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忍び寄る影編
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しおりを挟むレオンに向かってくる三人の襲撃者のうちの一人がレオンに向けて何やら魔道具を構えている。
棒状の筒で、持ち手と思われるところを押さえ、引き金に手をかけているのがレオン君は見えた。
「気をつけろレオン! その魔道具はこっちの魔力を吸い取るぞ!」
視界にその姿は入っていないが、マークがそう叫ぶのがレオンには聞こえた。
「なんだそれは?」とレオン派思った。
一部の得意な血族を除いては魔法使いにすらできない「他者から魔力を奪う」力を魔道具で作り出した物がいるというのか?
そんな物があればすぐに世界中に知れ渡ってもいいはずなのに、その存在は広く知られていない。
そんなすごい魔道具を持つこの襲撃者達は一体何者なのか。
レオンの脳裏にさまざまな考えが浮かぶ。
襲撃者はそのままレオンめがけて引き金を引いた。
網状の弾がレオンめがけて打ち出される。
その網は薄く光っていて、魔力を帯びているようだった。
「これに捕まるとマズいのか」と瞬時に判断したレオンは間一髪でそれを避ける。
宙返りのように空を回るレオンの目に地面の様子が一瞬だけ映る。
レオンに向かって放たれた物と同様のものだと思われる網状弾に捕まった魔法騎士団員の姿が何人か見えた。
マークの叫んだ通り、その網状の弾が「魔力を奪う」というのは本当のようだった。
網に囚われたって、魔法で切り裂いたり「飛行」で無理矢理引き剥がせばいいものを、囚われた団員達は苦しそうにもがいているだけである。
その様子から彼らが容易に魔法を使えないことがわかった。
「馬鹿野郎! アイツはネームドだ! 隙をつくんなきゃあたらねぇよ」
他の襲撃者が網状の弾をレオンに向けて打った襲撃者に向けて言う。
「ネームド」という言葉にレオンは覚えがなかったが、それが自分のことを言っているのは明らかだった。
「とにかく、あの弾を連射されたらマズいな」
魔法の攻撃を飛んで避けながらレオンは自分に向かってくる三人の襲撃者を見る。
網状の弾を放つ魔道具を持っているのは三人のうちの一人だけだった。
レオンですら存在を知らないような魔道具。
そんな物が安易に量産されてはかなわない。
襲撃者達の使う魔道具はどれも貴重な物なのだろうと推測できる。
それなら、網状の弾が無くなるまで避け続ければいいとレオンは考えていた。
それか、魔道具を持つ一人を早々に無力化するか。
方法はいくらでもあった。
見慣れない魔道具に戸惑いこそしたが、自力では明らかにレオンや魔法騎士団の方が上である。
倒せない相手ではなく、この騒ぎが収束するのも時間の問題である。
レオンがそんな風に考えていた時、空を飛ぶレオンのさらに上空から声が聞こえた。
「お前らじゃ足りねぇ。俺がやってやる」
その声が敵のものか、味方のものか。
いや、それを判断するよりも早くレオンは振り向いた。
レオンの頭上に空を飛ぶ男がいた。
見慣れない顔だった。
状況から見れば敵である可能性が高い。
男は他の襲撃者達のように箒のような魔道具には乗っていなかった。
その代わりに両足に履いた靴からエネルギーが発生している。
それもまた魔道具のようだ。
月明かりに照らされた男が大きな魔道具をレオンに向けて構える。
形状は先程レオンが避けた網状の弾を撃つ魔道具によく似ているが、大きさはそれよりも大きい。
男はその魔道具を肩に担ぐようにして構えると引き金を引いた。
レオンは再びあの網状の弾が出るのだと思った。それに備えて、避けようとした。
しかし、男の魔道具から放たれたのは全く別のものだった。
「なんだこれは……」
男の魔道具から放たれた弾は光の束のようなものだった。
その一つ一つがそれぞれ独立した動きをしてレオンの周りを取り囲むと、次の瞬間にはレオンの体に巻き付くように襲いかかる。
「……魔力が」
形状は違っても効果は魔力の弾と同じようだ。
その光に魔力が吸われていくのをレオンは感じていた。
それだけではなく、その光を振り払おうと魔法を使おうとしてもうまく発動しない。
まるでその光の束に魔力の流れを乱されているようだった。
なす術なく魔力を限界まで吸い取られたレオンは、「飛行」の魔法すら使い続けられなくなり、地面に向かって落ちていくのだった。
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