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side 琴未
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気がついたらメールチェックをしてる自分がいる。
家にいるときはもちろん、会社にいる時でさえ。
お昼は必ずロッカーに向かい、センターに問い合わせまでする有様。
そんなことが3週間も続くとさすがに自己嫌悪に陥る。
一体何やってるんだろう、私・・・。
相手はあの藤堂グループの専務。
早々、暇になんかならないはず。
少し時間が出来たとしても必ずしも私と食事をするとは限らないし。
私は彼の友人ということになってるけど、大勢いる彼の友人の中の一人に過ぎない。
おまけに彼はモテる。
私が相手をしなくても、彼の近くには喜んでその役目を引き受ける女性がいるだろう。
待っても連絡なんて来ないのよ。
そう自分に言い聞かせて、携帯を閉じた。
「それは、ずばりマジ恋だわっ!」
明美が自信満々に言い放った。
仕事帰りに会社近くのカフェに誘われ何事かと思ったら、いきなり私を質問攻め。
もちろんここ数日の私の不審な行動についての質問。
誤魔化しきれない相手だから、最初から正直に話す事にした。
そして話し終って言われた言葉が・・・マジ恋。
あぁ、やっぱり。
そうでしょうとも。
自分でも嫌と言うほど、認識しましたよ。
「琴未からは誘わないの?」
「誘うわけないでしょ!彼は忙しい人だし、誘えるわけないじゃない。それに私から誘うなんて出来ないよ。」
「なんで?」
「なんでって・・・。彼と私じゃ、立場が違いすぎだよ。」
「そんなの気にしなくていいんじゃない?だって藤堂さんは友人として琴未を誘おうとしてるのよ?あんたも藤堂さんを友人として見ればいいだけの話じゃない。それに立場とか言われたら藤堂さんも嫌なんじゃないかなぁ。考えても見てよ。今までの女性って彼の事を知ろうとはしなかったんでしょ?彼の肩書きや財産に目が眩んで彼に近づいたり、彼と一緒にいることで得られる満足感なんてものに憧れたりしてさ。あんたまで彼の肩書きとか気にして接してたんじゃ、目的はどうであれ、他の女達と一緒じゃない。」
明美に言われて、気がついた。
明美の言うとおりだ。
彼が女性不信になった原因は、まさにそれだ。
私まで同じ対応をしようとしてた。
馬鹿だ、私。
「私、彼のこと何も考えてなかったんだね。自分のことばっかりで。」
「恋は盲目って言うしね。」
「ありがとう、明美。話したらちょっと楽になったよ。」
「そう?よかった。・・・・・・でもさ~、琴未がねぇ・・・ようやく春が来たか。」
「べ、別に私はこれからも彼をただ友人として・・・。」
「はいはい。今はそうでも先の事なんてわからないわよぉ。うふふ、楽しみ~。」
はぁ・・・話すんじゃなかったかしら。
絶対、面白がってる。
でも彼女のおかげでどこか救われた。
やっぱり持つべきものは親友だわ。
明美と話をした後、彼女と駅で別れた。
電車の中で考える事は彼の事ばかり。
さっき彼への態度を改めようと決めた。
だけどどうしても彼と連絡を取るのは躊躇われる。
一つはやっぱり彼の仕事を邪魔したくないということ。
そしてもう一つは、友人としての接し方がわからないということ。
こういうのって経験が物を言う。
私の場合、過去が過去だけに経験無しに限りなく近い。
今まで男友達なんていなかった。
いや正確には一人いた。
元彼だ。
でも結局、恋人という関係になり、友人ではなくなった。
恋人になる前、元彼とはどういう風に接してた?
最初から意気投合して、何を話してもウマが合う人だった。
だから自然体でいられた。
でも壱也さんの場合は・・・・・・元彼とは何もかも違う。
出会いも性格も好みも態度も。
私もトラウマを抱えていて、自然体どころか、拒絶反応を示す有様で・・・。
だから過去は参考にならない。
明美に聞けばよかった。
彼女なら経験だけはかなりある。
こういうのは得意そう。
ちょうど駅を出て、家までの道のりをトボトボと歩いていると、携帯が震えた。
そうか、電車に乗ってたからバイブにしてたんだった。
明美からメールが来ていた。
『言うの忘れてた。琴未のことだから藤堂さんに連絡しないだろうと思って、あんたがトイレに行ってる間に私がメールしといてあげたから!感謝しなさいよっ!』
な、なんですって!?
慌てて送信メール欄を見てみると、本当に彼宛のメールが送信されていた。
『琴未でーす。お仕事、頑張ってますか?今週の金曜日辺りに食べに行きませんか?お返事、待ってまーす。』
明美の・・・ばかぁぁぁ!!
あぁ、頭が痛くなってきた。
クラクラする・・・。
どうしよう、どうすればいい?
今からメールを打って、さっきのは間違いだって言っちゃう?
でもそんなことしたら尚更、彼の仕事の邪魔になるんじゃない?
たかがメール、されどメール。
無駄な足掻きだけど、天に祈るしかない。
どうか彼がメールに気付かず、今週が終わりますように!
