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第4章
人の噂も七十五日㉕ ~すみれの忘却とLOVE一君~
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午前の授業を終えて昼休み。エリカは三佳、すみれ、忍に声を掛けて今日の放課後に少し時間が欲しい旨を伝えた。それは噂が出てからすみれグループ全員が集まる初めての機会だった。エリカは事情を説明して面倒な噂話の早期収束を目的とした真相の確認とそれぞれが持つ情報のすりあわせの場である事を伝えた。
その言葉に初めに反応したのは意外にも忍だった。
「ごめん、エリカ。あたしは部長だから部活に遅れるのは良くないし、昨日部活を休んでいるから今日は最初から部活には参加したいんだ。それにこの前電話で話した以外あたしが話せることは無いからごめん」
「そっか、わかった。ありがとうね。それに余り体調が良くないなら無理せず早退したって良いのだから無理しないでね」
「うん、でも本当に体調が悪いわけじゃ無いから心配しないで大丈夫だよ」
そう言って忍は教室から出て行った。
「忍、大丈夫かな。いつも二郎君に怒っているときの不機嫌とは違う感じだよね。何かあったのかな」
三佳が心配と言った様子でいるとすみれが説明するように言った。
「どうやら昨日忍が体調不良で部活を休んだらしくて、二郎君がお見舞いで忍の家に行ったらしいのよ。それでその時に二人の間で何かあったんじゃないかって一君が言っていたわよ」
「そう、なんだ。またすぐに仲直りすれば良いけどなんか心配だね」
三佳とすみれの会話を聞いたエリカは二人とは別の事を考えていた。
(私が忍に二郎君を意識させるようなことを言ったのがマズかったかな。変な風にこじれなければいいけど)
エリカが心配の眼差しで教室を去った忍を案じているとすみれが話し掛けた。
「それでエリカ、放課後の事だけど、あたしも話があったから私は参加できるよ」
「あたしも今は部活のオフシーズンだし、最近ちょっと部活にやる気が出ないから私も少しくらいさぼっても大丈夫だよ」
すみれと三佳の申し出にエリカは良しと頷き言った。
「うん、ありがとう、それじゃ後は二郎君に声を掛けて見るわね。一君は生徒会があって参加できないから、この後ちょっと二人で話をしてみるから二人は放課後に帰らずに教室に残っておいてね」
エリカが今後の予定を話すとすみれがそれではと申し出るように言った。
「これから一君と話をするなら二郎君には私が声を掛けておこうか」
「いいの、すみれ」
「もちろん、夏休みから二郎君ともよく話すようになったから問題無いよ」
「そっか、それならよろしくね」
「了解、任せて」
エリカはすみれの申し出を素直に受け、二郎と食事を終えて談笑する一に声を掛けて二人で教室を出て行った。
それを見たすみれはすぐに一人になった二郎に声を掛けた。
「二郎君、ちょっと良い」
「おぉすーみんか、どうした」
「いや、すーみん呼びは一君だけの特別だから、できれば二郎君はすみれにしてくれるかな」
二郎のボケに本気で嫌そうにするすみれに二郎は申し訳なさそうに答えた。
「そうか、そりゃすまなかったな。でも一がヤケにすーみん、すーみんって話すもんだから、俺もついすーみんって言いたくなってな。そんなに嫌なら悪かったよ」
「え!一君が私の話を、な、何の話をしていたの」
すみれは先程のまでの嫌悪感を持った表情から一気に乙女モードになって二郎に詰め寄った。
「いや、別にたいした話では無いんだが。すーみんってあだ名は可愛いよなっていきなり言い出してさ。すみれを見ながら最近凄く可愛くなったなって言うから、俺も最近よくすみれは明るく笑っていて確かに可愛いなって言ったら、異様にテンション上がってさ、あいつ。俺のことをよく分かる男だって褒めてくるは、握手されるはで俺もさっぱりなんだが。まぁとりあえず一がすれみを可愛いって褒めていたぞ。良かったな、あいつが女子をお世辞無しに褒めるなんて本当に珍しいことだから自信を持って良いと思うぞ」
二郎の褒め殺しにすみれは恥ずかしさと嬉しさと心強さとよく分からない感情などがない交ぜになりながらもとにかく有頂天になり二郎に返事をした。
「そうなの。私の事可愛いって一君が言っていたんだ。へーほーふーん、へへへ、ふふふ。もう一君ってば直接言ってくれれば良いのに、二郎君に自慢したかったのかな。へへへ。・・・まぁそう言うことなら、特別に二郎君もすーみんって私の事を呼んでもいいよ。これからも一君が私の事を何か言っていたら教えてくれたら、それで良いからお願いね。それじゃ二郎君、午後もしっかり居眠りしないで授業受けるんだぞ♪」
すみれは途中ごにょごにょと独り言めいた言葉を言いながら、最終的に二郎のすーみん呼びを認めルンルンしながら二郎の前から姿を消したのだった。
そのすみれの上機嫌ぶりに二郎は呆気に取られながらつぶやいた。
「結局アイツは何を話に来たんだ」
そんな二郎の存在など一瞬で頭から消去したすみれは一人気分上々で2階の渡り廊下を進んでいた。
「へへへ、一君~♪一君~♪早く会いたい一君~♪、一君~♪一君~♪LOVE、LOVE、大好き一君~♪」
