288 / 305
不穏な影編
460
しおりを挟む
レオンの最初の試合は本選の順番では三試合目だった。
参加人数の多かった予選試合とは違い、本選は一対一の戦いを順番に行っていく。
その一試合ずつに観客は熱を上げ、賭けの金額も決勝が近づくにつれて上がっていく仕組みなのだ。
「それでは第三戦を始めましょう。まずはシェーン国魔剣士隊の副隊長、ロア・ラグナロ! 対するはエレオノアールの英雄貴族、レオン・ハートフィリア!」
司会をしている教会の魔法使いが声を魔法で拡散し観客に届ける。
言われたとおりにそれを合図にしてレオンが舞台に上がると観客から大きな歓声が上がった。
正面には赤い髪の二刀流の女性。対戦相手のロアが立っている。
鋭い視線でレオンのことを睨みつけ、両腰に差した剣を順番に抜く。
その鋭い視線の意味がレオンを対戦相手としてみているのか、それとも暗殺の対象としてみているのかはわからなかった。
試合開始のゴングが鳴る前にレオンも杖を抜いた。
「それでは……始めっ!」
司会の掛け声に合わせてゴングが鳴る。
それと共に魔法で身体能力を強化したロアがレオンのもとへ踏み込む。
右手に握った剣がレオンの首に狙いをつけて振りぬかれる。
そのあまりの速さにレオンは一瞬遅れをとったが、対応できないほどのものではなかった。
剣筋を見極めて微細な動きで剣をかわす。
それからロアの左手の剣による追撃もかわし、魔法で風を生み出してロアの身体を押しのけるように当てる。
それに加えて、その風を自分が後ろに下がるための推進力にした。
「魔法闘技祭」の主な勝利条件は三つ。
「相手を舞台の上から押し出す場外判定」「対戦相手の気絶、あるいは死亡による戦闘継続の不能」「対戦相手の意思表示による降参」である。
レオンはロアを舞台の外に押しのけるようと杖を振って風をさらに強くした。
「甘い……」
しかしロアは風に押されながら自身の身体をひねり、剣に魔力を纏わせてレオンの生み出した風を魔力ごと断ち切って見せた。
さらに風に煽られて崩れた自身の体勢を高い体感能力で制御し、空中に魔力の壁を生み出す。
そしてそのままその魔力の壁を足場にして再びレオンのもとへ飛び込んでくる。
「……つっ! 魔力剣!」
ロアの高い身体能力に驚きつつ、レオンは手に魔力を纏わせて彼女の剣を迎え撃った。
身体能力を向上させる魔法を自身に付与し、力をロアと拮抗させる。
「魔力剣」という魔法はその名前の通り魔力を杖に纏わせた状態で硬質化し、剣のようにする魔法である。
レオンがモゾやテトの変身能力を参考にして作った魔法である。
「魔力剣」はその大きさも長さも自在だが、大きくすればするほどに硬質化した魔力の質が悪くなり、脆くなる。
また、自在に振り回せるかと言われればそうではなく、現状では剣などの物理的な武器を防ぐためにしか使えない。
そもそも、テトを呼び出して変身させればこの魔法を使う必要もないのだが、この「魔法闘技祭」においてテトを呼び出すのは極力控えようというのがレオンの思惑だった。
暗殺者がどこかに潜んでいて、そうでなくとも教皇や新興派の人間たちがこの大会を見ている。
実力をすべてさらけ出す気にはなれなかった。
逆に言えばテトの存在を隠した上で自分の戦い方を補うための魔法が「魔力剣」だった。
自在に振り回せないという「魔力剣」の攻撃面でのマイナスを補うための仕掛けもしてある。
「なんだ……この魔法は……」
ロアはレオンの使った「魔法剣」に動揺した。
魔力が硬質化し自慢の剣を受け止めたから、だけではなく剣が打ち合った瞬間からレオンの魔力の形状が変化したからだ。
まるで生き物のように魔力がうねり出し、ロアの二本の剣に絡みつく。
それとともに自身の剣が重くなっていくのロアは感じた。
それがレオンの「仕掛け」だった。
