124 / 359
小学生編小話
修学旅行:美鈴小学六年の秋
しおりを挟む
―――修学旅行初日。
「し、白鳥さん、お菓子食べませんか?」
「白鳥さん。ば、バスの隣に座ってもいいですか?」
「白鳥さん。ぼくと…そ、その…」
美鈴ちゃんがモテモテだ。
…いや、美鈴ちゃんは元からモテモテだけれども。
皆修学旅行という解放感もあって、尚且つ隣のクラスの所為もあってここぞとばかりにアタックしている。
それが悪い事とは言わないけれど…。
トイレの前で出待ちは止めた方が良いと思う。
美鈴ちゃん、顔が真っ青通り越して、真っ白だし。
僕は急いでその集団の中へ割り込んで、
「美鈴ちゃん。華菜ちゃんが待ってるよ。行こう?」
手を握ると真っ直ぐその場を脱け出した。
「ゆ、優兎くん。ごめんね、ありがとう…」
「ううん。気にしないで。でも美鈴ちゃん気を付けなきゃ。こういう時、単独行動は不味いよ」
「う、うん…。ごめんね。トイレだし直ぐに戻れると思って…」
確かにバス移動中のトイレ休憩。直ぐ戻るつもりでいたんだろう。
だからこそ、美鈴ちゃんは華菜ちゃんと一緒に行かなかった訳だし。
…それともう一つ。華菜ちゃんが他のクラスの庶民派の子達と交流してるからってのもあるんだと思う。楽しんで欲しいんだよね、美鈴ちゃんは。
「優兎くんも友達と話してたでしょう?わざわざ脱け出させてごめんね?」
「大丈夫。恭平も協力してくれたから」
「逢坂くんも?…そっか。逢坂くんにも迷惑かけちゃったんだね…」
あ、しまった。
言い方を間違えた。
美鈴ちゃんだったら、こういう時気に病むって知ってたのに。
…どうしよう。
どう言ったらいいだろう?
あ、…そうだ。前に葵さんが美鈴ちゃんを言い包めた時があったっけ。それを真似してみよう。
「じゃあ美鈴ちゃん。今度僕達にまた何かご飯作って?皆でリクエストするから、一緒に遊んで一緒に食べよう?」
そう言うと、美鈴ちゃんは一瞬キョトンして。それからとても嬉しそうに笑って頷いた。
う…。可愛い…。
ちょっとこれは反則だと思う。
僕達がバスに向かって歩いていると、
『おぎゃああああああっ!!』
「えっ!?」
突然の叫び声。
驚いて美鈴ちゃんと二人振り向くが、そこには何もなく誰もいない。
「い、一体何だったの?」
「わ、解んないけど…。早くバスに戻ろう?」
美鈴ちゃんの手を引いて急いでバスへと戻った。
―――同時刻の葵:中学校にて―――
「……はぁ…。鈴ちゃんがいないのが辛い…」
「…おい、葵。いないのはたった四日だろうが」
「………はぁ……。鈴ちゃん…。会いたいなぁ…」
「おい、葵。人の話を聞けよ」
「…………………はぁ………。あ、龍也。そこの英訳間違ってるよ」
「はっ!?って言うか何でそう言う所だけちゃんと見てるんだよっ!!」
―――修学旅行二日目。
「ふわぁっ」
「美鈴ちゃんっ。そんなに身を乗り出したら危ないよっ」
「すっごい、綺麗だねっ!美鈴ちゃんっ」
「つい身を乗り出しちまうの、分かる気がする」
僕が必死に美鈴ちゃんを船の手摺りから引き離そうとしているのに、華菜ちゃんと恭平はその横から身を乗り出そうとする。
僕達は松島に到着し、まず真っ先にホテルへ連れて行かれた。荷物を部屋へ置き、もう一度ロビーに集まって先生から諸注意を聞く。その後は自由行動だったから計画通り遊覧船へ直行した。
船から身を乗り出そうとしている三人をどうにか手摺りから引き離し、僕も景色を堪能する。
「凄い…こんなに綺麗だなんて思わなかった……。…こんなの人生で始めて見た……」
「んな大袈裟な」
恭平の言葉に美鈴ちゃんが何故か苦笑した。
その理由は分からないけれど、何処か辛そうで。一瞬恭平をどつきたくなる。
けれど、その空気を華菜ちゃんが壊してくれた。
「美鈴ちゃん、さっき買ったウミネコの餌。ウミネコにあげようよっ」
「う、うん…。その…鳥にもオスっている、よね…?」
その言葉に僕達はフリーズした。
え?まさか美鈴ちゃん、動物の男も駄目なのっ!?
