181 / 189
第7章
掛け違えたボタンたち⑫ ~会心、咲のサプライズ~
しおりを挟む
男女ともに試合を4戦終えてクールダウンを行っていると、女子バスケ部のコートの方で人だかりが出来ており、女子達の明るい声が飛び交っていた。そして、その中心にいた桃李高校の制服を着た生徒3人が今度は男子達が試合を行っていたコートに入ってきて桃李の選手達に何かを配り始めていた。
その反対側でストレッチを行っていた一とその手伝いをしていたすみれが騒がしくなった方を見て話をしていた。
「ヨイショッと、一君痛くない?もう少し押しても大丈夫?」
「おう、大丈夫だ。ゆっくり息を吐くからそれに合わせて背中を押してくれ。ん?なんだあれ。随分あちらさんが騒がしいみたいだな」
「あ~本当だね。あれ、もしかしてあの子達って試合中によく分からないけどウチらのチームを応援していた子達じゃないかな。何かを配っているみたいだよ」
一の背中を押しながら反対側のコートの人だかりを確認したすみれは試合中に何故か桃李の生徒なのに琴吹の選手に声援を送る女子が数人いたことを思い出して言った。
「そうだったのか?全然気付かなかったな。お、あれはなかなかの上玉だ。見たところ運動部と言うよりは文化系女子って感じだね。桃李の女子も可愛い子が多いみたいだな」
一が持ち前のプレイボーイ気質で咲達を褒めるとすみれがその発言に鋭く反応し一の背中をこれでもかと押し込んだ。
「ん?一君、今何か言ったかな?可愛い子が何だって?」
「え、いや、今のは社交辞令というか、う、痛てて、ぐるしいって、すみれさん。ごめんなさい。許してくさい」
「この浮気者!可愛い彼女の目の前で他の女子を見てデレデレしないでよ、一君のバカ!!」
周囲が見ればバカップルがイチャついているようにしか見えない2人がそんなやり取りをしていると、その話題に上がった3人がそろりと琴吹の選手達が集まる方にやってくるのであった。
「あれ、おい、すーみん。なんかこっちにやってくるみたいだぞ、あの子達」
「あら本当だ。一体何の用かしらね」
そう言っている間に尊や大和らも近寄ってきた3人に気がつき何やら話しをすると尊がストレッチをしていた部員に呼びかけた。
「おーい、皆ちょっと集合してくれ」
その掛け声でぞろりと集まる部員達の傍ら、スタミナ切れで床に転がっていた二郎はそれに一歩遅れてその場で体を起こした状態で尊の言葉を聞いた。
「実は桃李の料理部の皆さんが差し入れでシュークリームを持ってきてくれたようで、俺らもお裾分けを頂けるようだ。わざわざ僕らにも気を遣って頂きありがとうございます。ほら、お前らもちゃんと感謝を伝えろよ」
尊が事情を部員達に説明しながら咲達3人にお礼を言うとそれに習い他の部員達も揃ってお礼を言った。
「ありがとうございます」
「ちゃーす!」
「手作りなんてマジで嬉しいです。ありっす」
その感謝の言葉を受けながら3人はまず初めにテンションを上げて喜ぶ一年達にシュークリームを配ると、その後、陽菜が尊と一、すみれに、桃子が大和に、そして咲が二郎に声を掛けた。
「どうぞ、さっき3人で作ったシュークリームです。中のフルーツがそれぞれ違うので好きなものを取って下さいね」
そう言って陽菜が目の前にいる尊、一、すみれに声を掛けると3人は少し遠慮しながらもシュークリームを手に取るとニヤニヤしている陽菜に一が声を掛けた。
「どうもありがとございます。凄く美味しそうですね。あの~ところでどうして俺らにこれを?」
「はい、どうしてって何が?」
一の問に今一理解出来ないと言った様子の陽菜が質問を返すとすみれがそれに答えた。
「だから、どうしてわざわざ私達にも差し入れなんてくれたのかと思って。凄く嬉しいんですけど、正直ちょっと理由が分からないというか、なんというか、ねぇ?」
言いたいことは分かるでしょ、と言った表情で問いかけるすみれに陽菜は合点がいったように、そしてハッキリと答えた。
「あぁ、まぁそうですよね。理由も分からずに何かをもらうのはちょっと不安ですよね。えーっと、つまり、うちの子の1人が皆さんのお仲間の友達で、その人に差し入れをしたいがために男女バスケ部全員に差し入れするって事になったんですよ」
「うん?」
「はい?」
「つまりどういうこと?」
陽菜の説明を聞き、尊と一は首を傾げ、すみれが食い付くように陽菜に再度説明を求めた。
