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最終章 数多の未来への選択編

第三十三話 牧師と白猫が望むは共に歩む未来の地

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「大地お兄ちゃんっ!!」

知らず走りだして、大地お兄ちゃんの背に飛びついていた。

―――トスッ。

背中に衝撃が走った。だけど、あれ?痛みが、ない?
大地お兄ちゃんの背中には…ってあれ?背中でもない?
目の前にあるのは大地お兄ちゃんの胸板。
今の衝撃ってもしかして、大地お兄ちゃんの腕がぶつかった衝撃?
どゆこと?
ちょっと待って。
状況が理解出来ない。
「……間に合った、か。あー…危なかったー」
ホッと一安心…じゃなくてさ。どうして私大地お兄ちゃんの腕の中にいるの?
い、一体どう言う事?
全く理解していない私とは違い、お兄ちゃん達は冷静だ。
「落ち着いてる場合かっ!大地っ、姫っ、車に乗れっ」
「姫ちゃんっ、ちょい失礼ー」
ひょいっと大地お兄ちゃんに抱っこされて、そのまま車に乗りこむ。
それと同時に運転席に乗り込んでいた奏輔お兄ちゃんが車を走らせた。
「姫ちゃん。何処か痛い所はないー?」
「な、ない、けど…大地お兄ちゃん?」
「うんー?」
「えっと…私はどうやって助けられたのかな?」
「姫ちゃんが俺に向かって走って来た気配がしたから咄嗟に振り返って、姫ちゃん抱き止めて右手腕で腕の中に引き寄せて左手で矢を叩き落としたー」
「……へ?」
え?あの一瞬でそんな動きをやってのけたの?マジで?
念の為に怪我がないか、大地お兄ちゃんの腕をマジマジと観察する。
傷一つない。…マジで?
いや、実はどこかに一か所くらい…腕裏、肘、手の平、手の甲…ないっ。
「姫ちゃん?擽ったいんだけどー」
「あ、ごめんねっ。ついつい…」
「全然構わないけどねー。むしろ触って」
キリリッ!
大地お兄ちゃんが急に凛々しくなった?
でも、許可が出たから、触っておこう。ぺたぺたぺた…。
「姫。大地が図に乗るから、そこまで」
「ふみ?」
助手席にいる透馬お兄ちゃんにストップをかけられた。
「所で、姫さん」
「ふみみ?」
「あかんで。大地を庇おうとするとか。…いや、大地に限らん。俺らを庇おうとしたらあかん」
「なんで?」
「決まっとるやろ。姫さんの方が弱いからや」
う…。
それを言われたら、ぐうの音も出ません。
「だって、咄嗟に、体が動いちゃったんだもん…」
しょんぼり。
……しょんぼりして、自分の手に視線を落として、気付く。
私今だに大地お兄ちゃんの腕の中。って言うかお膝の上に座ってる事に。
「…奏輔、透馬。姫ちゃんを苛めるんじゃない。姫ちゃんはオレの事を守りたいと思ってくれただけだっ。透馬や奏輔じゃなくオレを守ろうとしてくれただけだっ!守ろうとしてくれただけなんだっ。ねー、姫ちゃん」
ぎゅむっ。
ぐえっ。
大地お兄ちゃんっ、絞まってる絞まってるっ。
大地お兄ちゃんの力で抱き締められたら死んじゃう死んじゃうっ。
ぺしぺしぺしっ。
ギブギブッ!
大地お兄ちゃんの腕を叩いて、ギブアップを伝える。するとすぐに気付いて、頬擦りにチェンジしてくれた。こっちならまぁ、まだ…。
…んっ?あ、駄目だ、これ。首折れそう。頭のてっぺんにすりすりしてるんだけど、スリスリって言うかもうグリグリのレベル。
「大地お兄ちゃんっ。自重っ!」
ていっと大地お兄ちゃんの頭を引っ張った。
そんな私の攻撃すら大地お兄ちゃんは何故か幸せそうに笑っている。…気が抜ける。
昔から思ってたけど、それこそ前世の時から思ってたけど、攻略対象キャラの中で一番主人公に甘いんだよね。
白鳥家や御曹司組、それに年下組と皆最初は険悪な雰囲気から入る。
まぁ当然と言えば当然だよね。他人なんだもん。だけど大地お兄ちゃんだけはキャラクターとしても元からとても人当たりが良く書かれている。
いや、でも…。
「あー…姫ちゃんだったら何年でも乗せていられるー」
ここまでじゃなかったわ。
大地お兄ちゃん、私を降ろしてくれる気ゼロです。
んー…ま、いっか。大地お兄ちゃんが気にしてないなら、このままでも…ちょっと恥ずかしいけど、何でか嬉しいし。
大地お兄ちゃんの胸にこてんと頭を預けてみる。
「……透馬。奏輔」
「あ?なんだよ」
「姫ちゃんが可愛いくて死ぬー」
「安心しぃ、大地。オレが後で現実にしてやるわ」
「俺も協力するぜ、奏輔。何なら鴇も後で呼んで皆で殺ろうぜ」
「へくちっ」
くしゃみが出ちまったい。誰か噂でもしてるのかな?鼻がむずむずするー。
大地お兄ちゃんにもう少しくっついておこう。大地お兄ちゃん、体温高いんだよね。すりすり…。
あ、そんな事よりも。
「奏輔お兄ちゃん」
「なんや?姫さん」
「今、一体何処へ向かってるの?確か商店街に帰る予定だったんじゃ…?」
と疑問に思ったけど、襲撃された後直ぐに戻るのは危険だ。そんなの聞くまでもなかった。
でも、何処に向かってるのかは聞きたいよね。
「鴇か双子のどちらかがいる場所へ、本当は行きたい所なんやけど…」
「でも…」
それは無理だよね?