……知らなかった。
「大丈夫だよ、美鈴ちゃんっ。あ、そうだっ」
華菜ちゃんは恭平に買った餌の入った紙袋を手渡すと、美鈴ちゃんと手の平を上に向けて手を重ね合った。
ちょっと大きめの手の器が出来上がる。
華菜ちゃんの意図を読み取った恭平はその手の平の上に餌をのせた。
二人はそれを確認すると、手摺りから手だけを外へ出す。
するとそこに数羽のウミネコが集まり、餌をつついて行く。
美鈴ちゃん……綺麗だな。
それに、可愛い…。
ウミネコの羽がまるで…天使の羽みたいで…。
僕は思わず鞄からカメラを取り出して写真を撮っていた。
棗さんから預かったカメラでつい美鈴ちゃんを撮ってしまった…。美鈴ちゃんは写真が苦手って言ってたけど、棗さんは美鈴ちゃんから許可をとったから大丈夫って言ってたし。あとでプリントアウトする時僕の分も印刷して貰おう。
うんうんと頷いていると、隣からシャッター音がした。
視線を向けると、その音を鳴らした主もまた僕の方を見ていて。
「…考える事は一緒だな」
「だね」
僕達は顔を見合わせて笑った。
「お、おいっ!あれ見ろよっ!」
「あぁ?あれってなに…ふおっ!?」
「なんだあれっ!?何か海の上歩いてんぞっ!」
周囲にいた乗客が騒いでいる。
海の上を何か歩いてる?一体何の事?
僕と恭平はその人達の視線の方を見るけれど…そこには誰もおらずただただ首を傾げるだけで終わった。
―――同時刻の棗:中学校の柔道場―――
(鈴…ちゃんと寝れてるかな…?)
ドシンッ。
「ちょ、ちょっと棗先輩っ、て、手加減してくださいっ」
(心配だなぁ…。男に囲まれて、泣いたりしてないよね…)
ドシンッ。
「ぐえっ!?せ、先輩っ、手加減をっ。く、首、締まってるっ、締まってるっ」
(そう言えば、優兎。写真撮ってくれてるかな…?後で鈴の笑ってる姿確認しなきゃ)
ギリギリギリッ!
「せ、せんぱっ、ぎぶぎぶっ!……も、むり……がくり」
「あれ?猪塚?、どうしたんだ?猪塚?おい?」
―――修学旅行三日目。
「お城とか城の跡とか神社とか、つまんなーい…」
華菜ちゃんがぼそりと呟くと、華菜ちゃんと手を繋いでいた美鈴ちゃんが小首を傾げた。
「そう?私は好きだけどなぁ…。あ、華菜ちゃん、ほら、社務所があるよ」
「しゃむしょ?」
「うん。お御籤とか御守りとか売ってるんだよ。…縁結びの御守りとか」
ふふっと笑う美鈴ちゃんに華菜ちゃんは顔を真っ赤に染める。
そんな二人を見送りながら、
「恭平は買わなくていいの?」
美鈴ちゃんに便乗してニヤニヤと笑って恭平に問うと、恭平は顔を真っ赤に染めてそっぽ向いた。
「うるせーよっ。…っつーか、お前人の事言えんのかよ。お前だって買うよな?縁結びのお・ま・も・り」
わざわざ御守りの所を強調して言う。僕は自分の顔が赤くなるのが分かって、じっとりと恭平を睨むと、同じく恭平も僕を睨んできた。
「……不毛な争いは止めようか」
「だな…」
互いに足を引っ張り合っても何の意味もない。
僕達は社務所の御守りを見る事にした。
お祖母様にも何かお土産に買って帰ろうかな…。
あ、これ可愛い。桜の形のピンクの石がついた健康祈願のストラップ。
手に取ってそれを見ていると、横からひょいっと美鈴ちゃんが覗き込んできた。
「美智恵さんにお土産?」
「うん。可愛いかなって思って」
「じゃあ、私も色違いをお祖母ちゃんに買うよ。そしたら親友同士でお揃い持てるよね?」
美鈴ちゃんがニッコリ笑って、桜の形の緑色の石がついた健康祈願のストラップを手に取った。