「いや、だから意中の彼に差し入れするために1人の女子が心を込めてお菓子を作ったので、皆さんは気にせず食べて大丈夫ですって事です」
「何ですって?意中の彼って、一体誰のことを言っているんです?」
状況が理解出来なくなっていた尊と一を代弁するようにすみれがさらに食い付くと陽菜がアレだと言って指さした。
それを見た尊が驚きの声を上げて陽菜に言った。
「アレって大和の事か?一体どう言うことだ?」
その視線の先には桃子が大和にシュークリームを渡しながら、試合中の大和のプレイを手放しで褒め称えて、大和も突然の桃子の賞賛に顔を赤くしながら丁寧に受け答えをしている様子があった。
「つまり、あのいかにも育ちのよさそうなお嬢様って感じの子が大和の事が好きでわざわざ俺ら含めこんな大勢にシュークリームを作ったって事なのかい?」
一の問いに陽菜が慌てて否定して、大和達のさらに奥で床に座る二郎とそれに寄り添う咲を指さして言った。
「いえいえ、違いますよ。アレはいわゆる突発的な一目惚れみたいな物だと思います。本命はあっちの2人ですよ。おぉ、なんか良い雰囲気ですね」
陽菜の指さす方向を見た3人は揃ってあんぐりと口を開けて絶叫した。
「・・・・はぁ~~~~!!!」
そんな懇切丁寧な状況説明を陽菜が尊、一、すみれにしていることなどつゆも知らない咲は電車の中で会った時以来の二郎との再開にドギマギしながら話し掛けた。
「あの、これ良かったら召し上がって下さい。部活の皆と今さっき作ったんです」
咲の存在に未だ気付かない二郎は鼻孔をくすぐるシュー生地の芳ばしい香りとフレッシュなフルーツの甘酸っぱい香りに誘われて試合で気力を出し尽くした体にむち打って、目の前の少女が手に持つ紙箱を見ながら言った。
「いや~、良い香りですね。自分この焼き菓子の匂いが好きなんですよ。何だかよく分かりませんが、ありがたくいただきます。・・・・うん、うまい!」
二郎の飾り気も無いが、お世辞でも無い正直な感想に思わず胸を熱くする咲がソワソワしながら言った。
「え、その本当に美味しいですか?クリームが甘過ぎちゃったかなって心配だったんですけど、大丈夫ですか?」
「いやちょうど良いと思いますよ。クリームの甘さとこのイチゴとかキウイの酸味が上手い具合にマッチして凄く食べやすいし、正直部活で疲れていて糖分が欲しかったのでとても美味しいです」
二郎もわざわざ他校の自分たちに差し入れを持ってきてくれた目の前の桃李高校の制服を着る少女に対して最大限の敬意を表すと共に、実際に非常に美味しかったシュークリームを絶賛すると咲は小さく拳を握り、さっと振り向き陽菜と桃子に目線を向けてサプライズが上手く行った事を知らせるのであった。
そんな一瞬のやり取りの間で二郎は先週電車の中で偶然もらった洋なしタルトの味を思い出し、ふとつぶやくと最後に改めて目の前の少女に視線を向けて感謝を伝えた。
「いや~この前食べたあのタルトも美味しかったけど、今日のこれも負けず劣らず美味しいわ。えーっと、どうもご馳走様でした。本当に美味しかったです・・・・ん?・・・あれ?」
二郎の言葉に反応して再び目線を戻した咲は自分を真っ直ぐに見つめて感謝を伝える二郎とバッチと目線が合った。
「あ・・・あの・・・・久しぶり、山田君」
「?!・・・・・・」
「・・・・・・あの、私の事覚えている?この前電車で話をした七海です」
「あ!そうだよな。七海さんだよね。え?どうしてここに、と言うかなんで君が・・・え・・・あ、そうか。桃李高校かぁ。そうだよな。君、桃李高校に通っているって言っていたよな」
ようやく今の状況に理解が追いついた二郎に咲は嬉しそうに言った。
「ふふふ、そうだよ。ここが私の通っている高校なんだよ。もしかして今まで気付かなかったの?ひどいな、山田君。私は琴吹高校のバスケ部が体育館で試合をしているって聞いてすぐに君が来ているって気付いたのに」
「そっか。ごめん。まさかまたこんな形で君と再会するなんて思ってもみなかったから、正直今の今まで全然気付かなかったよ。本当にごめんよ」
突然の再会に驚きながらも、咲の存在を完全に忘れていた二郎が少し気まずそうにしていると、その空気を読んだ咲が慌ててフォローを入れた。
「いやでも、いいの。急の事だったし私の顔を見て思いだいしてくれたからそれで十分嬉しかったし、その、この前あげたタルトも美味しかったって褒めてくれたし、だから私の事を覚えていなかった事くらい全然大丈夫だから気にしないでね」