(あれ、私何か忘れているような・・・まぁいっか)
すみれは二郎から聞いた一ののろけ話に気を取られ二郎を放課後の話し合いに誘うのをすっかり忘れ、作詞作曲橋本すみれ、曲名「LOVE一君」という謎の歌をスキップしながら口ずさむのであった。
その言葉に初めに反応したのは意外にも忍だった。
「ごめん、エリカ。あたしは部長だから部活に遅れるのは良くないし、昨日部活を休んでいるから今日は最初から部活には参加したいんだ。それにこの前電話で話した以外あたしが話せることは無いからごめん」
「そっか、わかった。ありがとうね。それに余り体調が良くないなら無理せず早退したって良いのだから無理しないでね」
「うん、でも本当に体調が悪いわけじゃ無いから心配しないで大丈夫だよ」
そう言って忍は教室から出て行った。
「忍、大丈夫かな。いつも二郎君に怒っているときの不機嫌とは違う感じだよね。何かあったのかな」
三佳が心配と言った様子でいるとすみれが説明するように言った。
「どうやら昨日忍が体調不良で部活を休んだらしくて、二郎君がお見舞いで忍の家に行ったらしいのよ。それでその時に二人の間で何かあったんじゃないかって一君が言っていたわよ」
「そう、なんだ。またすぐに仲直りすれば良いけどなんか心配だね」
三佳とすみれの会話を聞いたエリカは二人とは別の事を考えていた。
(私が忍に二郎君を意識させるようなことを言ったのがマズかったかな。変な風にこじれなければいいけど)
エリカが心配の眼差しで教室を去った忍を案じているとすみれが話し掛けた。
「それでエリカ、放課後の事だけど、あたしも話があったから私は参加できるよ」
「あたしも今は部活のオフシーズンだし、最近ちょっと部活にやる気が出ないから私も少しくらいさぼっても大丈夫だよ」
すみれと三佳の申し出にエリカは良しと頷き言った。
「うん、ありがとう、それじゃ後は二郎君に声を掛けて見るわね。一君は生徒会があって参加できないから、この後ちょっと二人で話をしてみるから二人は放課後に帰らずに教室に残っておいてね」
エリカが今後の予定を話すとすみれがそれではと申し出るように言った。
「これから一君と話をするなら二郎君には私が声を掛けておこうか」
「いいの、すみれ」
「もちろん、夏休みから二郎君ともよく話すようになったから問題無いよ」
「そっか、それならよろしくね」
「了解、任せて」
エリカはすみれの申し出を素直に受け、二郎と食事を終えて談笑する一に声を掛けて二人で教室を出て行った。
それを見たすみれはすぐに一人になった二郎に声を掛けた。
「二郎君、ちょっと良い」
「おぉすーみんか、どうした」
「いや、すーみん呼びは一君だけの特別だから、できれば二郎君はすみれにしてくれるかな」
二郎のボケに本気で嫌そうにするすみれに二郎は申し訳なさそうに答えた。
「そうか、そりゃすまなかったな。でも一がヤケにすーみん、すーみんって話すもんだから、俺もついすーみんって言いたくなってな。そんなに嫌なら悪かったよ」
「え!一君が私の話を、な、何の話をしていたの」
すみれは先程のまでの嫌悪感を持った表情から一気に乙女モードになって二郎に詰め寄った。
「いや、別にたいした話では無いんだが。すーみんってあだ名は可愛いよなっていきなり言い出してさ。すみれを見ながら最近凄く可愛くなったなって言うから、俺も最近よくすみれは明るく笑っていて確かに可愛いなって言ったら、異様にテンション上がってさ、あいつ。俺のことをよく分かる男だって褒めてくるは、握手されるはで俺もさっぱりなんだが。まぁとりあえず一がすれみを可愛いって褒めていたぞ。良かったな、あいつが女子をお世辞無しに褒めるなんて本当に珍しいことだから自信を持って良いと思うぞ」
二郎の褒め殺しにすみれは恥ずかしさと嬉しさと心強さとよく分からない感情などがない交ぜになりながらもとにかく有頂天になり二郎に返事をした。
「そうなの。私の事可愛いって一君が言っていたんだ。へーほーふーん、へへへ、ふふふ。もう一君ってば直接言ってくれれば良いのに、二郎君に自慢したかったのかな。へへへ。・・・まぁそう言うことなら、特別に二郎君もすーみんって私の事を呼んでもいいよ。これからも一君が私の事を何か言っていたら教えてくれたら、それで良いからお願いね。それじゃ二郎君、午後もしっかり居眠りしないで授業受けるんだぞ♪」
すみれは途中ごにょごにょと独り言めいた言葉を言いながら、最終的に二郎のすーみん呼びを認めルンルンしながら二郎の前から姿を消したのだった。
そのすみれの上機嫌ぶりに二郎は呆気に取られながらつぶやいた。
「結局アイツは何を話に来たんだ」
そんな二郎の存在など一瞬で頭から消去したすみれは一人気分上々で2階の渡り廊下を進んでいた。
「へへへ、一君~♪一君~♪早く会いたい一君~♪、一君~♪一君~♪LOVE、LOVE、大好き一君~♪」
(あれ、私何か忘れているような・・・まぁいっか)
すみれは二郎から聞いた一ののろけ話に気を取られ二郎を放課後の話し合いに誘うのをすっかり忘れ、作詞作曲橋本すみれ、曲名「LOVE一君」という謎の歌をスキップしながら口ずさむのであった。
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