僕達が互いに微笑み和んでいると、美鈴ちゃんの奥で華菜ちゃんと恭平がお揃いのストラップを買ったようだった。
なんだかんだで仲良く買ってるんじゃないか。
ちょっと微笑ましくなった。
ストラップを購入し、社務所を出ようとした時。
「あぁっ!?お御籤は食べ物ではありませんよっ!」
「だからと言って、御守りを食べていい訳でもありませんっ!!」
…巫女さん達が大騒ぎを起こしていた。
「……何かすっごく嫌な予感がするから、早く行こう?」
美鈴ちゃんの呟きに誰も反論はしなかった。
―――修学旅行四日目。
「ずんだ餅、おいしーいっ!」
美鈴ちゃんがほっぺを抑えて幸せそうに試食のずんだ餅を食べている。
駅のお土産屋さんでの自由行動。僕達はお土産を物色していた。
「白鳥。何買うか決めたのか?」
「それがねー。流石に本場のずんだ餅はお土産に出来ないから、ずんだ餅味の何かにしようかと思ってるんだけど…」
既に定番の笹かまと牛タンは購入済みなうえ発送も済ませている美鈴ちゃんは、そう言いながら二つの箱を手に取った。
一つはずんだ餅味のプチケーキ。そしてもう一つはずんだ餅味のプリンだ。
むむむっと真剣に悩む美鈴ちゃんの姿を見ていると、それはとても可愛いんだけど、でもそこまで迷わなくてもとも思ってしまう。
僕がいるのに、と。
思わず苦笑する。
「美鈴ちゃん、僕がもう一方を買うよ。そうしたら二つとも食べられるでしょう?」
「え?でも…」
「どっちにしても持ち帰る先は一緒なんだし大丈夫だよ」
「それはそうだけど…。でもほんとにいいの?」
「勿論」
「ありがとう、優兎くんっ」
「どういたしまして。買いに行こう?美鈴ちゃん」
「うんっ」
美鈴ちゃんとレジに行って会計を済ませる。
買うものを買って戻ると、華菜ちゃんが両手にずんだ餅味ソフトクリームを持って待っていた。
「も、もしかして、それご当地ソフト?」
「うんっ。美鈴ちゃん、食べたいかと思って買っといたよっ」
「華菜ちゃんっ!嬉しいっ!大好きっ!」
「私も大好きっ!」
二人で抱き締め合おうとして、
「こらっ、華菜、白鳥っ。抱き合うとソフト落とすぞっ」
華菜ちゃんの買ったお土産を持った恭平に止められていた。
僕も美鈴ちゃんの買ったお土産を預かり、ずんだ餅ソフトを食べながら歩く二人の後ろをついて店を出た。
「お、お客さまっ!困りますっ!!流石に商品の買い占めはっ!」
「せめて代金を頂いて、こちらの業者からその個数をお客様のご自宅へ発送させて頂きますのでっ」
………。
何か店内が騒がしいけれど。
僕達は自己防衛の為に聞かなかった事にした。
―――修学旅行五日目。
「あーあ。もう修学旅行が終わっちゃうよー」
「……そうだな」
「もっと遊びたいー」
「……そうだな。でもな、華菜。そんな事より、お前なんつー格好でロビーにいるんだっ」
「え?」
…うん。
恭平が叫びたい気持ちも分かる。
お風呂に入って、ちょっと涼もうとロビーに来たら。多分同じ理由でロビーに来た美鈴ちゃんと華菜ちゃんを発見した。
美鈴ちゃんはきちんと体操着姿だけど、華菜ちゃんは下は体操着だけれど上がキャミソール一枚。プラスお風呂で火照って赤くなった顔。
流石にそれは駄目だと思う。僕も直視出来ない。
そっと視線を逸らすと、
「だから言ったのに。華菜ちゃんてばもう」
「だって暑いんだもーん」
「駄目だってば。ほら、これかけて」
美鈴ちゃんと華菜ちゃんの会話が聞こえて、バサッと何か布の音がした。
もう、大丈夫かな?