「いや、でも・・・そうかい、君がそう言ってくれるならそれで良いけど・・・でも、本当に今日のシュークリームもこの前のタルトも美味しかったから。これは嘘じゃ無いから。だからありがとう」
「そっか、良かった。そう言ってくれて私も嬉しいです」
そんな会話のあとで陽菜から声が掛かった。
「お~い、サキッチョ!良い雰囲気のところ申し訳ないけど、邪魔にもなるしそろそろ退散するよ」
その言葉に咲は名残惜しそうに、そして、何か伝え忘れたことを思い出して一言言ってその場を後にした。
「あの山田君。部活が終わって帰る前に少しだけ時間をもらっても良いですか?渡したい物があるんです。体育館の前で待っているので帰る準備が出来たらそこに来て下さい。私待っていますから。ではまた後で」
「え、あ、ちょっと、待って・・・。何だ、一体?」
二郎は突然の約束の申し出に答える間もなく去った咲の背中を戸惑いの表情を持って見送るのであった。
その反対側でストレッチを行っていた一とその手伝いをしていたすみれが騒がしくなった方を見て話をしていた。
「ヨイショッと、一君痛くない?もう少し押しても大丈夫?」
「おう、大丈夫だ。ゆっくり息を吐くからそれに合わせて背中を押してくれ。ん?なんだあれ。随分あちらさんが騒がしいみたいだな」
「あ~本当だね。あれ、もしかしてあの子達って試合中によく分からないけどウチらのチームを応援していた子達じゃないかな。何かを配っているみたいだよ」
一の背中を押しながら反対側のコートの人だかりを確認したすみれは試合中に何故か桃李の生徒なのに琴吹の選手に声援を送る女子が数人いたことを思い出して言った。
「そうだったのか?全然気付かなかったな。お、あれはなかなかの上玉だ。見たところ運動部と言うよりは文化系女子って感じだね。桃李の女子も可愛い子が多いみたいだな」
一が持ち前のプレイボーイ気質で咲達を褒めるとすみれがその発言に鋭く反応し一の背中をこれでもかと押し込んだ。
「ん?一君、今何か言ったかな?可愛い子が何だって?」
「え、いや、今のは社交辞令というか、う、痛てて、ぐるしいって、すみれさん。ごめんなさい。許してくさい」
「この浮気者!可愛い彼女の目の前で他の女子を見てデレデレしないでよ、一君のバカ!!」
周囲が見ればバカップルがイチャついているようにしか見えない2人がそんなやり取りをしていると、その話題に上がった3人がそろりと琴吹の選手達が集まる方にやってくるのであった。
「あれ、おい、すーみん。なんかこっちにやってくるみたいだぞ、あの子達」
「あら本当だ。一体何の用かしらね」
そう言っている間に尊や大和らも近寄ってきた3人に気がつき何やら話しをすると尊がストレッチをしていた部員に呼びかけた。
「おーい、皆ちょっと集合してくれ」
その掛け声でぞろりと集まる部員達の傍ら、スタミナ切れで床に転がっていた二郎はそれに一歩遅れてその場で体を起こした状態で尊の言葉を聞いた。
「実は桃李の料理部の皆さんが差し入れでシュークリームを持ってきてくれたようで、俺らもお裾分けを頂けるようだ。わざわざ僕らにも気を遣って頂きありがとうございます。ほら、お前らもちゃんと感謝を伝えろよ」
尊が事情を部員達に説明しながら咲達3人にお礼を言うとそれに習い他の部員達も揃ってお礼を言った。
「ありがとうございます」
「ちゃーす!」
「手作りなんてマジで嬉しいです。ありっす」
その感謝の言葉を受けながら3人はまず初めにテンションを上げて喜ぶ一年達にシュークリームを配ると、その後、陽菜が尊と一、すみれに、桃子が大和に、そして咲が二郎に声を掛けた。
「どうぞ、さっき3人で作ったシュークリームです。中のフルーツがそれぞれ違うので好きなものを取って下さいね」
そう言って陽菜が目の前にいる尊、一、すみれに声を掛けると3人は少し遠慮しながらもシュークリームを手に取るとニヤニヤしている陽菜に一が声を掛けた。
「どうもありがとございます。凄く美味しそうですね。あの~ところでどうして俺らにこれを?」
「はい、どうしてって何が?」
一の問に今一理解出来ないと言った様子の陽菜が質問を返すとすみれがそれに答えた。
