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抱き締めても良いですか?
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しおりを挟む「つか、馬鹿だなーあんたら。頭良いとこいってんのに、無駄にしやがって」
「う、煩い! Ωのくせに!」
「はいはい、Ωですよ。聞き飽きた」
αの言い分なんて聞きたくない。警察が来るまで三人を見張っていた俺は、項にチリッと痛みを感じた。
項を触ってみても、虫に刺された感じはしない。気のせいかと思っていたら、また、チリッと痛みを感じる。
変に思っていると、心拍数が一気に跳ね上がった。血が沸騰したかのような錯覚がすると、呼吸がしづらくなる。
まさか、このタイミングで来るとは。
「お前達……逃げろ……!」
「え……?」
「こんなことで将来棒に振るんじゃねぇ……!」
「お前……まさか……!」
「走れ……!」
怒鳴ると、弾かれたように三人が走って行く。このままここに居れば、俺のフェロモンに当てられ、最悪、精神崩壊を起こすだろう。あの中に番候補がいると、俺も逆らえなくなる。俺の意思とは関係なく、受け入れてしまうなんて嫌だ。
「くそっ……! これが……ヒート……」
初めての発情だった。高校三年生になる今まで、一度も来なかったのに何で今、起こったのか。体中が馬鹿みたいに震えている。
座り込んでしまった。少しでも動けば浅ましい声が出そうで奥歯を噛み締めた。
体格に恵まれ、普通のβとして産まれていれば、今頃可愛い彼女でもできていただろうに。男Ωの彼女になってくれるような理解あるαやβに出会えなかった。
*欲しい……αが欲しい……!
「うるせー! 黙れ!」
頭の中にαを求める声が響く。通報していたからか、パトカーが一台、公園の中へ入ってきた。車を降りた警察官が俺の所へ来ようとしているのが見える。
「大丈夫ですか!?」
「待て! お前は近づくな! ヒートだ!」
二人の内、一人がαなのか、俺のフェロモンを吸って顔を赤くしている。息が荒くなり、無意識にだろう、手を伸ばして近づこうとした。もう一人の警察官が押さえ込んでいる。
「救急車を呼べるか!?」
「手が……震えて……! 初めてで……!」
「くそっ! 暴れるな!」
「離れて……くれ……」
αの警察官をこのまま俺のフェロモンに当て続けるのは危険だ。這ってでも離れようとした俺の側に、知らない男性が立っていた。
細い体。成人しているようだけれど、幼く見える。
*……抱いて! 抱いて欲しい……! この人に……!!
頭の中の声が大きくなった。尻の奥にある子宮が疼いているのか、腰が震えてしまう。この男性もαなのか、頭の中の声が煩く響いている。意識が保てそうにない。
「僕の……病院の……救急車を……! よ、呼んでいます……!」
突然現れた男性は、フラフラと近づいてくると俺の体に触れた。
瞬間、体中に電流が走り抜けた。我慢ができなくてイッてしまう。
「あぁ……!!」
叫んだ俺は意識を手放した。
危険なのに、ヒートを迎えている状態でαが側に居るのに。
震えた体に意識を繋ぎ止めることができなかった。
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