視線を戻すと、華菜ちゃんの肩には可愛い白猫柄のバスタオルがかけられていた。
「バスタオル?」
「白鳥のか?」
「うん。そうだよ」
「でも貸し出しのタオルあったよね?」
僕が問うと、
「……貸し出しのタオルはどこで誰が盗むか分からないからね……」
達観した答えが返ってきた。
よし。話を逸らそうっ。
恭平とアイコンタクトして、僕達は違う話題を出してその話で少し盛り上がる。
穏やかな空気になった事にホッとしていると…。
―――ドスドスドスッ。
まるで床に穴でもあけているかのような音と地響きが聞こえる。
え?何の音?
しかも近づいてくるんだけどっ!?
「露見尾っ!おいっ!そっちはロビーだっ!食堂じゃないっ!」
ムフンッ!?
「逆だよ逆っ!っとに何でお前はそんなに方向音痴なんだっ!」
むふん……。
「あー。落ち込むなって。どうせ迷子になった所でお前は死にそうにないんだから。それより飯食いに行くぞ。ほら、ついて来いっ」
むふんっ♪
―――ドスドスドスッ。
音が遠ざかった。
一体何だったんだろう…?
呆気に取られ、四人でその音がした方をただただ見詰めていると…。
「露見尾くんも修学旅行先、松島だったんだ…」
美鈴ちゃんが何か呟いたけどなんと言ったか分からなかった。
…そう言えば鴇さんが言ってた。
奇妙なモノは記憶に残すなって。
その教えは凄く大事なものだったんだと僕は今になって実感した。
―――同時刻の鴇:自宅―――
「うぅぅ…美鈴がいない…」
「親父、鬱陶しい。俺の部屋で泣くな」
「だって、我が家で唯一の女の子が…」
「佳織母さんがいるだろうが」
「勿論佳織は女神だ。だが、癒しの天使がいないんだぞ?」
「親父…。変態くさいぞ」
「家の中が男だらけでむさくるしいっ」
「…まぁ、それは否めないな。明日には帰ってくるんだから、もう少しくらい我慢しろ。大体、旭達が我慢出来てるのに何であんたが出来ないんだ」
「寂しいものは寂しいんだよ…」
「………はぁ」
―――修学旅行最終日。
「ただいまーっ」
「ただいまっ」
僕と美鈴ちゃんは揃って帰宅した。
いつもの様に僕は美鈴ちゃんの家の方から家へ入る。
玄関のドアを開けると誠さんが出迎えてくれて、両手を広げて抱きしめてくれようとしたけれど。
ドゲシッ!
あ、踏まれた…。
「お帰りっ、二人共っ」
佳織さんに抱きしめられた。
そのまま引き摺られるように、靴も満足に脱げないままリビングへ連れて行かれる。
そこには既に皆揃っていて。そう言えば今日土曜日だったっけ。だから皆勢揃いなんだね。
皆はお帰りと笑顔で出迎えてくれて。僕達も笑顔でただいまと元気よく答えた。
修学旅行の土産話とお土産を渡して、わいわいと騒ぐ。
暫くして夕飯を金山さんが作ってくれて、それを美味しく食べながらまた話して。
夜も更けた頃、僕とお祖母様は自宅へと渡り廊下を通じて移動した。
二人になったけれど、白鳥家の皆と話せなかった事とかを自宅のリビングで話す。
お祖母様は、優しい笑顔でうんうんと頷いて聞いてくれて。それが嬉しくて僕はずっと話し続けた。
だって本当に楽しかったから。
でも流石に話し続けた所為で喉が渇いて。
そしたらお祖母様がそれに気付いてくれて、キッチンへお茶を淹れに行ってくれた。
本当は僕が行こうと思ったんだけど、疲れてるだろうからとお祖母様に先手をとられてしまった。
手持無沙汰の僕はテレビを点けて待つ事にした。
…?
ニュース?
