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第一章 幼児編
第六話 計画の結果
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夏が終わり、私は何時もの日常に戻った。
家事をして時間に余裕があったら勉強をして、お兄ちゃん達が帰宅したらおやつで出迎えて。
そんな毎日を過ごしてる内に季節は過ぎ、秋が過ぎて、冬も終わり、桜が咲く季節になって今現在。
皆が出掛けてるのをこれ幸いに、私はママの部屋でパソコンを前に考え込んでいた。
本来、私の目標は、
『攻略対象キャラと出会わなくする事っ!!』
だった。なのに、どうなの、これ。
出会わない所か、半数には満たないにしろ、会ってるしっ。なんならゲーム開始前に会ってるしっ!
しかも、ゲーム本編での大人組中心に会ってるしっ!仲良くなってるしっ!
夏以来、ちょくちょく遊びに来てくれるし、商店街の人達の所為か、注文した物を帰りがてらに届けてくれるし。
作ったご飯美味しいって言って喜んでくれるし。あれ、凄く嬉しいんだよねー…って違うっ!!
そもそも再婚からして時期が違い過ぎていたんだよね。
私、今年小学校入学なのに、もうお兄ちゃん達いるし。
お兄ちゃん達と言えば、少しゲームの事を思い出したんだった。
まず、鴇お兄ちゃんの事。
白鳥鴇 主人公の義理の兄で白鳥家の長男。担任教師。担当は数学。必要パラメータ、文系、理系、雑学をMAX状態。好みのスタイルは、KS。メインイベントは夏休み帰省。発生条件は棗と葵との友好度50以上、鴇の高校時代の仲間との友好度が35以上。内容は鴇の高校時代の仲間を誘い、ヒロインの実家へ帰省する。そこで鴇が仲間達と絆を深め、最終的に皆で花火をすると、エンディングへのフラグが解放される。
さぁ、思い出してみよう。
私達、花火したよね。年齢は違う物の、花火、しちゃったよね?
これ、どうとったらいい?どう受け取ったらいいかな?
私無意識に、鴇お兄ちゃんとのフラグ立てたって事?いや、待って。落ち着いて考えよう。
まだ、それを断定するのは早い。だって、私まだ幼児だしっ!!
あと数日で小学生と言えど、まだ幼子だしっ!!
次だ、次っ。
白鳥葵 主人公の義理の兄で白鳥家の次男。双子の兄。高校三年生で生徒会副会長。必要パラメータ、文系、運動、優しさをMAX状態。好みのスタイルはKS。メインイベントは遊園地デート。発生条件は棗との友好度が30以上。内容は遊園地にデートに行こうと誘い、OKを貰う事が第一条件。デートの最中に、ランダムで発生する伯母からの呼び出し電話を受けるのが条件の2つ目。そこで葵が抱えていた伯母との確執を知り、その心に寄り添う事でエンディングへのフラグが解放される。
思い出してみよう。
遊園地デートなんてした覚えはない。
ない…が。ババア…いや、伯母さん達とバトルして確執を除いた記憶はバッチリとある。
……もしかして、…いや、考えない。考えないよっ!私は何もしてないっ!!
ただ葵お兄ちゃんが苦しむのが耐え切れなかったのっ!!
そうよ、そうなのよ、キットソウナノヨ!
次っ!!
白鳥棗 主人公の義理の兄で白鳥家の三男。双子の弟。高校三年生で生徒会書記。必要パラメータ、理系、運動、雑学をMAX状態。好みのスタイルはKS。メインイベントは水族館デート。イベント発生条件は葵との友好度が30以上。内容は水族館にデートに行こうと誘い、OKを貰う事が第一条件。第一条件の注意事項として、発生期間があり、春の間に葵と鴇が二人で実家に戻っている日にデートに誘う必要がある。更にランダムで発生するチンピラに絡まれる必要がある為、タイミングと運勝負。リロードが必須になる。ただし、そのタイミングさえ合えば、後は難しい選択肢はなく、ヒロインが棗を頼っていると思わせる選択をすれば、イベントは進行していき、エンディングへのフラグが解放される。
…思い出してみよう。
水族館には行ってない。
行ってないけど、透馬お兄ちゃんに絡まれた時に思いっきり棗お兄ちゃんを頼った。
って言うか今でも頼りきり。
棗お兄ちゃんがいなきゃ私安眠出来ない。
睡眠って大事なんだよ。ほんとに。
……これ、フラグ立ってないよね?ねぇ、立ってないよねっ!?