参加人数の多かった予選試合とは違い、本選は一対一の戦いを順番に行っていく。
その一試合ずつに観客は熱を上げ、賭けの金額も決勝が近づくにつれて上がっていく仕組みなのだ。
「それでは第三戦を始めましょう。まずはシェーン国魔剣士隊の副隊長、ロア・ラグナロ! 対するはエレオノアールの英雄貴族、レオン・ハートフィリア!」
司会をしている教会の魔法使いが声を魔法で拡散し観客に届ける。
言われたとおりにそれを合図にしてレオンが舞台に上がると観客から大きな歓声が上がった。
正面には赤い髪の二刀流の女性。対戦相手のロアが立っている。
鋭い視線でレオンのことを睨みつけ、両腰に差した剣を順番に抜く。
その鋭い視線の意味がレオンを対戦相手としてみているのか、それとも暗殺の対象としてみているのかはわからなかった。
試合開始のゴングが鳴る前にレオンも杖を抜いた。
「それでは……始めっ!」
司会の掛け声に合わせてゴングが鳴る。
それと共に魔法で身体能力を強化したロアがレオンのもとへ踏み込む。
右手に握った剣がレオンの首に狙いをつけて振りぬかれる。
そのあまりの速さにレオンは一瞬遅れをとったが、対応できないほどのものではなかった。
剣筋を見極めて微細な動きで剣をかわす。
それからロアの左手の剣による追撃もかわし、魔法で風を生み出してロアの身体を押しのけるように当てる。
それに加えて、その風を自分が後ろに下がるための推進力にした。
「魔法闘技祭」の主な勝利条件は三つ。
「相手を舞台の上から押し出す場外判定」「対戦相手の気絶、あるいは死亡による戦闘継続の不能」「対戦相手の意思表示による降参」である。
レオンはロアを舞台の外に押しのけるようと杖を振って風をさらに強くした。
「甘い……」
しかしロアは風に押されながら自身の身体をひねり、剣に魔力を纏わせてレオンの生み出した風を魔力ごと断ち切って見せた。
さらに風に煽られて崩れた自身の体勢を高い体感能力で制御し、空中に魔力の壁を生み出す。
そしてそのままその魔力の壁を足場にして再びレオンのもとへ飛び込んでくる。
「……つっ! 魔力剣!」
ロアの高い身体能力に驚きつつ、レオンは手に魔力を纏わせて彼女の剣を迎え撃った。
身体能力を向上させる魔法を自身に付与し、力をロアと拮抗させる。
「魔力剣」という魔法はその名前の通り魔力を杖に纏わせた状態で硬質化し、剣のようにする魔法である。
レオンがモゾやテトの変身能力を参考にして作った魔法である。
「魔力剣」はその大きさも長さも自在だが、大きくすればするほどに硬質化した魔力の質が悪くなり、脆くなる。
また、自在に振り回せるかと言われればそうではなく、現状では剣などの物理的な武器を防ぐためにしか使えない。
そもそも、テトを呼び出して変身させればこの魔法を使う必要もないのだが、この「魔法闘技祭」においてテトを呼び出すのは極力控えようというのがレオンの思惑だった。
暗殺者がどこかに潜んでいて、そうでなくとも教皇や新興派の人間たちがこの大会を見ている。
実力をすべてさらけ出す気にはなれなかった。
逆に言えばテトの存在を隠した上で自分の戦い方を補うための魔法が「魔力剣」だった。
自在に振り回せないという「魔力剣」の攻撃面でのマイナスを補うための仕掛けもしてある。
「なんだ……この魔法は……」
ロアはレオンの使った「魔法剣」に動揺した。
魔力が硬質化し自慢の剣を受け止めたから、だけではなく剣が打ち合った瞬間からレオンの魔力の形状が変化したからだ。
まるで生き物のように魔力がうねり出し、ロアの二本の剣に絡みつく。
それとともに自身の剣が重くなっていくのロアは感じた。
それがレオンの「仕掛け」だった。
90
お気に入りに追加
7,360
あなたにおすすめの小説
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。