『本日未明。とあるホテルにて、ホテルの床が抜けたという事件がありました。本来このホテルの構造上、穴があくなどそのような事はなく…』
………。
『他にも、神社の鐘が一部食べられた跡があったり、松島では海上を走る正体不明の生物が…』
…………。
これって………。
「優兎?どうかしたのかい?」
お祖母様が湯呑をお盆に載せて戻って来た。
僕は今のニュースを見なかった事にしようと心に決め、静かにテレビを消した。
僕達の修学旅行はこうして幕を閉じたのだった。
「し、白鳥さん、お菓子食べませんか?」
「白鳥さん。ば、バスの隣に座ってもいいですか?」
「白鳥さん。ぼくと…そ、その…」
美鈴ちゃんがモテモテだ。
…いや、美鈴ちゃんは元からモテモテだけれども。
皆修学旅行という解放感もあって、尚且つ隣のクラスの所為もあってここぞとばかりにアタックしている。
それが悪い事とは言わないけれど…。
トイレの前で出待ちは止めた方が良いと思う。
美鈴ちゃん、顔が真っ青通り越して、真っ白だし。
僕は急いでその集団の中へ割り込んで、
「美鈴ちゃん。華菜ちゃんが待ってるよ。行こう?」
手を握ると真っ直ぐその場を脱け出した。
「ゆ、優兎くん。ごめんね、ありがとう…」
「ううん。気にしないで。でも美鈴ちゃん気を付けなきゃ。こういう時、単独行動は不味いよ」
「う、うん…。ごめんね。トイレだし直ぐに戻れると思って…」
確かにバス移動中のトイレ休憩。直ぐ戻るつもりでいたんだろう。
だからこそ、美鈴ちゃんは華菜ちゃんと一緒に行かなかった訳だし。
…それともう一つ。華菜ちゃんが他のクラスの庶民派の子達と交流してるからってのもあるんだと思う。楽しんで欲しいんだよね、美鈴ちゃんは。
「優兎くんも友達と話してたでしょう?わざわざ脱け出させてごめんね?」
「大丈夫。恭平も協力してくれたから」
「逢坂くんも?…そっか。逢坂くんにも迷惑かけちゃったんだね…」
あ、しまった。
言い方を間違えた。
美鈴ちゃんだったら、こういう時気に病むって知ってたのに。
…どうしよう。
どう言ったらいいだろう?
あ、…そうだ。前に葵さんが美鈴ちゃんを言い包めた時があったっけ。それを真似してみよう。
「じゃあ美鈴ちゃん。今度僕達にまた何かご飯作って?皆でリクエストするから、一緒に遊んで一緒に食べよう?」
そう言うと、美鈴ちゃんは一瞬キョトンして。それからとても嬉しそうに笑って頷いた。
う…。可愛い…。
ちょっとこれは反則だと思う。
僕達がバスに向かって歩いていると、
『おぎゃああああああっ!!』
「えっ!?」
突然の叫び声。
驚いて美鈴ちゃんと二人振り向くが、そこには何もなく誰もいない。
「い、一体何だったの?」
「わ、解んないけど…。早くバスに戻ろう?」
美鈴ちゃんの手を引いて急いでバスへと戻った。
―――同時刻の葵:中学校にて―――
「……はぁ…。鈴ちゃんがいないのが辛い…」
「…おい、葵。いないのはたった四日だろうが」
「………はぁ……。鈴ちゃん…。会いたいなぁ…」
「おい、葵。人の話を聞けよ」
「…………………はぁ………。あ、龍也。そこの英訳間違ってるよ」
「はっ!?って言うか何でそう言う所だけちゃんと見てるんだよっ!!」
―――修学旅行二日目。
「ふわぁっ」
「美鈴ちゃんっ。そんなに身を乗り出したら危ないよっ」
「すっごい、綺麗だねっ!美鈴ちゃんっ」
「つい身を乗り出しちまうの、分かる気がする」
僕が必死に美鈴ちゃんを船の手摺りから引き離そうとしているのに、華菜ちゃんと恭平はその横から身を乗り出そうとする。
僕達は松島に到着し、まず真っ先にホテルへ連れて行かれた。荷物を部屋へ置き、もう一度ロビーに集まって先生から諸注意を聞く。その後は自由行動だったから計画通り遊覧船へ直行した。
船から身を乗り出そうとしている三人をどうにか手摺りから引き離し、僕も景色を堪能する。
「凄い…こんなに綺麗だなんて思わなかった……。…こんなの人生で始めて見た……」
「んな大袈裟な」
恭平の言葉に美鈴ちゃんが何故か苦笑した。
その理由は分からないけれど、何処か辛そうで。一瞬恭平をどつきたくなる。
けれど、その空気を華菜ちゃんが壊してくれた。
「美鈴ちゃん、さっき買ったウミネコの餌。ウミネコにあげようよっ」
「う、うん…。その…鳥にもオスっている、よね…?」
その言葉に僕達はフリーズした。
え?まさか美鈴ちゃん、動物の男も駄目なのっ!?
