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第2章

ある梅雨の日 その7 ~拓実のジレンマ~

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 数日後、思い切って誘ったデートが知らぬ間によくわからないグループでの遊びイベントに変わったことに頭を抱えながらも、三佳に断られなかったことをポジティブに受け取ろうと必死に気持ちを切り替えていた剛は、同じクラスでサッカー部の仲間であり、また幼馴染みの親友である服部拓実を遊園地デートになるはずだったモノに誘おうと部活帰りの電車の中で話しをすることにした。

「拓実さぁ、突拍子もない話なんだが、夏休みにさぁ、ペンギンランドに遊びに行かないか」

 剛は歯切れの悪い口調で拓実に話しかけた。

「どうした急に、遊園地に俺なんかと二人で行きたいのか」

 拓実は目的不明の剛の誘いに苦笑いで返事した。

「いや多分4人位だと思う」

「ずいぶん曖昧だな、それであと二人は誰だよ。サッカー部の連中か、それともクラスの奴か」

 拓実はいまいち要領を得ない様子で、参加メンバーの確認をした。

「一人は陸上部の馬場さんで、残りの一人は馬場さんの友達の女子だと思うわ」

「なんだそりゃ、剛、それってまるでダブルデートじゃん。お前、なんで馬場さんと二人で行かないんだよ」

「いや、二人で行くつもりで誘ったんだけど、あれよあれよと皆で行こうという話になってしまって、とりあいず、お互いに友達を誘ってから決めようってことになったんだよ」

「そうか、それはまぁ、なーというか、ドンマイだわ。そういう事なら別に予定もないし、俺はいいけど、・・・大丈夫かなぁ」

 剛の心中を察した拓実は、剛の誘いを了解しながら、一つの懸念を思い出していた。

「おう、ありがとう。どうした何か心配なのか」

「いや、こっちの話だ。それじゃ、詳細が決まったら教えてくれよ」

 剛と拓実の話が終わる頃、ちょうど最寄り駅に到着した電車から降りて、二人はそれぞれの帰途についた。

 剛と別れ家に向かう道すがら拓実は面倒な事になったと一人ため息をついた。というのも、拓実はエリカから友人のすみれが剛の事が好きで、仲を取り持ってほしいという相談を受けていたからだ。

 また一方で、最近剛が三佳のことを気になっており、良く声をかけていたことを知っていたため、できれば剛が動く前にエリカと協力してすみれと剛を誘って4人で遊びに行く計画を立てていたところだった。

 しかし、それも今となっては難しく拓実としては親友の剛の応援をしてあげることが友情だと心に決めるのだった。

(はぁ、馬場さんがエリカを誘ってくれれば良いけど、橋本さんを連れてきたら、俺はどうすればいいんだろうな。頼む馬場さん、空気を読んでくれ。修羅場は勘弁だぜ)
 
 拓実は親友の剛の恋を応援するべく、三佳の選択に一縷の望みを託した。

 その頃エリカは三佳から話を聞き、拓実と同じ状況になっていた。出来ることなら剛、三佳、拓実、エリカの4人であれば、すみれに黙っていればなんとかなると思っていたが、三佳がこのデートをすみれのために引き受けたと言っている以上、私ではなく、すみれがこのダブルデートに参加することになる。

 そうなると三佳と仲良くなりたい剛と、剛と仲良くなりたいすみれ、すみれと剛をくっつけたい三佳と、剛と三佳をくっつけたい拓実という意味不明な組み合わせのダブルデートとなり、収拾がつかず面倒なことが起こるとエリカは考えていた。

(剛には悪いけど、すみれのため、三佳のため、そしてクラス平和のために、すみれと剛がくっついてくれるのが一番だし、最悪、すみれが振られても、剛が三佳に告白しないようにすればなんとかなるんだけど、はぁ、一体この先どうなることやら)
 
 熟考の末あれこれと今後の展開を予測しつつ、エリカはこの三佳と剛、そしてすみれの恋愛騒動の顛末の青写真を描きつつも、先の読めないこの状況に大きなため息を吐いた。
 
(そうと決まれば4人だけのダブルデートを阻止しなくちゃいけない。これを三佳に話して5人か6人でのグループでの遊びイベントに変える方向にしないといけないわ)
 
 エリカは三佳に作戦の方針を伝えて、時期を見てすみれに話を持っていくことにした。

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