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魔法学院生徒受入編

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「魔法学院の一年生の皆さん。ようこそクルザナシュへ。東の街リノニアからの長旅で疲れてることとは思いますが、どうかこの街での三日間を有意義なものにしてください」


壇上に立つレオンの挨拶を、王都から来た魔法学院の一年生達は膝を抱えて座りながら聞いていた。

まだあどけなさの残るその顔立ちは到底魔法使いには見えず、子供が職場体験にやって来たようにしか見えない。

クルザナシュに来た一年生の人数は約三十人程度だが、それが今年の新一年生の総数である。

レオン達が学生の頃は一クラスに約三十人程度、それが三クラスあったため、人学年の総人数はおよそ百人弱はいたはずだが、何も魔法使いの人数が減少傾向にあるわけではない。

レオン達の時代では魔法の才能が発現し、十五歳の成人を迎えた者が入学対象となっていたのに対し、今の新入生達はそれよりも三年若い十二歳なのだ。

集められた子達は魔法の才能の発現が比較的に早かった子達。それも、入学するかしないかは本人の意思を尊重して集められた者達である。

国中の同年代の中にはまだ自分に魔法の才能があると知らない者もいるだろうし、才能は発現していても今回の入学は見送った者もいる。

そう言った者達は三年後の成人の儀式を迎える時に再び魔法使いになるかどうか、選択の自由を与えられるのである。


集められた若き才能の塊達は好奇心に心を支配されているようで、やたらと顔をキラキラさせている。

彼らは王都を出立し、まず北の街ノクディアへ。

そこで課外授業を終えた後に東の街リノニアへと向かい、そしてこのクルザナシュにやって来ている。

課外授業は移動も含めておよそ一ヶ月にもわたる大掛かりな計画であり、東西南北の街を一つずつ回るためクルザナシュは三ヶ所めである。

それにもかかわらず彼らがその笑顔から疲労の色を全く見せないのは若さ故か、それともクルザナシュに対する期待感が疲労を忘れさせているのか。


とにかく、レオンがあまり長くならないようにと何度も練習した歓迎の挨拶の言葉は彼らの耳を右から左へと通過していくだけであった。

さらには、レオンが挨拶を終えるや否や蜘蛛の子を散らすように街中に散らばっていってしまう。

引率する学院の教員達や護衛役のマークとその他の魔法騎士団達に疲労の色が色濃く出ているのを見るに、ここまでの道のりでずっとこの調子だったらしい。


「なかなかいいスピーチだったわね」


せっかく考えた挨拶が生徒達に響いていないのを気にしながらレオンが肩を落としていると、引率の教員達の中から一人の女性が近づいて来て、レオンに声をかけた。


「ルイズ! ありがとう。そして、ようこそクルザナシュへ」


レオンはそのよく見知った女性。ルイズ・ネメトリアと握手を交わして再び歓迎の言葉を続けた。

魔法学院時代の友人であり、これまで何度もレオンと戦いを共にして来たルイズは魔法学院の一年生達の引率のために選ばれた魔法使いの一人である。


といっても、彼女は学院の教員になったわけではない。

北方の貴族の娘であるルイズは、学院を卒業後は故郷には帰らず、王位を求めて戦うヒースクリフと共に王都で活動をしていた。


しかし、戦いが終わったことで彼女の王都での役割は無くなり故郷に帰って村の領主の地位を継いだのである。

つまり、彼女はレオンと同じ立場の人間というわけだ。

北方の彼女の村は凍える寒さがほとんど一年中続くような厳しい土地だが、跡を継いでからというものそれなりにうまくやっているようである。

彼女が一年生達を引率しているのは単に学院側の人手が足りず、頼まれたから。

いってみれば臨時講師のようなものだった。


ルイズは一年生が王都を出立して北の街に着くのを現地で迎えて、そこでの課外授業が終わった後はずっと彼らに着いて国を周っていたのである。
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