………。
次行く…。
天川透馬 肉屋の長男で、鴇の高校時代の仲間。シルバーアクセサリーデザイナー。妹が一人いる。ヒロインのアルバイト先の一つ、シルバーショップ『ホース』の店長である。そこでアルバイトをすると出会う事が出来、好感度も上がりやすくなる。必要パラメータ、文系、理系、芸術、雑学をMAX状態。好みのスタイルはRS。メインイベントは夏休み帰省。イベント発生条件は鴇との友好度が50以上。鴇と夏休みにヒロインの実家に帰省をする際に透馬を誘う事が条件。発生期間が3日間と短い間でヒロイン誘拐事件を発生させ、透馬に助けて貰う事でエンディングへのフラグが解放される。
…おもいだしてみよー。
めっちゃ助けられたしっ!!
怪我までさせちゃったよ、こんちきしょーっ!!
透馬お兄ちゃん、シルバーアクセ作る職人になるのに、腕怪我させるって何事よ、私っ!!
ああぁ…今思い出しても、全力で土下座もんだよぉ…。
今度透馬お兄ちゃんに、何か美味しいもの作ってあげよう。うん、そうしよう…。
………フラグ……。
…次…。
丑而摩大地 八百屋の三男で、鴇の高校時代の仲間。ヒロインのクラスの体育を担当している教師。運動部を総括して見ており、正式な担当顧問はバスケ。運動部、特にバスケ部に所属すると好感度が上がりやすく遭遇率が高くなる。必要パラメータ、運動、雑学をMAX状態。好みのスタイルはBS。メインイベントは夏休み帰省。イベント発生条件は鴇との友好度が50以上。鴇と夏休みにヒロインの実家に帰省をする際に大地を誘う事が条件。発生期間である8月中に大地と川遊びをし、ランダムで発生する村一番の悪ガキ達に橋から落とされると言うハプニングを起こす必要がある。そこで大地に受け止められ助けて貰う事によりエンディングへのフラグが解放される。
……オモイダシテミヨウ。
助けられたよ。あれ、マジ怖かった。
子供の軽さであれだけの衝撃だったんだから、高校生であんなとこから落ちたら、大地お兄ちゃん絶対怪我するってっ!
凄いなゲーム。ご都合主義ってやつっ!?
ここは深いとこに触れちゃいけないってあれだねっ!?
とは言っても…フラグもう立ってる気がしてきたよ。
……最後いこ…。
嵯峨子奏輔 呉服屋の長男(姉が二人いる)、鴇の高校時代の仲間。ヒロインのアルバイト先の一つである塾の講師主任。そこでアルバイトをすると出会う事が出来、好感度も上がりやすくなる。必要パラメータ、文系、優しさ、色気をMAX状態。好みのスタイルはSS。メインイベントは夏休み帰省。イベント発生条件は鴇との友好度が50以上。鴇と夏休みにヒロインの実家に帰省をする際に奏輔を誘う事が条件。発生期間は帰省中で、奏輔しかいない時に図書館デートに誘い、自分の弱みを言う事で警戒を解かせ、奏輔のお昼寝姿を見る事が必須。それによってエンディングへのフラグ解放される。
もう思い出したくありませんっ!
弱みを見せたよっ!あぁ見せたさっ!!
奏輔お兄ちゃんにしっかりと怒られたさっ!
まぁ、あれは結果的に良かった気もするけれど。
新たな視野を手にいれた気がするから…。
でもさ、あれがフラグだとは思わないじゃんっ!!
結果。
全員のエンディングフラグ立ててましたっ!!やったねっ!!
「やったね、じゃねーよっ!!」
ついつい全力で己のお花畑な脳内に突っ込みをいれてしまった。
「美鈴、言葉遣い凄い事になってるわよ」
「だって、だって、ママ~…」
パソコンにデータを保存して、何時もの様に鍵をかけてシャットダウンして、大きくなったお腹を擦りながら椅子に座っているママの足に泣きついた。
ママと前世の記憶があると確認し合ってから、ノートはさっさと証拠隠滅して燃えるゴミの日に出してしまい、思い出した攻略データはパソコンに打ち込む様にしていた。
いやだって、鴇お兄ちゃん、私が知っている言語は全て覚えていこうとするんだもん。
いつそれが読まれるか分かったもんじゃない。
その点、ママのパソコンはお仕事の内容とかあるから、鴇お兄ちゃんは勝手に開く事ないし、何より間違って見られたとしても、きっと次の新作のネタにされるんだろうなって静かに見なかった事にしてくれると思うの。
「よしよし。それで?ちゃんと説明してみなさい」
私は全力でフラグを立てていた事を事細かに説明した。ママはそれをうんうんと聞いてくれている。
「攻略対象と会わずにご隠居生活を送るつもりだったのにぃ…」
「無理でしょ。ここまでヒロイン補正が強いとなると、抗うだけ無駄じゃない?」
「ママ…。傷心の娘をぶった斬らないで…」
「事実は事実でしょ。受け止めなさい」
「……はい…」
ママのその強さ。一割でいいから分けて欲しい。
「ママは強いなぁ~…。私もそうなれるかなぁ~…」
私が言うとママが苦笑した。そっと細い手が私の頭を撫でる。
「私は強くなんかないわ。夏にそれを実感した」
「夏?ってゆーと実家行った時?」
「えぇ。…私の精神はもろいんだって。沢山沢山、嶺一と誠さんに支えられてたんだって」
「ママ…」
前に私がパパの事を聞いた時、ママはあっさり流したけれど。ママはパパが亡くなると知っていても尚、パパと結婚したんだ。…愛してなかった訳ないよね。
「あんな形で思い知るとは思わなかった」
誠パパとの間に何があったのか分からないけど、夏の後からママは本当に穏やかに微笑む。
「ねぇ、ママ?」
「なぁに?」
「パパの事愛してた?」
「当り前でしょ」
「……そっか」
私にその感情を理解出来るようになるかは分からない。けど、ママの幸せそうな顔を見ていると、いつか自分にもそんな時が来たらいいと少しは思える。
かと言って、男の人をそういう意味で好きになれるか?と言われたらまだ無理。まず無理。勘弁してください。
お兄ちゃん達ならどうか?
いや、そもそもお兄ちゃんだし。年齢的にも私は完全に妹だし。
透馬お兄ちゃんも『本当の妹みたいに思ってる』って言ってくれたしっ!
「夏と言えば、美鈴ー」
「なに?ママ」
「ほら、夏にあのバカ女共が起こした騒ぎがあったじゃない?」
「うん。あったね。あれマジ怖かったよ」
「そうね。本当透馬君には頭が上がらないわね。…ってそうじゃなくて。あの女共が罰せられて全て片付いて、ほっとしたわーって思ってたんだけど。私一つ忘れてたのよね」
「?、何を?」
「ほら。実家に行く前にホテルで」
「あっ!あの視線の事っ!?」
思い出した思い出したっ!
お風呂上りに、鴇お兄ちゃんの腕の中で感じた視線っ。実際私を見てたのか、鴇お兄ちゃんを見てたのか分からないけど。
「あのバカ女達の所為でうやむやになっちゃったけど、あれの犯人誰だったのかしら」
「あのオバさん達ではないよね。だって、村に着く前の事だもんね」
「えぇ、そうね。妊娠してからこっち金山さんが心配かけまいとしてくれて一切そのことに触れなかったから尚更記憶から消去されてたわ。あとでちゃんと聞いておかないとね」
「うん」
その時は私も一緒に聞こう。自分の身の安全の為ってのも勿論あるけど、万が一鴇お兄ちゃんにストーカーがついたなら助けてあげたいし。ストーカーってほんっと怖いからねっ!
「さて、と」
話が一段落した所でママが立ち上がる。どうしたんだろう?トイレかな?
ママってば妊娠してるの?って思う位すたすたといつも通り歩くから、ついこっちが心配してしまう。
何処に行きたいのか解らないけど、とりあえず先回りしてドアを開けて、廊下を歩く後ろに付いて回った。
玄関に向かって歩くママに、私は首を捻る。日課のお散歩?
「あ、ごめん。美鈴。部屋からママの鞄持って来て」
「うん。分かった」
頼まれたので、もう一度ママの部屋に行ってママのハンドバッグを手に玄関へ戻る。
「ありがと」
「うん」
ほんとに何処に行く気なんだろ?
外に出るとタクシーが待っていて、ますます首を捻る。
ママが当然の様にタクシーに乗ると、にっこりと微笑んで、
「じゃ、ママ。サクッと産んでくるから、美鈴。誠さんに連絡よろしくねっ」
「え?はっ?えっ!?」
ちょ、ちょっと待ってっ!?
今、ママなんて言ったっ!?
「じゃあね~。行ってきま~すっ」
動き出すタクシー。手を振るママが遠ざかり残された私。
……。
………。
「えええええっ!?」
慌てて家へ駆け込み、お留守番組のお祖母ちゃんの部屋に飛び込む。やっぱり慌てたお祖母ちゃんと一緒に誠パパを呼び戻し、恐るべき速さで帰宅した誠パパとお兄ちゃん達。その勢いのまま、皆でテンパりながら病院へと向かう。
『攻略対象キャラに会わないようにする』と言う本来の目標は失敗に終わった。
更に、ご隠居生活も、ママと誠パパがラブラブな限り、もう無理だと思う。
そして、私の男性恐怖症に改善の兆しは見えない。お兄ちゃん達はヒロイン補正の為か、大丈夫っぽいけど。それでもその補正だって何時まで補正してくれるか解らない。
このままで行くと、また次から次へと攻略対象キャラが出てくるだろう。
となると、私の新たな目標は…。
『極力地味に過ごして、攻略対象キャラの視界に映らないようにしようっ!!』
に決めたっ!
本来、ゲーム本編ではお兄ちゃん達はメインヒーローに続いて、攻略が困難なキャラ達だ。だから、恋愛に持って行こうと私が思わない限りはこのまま妹としていられるから良しとする。
けれど、他の攻略対象達はそうはいかないだろう。
だって、後年上キャラってメインヒーローと猪塚先輩しかいなかった気がするんだ。
となると、後は同い年か年下って事になる。
同じ学校になる可能性だってある訳で。目立って出会いやすくするより、日陰を静かにしずか~に生きていた方がいいに決まってる。
うんっ!そうしようっ!!
新たな決意を胸に、私は車に揺られながらママの下へと向かうのだった。
家事をして時間に余裕があったら勉強をして、お兄ちゃん達が帰宅したらおやつで出迎えて。
そんな毎日を過ごしてる内に季節は過ぎ、秋が過ぎて、冬も終わり、桜が咲く季節になって今現在。
皆が出掛けてるのをこれ幸いに、私はママの部屋でパソコンを前に考え込んでいた。
本来、私の目標は、
『攻略対象キャラと出会わなくする事っ!!』
だった。なのに、どうなの、これ。
出会わない所か、半数には満たないにしろ、会ってるしっ。なんならゲーム開始前に会ってるしっ!
しかも、ゲーム本編での大人組中心に会ってるしっ!仲良くなってるしっ!
夏以来、ちょくちょく遊びに来てくれるし、商店街の人達の所為か、注文した物を帰りがてらに届けてくれるし。
作ったご飯美味しいって言って喜んでくれるし。あれ、凄く嬉しいんだよねー…って違うっ!!
そもそも再婚からして時期が違い過ぎていたんだよね。
私、今年小学校入学なのに、もうお兄ちゃん達いるし。
お兄ちゃん達と言えば、少しゲームの事を思い出したんだった。
まず、鴇お兄ちゃんの事。
白鳥鴇 主人公の義理の兄で白鳥家の長男。担任教師。担当は数学。必要パラメータ、文系、理系、雑学をMAX状態。好みのスタイルは、KS。メインイベントは夏休み帰省。発生条件は棗と葵との友好度50以上、鴇の高校時代の仲間との友好度が35以上。内容は鴇の高校時代の仲間を誘い、ヒロインの実家へ帰省する。そこで鴇が仲間達と絆を深め、最終的に皆で花火をすると、エンディングへのフラグが解放される。
さぁ、思い出してみよう。
私達、花火したよね。年齢は違う物の、花火、しちゃったよね?
これ、どうとったらいい?どう受け取ったらいいかな?
私無意識に、鴇お兄ちゃんとのフラグ立てたって事?いや、待って。落ち着いて考えよう。
まだ、それを断定するのは早い。だって、私まだ幼児だしっ!!
あと数日で小学生と言えど、まだ幼子だしっ!!
次だ、次っ。
白鳥葵 主人公の義理の兄で白鳥家の次男。双子の兄。高校三年生で生徒会副会長。必要パラメータ、文系、運動、優しさをMAX状態。好みのスタイルはKS。メインイベントは遊園地デート。発生条件は棗との友好度が30以上。内容は遊園地にデートに行こうと誘い、OKを貰う事が第一条件。デートの最中に、ランダムで発生する伯母からの呼び出し電話を受けるのが条件の2つ目。そこで葵が抱えていた伯母との確執を知り、その心に寄り添う事でエンディングへのフラグが解放される。
思い出してみよう。
遊園地デートなんてした覚えはない。
ない…が。ババア…いや、伯母さん達とバトルして確執を除いた記憶はバッチリとある。
……もしかして、…いや、考えない。考えないよっ!私は何もしてないっ!!
ただ葵お兄ちゃんが苦しむのが耐え切れなかったのっ!!
そうよ、そうなのよ、キットソウナノヨ!
次っ!!
白鳥棗 主人公の義理の兄で白鳥家の三男。双子の弟。高校三年生で生徒会書記。必要パラメータ、理系、運動、雑学をMAX状態。好みのスタイルはKS。メインイベントは水族館デート。イベント発生条件は葵との友好度が30以上。内容は水族館にデートに行こうと誘い、OKを貰う事が第一条件。第一条件の注意事項として、発生期間があり、春の間に葵と鴇が二人で実家に戻っている日にデートに誘う必要がある。更にランダムで発生するチンピラに絡まれる必要がある為、タイミングと運勝負。リロードが必須になる。ただし、そのタイミングさえ合えば、後は難しい選択肢はなく、ヒロインが棗を頼っていると思わせる選択をすれば、イベントは進行していき、エンディングへのフラグが解放される。
…思い出してみよう。
水族館には行ってない。
行ってないけど、透馬お兄ちゃんに絡まれた時に思いっきり棗お兄ちゃんを頼った。
って言うか今でも頼りきり。
棗お兄ちゃんがいなきゃ私安眠出来ない。
睡眠って大事なんだよ。ほんとに。
……これ、フラグ立ってないよね?ねぇ、立ってないよねっ!?
………。
次行く…。
天川透馬 肉屋の長男で、鴇の高校時代の仲間。シルバーアクセサリーデザイナー。妹が一人いる。ヒロインのアルバイト先の一つ、シルバーショップ『ホース』の店長である。そこでアルバイトをすると出会う事が出来、好感度も上がりやすくなる。必要パラメータ、文系、理系、芸術、雑学をMAX状態。好みのスタイルはRS。メインイベントは夏休み帰省。イベント発生条件は鴇との友好度が50以上。鴇と夏休みにヒロインの実家に帰省をする際に透馬を誘う事が条件。発生期間が3日間と短い間でヒロイン誘拐事件を発生させ、透馬に助けて貰う事でエンディングへのフラグが解放される。
…おもいだしてみよー。
めっちゃ助けられたしっ!!
怪我までさせちゃったよ、こんちきしょーっ!!
透馬お兄ちゃん、シルバーアクセ作る職人になるのに、腕怪我させるって何事よ、私っ!!
ああぁ…今思い出しても、全力で土下座もんだよぉ…。
今度透馬お兄ちゃんに、何か美味しいもの作ってあげよう。うん、そうしよう…。
………フラグ……。
…次…。
丑而摩大地 八百屋の三男で、鴇の高校時代の仲間。ヒロインのクラスの体育を担当している教師。運動部を総括して見ており、正式な担当顧問はバスケ。運動部、特にバスケ部に所属すると好感度が上がりやすく遭遇率が高くなる。必要パラメータ、運動、雑学をMAX状態。好みのスタイルはBS。メインイベントは夏休み帰省。イベント発生条件は鴇との友好度が50以上。鴇と夏休みにヒロインの実家に帰省をする際に大地を誘う事が条件。発生期間である8月中に大地と川遊びをし、ランダムで発生する村一番の悪ガキ達に橋から落とされると言うハプニングを起こす必要がある。そこで大地に受け止められ助けて貰う事によりエンディングへのフラグが解放される。
……オモイダシテミヨウ。
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……最後いこ…。
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もう思い出したくありませんっ!
弱みを見せたよっ!あぁ見せたさっ!!
奏輔お兄ちゃんにしっかりと怒られたさっ!
まぁ、あれは結果的に良かった気もするけれど。
新たな視野を手にいれた気がするから…。
でもさ、あれがフラグだとは思わないじゃんっ!!
結果。
全員のエンディングフラグ立ててましたっ!!やったねっ!!
「やったね、じゃねーよっ!!」
ついつい全力で己のお花畑な脳内に突っ込みをいれてしまった。
「美鈴、言葉遣い凄い事になってるわよ」
「だって、だって、ママ~…」
パソコンにデータを保存して、何時もの様に鍵をかけてシャットダウンして、大きくなったお腹を擦りながら椅子に座っているママの足に泣きついた。
ママと前世の記憶があると確認し合ってから、ノートはさっさと証拠隠滅して燃えるゴミの日に出してしまい、思い出した攻略データはパソコンに打ち込む様にしていた。
いやだって、鴇お兄ちゃん、私が知っている言語は全て覚えていこうとするんだもん。
いつそれが読まれるか分かったもんじゃない。
その点、ママのパソコンはお仕事の内容とかあるから、鴇お兄ちゃんは勝手に開く事ないし、何より間違って見られたとしても、きっと次の新作のネタにされるんだろうなって静かに見なかった事にしてくれると思うの。
「よしよし。それで?ちゃんと説明してみなさい」
私は全力でフラグを立てていた事を事細かに説明した。ママはそれをうんうんと聞いてくれている。
「攻略対象と会わずにご隠居生活を送るつもりだったのにぃ…」
「無理でしょ。ここまでヒロイン補正が強いとなると、抗うだけ無駄じゃない?」
「ママ…。傷心の娘をぶった斬らないで…」
「事実は事実でしょ。受け止めなさい」
「……はい…」
ママのその強さ。一割でいいから分けて欲しい。
「ママは強いなぁ~…。私もそうなれるかなぁ~…」
私が言うとママが苦笑した。そっと細い手が私の頭を撫でる。
「私は強くなんかないわ。夏にそれを実感した」
「夏?ってゆーと実家行った時?」
「えぇ。…私の精神はもろいんだって。沢山沢山、嶺一と誠さんに支えられてたんだって」
「ママ…」
前に私がパパの事を聞いた時、ママはあっさり流したけれど。ママはパパが亡くなると知っていても尚、パパと結婚したんだ。…愛してなかった訳ないよね。
「あんな形で思い知るとは思わなかった」
誠パパとの間に何があったのか分からないけど、夏の後からママは本当に穏やかに微笑む。
「ねぇ、ママ?」
「なぁに?」
「パパの事愛してた?」
「当り前でしょ」
「……そっか」
私にその感情を理解出来るようになるかは分からない。けど、ママの幸せそうな顔を見ていると、いつか自分にもそんな時が来たらいいと少しは思える。
かと言って、男の人をそういう意味で好きになれるか?と言われたらまだ無理。まず無理。勘弁してください。
お兄ちゃん達ならどうか?
いや、そもそもお兄ちゃんだし。年齢的にも私は完全に妹だし。
透馬お兄ちゃんも『本当の妹みたいに思ってる』って言ってくれたしっ!
「夏と言えば、美鈴ー」
「なに?ママ」
「ほら、夏にあのバカ女共が起こした騒ぎがあったじゃない?」
「うん。あったね。あれマジ怖かったよ」
「そうね。本当透馬君には頭が上がらないわね。…ってそうじゃなくて。あの女共が罰せられて全て片付いて、ほっとしたわーって思ってたんだけど。私一つ忘れてたのよね」
「?、何を?」
「ほら。実家に行く前にホテルで」
「あっ!あの視線の事っ!?」
思い出した思い出したっ!
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「あのバカ女達の所為でうやむやになっちゃったけど、あれの犯人誰だったのかしら」
「あのオバさん達ではないよね。だって、村に着く前の事だもんね」
「えぇ、そうね。妊娠してからこっち金山さんが心配かけまいとしてくれて一切そのことに触れなかったから尚更記憶から消去されてたわ。あとでちゃんと聞いておかないとね」
「うん」
その時は私も一緒に聞こう。自分の身の安全の為ってのも勿論あるけど、万が一鴇お兄ちゃんにストーカーがついたなら助けてあげたいし。ストーカーってほんっと怖いからねっ!
「さて、と」
話が一段落した所でママが立ち上がる。どうしたんだろう?トイレかな?
ママってば妊娠してるの?って思う位すたすたといつも通り歩くから、ついこっちが心配してしまう。
何処に行きたいのか解らないけど、とりあえず先回りしてドアを開けて、廊下を歩く後ろに付いて回った。
玄関に向かって歩くママに、私は首を捻る。日課のお散歩?
「あ、ごめん。美鈴。部屋からママの鞄持って来て」
「うん。分かった」
頼まれたので、もう一度ママの部屋に行ってママのハンドバッグを手に玄関へ戻る。
「ありがと」
「うん」
ほんとに何処に行く気なんだろ?
外に出るとタクシーが待っていて、ますます首を捻る。
ママが当然の様にタクシーに乗ると、にっこりと微笑んで、
「じゃ、ママ。サクッと産んでくるから、美鈴。誠さんに連絡よろしくねっ」
「え?はっ?えっ!?」
ちょ、ちょっと待ってっ!?
今、ママなんて言ったっ!?
「じゃあね~。行ってきま~すっ」
動き出すタクシー。手を振るママが遠ざかり残された私。
……。
………。
「えええええっ!?」
慌てて家へ駆け込み、お留守番組のお祖母ちゃんの部屋に飛び込む。やっぱり慌てたお祖母ちゃんと一緒に誠パパを呼び戻し、恐るべき速さで帰宅した誠パパとお兄ちゃん達。その勢いのまま、皆でテンパりながら病院へと向かう。
『攻略対象キャラに会わないようにする』と言う本来の目標は失敗に終わった。
更に、ご隠居生活も、ママと誠パパがラブラブな限り、もう無理だと思う。
そして、私の男性恐怖症に改善の兆しは見えない。お兄ちゃん達はヒロイン補正の為か、大丈夫っぽいけど。それでもその補正だって何時まで補正してくれるか解らない。
このままで行くと、また次から次へと攻略対象キャラが出てくるだろう。
となると、私の新たな目標は…。
『極力地味に過ごして、攻略対象キャラの視界に映らないようにしようっ!!』
に決めたっ!
本来、ゲーム本編ではお兄ちゃん達はメインヒーローに続いて、攻略が困難なキャラ達だ。だから、恋愛に持って行こうと私が思わない限りはこのまま妹としていられるから良しとする。
けれど、他の攻略対象達はそうはいかないだろう。
だって、後年上キャラってメインヒーローと猪塚先輩しかいなかった気がするんだ。
となると、後は同い年か年下って事になる。
同じ学校になる可能性だってある訳で。目立って出会いやすくするより、日陰を静かにしずか~に生きていた方がいいに決まってる。
うんっ!そうしようっ!!
新たな決意を胸に、私は車に揺られながらママの下へと向かうのだった。
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しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
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他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
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2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
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