「だから、どうしてわざわざ私達にも差し入れなんてくれたのかと思って。凄く嬉しいんですけど、正直ちょっと理由が分からないというか、なんというか、ねぇ?」
言いたいことは分かるでしょ、と言った表情で問いかけるすみれに陽菜は合点がいったように、そしてハッキリと答えた。
「あぁ、まぁそうですよね。理由も分からずに何かをもらうのはちょっと不安ですよね。えーっと、つまり、うちの子の1人が皆さんのお仲間の友達で、その人に差し入れをしたいがために男女バスケ部全員に差し入れするって事になったんですよ」
「うん?」
「はい?」
「つまりどういうこと?」
陽菜の説明を聞き、尊と一は首を傾げ、すみれが食い付くように陽菜に再度説明を求めた。
「いや、だから意中の彼に差し入れするために1人の女子が心を込めてお菓子を作ったので、皆さんは気にせず食べて大丈夫ですって事です」
「何ですって?意中の彼って、一体誰のことを言っているんです?」
状況が理解出来なくなっていた尊と一を代弁するようにすみれがさらに食い付くと陽菜がアレだと言って指さした。
それを見た尊が驚きの声を上げて陽菜に言った。
「アレって大和の事か?一体どう言うことだ?」
その視線の先には桃子が大和にシュークリームを渡しながら、試合中の大和のプレイを手放しで褒め称えて、大和も突然の桃子の賞賛に顔を赤くしながら丁寧に受け答えをしている様子があった。
「つまり、あのいかにも育ちのよさそうなお嬢様って感じの子が大和の事が好きでわざわざ俺ら含めこんな大勢にシュークリームを作ったって事なのかい?」
一の問いに陽菜が慌てて否定して、大和達のさらに奥で床に座る二郎とそれに寄り添う咲を指さして言った。
「いえいえ、違いますよ。アレはいわゆる突発的な一目惚れみたいな物だと思います。本命はあっちの2人ですよ。おぉ、なんか良い雰囲気ですね」
陽菜の指さす方向を見た3人は揃ってあんぐりと口を開けて絶叫した。
「・・・・はぁ~~~~!!!」
そんな懇切丁寧な状況説明を陽菜が尊、一、すみれにしていることなどつゆも知らない咲は電車の中で会った時以来の二郎との再開にドギマギしながら話し掛けた。
「あの、これ良かったら召し上がって下さい。部活の皆と今さっき作ったんです」
咲の存在に未だ気付かない二郎は鼻孔をくすぐるシュー生地の芳ばしい香りとフレッシュなフルーツの甘酸っぱい香りに誘われて試合で気力を出し尽くした体にむち打って、目の前の少女が手に持つ紙箱を見ながら言った。
「いや~、良い香りですね。自分この焼き菓子の匂いが好きなんですよ。何だかよく分かりませんが、ありがたくいただきます。・・・・うん、うまい!」
二郎の飾り気も無いが、お世辞でも無い正直な感想に思わず胸を熱くする咲がソワソワしながら言った。
「え、その本当に美味しいですか?クリームが甘過ぎちゃったかなって心配だったんですけど、大丈夫ですか?」
「いやちょうど良いと思いますよ。クリームの甘さとこのイチゴとかキウイの酸味が上手い具合にマッチして凄く食べやすいし、正直部活で疲れていて糖分が欲しかったのでとても美味しいです」
二郎もわざわざ他校の自分たちに差し入れを持ってきてくれた目の前の桃李高校の制服を着る少女に対して最大限の敬意を表すと共に、実際に非常に美味しかったシュークリームを絶賛すると咲は小さく拳を握り、さっと振り向き陽菜と桃子に目線を向けてサプライズが上手く行った事を知らせるのであった。
そんな一瞬のやり取りの間で二郎は先週電車の中で偶然もらった洋なしタルトの味を思い出し、ふとつぶやくと最後に改めて目の前の少女に視線を向けて感謝を伝えた。
「いや~この前食べたあのタルトも美味しかったけど、今日のこれも負けず劣らず美味しいわ。えーっと、どうもご馳走様でした。本当に美味しかったです・・・・ん?・・・あれ?」
二郎の言葉に反応して再び目線を戻した咲は自分を真っ直ぐに見つめて感謝を伝える二郎とバッチと目線が合った。
「あ・・・あの・・・・久しぶり、山田君」
「?!・・・・・・」
「・・・・・・あの、私の事覚えている?この前電車で話をした七海です」
「あ!そうだよな。七海さんだよね。え?どうしてここに、と言うかなんで君が・・・え・・・あ、そうか。桃李高校かぁ。そうだよな。君、桃李高校に通っているって言っていたよな」
ようやく今の状況に理解が追いついた二郎に咲は嬉しそうに言った。
