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新たな時代編

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翌朝のクルザナシュはそれまでで一番の大盛況となった。

クルザナシュに越してきた移住者達の大半は農民である。

彼らは早速農地の開墾に取り組み始めている。

レオンはクルザナシュの特産とするためにオードから教えてもらったイネガシアと、その他にも荒れた土地でも育ちやすい野菜の種をいくつか持ち帰っていた。


育てるのに魔力を必要とするイネガシアはエイデンや悪魔達といった魔法を使える者が、その他の作物は農民達が育てることになる。

とはいえ、現在のクルザナシュには農地と呼べる場所はなかった。

新しくきた住人達が自らの手で農地を開墾していかなくてはならない。

農民達は始めクルザナシュの土地を見て悲観した。

開拓が進んでいるとはいえ、クルザナシュの荒れた土の性質は大きくは変わっていない。

地面は岩のように硬く、耕さなけれ作物を育てることはできない。


クルザナシュ住むことになった農民達のほとんどはこれから始まる開墾が重労働であることを覚悟したのだ。


しかし、実際にはそうはならなかった。

レオンや、レオンを慕ってこの街にやってきた魔法使い達が開墾を手伝ったからである。


魔法で地面が浮き上がり、あっという間に耕されていく様を見た農民達は驚愕した。


魔法そのものに驚いたというよりも、自分たちのために魔法を使うレオンに驚いたのである。


「り、領主様……そんな貴重なお力を私達のために使うなんてもったいない……」


レオンをまるで神のように崇め出す勢いの農民達にそう言われてレオンはキョトンとした顔をする。


「こんなの大した魔力も使わないですよ。困ったことがあればなんでも言ってください」


レオンのその言葉に農民達はさらに言葉を無くす。

この国の貴族が平民達のために魔法を使うことなどそれまでほとんどなかったのだ。


平民にとっての魔法とは、貴族が自分の力を誇示するために見せつけるためのものであってそれが自分達のために使われることなどほとんどない。


だから、魔法を使えない平民達の多くは魔法を「便利なもの」だとは認識していないのである。


多くの街で、貴族は自らが働くことを嫌い、平民達に雑用の全てを任している場合が多い。


そして、そう言った作業は大抵重労働なのである。


レオンが行ったこの平民の作業を魔法で手伝うという行為はレオンにとっては当たり前のものだったが、他の者にとっては衝撃的なものだった。


特にクルザナシュに移住した平民達からすると自分たちの街の領主が自分たちのために力を使うというこの状況はまさに革命的だった。


「貴族が平民のために魔法を使った」レオンの噂は瞬く間に大きくなった。

噂は農民達からクルザナシュへ訪れた旅商人達へ。

旅商人達から各街へというように広がっていく。


「南のクルザナシュってところの領主は平民のことをすごい考えてくれるらしいぞ」


「新しく貴族になった若いお人らしいが大層素晴らしい人らしい」


決して間違ってるとは言えないが、噂には尾鰭がついた。

噂が人を介して広がるたびに、そこにはレオンが実際にはやっていないことまで乗っかっていく。

その結果、レオンとクルザナシュの評判はうなぎのぼりになった。


他の街に住む平民達は皆クルザナシュに住みたいと思うようになり、既にクルザナシュに住んでいる者達からも大きな不満は出なかった。


それは、何か問題があるたびにレオンが直接平民達に話を聞きそれを解決しようと試行錯誤したからだった。


領地のためにそこまで力を注ぐ貴族はいない。


大抵は自分の私腹を肥やすために行動するだけだ。


だからこそ、レオンが治めるクルザナシュは平民からの人気の厚い街になっていくのだった。


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