……知らなかった。
「大丈夫だよ、美鈴ちゃんっ。あ、そうだっ」
華菜ちゃんは恭平に買った餌の入った紙袋を手渡すと、美鈴ちゃんと手の平を上に向けて手を重ね合った。
ちょっと大きめの手の器が出来上がる。
華菜ちゃんの意図を読み取った恭平はその手の平の上に餌をのせた。
二人はそれを確認すると、手摺りから手だけを外へ出す。
するとそこに数羽のウミネコが集まり、餌をつついて行く。
美鈴ちゃん……綺麗だな。
それに、可愛い…。
ウミネコの羽がまるで…天使の羽みたいで…。
僕は思わず鞄からカメラを取り出して写真を撮っていた。
棗さんから預かったカメラでつい美鈴ちゃんを撮ってしまった…。美鈴ちゃんは写真が苦手って言ってたけど、棗さんは美鈴ちゃんから許可をとったから大丈夫って言ってたし。あとでプリントアウトする時僕の分も印刷して貰おう。
うんうんと頷いていると、隣からシャッター音がした。
視線を向けると、その音を鳴らした主もまた僕の方を見ていて。
「…考える事は一緒だな」
「だね」
僕達は顔を見合わせて笑った。
「お、おいっ!あれ見ろよっ!」
「あぁ?あれってなに…ふおっ!?」
「なんだあれっ!?何か海の上歩いてんぞっ!」
周囲にいた乗客が騒いでいる。
海の上を何か歩いてる?一体何の事?
僕と恭平はその人達の視線の方を見るけれど…そこには誰もおらずただただ首を傾げるだけで終わった。
―――同時刻の棗:中学校の柔道場―――
(鈴…ちゃんと寝れてるかな…?)
ドシンッ。
「ちょ、ちょっと棗先輩っ、て、手加減してくださいっ」
(心配だなぁ…。男に囲まれて、泣いたりしてないよね…)
ドシンッ。
「ぐえっ!?せ、先輩っ、手加減をっ。く、首、締まってるっ、締まってるっ」
(そう言えば、優兎。写真撮ってくれてるかな…?後で鈴の笑ってる姿確認しなきゃ)
ギリギリギリッ!
「せ、せんぱっ、ぎぶぎぶっ!……も、むり……がくり」
「あれ?猪塚?、どうしたんだ?猪塚?おい?」
―――修学旅行三日目。
「お城とか城の跡とか神社とか、つまんなーい…」
華菜ちゃんがぼそりと呟くと、華菜ちゃんと手を繋いでいた美鈴ちゃんが小首を傾げた。
「そう?私は好きだけどなぁ…。あ、華菜ちゃん、ほら、社務所があるよ」
「しゃむしょ?」
「うん。お御籤とか御守りとか売ってるんだよ。…縁結びの御守りとか」
ふふっと笑う美鈴ちゃんに華菜ちゃんは顔を真っ赤に染める。
そんな二人を見送りながら、
「恭平は買わなくていいの?」
美鈴ちゃんに便乗してニヤニヤと笑って恭平に問うと、恭平は顔を真っ赤に染めてそっぽ向いた。
「うるせーよっ。…っつーか、お前人の事言えんのかよ。お前だって買うよな?縁結びのお・ま・も・り」
わざわざ御守りの所を強調して言う。僕は自分の顔が赤くなるのが分かって、じっとりと恭平を睨むと、同じく恭平も僕を睨んできた。
「……不毛な争いは止めようか」
「だな…」
互いに足を引っ張り合っても何の意味もない。
僕達は社務所の御守りを見る事にした。
お祖母様にも何かお土産に買って帰ろうかな…。
あ、これ可愛い。桜の形のピンクの石がついた健康祈願のストラップ。
手に取ってそれを見ていると、横からひょいっと美鈴ちゃんが覗き込んできた。
「美智恵さんにお土産?」
「うん。可愛いかなって思って」
「じゃあ、私も色違いをお祖母ちゃんに買うよ。そしたら親友同士でお揃い持てるよね?」
美鈴ちゃんがニッコリ笑って、桜の形の緑色の石がついた健康祈願のストラップを手に取った。
