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最終章 数多の未来への選択編

第三十二話 ハネムーンとは?

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『あの人』との政略結婚を無事に終え、現在地はハワイでござーいっ!
何で?って?そんなの勿論結婚式の為でーす。
式も無事に終えて、晴れて?私と彼は夫婦になりましたー(仮)
現在はホテルに泊まり、観光旅行中でございます。
…正しくはハネムーン?
いや、ハネムーンでこんなに人数来ないよね。うん。
二人っきりだと色々危ないからって友達も含めて皆で観光してるんだけど。
うん、まぁ、多種多様の美人が揃ってるから相変わらず皆避けて通るよね。ありがたくはあるんだけどさ。
通り過ぎる人がみーんな一度は振り返る。罪作りな人達だわ。うんうん。
「おい、美鈴。ぼーっとしてるとぶつかるぞ。俺に」
「だったら、ワザとらしく足止めるの止めて下さい。樹先輩」
「優兎ー。龍也を入れる棺桶発注してくるからちょっと息の根止めといて」
「優兎ー。ついでに猪塚の分も頼む」
「お兄ちゃん達、優兎くんは僕じゃないんだから。あれこれ頼んじゃ駄目だよー」
「誰か棺桶って所、突っ込み入れるとかしねぇのかよっ」
「…大丈夫ですわ。樹先輩。後の事は私とダーリンが請け負いますわ」
「殺す気満々じゃねぇか」
「ハニー。そんな物騒な事を言ってはいけないよ。だが、そんな言葉を出したい時もあるだろう。そんな時はほら。僕の広背筋でも眺めて心を落ち着かせると良い」
「ダーリンっ…そんなっ。こんな人の目がある所でっ、恥ずかしいですわっ」
「白鳥さーんっ」
「………お前ら。いい加減にしろ。周りに迷惑だ」
鴇お兄ちゃんが盛大に溜息をついた。
ん、確かに。
観光旅行をしつつ、私達は意識をすれ違う人達へと向ける。
怪しい人間がいないか、探すのだ。
詳しく言うのなら、猪塚先輩の所にいたクローンが何故か三ヶ月に一度、ハワイに旅行に行くと言う事を聞き付けたので、その人を探し出して何をしているか有力な情報を掴みに来たのだ。
なのでそのクローンが旅行に行く時に合わせて私達は結婚式を上げてハネムーンをすると言う言い分で、そのクローンを探しに来た訳である。
「聞き込みしますか?」
「うぅん。私達はあくまでハネムーン中だから。そっちは、得意な二人に任せて置こう」
「…そうですわね」
桃と二人頷き合う。
情報収集は別行動している華菜ちゃんと逢坂くんに任せるのです。適材適所。
「さて。それじゃあ私達はどうしようか」
「決まってるだろう」
「鴇お兄ちゃん?」
「今日の昼食の買い出しをしてホテルに帰り、昨日までの間に溜まった仕事の処理だ」
「…………うん。樹先輩、遊びに行こうっ!」
キリッと表情を引き締める。
「良いぜ、と言ってやりたい所だが…背後にいる葵の殺気がヤバいからパスだ」
「白鳥さんっ、だったら僕とっ」
「さ、鈴。お昼を選ぼうね」
「僕も頑張るから、美鈴ちゃんも頑張ろう?」
「うぅー。優兎くんにそれを言われちゃうと…頑張るしかないじゃんかー…」
「王子。私もお手伝い出来る所はしますから」
「本当に?それじゃあ巳華院くんとマカデミアナッツチョコ買って来てくれる?」
「了解しましたわ」
私達は観光旅行に出たばかりだと言うのに、鴇お兄ちゃんの指令通り昼食を購入しホテルへと戻るのだった。