私がこの御三家ルートを選んだから他の攻略対象者は出てくる事が出来ない。補正効果か何かは解らないけれど強制的に遠ざけられてしまうとママが言っていた。
「となると、何処へ?」
「……姫さんを確実に守ってくれそうな所。源爺さんの所へ行こうかと思っとる」
「お祖父ちゃんの所?」
「そや」
確かにあそこなら色んな意味で安全だとは思うけど…。
それに待ったをかけたのは、大地お兄ちゃんだった。
「守りを固めるのも大事だ。だけど、皆が無傷な内に攻めに転じるのも必要だと思うぞー」
「攻め言うたかて、こっちの情報はほぼゼロなんやで?」
「そうでもないだろー。あいつらは姫ちゃんの血を狙ってきてる。でもその理由は『子供を助ける為』だろー?」
「あぁ、成程な。子供を助けてしまえば狙われる理由はなくなる。そう言う事か?大地」
「そゆことー」
「姫はどっちが良い?奏輔が言ってるように守りを固めて源爺さんの所へ行くか、それとも大地が言うように攻めに転じてそもそも原因だった子供を助ける方法を探すか」
おおう…如何にもな選択が来たよ?
選択肢っぽいのが来たよ、これ。
透馬お兄ちゃんってば解ってて聞いてるのかな?
二択、かぁ…。
どっちかと言われると…。
「子供を助けたい、かなぁ…。でも子供を助けるがどうして攻撃になるの?」
「子供の体を治す為には子供がどうしてあぁなったのかを知る必要がある。その為にはもう一度、あいつらの本拠地に行かなきゃならない」
「そっか。相手の陣地へ行く。確かに攻めだね。…うん、でも、やっぱりそっちがいいな」
「そうか。だとよ、奏輔」
「ほんなら、方向転換しよか。それから今の内にステータス、スキル、装備の見直しもしとこ」
奏輔お兄ちゃんがスムーズに車を方向転換する。
相変わらず大地お兄ちゃんの膝の上だけど、ステータスを出して、皆でああじゃない、こうじゃないと話し合う。
あれ?気付かなかったけど、私、レベルが上がってる?
あれかな。大地お兄ちゃんを庇おうとしたからかな?…恋愛レベル上がるような事だったかな?……解らん。
でもレベルが上がったおかけで、経験値も増えたから新しいスキルも覚えれた。
装備と言えば私達って、武器を装備してないんだよね~。
……お兄ちゃん達は装備品無くても強いかもだけどさ。私には結構大事だよね…。薙刀ください。武器のあるなしはパラにだいぶ影響すると思うんです。
ふみみみ……。
皆でステータスの見直しも完了し次は作戦会議だ。
「…女性陣を味方につけた方が早いんじゃない?」
「そうは言うても、最初に襲撃して来たんは女やん?」
「まぁ、そうなんだけど。でもほら、顔が良いお兄ちゃん達が口説けば…あー、でも浮気させるのも良心が痛むなぁ…」
「姫。自分の命狙ってきた奴らに良心を痛ませるなよ。それ以前にさくっと人に口説かせないように」
「ふみ?」
「表門の後藤の奥さんを説得してみるか?」
「説得…難しくねー?」
だよねぇ?
だいぶ怯えてたし、私を見たら浮気かと再び怒りそうだし。
いっそ違う方向から攻めた方が良いのかもしれない。
違う方向と言えば?
「原点に戻ろうか」
「原点?借金か?」
「あ、ごめん。それ戻り過ぎ。子供は『呪い』にかけられたって言ってたじゃない?」
「そういや言ってたな。で、それが?」
「子供だけがかけられる『呪い』だよ?『呪い』ってのは何かきっかけがないと発動しない」
そう。だから何かをしたはずなんだ。彼らは子供が『呪い』にかかるような何かを。
「確か、表門は金に困ってたはずだよな?」
「だね。金山さんや真珠さんはそう言ってた」
「…もしかして、裏門が管理してたものに手でも出した?」
…沈黙。
誰も否定出来ないってこんな事ある?ないよねー。
「あの文言って何処にあったんだろう?」
「あの文言ってあれか?聖なるなんたらって奴」
「そうそう。あれって探して見つけたって言ってたじゃない?どこで見つけたんだろう?」
「そういやそうだな」
「裏門の物に手を出して、子供に呪いが飛んで、焦ってもう一度裏門の管理場所へ行ったらそれがあった、とか?」
……再び沈黙。
いや、だって否定出来ないんだもの。自分で言っておきながら、これ以上ないってくらい表門っぽい流れなんだもの。
「…その線で調べてみるか」
「裏門の事なら、そっちの人達に聞いた方が早いよね。愛奈に連絡とって直ぐに返事貰おう」
「ならどっかで合流するか。いつまでもレンタカーでいる訳にもいかないしな」
「う~ん…あ、じゃあ、私がこっそり買って管理してる別荘に行こう」
実はあるんです、別荘が。
私のポケッツマネィで買った家が。
何で買ったのかって?
何かあった時ママを連れて立てこもろうかと…。小さい時にコツコツ貯めて、高校入学時にこっそり購入しておいたのです。てへっ☆
「調度良く場所も、表門の人達の住む場所と近いし。そこに行こうっ」
「……ほな、姫さん。道案内宜しゅう」
「はーい」
私達は、私の別荘へと向かう事にした。
「別荘って…そういや姫は総帥だったな」
「あまりに庶民的やから忘れとったわ」
「まぁ、姫ちゃんだからー…」
と言う会話を後にお兄ちゃん達が繰り広げていたらしいけど、私は知らない。
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