僕達が互いに微笑み和んでいると、美鈴ちゃんの奥で華菜ちゃんと恭平がお揃いのストラップを買ったようだった。
なんだかんだで仲良く買ってるんじゃないか。
ちょっと微笑ましくなった。
ストラップを購入し、社務所を出ようとした時。
「あぁっ!?お御籤は食べ物ではありませんよっ!」
「だからと言って、御守りを食べていい訳でもありませんっ!!」
…巫女さん達が大騒ぎを起こしていた。
「……何かすっごく嫌な予感がするから、早く行こう?」
美鈴ちゃんの呟きに誰も反論はしなかった。
―――修学旅行四日目。
「ずんだ餅、おいしーいっ!」
美鈴ちゃんがほっぺを抑えて幸せそうに試食のずんだ餅を食べている。
駅のお土産屋さんでの自由行動。僕達はお土産を物色していた。
「白鳥。何買うか決めたのか?」
「それがねー。流石に本場のずんだ餅はお土産に出来ないから、ずんだ餅味の何かにしようかと思ってるんだけど…」
既に定番の笹かまと牛タンは購入済みなうえ発送も済ませている美鈴ちゃんは、そう言いながら二つの箱を手に取った。
一つはずんだ餅味のプチケーキ。そしてもう一つはずんだ餅味のプリンだ。
むむむっと真剣に悩む美鈴ちゃんの姿を見ていると、それはとても可愛いんだけど、でもそこまで迷わなくてもとも思ってしまう。
僕がいるのに、と。
思わず苦笑する。
「美鈴ちゃん、僕がもう一方を買うよ。そうしたら二つとも食べられるでしょう?」
「え?でも…」
「どっちにしても持ち帰る先は一緒なんだし大丈夫だよ」
「それはそうだけど…。でもほんとにいいの?」
「勿論」
「ありがとう、優兎くんっ」
「どういたしまして。買いに行こう?美鈴ちゃん」
「うんっ」
美鈴ちゃんとレジに行って会計を済ませる。
買うものを買って戻ると、華菜ちゃんが両手にずんだ餅味ソフトクリームを持って待っていた。
「も、もしかして、それご当地ソフト?」
「うんっ。美鈴ちゃん、食べたいかと思って買っといたよっ」
「華菜ちゃんっ!嬉しいっ!大好きっ!」
「私も大好きっ!」
二人で抱き締め合おうとして、
「こらっ、華菜、白鳥っ。抱き合うとソフト落とすぞっ」
華菜ちゃんの買ったお土産を持った恭平に止められていた。
僕も美鈴ちゃんの買ったお土産を預かり、ずんだ餅ソフトを食べながら歩く二人の後ろをついて店を出た。
「お、お客さまっ!困りますっ!!流石に商品の買い占めはっ!」
「せめて代金を頂いて、こちらの業者からその個数をお客様のご自宅へ発送させて頂きますのでっ」
………。
何か店内が騒がしいけれど。
僕達は自己防衛の為に聞かなかった事にした。
―――修学旅行五日目。
「あーあ。もう修学旅行が終わっちゃうよー」
「……そうだな」
「もっと遊びたいー」
「……そうだな。でもな、華菜。そんな事より、お前なんつー格好でロビーにいるんだっ」
「え?」
…うん。
恭平が叫びたい気持ちも分かる。
お風呂に入って、ちょっと涼もうとロビーに来たら。多分同じ理由でロビーに来た美鈴ちゃんと華菜ちゃんを発見した。
美鈴ちゃんはきちんと体操着姿だけど、華菜ちゃんは下は体操着だけれど上がキャミソール一枚。プラスお風呂で火照って赤くなった顔。
流石にそれは駄目だと思う。僕も直視出来ない。
そっと視線を逸らすと、
「だから言ったのに。華菜ちゃんてばもう」
「だって暑いんだもーん」
「駄目だってば。ほら、これかけて」
美鈴ちゃんと華菜ちゃんの会話が聞こえて、バサッと何か布の音がした。
もう、大丈夫かな?
