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第3章 番外編 

凜と二郎の不思議な関係 出会いの中学編① ~波乱の兆し~

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 花火大会当日、二郎は凜の父である聡と出会い、突然謝辞を受ける事になった。二郎は初め何のことか分からずにいたが、凜の「中学時代のあの時の事」という言葉でちょうど3年程前に起きたある出来事に思い当たっていた。

 そう、その出来事こそが二郎と凜の出会いとなり、凜が二郎に特別な想いを抱くきっかけとなるのであった。

 この時、凜は中学3年生で才色兼備、清廉潔白を体現する大和撫子であり、さらに生徒会選挙において2位にダブルスコアをつけるぶっちぎりの圧勝で生徒会長に就任する程、同級生や教員から絶大の信頼を得る名実ともに校内のリーダー的存在の生徒だった。そんな折り、凜の父に関する事件を切っ掛けにこれまで表面化していなかった凜への嫉妬や憎悪が渦巻く騒動に巻き込まれていくことになる。

 一方、二郎は小学生の時にクラスメイトのいじめを止められなかった事がトラウマとなり、二度と同じ事が起きないようにと放課後に校内の見回りする習慣をつけていた。中学一年から始めた見回りでは、当然何か問題が起こることなど滅多に無く、毎日平和に終わることがほとんどだった。主だった出来事と言えば、先輩が校舎裏でたばこを吸っていたことを生活指導の先生に報告したぐらいだった。

 二郎の学校生活における悪を成敗する活動(二郎が勝手に思っている)はせいぜいこんなモノだった。

 この時点で二郎は凜との面識はなく、生徒会長の先輩程度の認識であった。また凜にとっても二郎は存在すら認識してなかった。それもそのはず、二郎は学校生活において目立つことはほぼ無く、部活でも半幽霊部員だったため、顔の広い凜でも二郎の存在に気づくのは非常に難しい事だった。

 そんな二人を引き合わせることとなるある騒動は5月某日に起きた。

 ある日の夕方、二郎がリビングで寛いでいたところ、テレビの報道番組でキャスターが気を引くニュースを読み上げていた。

「次のニュースです。ある週刊誌記者からの情報によると先日行われた青梅市市長選挙にて当選した二階堂聡氏の公職選挙法違反の疑いが浮上しました。記者によれば、選挙期間において、二階堂氏は地元の有力な有権者に対して数回に及ぶ接待と賄賂の授受を行ったという疑いが持たれています。もしこの疑いが実証されれば、公職選挙法の違反により、当選結果を無効とされる可能性があります。現在、警察当局は情報の出所などを精査し、関係各所への捜査を進めていく方針を示しているとのことです。いずれにせよ、疑いが持たれている二階堂氏は説明責任を果たすことが求められていると言えるでしょう。次は明日の天気予報です。・・・・・」
 
 二郎はニュースの内容を聞きながら、何かモヤモヤを感じていたところ隣にいた二郎の母が驚いたように話し掛けた。

「二郎、二階堂市長って今あなたが行っている中学校に娘さんが通っているはずよ。確かあなたの一学年上の子だった気がするけど知っている」

「一個上の二階堂さん?確か生徒会長が二階堂って人だったけど、もしかしてその人かな」

「そうよ、その子よ。凄く優秀でしかもスゴイ可愛らしい子だって隣のおばさんが噂していたわよ。それにしても、選挙違反なんて信じられないわね。二階堂さんってすごく真面目でそんなことをするような人じゃないって聞いたことがあるし、一度お兄ちゃんの中学の卒業式で見て、きちんとした印象があったけど、人は見た目じゃ分からないって事かしらね」

「母さんはこのニュースは本当だって思うの」

「そうね、火のないところに煙りは立たないって言うし、何かしら原因があるんじゃないのかしらね。もしそうじゃないなら、二階堂さんを貶めるための妨害工作なんかが考えられるけど、ドラマじゃあるまいしそんなこと現実にあるなんて考えられないものね」

「ふーん、そうなんだ。・・・・はぁ」

 二郎は母の話を聞きながら学校で起こる嫌な状況を想像して、小さくため息をつきながら自分の部屋へ入っていった。

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