上 下
96 / 123
番外編

3-9

しおりを挟む


***


 修治が汗だくになって、息切れを起こしている頃。



「……か~わいい~」

 疲れ果てて寝ている大介の顔を撫でてみた。鼻筋がスッと通っている大介の顔は、引き締まっている。

 俺の腰にしがみついて寝ているのも、可愛さ倍増だ。

 ビジネスホテルは寝るだけと、思い込んでいる可愛い大介。

 暴走機関車みたいな彼を相手にするのは、正直大変だ。下準備もばっちりしておかないと、後々大変なことになるから。

 それでもやっぱり、大介と抱き合いたい。

 その瞬間だけは、俺だけを見ているから。

 必死にしがみつき、俺を抱いて、快感に飲まれまいと抵抗している姿はとてもそそられてしまう。まさに父性本能を擽る可愛さだ。

 何処で覚えてきたのかなんて、馬鹿な質問をしてくるのも可愛い。

 そんなもの、エロビデオやエロ本に決まっている。

 もっとも、男同士は怖くて見ることができないから、もっぱら普通のアダルトビデオ。それでもシチュエーションの参考にはなる。

「……お前は、そんなの見ないんだろうな~」

 そっと起き上がり、眠っている大介の顔を観察する。全身バネの体は、均整のとれた良い体をしていた。モデルにでもなれば、一躍売れっ子になれるだろうに。そう言ったこともある。

 女の子にきゃーきゃー騒がれるのが嫌だと、顔中に皺を寄せて言い放った大介。

 彼が中学生の頃に憧れたロック歌手になったとしても、女の子達は放っておかないと思うけれど。

「お前は格好良いってこと、自覚しろよ~」

 仰向けにさせ、芯から眠っている大介の頬を撫で回す。そうして携帯を手にすると、動画ボタンを押した。大介を撮りながら、自分も横に転がってみる。

「大介君は熟睡中で~す。ちなみにこ~んな体してま~す」

 ペリペリと、皮を剥がすように掛け布団を捲っていく。引き締まった体が少しずつ出てくる。お臍の辺りまで捲ってしまう。

 携帯で撮りながら、胸に手を這わせていった。突起を摘んでコロコロ転がしてやる。

「……ん」

 むず痒そうに身じろぎした大介を追って、突起を擽り続ける。

「……やめろって……純……」

 ゴロリと背を向けられてしまう。逞しい背中を撮りながら、掛け布団を全部捲った。

「……俺の……好きな人です」

 ベッドを軋ませながら立ち上がり、大介が向いている方へ回り込む。熟睡している大介は、撮られていることも知らずに眠りこけている。

 シャラランと音が鳴り、一回目の動画は自動的に切れてしまった。もう一回ボタンを押して、二回目に入る。眠っている大介の顔をアップで映しながら、片方の手で頬を撫でてしまう。

「……好きだ」

 自分の声が動画に収まった。擽るように撫でてしまう。

 こうしてみると、睫は少し長いかもしれない。眉間に皺も寄せていないから、端正な顔立ちが引き立った。大工仕事で疲れているのか、眠るとなかなか起きない大介。 

 頑張っている彼に、顔を寄せていく。携帯を上に翳しながら、おでこにキスをした。

「お疲れさま、大介。明日は普通に、遊ぼうな」

 どうしても会いたくて。

 電話だけでは足りなくて。

 怒鳴る彼の声が聞きたくて。

 大塚家に連絡を入れてしまった。大介の休みの日を教えてほしくて。協力的な大塚家により、明日一日、大介と過ごせる。

 体の欲求は満たしたから、明日は心の欲求を満たしてもらおう。

「……な? 大介」

 そうっと唇にキスし、それを動画で撮った後、写真機能に切り替えた。それでも一枚撮った俺は、満足した。

 大介の隣に寝転び、逞しい腰にしがみ付く。背中から抱き寄せると、俺の手に大介の手が重なった。

 大きな手は、俺を安らかな眠りに誘ってくれた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

漢方薬局「泡影堂」調剤録

珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。 キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。 高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。 メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...