上 下
62 / 189
第3章 番外編 

凜と二郎の不思議な関係 出会いの中学編⑦ ~正義の味方とドヤ顔~

しおりを挟む
「正義の味方は遅れて登場!って、そんな簡単には返すわけにはいきませんよ。白井先輩。これからが本番ですから」

 場の重苦しい空気を吹き飛ばすように垢抜けた声で瑠美を引き留めた一が姿を現した。

「え!??」

「誰だ、お前は!」

「今度は一体何なの?」

 瑠美が突然現れた人影に驚き、純と千和子が驚いた顔で一の方に顔向けた。

「初めまして先輩方、俺はそこにいる山田の同級生で生徒会副会長の一ノ瀬一ですよ。いつも凜先輩がお世話になっています」

 一が一見笑顔で自己紹介をするも生徒会と言う言葉を聞いて3年の3人は顔を顰めた。

「どうして生徒会のガキがこんなところにいるんだよ」

 純が他の二人の声を代弁するように一に言った。

「そりゃ決まっているでしょ。あんたらを成敗するためですよ」

 一は笑顔から怒りを露わにして純を睨み付けるように言い放った。

「ふざけるな。何が生徒会だ。たいしたこともやって無いくせに偉そうにしやがって。俺らと何が違うってんだ。中身はただの中学生とかわらないだろが」

 純の捨て台詞を一が正論で論破した。

「少なくともあんたらみたいに誰かを逆恨みして、他人を貶めようとする人間は生徒会にはいません。あんたが会長選挙を落選したのは皆あんたの性格の悪さに気づいていたんじゃ無いですか。凜先輩が出て無くてもあんたはきっと誰かに負けていたよ」

 一は本質を見抜くようにして純の言葉をバッサリと切り捨てた。

「うるさい、何も知らないくせに。あいつのせいで俺は親にいつも公立の中学ごときで学年一位をとれない出来損ないと言われ、結果を出せないのは勉強をしない俺の怠慢だと怒られ、兄弟には馬鹿にされて、どんなに俺が頑張ったって誰も俺を認めようとしないんだ。アイツさえいなければ俺はもっと親に褒められて兄弟からも仲間はずれにされずに済むんだ」

 純は誰も聞いてもいない身の上話を言い訳がましく二郎や一に怒鳴り聞かせた。
 
「あんたの話なんてどうでも良いし、二階堂先輩に嫌がらせをして許される理由にはならないんだよ、バカ野郎が」

 一の登場で大人しくしていた二郎が純のあまりにも身勝手な言い訳に我慢できずに言い返した。

「いずれにせよ、先輩方にはきっちり落とし前をつけてもらいますよ。このことを生徒会副会長として先生に報告しますので覚悟して下さい」

 一が二郎に文句を言うのを任せて、今後の対応について冷静に説明した。

 すると純が不気味な笑いを浮かべながら、再び悪知恵を思い浮かべた様に叫び始めた。

「バーカが、お前らがいくら言っても最後に勝つのは俺なんだよ。そうだ、二階堂のストーカーはお前、一ノ瀬という事にしよう。一ノ瀬が普段友達のいないこいつを駒として操って二階堂に嫌がらせをさせていたところを俺たちが阻止して、それに腹を立てたお前が適当な嘘を言って俺たちを陥れようとしたことにしよう。そうだ、こいつが内藤に落書きをバレたところで、いきなり襲いかかってきたことにするのはどうだ。そこを偶然俺と白井が見つけて助けたことにすれ話がつながるな。内藤、お前ワイシャツの胸元のボタンでも二つくらいちぎっておけ、発情してこの根暗のガキが襲ってきたことにでもしてやれ。そうすれば先公達は俺らを信じるだろうよ。それに女の白井が証言すれば信憑性もあがるだろ。お前達は所詮は思春期真っ只中の中学2年だし、それを助けた俺は学校の英雄として褒められるってことだ。ははは、これで完璧だぞ。俺みたいな天才になればどんな問題も解決できるんだよ。お前らみたいなバカなガキとは違うんだよ。分かったか、このガキどもが!」

 純は仏のように心が広く一度も怒った事もない人ですら確実に苛つかせる完璧なドヤ顔で二人を見下すように三文小説にも出てこないであろう余りにもくだらない絵に描いた餅のような話を披露した。

 二郎と一は同時にため息をつき、バカにつける薬は無いなといった諦めの表情で首を横にゆっくりと振った。

「一ノ瀬、頼むわ」

「あいよ。・・・すみません、バカな話に付き合わせてしまい。こちらにお願いします」

 一が敬語で教室の外へ声を掛けると、この話の最後の登場人物がゆっくりと姿を現した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

庭木を切った隣人が刑事訴訟を恐れて小学生の娘を謝罪に来させたアホな実話

フルーツパフェ
大衆娯楽
祝!! 慰謝料30万円獲得記念の知人の体験談! 隣人宅の植木を許可なく切ることは紛れもない犯罪です。 30万円以下の罰金・過料、もしくは3年以下の懲役に処される可能性があります。 そうとは知らずに短気を起こして家の庭木を切った隣人(40代職業不詳・男)。 刑事訴訟になることを恐れた彼が取った行動は、まだ小学生の娘達を謝りに行かせることだった!? 子供ならば許してくれるとでも思ったのか。 「ごめんなさい、お尻ぺんぺんで許してくれますか?」 大人達の事情も知らず、健気に罪滅ぼしをしようとする少女を、あなたは許せるだろうか。 余りに情けない親子の末路を描く実話。 ※一部、演出を含んでいます。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...