「……葵お兄ちゃん。この会社の依頼の意図が読めない。もう一度書類作り直して貰ってー。それから、部下に作らせるんじゃなく自分で書きなさいって伝えて」
「了解」
「それから、棗お兄ちゃん。こっちの会社。従業員の数が少なすぎる。怪しいから一度お忍び調査しなきゃいけないかも」
「解った。その方向で準備するよ」
「うん。あと、鴇お兄ちゃん。このシステム。悪くはないんだけど、…樹で出来るの?これ」
「やらせるんだよ」
「そっか。なら、樹先輩はいいとしても、その下で働く人には細心の注意をはらってね」
「解ってる」
書類を確認して…外が真っ暗だよ。もう。
何とか書類束が最後の一枚になり、それに承認のサインと押印をして今日の分終了っと。
「はー、終わり終わりーっ!」
「……不備は…ないな。よし。なら休んで良いぞ、美鈴」
「お菓子持って来ようか?鈴」
「じゃ、じゃあ、桃に頼んだチョコ食べたいっ」
「それじゃあ、僕が綾小路さんに頼んでくるね。暫く休んでてね、鈴」
「はーい」
お兄ちゃん達が私の部屋を出て行き、私は豪華な天蓋付きのベッドへとダイブした。
ボフンッと跳ね返るがそれさえも気持ちが良い。
ゆっくりと仰向けになって、天井をぼんやり眺める。
すると携帯電話が着信を知らせた。
電話?誰だろう?…ママ?
スマホの画面を素早く操作して、電話に出る。
「ママ?どうしたの?」
『無事日本に帰りついたから連絡と、ちょっと話したい事があってね』
「うん?なぁに?」
『美鈴が大学生になって結構な月日が経ったけど、美鈴誰かを選ぶって事してないじゃない?』
「うん。そうだねぇ」
『だから、警戒はしつつもこれなら大丈夫かな?って私も少し気を抜いてたのよ』
「うんうん。私もこれなら大丈夫かな?って思ってた」
『でしょう?でも、良く考えてみたの』
「ふみ?」
『美鈴。政略結婚って、選択肢じゃないかしら?』
「………へ?」
『美鈴、意図せず御曹司編選択したことになるんじゃないかしら?』
「……え?」
『私もね?ちょっと記憶を洗い直してみたのよ。そもそも大学生になってからがゲームの本番で、ゲームは四つのルートになるって話はしたでしょう?で、今の貴女には御三家編と年下組編を選んだ時の兆候が見られないのよ。かと言って、誰も選ばなかったままで進んでいるとも思えないのよ。その証拠に美鈴の周りにはまだ攻略対象者がいる。誰も選んでいないのなら攻略対象者はいなくなるんじゃないかと思うのよね。もしくは誰かとくっついてるとか。けどそんな感じもしないし、未だ美鈴の側にいるじゃない?って事は、もしかして何処かのルートに入ったんじゃないかと思って。となると、残る可能性は白鳥家編か御曹司編って事になる訳よ』
「確かに私の側に今いるのはお兄ちゃん達と先輩達だもんね」
『ルートが選択されると、他の攻略対象キャラは当て馬要素のないキャラ以外は登場しない』
「で、私はそんな中、彼と政略結婚をした、と。ルート決定案件ってこと?」
『そう言う事』
「そっかー………ヤバくねっ!?」
『相手にも寄るでしょうけど、選んだのが彼なら御曹司編ルートって事は間違いなさそうね』
「ママ。御曹司編ってどんななの?」
『御曹司編は、前にも言った通り謎解き要素が強いルートなの。確か、樹くんが脱出系、猪塚くんがパズル系、優兎が推理系だった筈だわ』
「バラバラなんだね。普通謎解き系って一つの話を他の観点で見る、みたいなのが多いのに」
『そうなのよね。だからこそ面白かったんだけど、製作スタッフが全て詰め込みたかった感バリバリで。でもプレイした私から言わせて貰えば面白かったわっ!』
電話の向うでママが拳を握ってる姿が目に浮かぶ。
でも正直に言えば…私もやりたかったっ!くぅっ!
「っと、話戻して。じゃあ、ママは謎解きの内容とか知ってるんでしょう?ネタバレプリーズ」