あるいはメールを見ずに削除してくれますように!
家にいるときはもちろん、会社にいる時でさえ。
お昼は必ずロッカーに向かい、センターに問い合わせまでする有様。
そんなことが3週間も続くとさすがに自己嫌悪に陥る。
一体何やってるんだろう、私・・・。
相手はあの藤堂グループの専務。
早々、暇になんかならないはず。
少し時間が出来たとしても必ずしも私と食事をするとは限らないし。
私は彼の友人ということになってるけど、大勢いる彼の友人の中の一人に過ぎない。
おまけに彼はモテる。
私が相手をしなくても、彼の近くには喜んでその役目を引き受ける女性がいるだろう。
待っても連絡なんて来ないのよ。
そう自分に言い聞かせて、携帯を閉じた。
「それは、ずばりマジ恋だわっ!」
明美が自信満々に言い放った。
仕事帰りに会社近くのカフェに誘われ何事かと思ったら、いきなり私を質問攻め。
もちろんここ数日の私の不審な行動についての質問。
誤魔化しきれない相手だから、最初から正直に話す事にした。
そして話し終って言われた言葉が・・・マジ恋。
あぁ、やっぱり。
そうでしょうとも。
自分でも嫌と言うほど、認識しましたよ。
「琴未からは誘わないの?」
「誘うわけないでしょ!彼は忙しい人だし、誘えるわけないじゃない。それに私から誘うなんて出来ないよ。」
「なんで?」
「なんでって・・・。彼と私じゃ、立場が違いすぎだよ。」
「そんなの気にしなくていいんじゃない?だって藤堂さんは友人として琴未を誘おうとしてるのよ?あんたも藤堂さんを友人として見ればいいだけの話じゃない。それに立場とか言われたら藤堂さんも嫌なんじゃないかなぁ。考えても見てよ。今までの女性って彼の事を知ろうとはしなかったんでしょ?彼の肩書きや財産に目が眩んで彼に近づいたり、彼と一緒にいることで得られる満足感なんてものに憧れたりしてさ。あんたまで彼の肩書きとか気にして接してたんじゃ、目的はどうであれ、他の女達と一緒じゃない。」
明美に言われて、気がついた。
明美の言うとおりだ。
彼が女性不信になった原因は、まさにそれだ。
私まで同じ対応をしようとしてた。
馬鹿だ、私。
「私、彼のこと何も考えてなかったんだね。自分のことばっかりで。」
「恋は盲目って言うしね。」
「ありがとう、明美。話したらちょっと楽になったよ。」
「そう?よかった。・・・・・・でもさ~、琴未がねぇ・・・ようやく春が来たか。」
「べ、別に私はこれからも彼をただ友人として・・・。」
「はいはい。今はそうでも先の事なんてわからないわよぉ。うふふ、楽しみ~。」
はぁ・・・話すんじゃなかったかしら。
絶対、面白がってる。
でも彼女のおかげでどこか救われた。
やっぱり持つべきものは親友だわ。
明美と話をした後、彼女と駅で別れた。
電車の中で考える事は彼の事ばかり。
さっき彼への態度を改めようと決めた。
だけどどうしても彼と連絡を取るのは躊躇われる。
一つはやっぱり彼の仕事を邪魔したくないということ。
そしてもう一つは、友人としての接し方がわからないということ。
こういうのって経験が物を言う。
私の場合、過去が過去だけに経験無しに限りなく近い。
今まで男友達なんていなかった。
いや正確には一人いた。
元彼だ。
でも結局、恋人という関係になり、友人ではなくなった。
恋人になる前、元彼とはどういう風に接してた?
最初から意気投合して、何を話してもウマが合う人だった。
だから自然体でいられた。
でも壱也さんの場合は・・・・・・元彼とは何もかも違う。
出会いも性格も好みも態度も。
私もトラウマを抱えていて、自然体どころか、拒絶反応を示す有様で・・・。
だから過去は参考にならない。
明美に聞けばよかった。
彼女なら経験だけはかなりある。
こういうのは得意そう。
ちょうど駅を出て、家までの道のりをトボトボと歩いていると、携帯が震えた。
そうか、電車に乗ってたからバイブにしてたんだった。
明美からメールが来ていた。
『言うの忘れてた。琴未のことだから藤堂さんに連絡しないだろうと思って、あんたがトイレに行ってる間に私がメールしといてあげたから!感謝しなさいよっ!』
な、なんですって!?
慌てて送信メール欄を見てみると、本当に彼宛のメールが送信されていた。
『琴未でーす。お仕事、頑張ってますか?今週の金曜日辺りに食べに行きませんか?お返事、待ってまーす。』
明美の・・・ばかぁぁぁ!!
あぁ、頭が痛くなってきた。
クラクラする・・・。
どうしよう、どうすればいい?
今からメールを打って、さっきのは間違いだって言っちゃう?
でもそんなことしたら尚更、彼の仕事の邪魔になるんじゃない?
たかがメール、されどメール。
無駄な足掻きだけど、天に祈るしかない。
どうか彼がメールに気付かず、今週が終わりますように!
あるいはメールを見ずに削除してくれますように!
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