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1 おっきいのと、ちっちゃいの。

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「おかーしゃ! ばあ!」
「わっ! びっくりしたあ」

 母の元へ駆け寄り、落ち葉のお面で驚かせにくる我が子と、それを見てちょっと大げさに驚いて見せる母。
 秋を迎えたホーネージュ。自然豊かな庭を持つデュライト公爵邸は、この時期は庭が落ち葉でいっぱいで。
 片づけても片づけても、きりがないぐらいである。
 使用人たちが愚痴を言うほとであるが、そんなこと、ショーンには関係なく。
 実の父であるジョンズワートが作ってくれたお面を持って、上機嫌にしている。
 ……葉っぱのお面で顔が隠れているため、表情は見えないが。笑い声がするから、きっと、ご満悦なのだろう。

「あのね、わとしゃにつくってもらったの」
「ふふ。そうなの? ワート様は昔から、こういったものを作るのは上手……です……よね……」

 ショーンとともにカレンの目の前まで来ていたジョンズワートへ視線を向ければ。
 彼は、このタイミングを待っていたかのように後ろ手に隠していた葉っぱのお面を取り出し、そっと自分の顔にかぶせた。
 言葉はない。黙って取り出し、黙って己の顔に重ねた。
 3歳の息子と、27歳の旦那が、そろって枯葉のお面をつけている。
 ジョンズワートは上背があるから、その高低差はかなりのもので。
 上を見ても、下を見ても、同じ髪色をした二人が、同じことをしているのだ。
 ジョンズワートがなにも言わないことがまた、カレンのツボに入り。

「っ……! ふ、くくっ……! あはっふふふふっ……!」

 お腹を抱えて笑ってしまった。
 それにつられたのか、ジョンズワートもこらえきれずに吹き出した。
 母と実父の姿を見た、ショーンも。
 三人の笑い声が、公爵邸の庭に響く。
 
「はは、きみは本当に、二人揃ってやられるのに弱いよね」
「だって、よく似てるから、余計に……。おっきいのとちっちゃいので……」

 そこまで言うと、先ほどの光景を思い出したカレンが、また笑いすぎて苦しみだす。
 そう。ジョンズワートとショーンの色は全く同じと言っていいぐらいに似ていて。年齢差があるから顔立ちが同じとはいかないが、ふとしたときに見せる表情もそっくりで。
 そんな二人が、最近では狙ってカレンを笑わせにくるのだ。
 二人揃ってやると効果的だと気が付いたようで、カレンはよくこんな攻撃をくらっている。
 面白くて、幸せで。こんな「攻撃」ならいくらでも受けたいと思えるぐらいだった。
 おかげで、表情筋が痛むほどだ。
 ジョンズワートは、「うまくいったね」とショーンとハイタッチーー位置は低いが――をしている。

 そんな夫と息子の姿を見て、カレンは、ほう、と小さく息を吐く。
 3年も会えなかった二人なのに、もう、他人になんて見えない。
 ああ、幸せだなあ。と、カレンはよく晴れた秋の空を見上げた。

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