『それなんだけどねぇ…。覚えてないのよね』
「へ?ママも覚えてないの?」
『そうなのよ。脱出系の樹くんルートは一度プレイしちゃうと、恋愛要素はクリア特典で何時でも見れちゃうからやり直さないし、パズル系の猪塚くんのルートはパズルが楽しくてそれしかやってないし、優兎の所は元々がバットエンドルートの続きで話が重過ぎてねー。ハッピーエンド以外見たくないと言うか何と言うかで…』
「要するにやり込み好きのママがやり込める要素が少なかったと」
『そう言う事なのよ』
「あれ?でも、前にママ、私に猪塚先輩激押ししてこなかったっけ?」
『それはそうよ。詳しく覚えてはいないけど、猪塚くんのルートは唯一平和なのよ』
「平和?」
『そう。平和。美鈴も分かってる通り、猪塚くんは本来の言葉が通じず、柄の悪いキャラだったでしょう?』
「そうだね。私と初めて会った時から既にそうだったし」
『それを美鈴は正したじゃない?』
「正したね。今じゃあの悪い目つきも人気の的になったね」
『しかも美鈴にぞっこん。お金持ち。ルートはただのパズルゲーム。良い所しかないじゃない?』
「確かにっ!」
『押しが強いのも美鈴が好きだからであって。あれだけ一途な子も珍しいわよ?何せ毎日棗に蹴られても諦めないんだから』
「一歩間違うとストーカーじゃね?」
『その一歩を間違えたのは小さい時でしょう?』
「うーん。確かに」
ママの言い分の説得力が凄い。
とは言え、私が彼らを好いているかと言われると、そう言う目で見た事が一度もないので解らない。
今の所の彼らの立ち位置は、お金持ち仲間でライバル社の息子って感じだし。優兎くんだって独立してからはライバル社の仲間入りだしね。
「あれ?そう言えばママ。聞きたいんだけど、もし私が御曹司編を選んでしまったと言うのなら、そのゲームの開始はどんななの?」
『開始?』
「そうそう。謎解き系ってのはまず事件が起きないと始まらないじゃない?」
『あぁ、そう言う意味ね。えっとゲームのスタートは確か、主人公が樹財閥のパーティに参加する所から始まったのよ。そこで誘拐騒ぎがあって』
「えぇ?それって高校の時の内容と同じじゃない?私がやったのも同じ内容が入ってるよ?」
『それはそうよ。四つのゲームを一つにまとめたのが、続編の売りだったんだから。それに本来主人公は白鳥財閥の娘ではあっても跡取りではないんだから。何故パーティに参加する事になったのか?とかそこも推理の一環になったりするのよ』
「あー。成程ー」
『でもまぁ、ゲームの内容がスタートするにしても、全て日本で起きた出来事だから、美鈴が日本に戻らない限りは話は進まないと思うわ』
「そうなの?じゃあいっそ海外に住んだ方が良いのかもしれないね」
『そうね。いっそ白鳥家全員で引っ越しとか、美鈴が留学に行くーでもありかもしれないわね』
「ゲームの内容と大分解離するもんね。そっちの方が安全かもしれないね」
『……って会話すると、それがフラグになりそうで怖いわね』
「うん」
………。
二人の間に一瞬の間が出来る。
ううん。ここはっ。
「そうならないって信じようっ!ねっ、ママっ!」
『そうねっ!そうしましょうっ!』
「あ、そうそうっ、ママ、言い忘れてたけどっ」
『何かしらっ?』
「明日〆切りだから頑張ってねっ!」
『何のことかしらっ!?』
「ママっ!」
『よほほほほほほっ!!』
ブツッ。
あ、切られたっ!?
締め切りがあるから帰らされたのに、やる気ないってどう言う事よ。
……愛奈がどうにかしてくれるか。
ママの事は愛奈と誠パパに任せ、私はママに聞いた事を頭の中でまとめていた。
でも結局の所、私が今ここでやれる事ってないんだよね。
それにママが言ってた通り私はもう白鳥財閥の総帥で樹先輩と同率か、企業の大きさ的には更に上だし。
樹家主催のパーティとか結構出てるしな~。
ぼんやりと考えていると…。

