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第五話
ロンロール脱出
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四人で何も知らないふりをして堂々と合議院の廊下を歩く。
「あうあう……せっかくの高額依頼がぁ……」
いやセレーネだけは報酬がもらえないかもと知ってしょんぼりとなって歩いていた。
「聖女様方、お待ちを! どうかお待ちください!」
すると背後から合議院である商人が走ってきた。
「聖女様……いえ勇者様方、何か不備などがございましたでしょうか?」
「いえ、時間も時間ですのでお暇させていただこうかと」
「な、何を仰います。まだ報酬もお支払いしておりません」
「なんだか時間がかかっているのようですので後日再度伺わせていただきます」
「も、申し訳ございません。まさかこれほど早くになるとは思っておりませんでしたので、今報酬の方をご用意しておますのでもうしばらく……」
「それでは今回の依頼は完了と言うことでよろしいのですね」
「え、ええ、わたくしはその様に考えておりますが、まだ合議院全員が集まっていないので反対する者もいるやもしれませんが……それでもおそらく過半数で依頼は完了すると思われます」
「では、まだ決まっていないのですか」
「大変申し訳ありません」
「それでは決まり次第連絡をください。完了であれば後日報酬を受取に参ります」
「え!? いや、そ、そんなあと少し、少しお待ちいただくだけですので、そ、それでは食事の方をご用意しましょう。我が国の自慢の逸品を……」
「どうだか、薬でも入っているんじゃないの」
しつこい相手にデルが余計な話を入れてきた。
「な!? それは聞き捨てなりませぬな。何を根拠にそのような失礼なことを」
「兵士が取り囲んでいる」
「あれは合議院が取り囲まれたときに奪還するための演習でございます。何分昨今は物騒な話がちらほらと有ります故」
さすが歴戦の商人。ほんの少しも顔色を変えずにこちらの疑問をさらりと受け流した。
「どちらにせよ。私共は一度ここを去らせていただきます」
だがこちらの態度が変わらないことに、二人の合議員は笑顔のまま顔をしかめた。
「止めるのなら兵士を投入しても構わない」
アティウラが先ほどまで入念に手入れをしていたポールウェポンを構えながら言った。
それまで笑顔を崩さなかった商人だが、隣で黙っていたもう一人が何かに気づいて慌てた様子でヒソヒソと話をする。
「あのメイドは……死神……」
それを聞いた隣の商人は一瞬だけ驚いた顔を見せる。
この辺りの商人すら知っているとはなかなかの有名人だなアティウラって。
「そういうことか」
これ以上は無理だと判断したのか小さくため息をついた。
「これだけはやりたくなかったが……」
ゴクリと生唾を飲む。兵士を動かして取り押さえるのかと全員で戦闘態勢を取る。
しかし二人の商人は俺達の前でいきなり跪いた。
「勇者様、聖女様方! どうか、どうかお願いがございます!」
「……はい?」
まさかそんな流れになるとは思いもしなかったので四人とも鳩が豆鉄砲を食ったよう顔になってしまった。
「どうか、我らのロンロールにしばらくの間滞在していただきたいのです!」
「しばらくの間ってどれほど?」
「具体的には10……いえ数年ほど……」
「そんなにぃ!? それはさすがに」
「も、もちろんただとは申しません。お1人あたり金貨一万枚をご用意致します」
「一万枚!?」
一万枚ってことは、おおよそ1億円!? 宝くじ当たっちゃった的な感じかよ!
しかも総額ではなく1人あたりで……。
「ど、どうしましょう。勇者様」
お金が絡み、さすがのセレーネも動揺していた。
「そ、それは……どうしよう」
さすがに俺も動揺してしまうのだった。
「あうあう……せっかくの高額依頼がぁ……」
いやセレーネだけは報酬がもらえないかもと知ってしょんぼりとなって歩いていた。
「聖女様方、お待ちを! どうかお待ちください!」
すると背後から合議院である商人が走ってきた。
「聖女様……いえ勇者様方、何か不備などがございましたでしょうか?」
「いえ、時間も時間ですのでお暇させていただこうかと」
「な、何を仰います。まだ報酬もお支払いしておりません」
「なんだか時間がかかっているのようですので後日再度伺わせていただきます」
「も、申し訳ございません。まさかこれほど早くになるとは思っておりませんでしたので、今報酬の方をご用意しておますのでもうしばらく……」
「それでは今回の依頼は完了と言うことでよろしいのですね」
「え、ええ、わたくしはその様に考えておりますが、まだ合議院全員が集まっていないので反対する者もいるやもしれませんが……それでもおそらく過半数で依頼は完了すると思われます」
「では、まだ決まっていないのですか」
「大変申し訳ありません」
「それでは決まり次第連絡をください。完了であれば後日報酬を受取に参ります」
「え!? いや、そ、そんなあと少し、少しお待ちいただくだけですので、そ、それでは食事の方をご用意しましょう。我が国の自慢の逸品を……」
「どうだか、薬でも入っているんじゃないの」
しつこい相手にデルが余計な話を入れてきた。
「な!? それは聞き捨てなりませぬな。何を根拠にそのような失礼なことを」
「兵士が取り囲んでいる」
「あれは合議院が取り囲まれたときに奪還するための演習でございます。何分昨今は物騒な話がちらほらと有ります故」
さすが歴戦の商人。ほんの少しも顔色を変えずにこちらの疑問をさらりと受け流した。
「どちらにせよ。私共は一度ここを去らせていただきます」
だがこちらの態度が変わらないことに、二人の合議員は笑顔のまま顔をしかめた。
「止めるのなら兵士を投入しても構わない」
アティウラが先ほどまで入念に手入れをしていたポールウェポンを構えながら言った。
それまで笑顔を崩さなかった商人だが、隣で黙っていたもう一人が何かに気づいて慌てた様子でヒソヒソと話をする。
「あのメイドは……死神……」
それを聞いた隣の商人は一瞬だけ驚いた顔を見せる。
この辺りの商人すら知っているとはなかなかの有名人だなアティウラって。
「そういうことか」
これ以上は無理だと判断したのか小さくため息をついた。
「これだけはやりたくなかったが……」
ゴクリと生唾を飲む。兵士を動かして取り押さえるのかと全員で戦闘態勢を取る。
しかし二人の商人は俺達の前でいきなり跪いた。
「勇者様、聖女様方! どうか、どうかお願いがございます!」
「……はい?」
まさかそんな流れになるとは思いもしなかったので四人とも鳩が豆鉄砲を食ったよう顔になってしまった。
「どうか、我らのロンロールにしばらくの間滞在していただきたいのです!」
「しばらくの間ってどれほど?」
「具体的には10……いえ数年ほど……」
「そんなにぃ!? それはさすがに」
「も、もちろんただとは申しません。お1人あたり金貨一万枚をご用意致します」
「一万枚!?」
一万枚ってことは、おおよそ1億円!? 宝くじ当たっちゃった的な感じかよ!
しかも総額ではなく1人あたりで……。
「ど、どうしましょう。勇者様」
お金が絡み、さすがのセレーネも動揺していた。
「そ、それは……どうしよう」
さすがに俺も動揺してしまうのだった。
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