嬉しいです!!
今後もできるだけ長く活動したいなと夢見ておりますので、励みにして頑張ります!!
「!」
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その言葉に、クリスティーナはぽっと頬を赤くした。
恥ずかしさに俯きながらも、レスターに言う。
「わたしが美しいだなんて……。あなたの方が、ずっとずっと素敵です」
「そうか? 光栄だ。だが、本当に君がそう思ってくれているのなら、そんな小さな声ではなく、この大広間全体に響くくらいに声高に叫んでほしいものだな。君に無粋な視線を注ぐ男達すべてに聞こえるように」
「え、ええっ……?」
レスターの要求に、クリスティーナは思わず顔を上げていた。
彼は大真面目な顔をして、クリスティーナを見返している。
(う、嘘。もしかして、本気でおっしゃっているの……?)
そう訝って彼の瞳をまじまじと覗き込むと、そこに微笑が含まれていることに気づく。
クリスティーナがそれと気づいたのを知ったのか、レスターは仰々しい大真面目な顔をやめ、代わりに優しく笑った。
彼の漏らした笑い声にほっとして、クリスティーナは両手で胸を押さえた。
「び、びっくりしました……! 冗談だったんですね。わたし、まだ胸がどきどきしています」
「本気に取ってくれても構わなかったが? 君の出す大きな声は寝室で抱きしめ合っている最中にしか聞いたことがないから、そうでない時はどんな声で叫ぶのか聞いてみたい」
「……!」
レスターの言葉に、クリスティーナは耳まで真っ赤になった。
すぐ側にたくさんの人がいるのに、何てことを言うのか。
誰かに聞かれてしまったのではないかと思うと、恥ずかしさのあまりクリスティーナは目を上げてはいられなくなった。
そんなクリスティーナの細い身体を、レスターがすっと抱き寄せる。
「あ……」
「さあ、まずは一曲踊ろう、クリスティーナ。綺麗な音楽が流れているよ」
「えっ……? ……わ、わたし、踊ったことなんて、ありません……」
思わず首を振り、固辞しようとクリスティーナは腰を引いた。
しかし、クリスティーナの腰にまわされたレスターの腕が離れることを阻み、さらに間近へと引き寄せる。
「大丈夫だ。君は、俺に合わせていればいい」
「で、でも……! か、踵の高い靴も初めてですし、きっと転んでしまいます。そうでなくても、あなたの足を踏んでしまうかも……」
そうなったら、レスターに大変な恥をかかせることになる。
しかし、レスターはクリスティーナの体を離そうとはしなかった。
「構わないさ。転びそうになったり、俺の足を踏んでバランスを崩したら、迷わず俺の胸に飛び込んでくればいい」
そう言うと、レスターはますます近くまでクリスティーナを引き寄せられた。
コルセットに持ち上げられたクリスティーナの豊かな胸が、レスターの厚い胸板に押しつぶされる。
「ぁんっ……」
思わず小さく声を漏らしてしまい、クリスティーナはさらに赤面した。
レスターは笑って、クリスティーナの耳元に唇を寄せた。
「クリスティーナ。その声だけは駄目だ。俺以外の男には、絶対に聞かせるな……」
「……っ」
真っ赤になって、クリスティーナは彼の胸に顔を埋めた。
何とか周囲から、この赤い顔を隠してしまいたい。
けれどもすぐ、これでは本当に寝室で抱き合っている時のようだと気がつき、クリスティーナは顔を上げた。
周囲を見まわすと、ステップを踏んでいる他の男女がここまで親密に抱き合ってはいないことを知る。
「レ、レスター様……!」
慌ててクリスティーナは首を振ったのだが、聞いてくれるレスターではなかった。
そのまま周囲に見せつけるようにしては強引にクリスティーナの腰と手を引き、円舞曲に合わせ、レスターはステップを踏み始めた。
クリスティーナも、手を引かれるままに彼に従う。
最初は戸惑ったが――。
腰を強く引き寄せられるまま、彼に従っているうちに、クリスティーナは自然と、踊ったこともないのに円舞曲に合わせて綺麗にステップを踏んでいた。
光り輝く世界が美しい音楽に乗って、くるくると目まぐるしくまわっていく。
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クリスティーナはただ一心に、目の前のレスターを見つめていた。
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