「きゃあああああああっ!!!」

唐突にホテル中に響き渡った叫び声。
思わず飛び起きてベッドを降りた。
一体何事っ!?
部屋の外に出ようっ!
ドアへ駆け寄ると、ガタンッと窓が鳴った。
反射的に振り返ると、そこには…、

「ふみいいいいいっ!!体が溶けてるぅぅぅぅっ!!」

体の溶けた男がっ!!
これあれじゃないっ!!
写真で見たクローンっ!!
いやああああっ!!気持ち悪いぃぃぃぃぃっ!!
男だって事と合わせて二重苦ぅぅぅぅっ!!

「美鈴っ!!」
「鈴ちゃんっ!!」
「鈴っ!!」

お兄ちゃん達がドアを開けて飛び込んできてくれた。
急ぎ棗お兄ちゃんが私を抱き上げてくれて、葵お兄ちゃんが手早く私の荷物をまとめて手に持ち、そして鴇お兄ちゃんが近場にあった電気スタンドを窓の側に置いて最大の光で照らす。
「行くぞっ!こいつらは光に弱いっ!これで少しは足を止めれる筈だっ!」
頷いてお兄ちゃん達が一斉に走りだす。
廊下にも何体かクローンがよたよたと歩いていた。
それを鴇お兄ちゃんが蹴り飛ばして、道を開けて駆け抜ける。
「ど、何処に向かってるのぉっ!?」
「屋上に、ヘリを用意したんだっ」
「綾小路さんが手配してくれたっ」
「お前ら話しながら走ると舌噛むぞっ。話すのは後でいいから全力で走れっ!!」
鴇お兄ちゃんの言葉の通り、お兄ちゃん達は全力で走り、私は棗お兄ちゃんにしがみついた。
あっという間に屋上に辿り着き、
「王子っ!皆様っ!こちらですわっ!!」
桃の声のする方へ駆けて皆一斉にヘリへと乗り込む。
「ダーリンっ!」
「離陸してくれっ!!」
巳華院くんの言葉と同時にヘリは離陸した。
上空へと上がると、やっと周りに意識を向ける事が出来て、少し離れた所にもう一機ヘリが飛んでいる事に気づく。
「あちらには優兎さん達がおりますわ」
「そうなんだ。良かった…」
兎に角助かったみたいで良かった。
ホッと一息ついたのも、ほんの束の間だった。
ガタンッ!
急にヘリの動きが止まった。
しかも急降下していくっ!
「ふみみーっ!?」
「ダーリンっ!?」
「何故だっ!?何故エンジンを止めたっ!?ッ!?お前っ!?」
巳華院くんが操縦士の顔を見て青褪めた。
そこにいたのは、私達が逃げていた筈のクローンだったから。
「………ぁ…」
クローンは言葉とも息とも解らない声を発し、そして、私を棗お兄ちゃんから奪い取ってそのままヘリから私ごと飛び降りた。
「い、いやあああああああっ!?」
気色悪いやら男に触れられて怖いやら、高所から飛び降りて死ぬのが怖いやらっ!
「鈴っ!!」
棗お兄ちゃんが手を伸ばしてくれるが、その手は届かず私はクローンと共に落下した。

「これっ、絶対に死ぬ奴じゃなああああああいっ!!!」

私の叫びは、誰かに届いてくれたのだろうか…。
届いてくれることを祈りつつ、私はただただ落ち続けた。


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