「ふふふ、そうだよ。ここが私の通っている高校なんだよ。もしかして今まで気付かなかったの?ひどいな、山田君。私は琴吹高校のバスケ部が体育館で試合をしているって聞いてすぐに君が来ているって気付いたのに」
「そっか。ごめん。まさかまたこんな形で君と再会するなんて思ってもみなかったから、正直今の今まで全然気付かなかったよ。本当にごめんよ」
突然の再会に驚きながらも、咲の存在を完全に忘れていた二郎が少し気まずそうにしていると、その空気を読んだ咲が慌ててフォローを入れた。
「いやでも、いいの。急の事だったし私の顔を見て思いだいしてくれたからそれで十分嬉しかったし、その、この前あげたタルトも美味しかったって褒めてくれたし、だから私の事を覚えていなかった事くらい全然大丈夫だから気にしないでね」
「いや、でも・・・そうかい、君がそう言ってくれるならそれで良いけど・・・でも、本当に今日のシュークリームもこの前のタルトも美味しかったから。これは嘘じゃ無いから。だからありがとう」
「そっか、良かった。そう言ってくれて私も嬉しいです」
そんな会話のあとで陽菜から声が掛かった。
「お~い、サキッチョ!良い雰囲気のところ申し訳ないけど、邪魔にもなるしそろそろ退散するよ」
その言葉に咲は名残惜しそうに、そして、何か伝え忘れたことを思い出して一言言ってその場を後にした。
「あの山田君。部活が終わって帰る前に少しだけ時間をもらっても良いですか?渡したい物があるんです。体育館の前で待っているので帰る準備が出来たらそこに来て下さい。私待っていますから。ではまた後で」
「え、あ、ちょっと、待って・・・。何だ、一体?」
二郎は突然の約束の申し出に答える間もなく去った咲の背中を戸惑いの表情を持って見送るのであった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
修行のため、女装して高校に通っています
らいち
青春
沢村由紀也の家は大衆演劇を営んでいて、由紀也はそこの看板女形だ。
人気もそこそこあるし、由紀也自身も自分の女形の出来にはある程度自信を持っていたのだが……。
団長である父親は、由紀也の女形の出来がどうしても気に入らなかったらしく、とんでもない要求を由紀也によこす。
それは修行のために、女装して高校に通えという事だった。
女装した美少年が美少女に変身したために起こる、楽しくてちょっぴり迷惑な物語♪(ちゃんと修行もしています)
※以前他サイトに投稿していた作品です。現在は下げており、タイトルも変えています。
彼女たちは爛れたい ~貞操観念のおかしな彼女たちと普通の青春を送りたい俺がオトナになってしまうまで~
邑樹 政典
青春
【ちょっとエッチな青春ラブコメディ】(EP2以降はちょっとではないかも……)
EP1.
高校一年生の春、俺は中学生時代からの同級生である塚本深雪から告白された。
だが、俺にはもうすでに綾小路優那という恋人がいた。
しかし、優那は自分などに構わずどんどん恋人を増やせと言ってきて……。
EP2.
すっかり爛れた生活を送る俺たちだったが、中間テストの結果発表や生徒会会長選の案内の折り、優那に不穏な態度をとるクラスメイト服部香澄の存在に気づく。
また、服部の周辺を調べているうちに、どうやら彼女が優那の虐めに加担していた姫宮繭佳と同じ中学校の出身であることが判明する……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
本作は学生としてごく普通の青春を謳歌したい『俺』ことセトセイジロウくんと、その周りに集まるちょっと貞操観念のおかしな少女たちによるドタバタ『性春』ラブコメディです。
時にはトラブルに巻き込まれることもありますが、陰湿な展開には一切なりませんので安心して読み進めていただければと思います。
エッチなことに興味津々な女の子たちに囲まれて、それでも普通の青春を送りたいと願う『俺』はいったいどこまで正気を保っていられるのでしょうか……?
※今作は直接的な性描写はこそありませんが、それに近い描写やそれを匂わせる描写は出てきます。とくにEP2以降は本気で爛れてきますので、そういったものに不快に感じられる方はあらかじめご注意ください。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる