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2話

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その日の夜仕事を終え、神崎はレストランで彼女と食事をしていた。
楽しい時間になる思いきや彼女の表情は終始暗い。
「どうしたの?仕事で何かあった。僕で良ければ話を聞くよ」と神崎は優しく言う
彼女は、苦しそうな表情を浮かべ、神崎に
「別れたいの」と告げる。
彼女の言葉に神崎は動揺する。
「え、別れるってどうして急に。僕に悪い所があるなら直す。君と別れたくない」
「そんなこと言って晶君は別に私じゃなくてもいいよね。出会いだって合コンだったし」
「それはそうだけど、僕は君のことが好きなんだよ。別れ必要なんてないだろう」
「晶君って上手に嘘つくよね。本当は私のことなんて見てない。本当は好きな人がいるんじゃないの」
「そんなことないよ。君以外の好きな人なんていない。君のことだけを愛している」
「嬉しい、でもごめんなさい。晶君は私にとって王子様だった。私はお姫様になった気分だった。
だけど晶君は夢のような人だった。私とちゃんと向き合ってくれてない。だからごめんね。ここは私に払わせて」
彼女は立ち上がり、伝票を持とうとしたが
「僕が払うよ。男に恥じ欠かせないで」
「ありがとう、さようなら」
そういって彼女はレストランを出て行った。
「何がいけなかったんだろう」
神崎は彼女のいなくなった席を呆然と見つめる。
彼女を喜ばせようと頑張ってきたのに……
王子様。彼女に言われた言葉が頭の中を駆け巡る。僕が王子様?
昔からよく女性から言われてきた。でもいつも思っていた。
どうしてそんなこと言うんだよと、物語に出てくるような完璧な人間じゃない。
むしろ、欠点だらけの人間だと自覚している。だれも僕を見てくれない。
でも本当の自分を見てないのは・・・・・・自分なのかもしれない。
好きな人いるんでしょうという
妙に脳裏に彼女の言葉が響く
「好きな人か・・・・・・」
好きな人は昔からいた。3つ年上の幼馴染。強面の容姿で、堅物。近寄りがたくて
でも笑うとえくぼが出来て可愛くて、友達のいないせいか、幼馴染の僕には甘い
大人になった今は、小説家になって、担当の僕の好きな小説を書いてくれるし
よく食事にいったり、お互いの家に泊まったりと仲がいい。
この関係が最善だとわかっている。でも、好きで、憧れで・・・・・・。
僕の気持ちなんて届かないとわかっている。告白しても振られるだけ。
だから彼女を作って忘れようとした。
だけど、僕なりに本気で彼女を愛していた……つもりだったのかもしれない。
結局彼女に振られてしまった。
心にぽっかりと穴が開いてしまう。
誰かに助けを求めたい。
誰かに話を聞いて欲しい
誰かに愛してもらいたい
その誰かは……
『大内敬也』
今凄く声が聞きたい。
だけど、声を聞いたらどうにかなりそうだ。
でも話してこの気持ちをすっきりしたい。
神崎は会計を済ませ店を出て
担当作家の安藤に電話をした。数回のコールの後、安藤が電話に出た。
「こんばんわ。少し話を聞いてくれますよね?」
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