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勇者、異世界に降り立つ
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しおりを挟む異世界転生。
誰もがというと語弊があるだろうが、まぁ大抵の男子は、それもアニメやゲーム、ラノベなんかが好きな男子は一度くらいは夢に見る現象であろう。
かくいうこの俺も厨二病を卒業したとはいえ、本当に存在したその異世界転生に心を躍らせていた。
神を名乗るお爺さんに送り出されて目覚めた後、俺がいたのは森の中である。
周囲を見渡しても木しかなく、太陽の光も入ってこないので少し薄暗い。
正確な時間もわからないため、今が朝なのか昼なのかもわからないがとにかく俺はそこに立っていた。
お爺さんに言われた通り、俺はまず自分の体を確認することにした。
勇者の生まれ変わりだからと勇者の体を復元した肉体に転生したらしいが、目で見る分には肉体の作りは普通の人間である。
少し背が伸びたような気はするが大きな違和感はない。
というよりも、着ている服の方が違和感があった。
黒いマントのような物をヒラヒラさせて、その下に来ている服も暗い色の上下である。
カッコいい。確かにカッコいいのだが、厨二臭さが全開すぎて少し気恥ずかしい。
それに、勇者というよりも何かのダークヒーローのようである。
しかし、よくよく思い出してみると夢で見た勇者を名乗る男も似たような服を着ていたので、間違いなく生前の勇者が来ていた物なのであろう。
そういえば、顔はどうなっているのだろうか。
夢で見た勇者はかなりカッコいい部類のイケメンだったが、地球で暮らしていた俺は平々凡々な顔立ちである。
あまりにも唐突にイケメンに生まれ変わると、それはそれで違和感がありそうなものなのだが……。
しかし、周りには当然鏡などなく自分の姿を確認する術もない。
かなり気になるところではあるが、ここは一先ず後回しにしておくしかないだろう。
「お爺さんは街を見つけて貴族と親しくなれっていってたな。とりあえず、森を抜けて街を探すか」
と俺は森の中を歩き出そうとして足を止める。
少し冷静になって考えてみると、ここは異世界なのである。
魔王や勇者が存在する世界。
ゲームやアニメで考えてみると当然魔物なんかもいるのだろう。
そして、森の中といえば彼らの出てくる定番の土地ではないだろうか。
そんなところに一人で立たされているのにも関わらず、俺には武器がないのである。
生まれ変わって立っていた時に、服こそ着ていたが好きになるようなものは何もなかった。
勇者が使っていたという聖剣はどこぞで魔王を封印しているらしいし、それ以外に手持ちの武器はなかったということなのだろうが、丸腰で森を歩くのはあまりにも不用心すぎないだろうか。
まぁ、剣があったところで使い方など知らないし、魔物と出会ったら即逃げるしかないわけだが、武器があるのとないのとでは気の持ちようが違う。
魔法のある世界だということはお爺さんから聞いていたために試しに魔法を使ってみようと試みたが、生まれてから一度もそんな物は使ったことがなく、使い方がわからなかった。
「よし、ひとまず何にも出くわさないように最新の注意を払って移動しよう」
と開き直って森を歩き出したのも束の間。
目の前に現れたのは緑色の小さい何かである。
頭に一本の角を生やし、邪悪な笑みを浮かべる存在が二体。
俺の中にあるゲームやらアニメやら全ての知識を集合させて答えを導き出すと、そいつらの名前は
「小鬼だ」
というわけである。
小鬼供は身の丈にあった棍棒のような物を持っていて、ジリジリと俺の方に近寄ってくる。
襲う気満々のようだ。
こういう時はあれか、目を合わせたまま静かに下がっていくのが良いんだっけ。あれ、それはクマの対処法か?
などと俺が考えているうちに、小鬼の一匹が棍棒を振り上げて飛びかかってきた。
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