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盗まれた魔道具編

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シュレンガーが遅れて撃った二発の魔力弾が破られた魔力障壁を通り抜けてレオンの腹部に当たる。

鈍い痛み、それから当たった箇所が熱くなる感覚と共にレオンは後ろに体を吹き飛ばされる。

弾が当たる直後、レオンは即座に弾着箇所に魔力を集中させて威力を和らげていた。

そうでなければこの一撃で勝負はついてしまっていただろう。


「ぐっ……なんで」


痛みに耐えながらレオンは脳内で今の出来事を反芻する。

魔力障壁はシュレンガーの魔銃の威力に負けたわけではない。

それとは少し違う、まるで障壁自体が脆い何かに変わったかのようにレオンには見えた。

レオンはもう一度倒れた団員達の方を見る。
彼らを襲った攻撃もレオンに当たった魔力の弾とは様子が違った。


シュレンガーは姿を現してから例の二丁の魔銃しか使っていない。

魔力障壁を破った時も同様である。


「何か仕掛けがある」


レオンはシュレンガーの持つ魔銃にただ魔力の弾を撃つ以外の能力があるのではないかと睨んだ。

シュレンガーは魔銃を再び構えてレオンに狙いをつける。

二丁の魔銃から繰り出される無数の魔力弾がレオンを襲う。

その弾を大袈裟に避けていてはかえって的になる。

レオンは神経を集中させた。

向かってくる弾を避ける時に足に魔力を貯めて瞬間的に加速。

最小の動きで弾を避けられるように視線はシュレンガーの銃口から外さない。

魔銃の弱点は使用者の向けた方向に直線で弾が飛ぶところだ。

銃口の向きに気を配っていれば間一髪でかわすことは難しくはない。


「曲芸師がっ」


弾を避けるレオンに苦言を呈し、シュレンガーはさらに打ち出す速度を変えた。

魔銃も魔道具。内蔵された魔力は有限で、打ち出す速度を早めると消費する魔力は多くなる。

しかし、弾を避け出したレオンに同じ攻撃を続けていても魔力切れを起こすのはシュレンガーの方である。

勝負をつけるためにシュレンガーはかけに出たのだ。

レオンは弾を避けつつ、間に合わない時には影の剣で弾を弾き、その最中にも弾の観察を続けていた。

影の使い魔テトが変化した剣からはその意志がまるで流れてくるように伝わってくる。

弾丸を斬った時の僅かな違い、威力の高さや当たった時の感覚の違いが全てレオンに経験として蓄積されていく。


「いい加減にくたばりやがれ!」


痺れを切らしたシュレンガーはいかにもとどめを指すぞという意気込みで二丁の魔銃をレオンに向けた。

同時に発射された二発の弾が重なり、それは一つの大きな弾になる。

一発ですら地面を抉るほどの威力。それが二発重なればより大きな威力を持つことは想像に難くない。

その弾が容赦なくレオンを襲う。
レオンはすかさず空中に高く飛び上がった。

しかし、弾は軌道を変えた飛び上がったレオンを追いかける。


「そんなこともできるのか」


今まで直線でしか飛んでこなかった弾が追尾してきたことに驚きつつもレオンは剣を前に構え、衝撃に備えた。

ニヤリとシュレンガーが笑う。
「勝った」と確信した笑みだ。

弾がレオンに当たる直後、レオンは違和感を覚えた。

弾が違う。
うまく説明はできなかったが、確かにそう感じた。

そして、それはレオンの理性に働きかけ反射的に行動を変えさせた。


剣で魔力弾を弾く直前に足に魔力を集中させたレオンは「爆裂」の魔法で空を蹴った。

ぐるりとレオンが空中で身を翻す。
弾は尚もレオンを追いかけようとしたが、直角的なレオンの動きについていけずにやや起動が逸れる。

その隙にレオンはさらに「爆裂」で空を蹴り軌道を下に変えて突っ込む。

そのレオンの視線の先にいるのはシュレンガーだった。


「な……に?」

突然のレオンの行動にシュレンガーは呆気に取られる。

レオンの影の剣がシュレンガーの目の前に突き出される。


「テト!!」


レオンは叫んだ。


影の剣が黒猫に姿を変えて、それから黒い球体になりシュレンガーを包み込んだ。
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