視線を戻すと、華菜ちゃんの肩には可愛い白猫柄のバスタオルがかけられていた。
「バスタオル?」
「白鳥のか?」
「うん。そうだよ」
「でも貸し出しのタオルあったよね?」
僕が問うと、
「……貸し出しのタオルはどこで誰が盗むか分からないからね……」
達観した答えが返ってきた。
よし。話を逸らそうっ。
恭平とアイコンタクトして、僕達は違う話題を出してその話で少し盛り上がる。
穏やかな空気になった事にホッとしていると…。
―――ドスドスドスッ。
まるで床に穴でもあけているかのような音と地響きが聞こえる。
え?何の音?
しかも近づいてくるんだけどっ!?
「露見尾っ!おいっ!そっちはロビーだっ!食堂じゃないっ!」
ムフンッ!?
「逆だよ逆っ!っとに何でお前はそんなに方向音痴なんだっ!」
むふん……。
「あー。落ち込むなって。どうせ迷子になった所でお前は死にそうにないんだから。それより飯食いに行くぞ。ほら、ついて来いっ」
むふんっ♪
―――ドスドスドスッ。
音が遠ざかった。
一体何だったんだろう…?
呆気に取られ、四人でその音がした方をただただ見詰めていると…。
「露見尾くんも修学旅行先、松島だったんだ…」
美鈴ちゃんが何か呟いたけどなんと言ったか分からなかった。
…そう言えば鴇さんが言ってた。
奇妙なモノは記憶に残すなって。
その教えは凄く大事なものだったんだと僕は今になって実感した。
―――同時刻の鴇:自宅―――
「うぅぅ…美鈴がいない…」
「親父、鬱陶しい。俺の部屋で泣くな」
「だって、我が家で唯一の女の子が…」
「佳織母さんがいるだろうが」
「勿論佳織は女神だ。だが、癒しの天使がいないんだぞ?」
「親父…。変態くさいぞ」
「家の中が男だらけでむさくるしいっ」
「…まぁ、それは否めないな。明日には帰ってくるんだから、もう少しくらい我慢しろ。大体、旭達が我慢出来てるのに何であんたが出来ないんだ」
「寂しいものは寂しいんだよ…」
「………はぁ」
―――修学旅行最終日。
「ただいまーっ」
「ただいまっ」
僕と美鈴ちゃんは揃って帰宅した。
いつもの様に僕は美鈴ちゃんの家の方から家へ入る。
玄関のドアを開けると誠さんが出迎えてくれて、両手を広げて抱きしめてくれようとしたけれど。
ドゲシッ!
あ、踏まれた…。
「お帰りっ、二人共っ」
佳織さんに抱きしめられた。
そのまま引き摺られるように、靴も満足に脱げないままリビングへ連れて行かれる。
そこには既に皆揃っていて。そう言えば今日土曜日だったっけ。だから皆勢揃いなんだね。
皆はお帰りと笑顔で出迎えてくれて。僕達も笑顔でただいまと元気よく答えた。
修学旅行の土産話とお土産を渡して、わいわいと騒ぐ。
暫くして夕飯を金山さんが作ってくれて、それを美味しく食べながらまた話して。
夜も更けた頃、僕とお祖母様は自宅へと渡り廊下を通じて移動した。
二人になったけれど、白鳥家の皆と話せなかった事とかを自宅のリビングで話す。
お祖母様は、優しい笑顔でうんうんと頷いて聞いてくれて。それが嬉しくて僕はずっと話し続けた。
だって本当に楽しかったから。
でも流石に話し続けた所為で喉が渇いて。
そしたらお祖母様がそれに気付いてくれて、キッチンへお茶を淹れに行ってくれた。
本当は僕が行こうと思ったんだけど、疲れてるだろうからとお祖母様に先手をとられてしまった。
手持無沙汰の僕はテレビを点けて待つ事にした。
…?
ニュース?
『本日未明。とあるホテルにて、ホテルの床が抜けたという事件がありました。本来このホテルの構造上、穴があくなどそのような事はなく…』
………。
『他にも、神社の鐘が一部食べられた跡があったり、松島では海上を走る正体不明の生物が…』
…………。
これって………。
「優兎?どうかしたのかい?」
お祖母様が湯呑をお盆に載せて戻って来た。
僕は今のニュースを見なかった事にしようと心に決め、静かにテレビを消した。
僕達の修学旅行はこうして幕を閉じたのだった。
10
お気に入りに追加
3,737
あなたにおすすめの小説
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
彼女がいなくなった6年後の話
こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。
彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。
彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。
「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」
何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。
「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」
突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。
※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です!
※なろう様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる