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幼児編小話
泣けるほどに…。(過去:葉)
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『お母さんっ、お母さんっ…やだよぉっ…一人にしないでっ…私を一人にしないでよぉっ』
華…。私の可愛い華…。
私だって一人にしたくない。私だって貴女の側にいたいのよ。
『お母さんっ』
泣かないで。
私だって泣きたくなるわ。
でも、私の体はもう、動かないのよ。こんなに側にいる大事な大事な愛おしい娘の涙を拭う事すら出来ないのよ。
何で、私の体はこんなにも役立たずなのかしら。
『出来うる限りの事はしましたが…もう…』
本当に出来うる限りの事をしてくれたの?
私が知らないとでも思ったの?
動かない視線で私は自分を診た医者を睨み付ける。
華を犯した、私の体で投薬実験して、失敗して、死期を早めた癖に。
抗えないのを良い事に、華を蹂躙して、私を殺そうとしている。
あぁ、なんで私は病気になどなったのだろう。治療方法が確立していない病気になどかかったのだろう。
華を守ると誓ったのに。あの人の前で誓ったのに。
何でこんなにも…。
悔しくて涙が伝う。
『お母さんっ、苦しいのっ!?』
苦しいわ。
華の側にいられない事が、華の大人になった姿が見れないのが。
苦しくて堪らないわ。
悔しくて堪らないわっ!!
せめて、せめてこの男だけでも…。
今にも死にそうな私を見て嘲笑う視線を向けるこの医者だけでも道連れにしてやるっ!
残りの力を振り絞り、ここで全ての力を使いきってでもっ!
視線を巡らせる。華の後ろに一人の男性がいた。スーツ姿の男性。誰かは知らない。けれど、その瞳を見る限り、誠実そうな人な事は間違いない。
なら、彼に託そう。
華の事を託すんじゃない。この医者の行く末を託すのだ。
決意して。
私は酸素マスクを外し、医者を睨み付け力の限りで叫んだ。
『許さないわっ!!私は絶対に貴方を許さないっ!!私の体で実験し、私をだしに娘を強姦した事も絶対に許さないっ!!』
『な、なにを言ってるんですかっ!?私がそんな事を』
『してないとでもっ!?現に貴方はマスクを取ったら死んでしまう私より自分の保身を考えて抗議しているじゃないっ!!騙されないし、許さないっ!!例え、この命がここで失われるとしても貴方だけは絶対に許さないわっ!!』
病院中に響き渡る様に叫ぶ。
息が、続かない。苦しい…。涙が零れる。
あぁ、死ぬってのはこんなに苦しいものだったのか。
『お母さんっ!?』
私の剣幕に呆気にとられていた華が苦しむ私の手を取る。
華。私の可愛い華…。
『華…。幸せに。どうか、どうか幸せに…』
『お母さん…やだ…。いかないでっ…。おいて、いかないでっ…』
『華…。可愛い可愛い華…。幸せに、なりなさ、い…』
『お母さんっ!?お母さんっ!?いやっ、いやだよっ!!お母さんっ!!』
華の声が遠ざかる。
苦しい。クルシイ…。
息が、じゃない。
心が、クルシイ
華…。愛してるわ…。
私の、命より、―――大事な華。
暗闇が続く。深淵の闇。
「………」
何もない、何も見えない空間。ただただ彷徨う心。
私の心は華を見守る事が出来なかった後悔だけが残って燻り続けている。
「……?」
誰かが私の名前を呼んだ?
耳を澄まし、次の音を待つ。
それは確かに私の名を呼んでいる。
その声はとても懐かしくて、優しい…この声は…?
声がした方向から大きな光が放たれて…。
「ママっ!」
愛おしい声と体を揺さぶられた感触に目を開くと、目の前に可愛い娘の顔があった。
「た、たすけっ、助けてぇっ!鴇お兄ちゃんがっ、怖いぃっ」
鴇?
ソファで転寝していた私は体を起こして、必死に抱き着いてくる美鈴の後ろを見ると、私の息子とその手には紙が一枚。
目を細め良く見てみると答案用紙だった。
「?、鴇?それは何?」
冷静に怒れる鴇に問いかけると、鴇はそれはもういい笑顔で。
「美鈴がどれだけ知識を持ってるかみようと思って、作ってみたんだよ。お遊びのふりして。そうしたら俺のふりを感じ取った美鈴が、わ・ざ・と・点数を悪くとったんで、お仕置きをしようと思ってな」
「…成程ね。それは美鈴が悪いわね。はい、どうぞ」
私はあっさりと美鈴を鴇に差し出す。
「ふにゃーっ!!ママの裏切り者ーっ!!」
「あら?酷いわねぇ。私は娘を裏切った事なんて一度もないわよ。ずっとずーっとママは『娘』の味方よ?」
「それは知ってるけどっ!でもっ」
「さぁ、美鈴。もう一度、テストやろうな?」
「いやーっ!!」
美鈴が鴇から逃走した。
そんな美鈴を楽し気に歩いて追い掛ける鴇に騒ぎに気付いた葵が鴇サイドに、棗が美鈴サイドに付いてワイワイと騒いでいる。
きっと鴇は美鈴が知っている事を、覚えてる範囲を把握しておきたいのね。兄であるために。
葵は鴇と同じ、かしら?棗は皆が鴇の味方になると美鈴が可哀想と思って美鈴の側にいるのね。
美鈴も本当はそれを分かってる。分かってるから、嫌と言いながらも楽しそうに、幸せそうに笑ってる。
知らず私にも笑みが零れた。
今度こそ…今度こそ守るわ。
脳内に浮かんだ乙女ゲームの事を考える。
あれが本当にこれから娘が歩く道ならば。私に出来る事は少ない。
けれど、幸せにしてみせる。
―――貴女の笑顔を今度こそ手にしてみせる。
華…。私の可愛い華…。
私だって一人にしたくない。私だって貴女の側にいたいのよ。
『お母さんっ』
泣かないで。
私だって泣きたくなるわ。
でも、私の体はもう、動かないのよ。こんなに側にいる大事な大事な愛おしい娘の涙を拭う事すら出来ないのよ。
何で、私の体はこんなにも役立たずなのかしら。
『出来うる限りの事はしましたが…もう…』
本当に出来うる限りの事をしてくれたの?
私が知らないとでも思ったの?
動かない視線で私は自分を診た医者を睨み付ける。
華を犯した、私の体で投薬実験して、失敗して、死期を早めた癖に。
抗えないのを良い事に、華を蹂躙して、私を殺そうとしている。
あぁ、なんで私は病気になどなったのだろう。治療方法が確立していない病気になどかかったのだろう。
華を守ると誓ったのに。あの人の前で誓ったのに。
何でこんなにも…。
悔しくて涙が伝う。
『お母さんっ、苦しいのっ!?』
苦しいわ。
華の側にいられない事が、華の大人になった姿が見れないのが。
苦しくて堪らないわ。
悔しくて堪らないわっ!!
せめて、せめてこの男だけでも…。
今にも死にそうな私を見て嘲笑う視線を向けるこの医者だけでも道連れにしてやるっ!
残りの力を振り絞り、ここで全ての力を使いきってでもっ!
視線を巡らせる。華の後ろに一人の男性がいた。スーツ姿の男性。誰かは知らない。けれど、その瞳を見る限り、誠実そうな人な事は間違いない。
なら、彼に託そう。
華の事を託すんじゃない。この医者の行く末を託すのだ。
決意して。
私は酸素マスクを外し、医者を睨み付け力の限りで叫んだ。
『許さないわっ!!私は絶対に貴方を許さないっ!!私の体で実験し、私をだしに娘を強姦した事も絶対に許さないっ!!』
『な、なにを言ってるんですかっ!?私がそんな事を』
『してないとでもっ!?現に貴方はマスクを取ったら死んでしまう私より自分の保身を考えて抗議しているじゃないっ!!騙されないし、許さないっ!!例え、この命がここで失われるとしても貴方だけは絶対に許さないわっ!!』
病院中に響き渡る様に叫ぶ。
息が、続かない。苦しい…。涙が零れる。
あぁ、死ぬってのはこんなに苦しいものだったのか。
『お母さんっ!?』
私の剣幕に呆気にとられていた華が苦しむ私の手を取る。
華。私の可愛い華…。
『華…。幸せに。どうか、どうか幸せに…』
『お母さん…やだ…。いかないでっ…。おいて、いかないでっ…』
『華…。可愛い可愛い華…。幸せに、なりなさ、い…』
『お母さんっ!?お母さんっ!?いやっ、いやだよっ!!お母さんっ!!』
華の声が遠ざかる。
苦しい。クルシイ…。
息が、じゃない。
心が、クルシイ
華…。愛してるわ…。
私の、命より、―――大事な華。
暗闇が続く。深淵の闇。
「………」
何もない、何も見えない空間。ただただ彷徨う心。
私の心は華を見守る事が出来なかった後悔だけが残って燻り続けている。
「……?」
誰かが私の名前を呼んだ?
耳を澄まし、次の音を待つ。
それは確かに私の名を呼んでいる。
その声はとても懐かしくて、優しい…この声は…?
声がした方向から大きな光が放たれて…。
「ママっ!」
愛おしい声と体を揺さぶられた感触に目を開くと、目の前に可愛い娘の顔があった。
「た、たすけっ、助けてぇっ!鴇お兄ちゃんがっ、怖いぃっ」
鴇?
ソファで転寝していた私は体を起こして、必死に抱き着いてくる美鈴の後ろを見ると、私の息子とその手には紙が一枚。
目を細め良く見てみると答案用紙だった。
「?、鴇?それは何?」
冷静に怒れる鴇に問いかけると、鴇はそれはもういい笑顔で。
「美鈴がどれだけ知識を持ってるかみようと思って、作ってみたんだよ。お遊びのふりして。そうしたら俺のふりを感じ取った美鈴が、わ・ざ・と・点数を悪くとったんで、お仕置きをしようと思ってな」
「…成程ね。それは美鈴が悪いわね。はい、どうぞ」
私はあっさりと美鈴を鴇に差し出す。
「ふにゃーっ!!ママの裏切り者ーっ!!」
「あら?酷いわねぇ。私は娘を裏切った事なんて一度もないわよ。ずっとずーっとママは『娘』の味方よ?」
「それは知ってるけどっ!でもっ」
「さぁ、美鈴。もう一度、テストやろうな?」
「いやーっ!!」
美鈴が鴇から逃走した。
そんな美鈴を楽し気に歩いて追い掛ける鴇に騒ぎに気付いた葵が鴇サイドに、棗が美鈴サイドに付いてワイワイと騒いでいる。
きっと鴇は美鈴が知っている事を、覚えてる範囲を把握しておきたいのね。兄であるために。
葵は鴇と同じ、かしら?棗は皆が鴇の味方になると美鈴が可哀想と思って美鈴の側にいるのね。
美鈴も本当はそれを分かってる。分かってるから、嫌と言いながらも楽しそうに、幸せそうに笑ってる。
知らず私にも笑みが零れた。
今度こそ…今度こそ守るわ。
脳内に浮かんだ乙女ゲームの事を考える。
あれが本当にこれから娘が歩く道ならば。私に出来る事は少ない。
けれど、幸せにしてみせる。
―――貴女の笑顔を今度こそ手にしてみせる。
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